北の魔法使い

ぴこみん

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予約していたホテルに着いた。

アットホームというかこじんまりとした小さなホテルだった。

受付にはフェミニンな顔立ちの165センチくらいの細身のおばさんがいた。
40代ぐらいだと予想した。

綺麗な金髪の髪を一つに束ねていた。

おばさんはとても温かい笑顔で私を迎えてくれた。



『Hei!』

「Hei!」


挨拶を交わし部屋の鍵を受け取り、私は世間話を始めた。
違う国に生まれたのに言葉が通じることが楽しかった。
おばさんはとてもよく喋ってくれた。


そして、こんなことを言い出した。



『突然こんな話をしてごめんなさいね、

うちの息子が10年前に行方不明になったのよ。

今も帰って来ないわ。

あの時10歳だったのよ。

北の森に続く足跡があったわ。

金髪で水色の瞳なの。

もしいたら教えてちょうだい。

もういないかもしれないけど…。』



おばさんは泣きだした。







10歳で行方不明、

10年前の出来事、

金髪に水色の瞳、

北の森に続く足跡、




インターネット上の情報と一致した。


そうか、このおばさんはユハの母親なんだ。





私は彼がいるであろう森に今から行くんだよ、なんて

そんなこと言って責任取れない。

“生贄の森” とさえ書かれていたのだから私自身帰ってこれる保証は無いかもしれない。




それでも森に縛られる彼の悲劇に共感できた。

お母さんのスパルタ教育による不自由さと彼の背負う重荷が共鳴した。

それでいて自分はかなり馬鹿だと思った。

ユハという少年が生きているという前提でここへ来ていた。

私自身に、早く日本を出たい衝動もあったのかもしれない。
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