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日本防衛編
襲来。
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─カンカンカン!!!!
本隊が清澄山に現着した。士気は最大、そんな彼らでも空を覆う異変には根源的な恐怖を覚える。
闇。巨大な質量を持つモノに引力が生まれ、極端になれば光すら飲まれるように…その台風は巨大で、闇を連れてきた。
「この音、アイツだ。」
神木蓮が呟くと、同じく能力を持つ者は緊張の顔を見せた。
それは規模が違った。プラントと面すると必ず聞こえる金属がぶつかるような警告音。普段でさえ高架下のような耳障りな音量なのに、今回は空間全てを覆う
巨大な音。
未だ見えぬノアの襲来を予見させる。
「海上に居ては手が出せないな。」
「そう思うか六郎太。」
癒瘡木は自身ありげに八重筒に問う。何か策があるのか、八重筒が疑問に思うと癒瘡木は第一の氷室玲衣に目配せする。
玲衣はその意図を理解すると、自身の能力で細長い氷塊を生み出した。
「文字通り1番槍は私だな。」
癒瘡木は氷塊を片手に助走をとる。それは陸上競技の様に洗練された動きだった。
「フンッ!!!!」
闇夜に投げた。癒瘡木曰く、あれだけの警戒音は一、二キロメートルの距離に違いない。それに大体の方向が分かれば 当てれるのだそうだ。
「いやいやいや…」
『「そりゃねーよ!」』
皆心の中でそう突っ込んだ。だが実際はどうだろう。
──
「何か来る。おい、デカブツ。」
派手な衣装の青髪の女が言うと、目の前に壁があらわれた。
刹那─
─ドン!!!
「グッ!コ、レは?!」
壁はHRIに相対した使者の巨人だった。20メートルはあるだろうと言う巨躯、しかし情けないことにその左胸部
から先は真丸と穴が空いてしまった。
「氷の槍…」
女は正体に気が付いた。
「…ッ!!」
同時に自分に訪れると最悪な未来も気づいた。
「なんて馬鹿げた力なんだ!」
能力の行使。そうしなければならなかった。
─ヒュン!ヒュン!ヒュン!
台風の暴風による防壁すら貫通する氷の槍。それは途切れず女を狙う。3本、槍は眉間喉元鳩尾の中心3点を狙う。
「ニンゲン風情が…」
女は遂に感情を露わにした。それは怒りだった。手を前にかざすと、氷の槍は空中で運動を停止する。
「ノアサマ。」
「作戦を変えるぞデカブツ。奴らにはトコトン苦しんでもらう。」
「ギョいニ。」
ノアが命じるままに巨人は大海を、バタフライで泳ぎ始める。その速度は人類の乗り物では到底出せない速度だった。
──
「そんな、まさか…」
異変に気づいたのは司令室だった。日本全体にセンサを取り付け、いつでもプラントの発生を感知できるシステムがある。それが絶望を知らせた。
「仙台、東京、大阪…まだまだ反応がある?!」
主要都市全部に巨大な反応。戦力の大半をノアに固めていたHRIは、宵茸率いる別働部隊もあれどここまでの大量発生を想定してなかった。
各地で暴れるプラント、脅威はノアだけではない。
「HRI各地方支部!討伐を頼みました!」
『了解!!』
各地方にもHRIの支部は存在する。今こそ、力を合わせて戦う時だ。皆、迅速に対応し始める。
──
「始まったか。」
「癒瘡木隊長。ヤツが来ます。」
「ああ、見えている。派手な登場の仕方だな。水泳なら世界新だろうに。」
「冗談言ってる場合ですか…」
観測をしていた部隊は、報告にあった使者である巨人を見つける。清澄山は海に近いとはいえ山頂から目視できる存在感。報告時よりデカくなっている。
「100メートルはあるんじゃないか。」
「なに。ビビってんの癒瘡木。隊長変わろうか?」
黒髪ショートの女が、バチん!と癒瘡木の背を叩いた。彼女は第一の東雲巻だ。
「ふん。大した敵ではない。」
「まぁ、あのサイズならアンタの能力のが相性いいよね。」
「そうだな。で、お前はいつ持ち場に行くんだ?今の私は大隊長。第一とは言え逆らえないぞ。」
「へいへい。美織行くよ。」
「は、はい!」
癒瘡木は東雲が不器用なヤツだと知っている。ホントウに癒瘡木を心配して喝を入れに来たのだろうと分かった。
癒瘡木は大きく息を吸う。
「総員!準備を怠るな!ヤツは巨体、関節を狙い確実に速度を落とす!陸地に上がってから作戦開始だ!」
『「了解!!」』
ノアはまだ見えぬ。本隊の面々は緊張の糸を静かに張った。
─
「玲衣。酷い顔色だけど大丈夫か?」
作戦開始の直前、皆絶え間なく動いている中、玲衣だけ頭を抱えて俯いていた。
「私は大丈夫。戦うから…」
そう強がると玲衣は持ち場に戻って行った。
「どうして急に。」
「アイツはノアと因縁があるんだ。」
「因縁?」
玲衣が去った後、癒瘡木隊長が俺に言う。
「お前は人がプラントに変わる瞬間を目撃したんだったな。」
「えぇ…HRIに入るキッカケでした。」
「アイツもそうなんだ。」
玲衣も俺と同じ目に遭ったのか?!
「もっとも、アイツの場合は姉なんだがな。9歳の頃、あの双子は任務途中の天竹の前に現れた。」
「玲衣とその姉さんですね。」
「どちらとも始祖返りの症状を起こしていた。身体から植物が生えていたのだ。」
俺も知っている。植物が生えた人間がどうなるか。
「姉は、最期を理解したのか。残った力を使って玲衣を突き放す。その時だった。ヤツが降臨した。」
「まさか…」
嫌な想像。ノアとの因縁はつまり
「神の子ノアは、玲衣の姉に受肉したプラントである。」
「…ッ!!!」
通りであの調子だった訳だ。自分の姉を奪った相手との直接対決。俺には想像もできない感情なのだろう。
「アイツなりにケジメを付けると言ってた。お前も変に緊張するなよ。」
「…はい。」
玲衣は強い人だ。でも、1番大事な心の格ってモノがある。それが姉さんだとするならとても辛いだろう。俺も頼りになりたい。玲衣を救えるぐらいに。
──
目標500メートル!400!!
秒刻みで更新される敵との距離。5秒後に、ヤツは着弾した。
「ワレはノアの使者サイクロプス也。人間に引導を渡しに来た!!!!」
「3.2.1、発射!!!」
──ドン!ド!ドン!!
サイクロプスの襲来と同時に絨毯爆撃。息つく間も与えない強固な攻めの姿勢。
煙が浜を覆う。だが、雨が瞬時に洗い流すと驚嘆の光景が露わになった。
「ワレ、死ナず!無敵のヨウサイ!!」
ダメージは無し。戦闘経験が豊富な隊員は気付いた。『コイツは今までのプラントと格が違う』と。
第一の試練。ノアの使者サイクロプスとの戦いが今、始まる。
本隊が清澄山に現着した。士気は最大、そんな彼らでも空を覆う異変には根源的な恐怖を覚える。
闇。巨大な質量を持つモノに引力が生まれ、極端になれば光すら飲まれるように…その台風は巨大で、闇を連れてきた。
「この音、アイツだ。」
神木蓮が呟くと、同じく能力を持つ者は緊張の顔を見せた。
それは規模が違った。プラントと面すると必ず聞こえる金属がぶつかるような警告音。普段でさえ高架下のような耳障りな音量なのに、今回は空間全てを覆う
巨大な音。
未だ見えぬノアの襲来を予見させる。
「海上に居ては手が出せないな。」
「そう思うか六郎太。」
癒瘡木は自身ありげに八重筒に問う。何か策があるのか、八重筒が疑問に思うと癒瘡木は第一の氷室玲衣に目配せする。
玲衣はその意図を理解すると、自身の能力で細長い氷塊を生み出した。
「文字通り1番槍は私だな。」
癒瘡木は氷塊を片手に助走をとる。それは陸上競技の様に洗練された動きだった。
「フンッ!!!!」
闇夜に投げた。癒瘡木曰く、あれだけの警戒音は一、二キロメートルの距離に違いない。それに大体の方向が分かれば 当てれるのだそうだ。
「いやいやいや…」
『「そりゃねーよ!」』
皆心の中でそう突っ込んだ。だが実際はどうだろう。
──
「何か来る。おい、デカブツ。」
派手な衣装の青髪の女が言うと、目の前に壁があらわれた。
刹那─
─ドン!!!
「グッ!コ、レは?!」
壁はHRIに相対した使者の巨人だった。20メートルはあるだろうと言う巨躯、しかし情けないことにその左胸部
から先は真丸と穴が空いてしまった。
「氷の槍…」
女は正体に気が付いた。
「…ッ!!」
同時に自分に訪れると最悪な未来も気づいた。
「なんて馬鹿げた力なんだ!」
能力の行使。そうしなければならなかった。
─ヒュン!ヒュン!ヒュン!
台風の暴風による防壁すら貫通する氷の槍。それは途切れず女を狙う。3本、槍は眉間喉元鳩尾の中心3点を狙う。
「ニンゲン風情が…」
女は遂に感情を露わにした。それは怒りだった。手を前にかざすと、氷の槍は空中で運動を停止する。
「ノアサマ。」
「作戦を変えるぞデカブツ。奴らにはトコトン苦しんでもらう。」
「ギョいニ。」
ノアが命じるままに巨人は大海を、バタフライで泳ぎ始める。その速度は人類の乗り物では到底出せない速度だった。
──
「そんな、まさか…」
異変に気づいたのは司令室だった。日本全体にセンサを取り付け、いつでもプラントの発生を感知できるシステムがある。それが絶望を知らせた。
「仙台、東京、大阪…まだまだ反応がある?!」
主要都市全部に巨大な反応。戦力の大半をノアに固めていたHRIは、宵茸率いる別働部隊もあれどここまでの大量発生を想定してなかった。
各地で暴れるプラント、脅威はノアだけではない。
「HRI各地方支部!討伐を頼みました!」
『了解!!』
各地方にもHRIの支部は存在する。今こそ、力を合わせて戦う時だ。皆、迅速に対応し始める。
──
「始まったか。」
「癒瘡木隊長。ヤツが来ます。」
「ああ、見えている。派手な登場の仕方だな。水泳なら世界新だろうに。」
「冗談言ってる場合ですか…」
観測をしていた部隊は、報告にあった使者である巨人を見つける。清澄山は海に近いとはいえ山頂から目視できる存在感。報告時よりデカくなっている。
「100メートルはあるんじゃないか。」
「なに。ビビってんの癒瘡木。隊長変わろうか?」
黒髪ショートの女が、バチん!と癒瘡木の背を叩いた。彼女は第一の東雲巻だ。
「ふん。大した敵ではない。」
「まぁ、あのサイズならアンタの能力のが相性いいよね。」
「そうだな。で、お前はいつ持ち場に行くんだ?今の私は大隊長。第一とは言え逆らえないぞ。」
「へいへい。美織行くよ。」
「は、はい!」
癒瘡木は東雲が不器用なヤツだと知っている。ホントウに癒瘡木を心配して喝を入れに来たのだろうと分かった。
癒瘡木は大きく息を吸う。
「総員!準備を怠るな!ヤツは巨体、関節を狙い確実に速度を落とす!陸地に上がってから作戦開始だ!」
『「了解!!」』
ノアはまだ見えぬ。本隊の面々は緊張の糸を静かに張った。
─
「玲衣。酷い顔色だけど大丈夫か?」
作戦開始の直前、皆絶え間なく動いている中、玲衣だけ頭を抱えて俯いていた。
「私は大丈夫。戦うから…」
そう強がると玲衣は持ち場に戻って行った。
「どうして急に。」
「アイツはノアと因縁があるんだ。」
「因縁?」
玲衣が去った後、癒瘡木隊長が俺に言う。
「お前は人がプラントに変わる瞬間を目撃したんだったな。」
「えぇ…HRIに入るキッカケでした。」
「アイツもそうなんだ。」
玲衣も俺と同じ目に遭ったのか?!
「もっとも、アイツの場合は姉なんだがな。9歳の頃、あの双子は任務途中の天竹の前に現れた。」
「玲衣とその姉さんですね。」
「どちらとも始祖返りの症状を起こしていた。身体から植物が生えていたのだ。」
俺も知っている。植物が生えた人間がどうなるか。
「姉は、最期を理解したのか。残った力を使って玲衣を突き放す。その時だった。ヤツが降臨した。」
「まさか…」
嫌な想像。ノアとの因縁はつまり
「神の子ノアは、玲衣の姉に受肉したプラントである。」
「…ッ!!!」
通りであの調子だった訳だ。自分の姉を奪った相手との直接対決。俺には想像もできない感情なのだろう。
「アイツなりにケジメを付けると言ってた。お前も変に緊張するなよ。」
「…はい。」
玲衣は強い人だ。でも、1番大事な心の格ってモノがある。それが姉さんだとするならとても辛いだろう。俺も頼りになりたい。玲衣を救えるぐらいに。
──
目標500メートル!400!!
秒刻みで更新される敵との距離。5秒後に、ヤツは着弾した。
「ワレはノアの使者サイクロプス也。人間に引導を渡しに来た!!!!」
「3.2.1、発射!!!」
──ドン!ド!ドン!!
サイクロプスの襲来と同時に絨毯爆撃。息つく間も与えない強固な攻めの姿勢。
煙が浜を覆う。だが、雨が瞬時に洗い流すと驚嘆の光景が露わになった。
「ワレ、死ナず!無敵のヨウサイ!!」
ダメージは無し。戦闘経験が豊富な隊員は気付いた。『コイツは今までのプラントと格が違う』と。
第一の試練。ノアの使者サイクロプスとの戦いが今、始まる。
応援ありがとうございます!
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