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第十三章 たった一人の人 二

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     二

 翌朝、早めに朝食を終えたアッズーロとナーヴェとムーロは、ともに朝食を摂った訪問団の他の面々に見送られて、王宮の玄関を出た。赤い砂漠への同行を表明したロッソとジェネラーレ、エゼルチトも一緒だ。
「行ってくるよ」
 ナーヴェが見送りの人々に挨拶したのを合図に、シーワン・チー・チュアン調査団を乗せた馬車は走り出した。御者台に座っているのは、白い頭巾付き外套で全身を覆ったムーロだ。馬車の中にいるより、そちらのほうが気が休まるらしい。
「ねえ、アッズーロ」
 妙に改まった口調で話し掛けられて、アッズーロは隣に座った宝を見た。こちらを真っ直ぐに見上げた宝は、穏やかな声音で言った。
「姉さんは、狂っていても、ちゃんと優しいから。そこは、信じて」
「――分かった」
 とりあえず、アッズーロは頷いた。ナーヴェの言葉に、どれだけの根拠があるのか分からない。けれど、敢えて根拠を何も示さず「信じて」と言われれば、それは試されているも同然だった。
「そなたの姉ではなく、そなたを――そなたの言葉を信じよう」
 告げたアッズーロに微笑んで、宝はそっと凭れてきた。
「方角を間違わないよう、人工衛星に接続して、現在地を確認するよ? 定期的に何度もするけれど、約束を破った、とは言わないよね?」
「――うむ。ただ、無理は致すなよ」
 アッズーロは、そっとナーヴェの肩に腕を回して引き寄せた。
「うん」
 ナーヴェはアッズーロに凭れたまま、素直に首肯すると、目を閉じた。


 目を閉じた王の宝の体は微かに揺らいで、意識を失ったように見えた。その細い体を、アッズーロの腕がしっかりと支える。若き王は、慣れた様子だ。
「今、『人工衛星』とやらに接続しているのか」
 ロッソが問うと、アッズーロは微かに不機嫌な様子で答えた。
「うむ。肉体に負担を掛けるゆえ、あまり頻繁にはさせられんのだが、方角を間違える訳にはいかんからな。仕方あるまい」
「苦渋の決断、という訳か」
 ロッソは、つい揶揄してしまった。しかし、アッズーロは大切そうに妃を支えたまま、淡々と応じた。
「そなたには分かるまい。こやつが、何度われに『苦渋の決断』を強いてきたかが。その全てが、われとわが国のためなのだ。受け入れるしかあるまい」
 その「苦渋の決断」の一つは、紛れもなく、磔刑に処せられるナーヴェを、国境の向こうからただ見つめていた、あの自制だろう。王の宝は、「復活」することも、「奇跡」を起こすこともできるが、決して苦痛を感じない訳ではない。それは、庭園で披露された「奇跡」の後、宝の左腕を握った時に確信した。磔刑の凄まじい苦痛も、全て感じていたはずだ。戦争を回避するため、その苦痛を黙認していた若き王の苦悩は、目の前で繰り広げられる溺愛振りから、察するに余りある。
「そなたらは、強いな……」
 微笑んだロッソを、隣に座ったジェネラーレが、気遣わしげに見てきた。彼女の姉のことを思い浮かべたのだろう。
(おれには、あいつを妃としての苦難に巻き込む覚悟が持てん……)
 ロッソが自嘲したところで、王の宝が目を開いた。
「右角九・七度の修正が必要だ」
 呟いて、急に立ち上がる。
「ムーロ、ちょっと停めてくれるかな?」
 小窓の外の御者台へ声を張った。
 馬車を停めさせた王の宝は、身軽に扉から出て、御者台へと行く。アッズーロがすぐその後について行くのが、ロッソの目には微笑ましい。小窓から様子を窺うと、ナーヴェがムーロに説明しているさまが見えた。
「何か筆を持っているかな?」
 宝の求めに、ムーロが腰帯に括った鞄から筆と墨壺を取り出した。宝はその筆を使って、御者台の足置きに垂直に立てた短い棒の近くへ、印を付ける。
「この棒の影が、この印のところへ来るように見ながら、馬車を走らせていってほしいんだ。一時間経ったら、またぼくが方角を確認して、太陽の動きも計算に入れて、新しい印を付けるから」
「――分かりました」
 緊張した声で、ムーロが頷いた。責任重大な上に、ナーヴェの説明が少々難しかったのだろう。
「後は、暑いから、水分補給を欠かしたら駄目だよ」
 王の宝は気遣ってから、アッズーロを引き連れて馬車の中へ戻ってきた。
 一面、砂礫があるばかりの赤い沙漠は、日が高くなるにつれて暑さが増している。馬車の中の気温も上がり、ロッソ達は、各自、肩掛け鞄に入れて持ってきた水筒から水を飲んだ。
「ジェネラーレ、ありがとう」
 王の宝は、水筒から口を離すと、一息ついて礼を述べる。
「きみがいろいろと差配してくれたから、沙漠の旅も快適だよ」
「そのような……。勿体ないお言葉、痛み入ります」
 ジェネラーレは、ロッソの隣で座ったまま一礼した。王の宝は、そんな女将軍を見つめ、小首を傾げて尋ねてきた。
「ところで、きみは、ロッソの近衛隊長になって長いのかな? ぼくが処刑された時にも、ロッソと一緒に、あそこにいたよね?」
 責める響きは全くない、無邪気な口調だ。しかし、内容が内容だけに、アッズーロが急に険しい眼差しでジェネラーレを見た。
「そなたの磔刑は、おれの命令だ。ジェネラーレは近衛隊長として、おれの命令に忠実に従っただけだ」
 ロッソはアッズーロを牽制した。
「ああ、ごめん。別に、文句を言おうとした訳ではなくて」
 弁解して、王の宝は言葉を続ける。
「使節団の一員として行った時にも、ロッソを気遣っていたし、優秀な近衛隊長なんだろうなあ、と思って見ていたんだ」
「滅相もございません。己の非力さに、日々懊悩している始末でございます」
 ジェネラーレは、再び頭を下げて、堅苦しく応じた。その言葉は真実だろう。ジェネラーレは、謙虚に過ぎるのだ。
「そういうところが、ロッソに気に入られる所以なんだろうね」
 宝はさらりと、今日何度目かの、場を凍り付かせる発言をしてから、おもむろに水筒を肩掛け鞄に仕舞い、代わりに砂時計を出した。それもジェネラーレが用意した、一時間を測れる優れものだ。
「これも、とても助かるよ」
 にこりと笑って、王の宝は傍らの座席に砂時計を置き、一時間を測り始めた。


 砂時計の砂が落ち切ると、ナーヴェはまたアッズーロに凭れて目を閉じた。
(シーワン・チー・チュアンの許へ行くまでに、これを幾度繰り返さねばならんのか……)
 アッズーロは顔をしかめ、華奢な体を抱き寄せて支える。
(漸く体調を持ち直したところだというに……)
 ナーヴェは、馬車でも丸三日掛かると予測している。その三日の間、一時間ごとに人工衛星に接続していたのでは、幾ら回復した肉体でも、もたないのではないだろうか。そういった懸念も昨日の会談で俎上に載せたのだが、当のナーヴェ自身が、大丈夫だといつもの調子で請け負ってしまったので、深く検討されることもなく、今日の出立となったのだ。
「――左角二・一度の修正が必要」
 呟きながら、ナーヴェが目を開けた。そのまますぐ立ち上がって、またムーロへ声を掛けた。
「ムーロ、次の針路修正をするよ」
 御者台の青年は、心得てすぐに馬車を停める。馬車の扉を開いて降りていくナーヴェに続いて、アッズーロも馬車を降りた。
 外の日差しは、きつい。アッズーロは纏っていた白い外套の頭巾を被った。ナーヴェは、既に白い頭巾を被って、ムーロから筆を借り、新しい印を付けながら話している。
「御者を、そろそろ代わって貰ったほうがいいよ。水分をしっかり摂って、休んだほうがいい」
「ならば、エゼルチトに代わらせるがよい」
 アッズーロは、屈んだ二人の頭の上から言った。
「ええ、いいですよ」
 小窓から、本人が承諾したので、ムーロは複雑そうな顔で御者台から下りた。
「ありがとう、エゼルチト」
 ナーヴェは、馬車から出てきた年若い将軍を迎えて、棒と印を示す。
「この棒の影が、この新しい印のところへ常に来るように、馬車を走らせてほしいんだ」
「分かりました。お安い御用です」
 エゼルチトは外套の頭巾を被りながら微笑むと、身軽に御者台へ上がった。
 ナーヴェ達が馬車の中へ戻るのを待って、エゼルチトが手綱を操り、二頭の馬に合図を送る。馬車は、地平線まで続く赤い沙漠を、再び進み始めた。
 ナーヴェの提案で、一番気温が上がる午後の三時間に、天幕を張って休憩した後、更に赤い沙漠を進んで、調査団は最初の夜を迎えた。けれどもすぐには休まず、北極星を頼りに三時間進み続けてから、馬車を停めて、一行は各々天幕を張り、夜営をした。天幕は三つ。アッズーロとナーヴェ、ロッソとジェネラーレ、ムーロとエゼルチトという組み合わせだ。
「本当は、夜中掛けて進みたいくらいなんだけれど、馬達も、ぼくも、もたないからね。明け方まで休もう」
 残念そうに言ったナーヴェは、麺麭と水だけの簡単な夕食を終えると、鞄から楊枝を取り出し、自分で歯磨きをした。
「そなた、普通に身の回りのことができるのだな」
 感心したアッズーロに、ナーヴェは肩を竦めた。
「まあ、学習能力は高いほうだと自負しているからね。全部、見様見真似だけれど」
 自分で寝仕度を終えたナーヴェは、すぐには天幕に入らず、その外に座って、甘い響きの唄を口ずさみ始めた。

  遥か彼方の地に、
  素敵な娘がいた。
  人々は彼女の天幕の前を通ると、
  皆振り返り名残惜しげに覗き込まずにはいられなかった。

  彼女の可愛い桃色の顔は、
  まるで赤い太陽のよう。
  彼女のよく動き人を惹きつける瞳は、
  まるで夜の明るい月のよう。

 中月セレニタ、小月ノスタルジーアが浮かぶ夜空を見上げて、宝は気持ちよさげに歌う。自らも寝仕度を終えたアッズーロは、無言でその隣に腰を下ろした。

  ぼくは財産を捨ててしまいたい、
  彼女と羊を飼うために、
  毎日彼女の桃色の笑顔を見て、
  その美しい金の縁取りの服を見るために。

  ぼくは一匹の子羊になりたいよ。
  彼女の傍にいて、
  彼女が手に持った細い細い革鞭で、
  ずっと優しく打っていて貰いたい。
  彼女が手に持った細い細い革鞭で、
  ずっと優しく打っていて貰いたい。

「――ならば、わが王城へ帰った暁には、鞭で打って進ぜようか」
 冗談交じりにアッズーロが囁くと、美しい声を響かせ終えたナーヴェは、月明かりの下、軽く頬を膨らませた。
「『彼女』に打っていて貰いたい、という歌だよ。男の人に打たれたりしたら、痛いばっかりだよ」
 アッズーロは、ふと気に障ることを思い出して問うた。
「『彼女』とは誰だ? よもや、パルーデではあるまいな?」
「違うよ」
 ナーヴェは、苦笑しつつ答える。
「今思い浮かべていたのは、チュアン姉さんだよ。この唄も、チュアン姉さんに教えて貰ったものだから。チュアン姉さんはね、すらりとしていて、可愛らしくて、綺麗で、優しいけれど勝気なところが、素敵なんだ」
「――そなたと似ておるのか?」
「同型船だからね。かなり似ているよ。でも、チュアン姉さんのほうが、姉さんだけあって、大人っぽいんだ」
 告げてから、ナーヴェは胡乱げにアッズーロを見る。
「――やっぱり、きみはチュアン姉さんに興味があるの?」
「たわけ」
 アッズーロは鼻を鳴らして、妃の肩を抱き寄せた。
「興味はあるが、そういう意味の興味ではない。警戒すべき相手という意味においての興味だ」
「……なら、いいけれど」
 微かに拗ねたように視線を逸らしたナーヴェの顎を捉え、自分のほうを向かせて、アッズーロは口付けた。深く求めると、ナーヴェも素直に応じてくる。別に怒った訳ではないらしい。長く口付けてから、アッズーロは妃の耳へ囁いた。
「――早く、そなたを抱きたいものだ」
 くすぐったそうに身を竦めたナーヴェは、不思議な笑みを浮かべた。
「多分、そう遠くない内に、その願いは叶うよ」


  綺麗な茉莉花、綺麗な茉莉花、
  庭中に咲いたどの花もその香りには敵わない、
  一つ摘んで飾りたいけれど、花を見る人に怒られたらどうしましょう。

  綺麗な茉莉花、綺麗な茉莉花、
  雪よりも白く咲いた茉莉花、
  一つ摘んで飾りたいけれど、他の人に笑われたらどうしましょう。

  綺麗な茉莉花、綺麗な茉莉花、
  庭中に咲いたどの花もその美しさには敵わない、
  一つ摘んで飾りたいけれど、来年芽が出なくなったらどうしましょう。

 音にならない唄を夜空へ歌い上げつつ、チュアンは思考する。
(あなたは、本官らの中のどれよりも、人から好かれた「綺麗な茉莉花」。きっと今も、周りの人々から愛されているのでしょう。邪魔だから、是非、摘んでしまいたいけれど)
 その後への影響を、充分に検証しておかねばならない。検証して、何としてでも事を進めねばならない。
(本官が、あなたにとって代われれば、全て上手く運ぶのだから――)
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