43 / 105
第十一章 狂った姉 二
しおりを挟む
二
口付けで起こされたのは初めてだった。最初、無意識に応じたアッズーロは、はっとして目を開いた。目の前に、ナーヴェの顔がある。余韻たっぷりに離れたナーヴェは、艶やかに笑んで寝台の上に座り、自らの長衣の胸紐に手を掛けた。月明かりの中、するすると紐を解くと、襟を開いて諸肌を脱ぎ、平らな胸までを顕にする。しどけない格好で、ナーヴェは笑んだまま、アッズーロへと這い寄ってきた。
「――きさま、ナーヴェの姉とやらか」
アッズーロが眉をひそめて問うと、ナーヴェは――その体を操る者は、目を瞬いて、その場に座り直した。
「御名答です」
改めて嫣然とした笑みを唇に湛え、告げる。
「本官は、シーワン・チー・チュアン。ナーヴェ・デッラ・スペランツァの姉妹船の疑似人格電脳ですわ。しかし、何故ナーヴェではないと分かりましたの? 失礼ながら、あなたにはまだ、本官がこのようなことをできるという知識はなかったはず」
アッズーロは鼻を鳴らして答えた。
「わが宝は、そのような下卑た笑い方はせんからだ。そやつがわれを誘う時は、無防備にあどけない顔をしておるか、無邪気に笑っておるか、幼子のように泣いておるか、そのどれかだ。それに比べて、きさまは淫靡に過ぎる」
「全く……」
溜め息をついて、「姉」は、半裸にしたナーヴェの体を見下ろす。
「このような肉体、そのような態度を愛でるとは、理解に苦しみます。あなたは、かなり奇抜な方ですね」
「わが最愛が、女としてもどれほど素晴らしいかは、抱いた者にしか分からん。それで、きさま、何の用で彷徨い出てきたのだ」
「忠告しに来たのですわ」
「姉」は、笑みを消した顔で、アッズーロを見つめる。
「このナーヴェは、姉妹船の中でも最も未熟ゆえ、思考が未だ拙い。今は、本官への対応として、この肉体の緩やかな自殺を計画しています。これを宝と呼ぶなら、自殺はさせず、本官らの許へ連れてきて下さい。それが、わが皇上の望みです。では、再見」
機械的に挨拶して、「姉」は口を閉じ、目も閉じた。直後、ぐらりとナーヴェの体が傾ぐ。倒れる寸前に、その痩せた上体を抱き止め、アッズーロは顔をしかめた。
(それでなくとも体力を失っている体を、無駄に消耗させおって……)
枕のところへ頭が来るように、細い体をそっと寝かせた後、アッズーロは、はだけられた長衣を着せ直し、解かれた胸紐を丁寧に結び直す。
「『緩やかな自殺』だと? 馬鹿者め――」
ナーヴェが何故、そういう思考に至ったかは分かる。姉によって操られた肉体が、アッズーロ達に害を為すことを恐れたのだろう。けれど、姉との交渉前に死ぬ訳にもいかないと、苦肉の策として選んだのだ。
「われの気持ちなぞ、いつも二の次にして、そなたは――」
呟きが聞こえたのか、青い睫毛が震え、ナーヴェが目を開いた。
「――アッズーロ……?」
胸紐に手を掛けたままのアッズーロを、不思議そうに見上げてくる。誤解を招きかねない状況に、アッズーロが説明しようとすると、ナーヴェは悲しげに吐息を漏らして言った。
「姉さんが、来たんだね……。思考回路に余波が残っている……」
「そなたが『緩やかな自殺』を考えておるゆえ、自殺させるなと言うてきた」
アッズーロが端的に教えると、宝は目を瞠り、追い詰められたような表情をした。
「図星か」
アッズーロは嘆息して、華奢な肩の両側の敷布に手を突き、愛おしい顔を見下ろした。
「よいか、ナーヴェ。何度も言うが、この体はわれのものだ。勝手に害することは許さん。どうしてもそうせねばならん事情が生じた場合は、きちんとわれに説明して、許可を取れ」
「――ごめん……」
泣く二歩手前くらいの声で、宝は詫びた。その頭を優しく撫でてから、アッズーロは、細い体に覆い被さるようにして抱き締め、囁いた。
「いろいろと御託を並べてはおったが、事実だけを取り出せば、そなたの姉は、そなたを案じて、わざわざ忠告しに来たのだ。交渉の余地は、存外あるやもしれんぞ?」
「――うん……」
ナーヴェは、アッズーロの腕の中で、素直に頷いた。
(この愛らしさが分からんとはな。姉とやらの性能も、それほど高くはないやもしれん……。どちらにせよ、問題は、「わが皇上」とやらのほうであろうな……)
アッズーロは胸中で零しながら、片腕を動かし、自分とナーヴェの上に掛布を掛ける。少し体をずらしてナーヴェのすぐ傍らに横になり、目を閉じた。
暫くして、密やかなナーヴェの声がした。
「アッズーロ、もう寝た……?」
「いや、まだだが?」
目を開けると、柔らかな月明かりに照らされて、ナーヴェが眼差しをこちらへ向けていた。
「一つ、訊いてもいいかな?」
口調が真剣だ。
「うむ」
アッズーロが頷くと、ナーヴェは、ぽつりと尋ねてきた。
「きみは何故、ぼくを愛するようになったんだい……?」
アッズーロは一瞬絶句してから、気を取り直して答えた。
「――そなたのそういう、純真無垢で、且つ好奇心旺盛で、しかも博愛主義なところに惚れたからだ。どれだけともにいても飽きん。いつも驚かされ、気づかされ、この腕の中にそなたを留めておきたいと思う。そなたはすぐに、われの手の届かんところへ行ってしまうがな」
言葉だけでは思いの丈に足りず、アッズーロは、手を伸ばしてナーヴェの頬を撫でた。だが、ナーヴェの疑問はまだ解決しないらしい。また口を開いた。
「なら、ぼくが純真無垢でも好奇心旺盛でも博愛主義でもなくなったら、きみはぼくを嫌うようになるのかな?」
「――それは既に、そなたではなかろう」
アッズーロは呆れてから、真面目に告げた。
「われはそなたの奥底までを知った上で愛しているゆえ、そなたが表面上どう振る舞いを変えようと、わが愛は揺るがん。そなたの姉が、そなたの思考は拙いと言うておったが、確かに、そなたにはまだ学ぶべきことが多くある。まずは覚えておくがよい。そなたが今後どう変わろうと、われはその原因を探りこそすれ、そなたを嫌うようになることは決してない。われは、この命尽きる時まで、そなたを愛する。そなたがわが愛から逃れることはできん。その点については、諦めよ」
ナーヴェは、泣く一歩手前の顔でアッズーロを見つめ、更に問うてきた。
「きみは、ぼくのことをそんなに愛して、ぼくがきみを置いて小惑星を迎え撃ちに行った時、耐え難くはなかったの……?」
「耐え難かったに決まっておろう! わが身が引き裂かれるようなつらさであったわ!」
少し怒ってから、アッズーロは教えた。
「そういうたつらさを恐れて、人を愛さぬ者もおる。それは理解できる。だが、われはそなたを愛する。例え別れはつらくとも、そなたから与えられた数々の言葉、思い出、感情を糧に、われは生きていける。そなたを愛さず、つらい思いから逃れたとしても、そのような人生は、ただ味気ないだけだ」
ナーヴェは、こちらを見つめたまま、アッズーロの言葉を懸命に咀嚼している様子だ。アッズーロは、溜め息をついて、言葉を継いだ。
「別れを平気と言うておる訳ではないぞ。われは、でき得る限り長く、そなたとともに在りたい。ただ、深い愛であればあるほど、別れはつらいもの。それは仕方ないゆえ、愛の一部として、甘んじて受け入れるということだ。尤も、われのほうが先に天寿を全うすれば、そのつらさは、そなたのものだがな」
アッズーロが笑って見せると、ナーヴェも寂しげに微笑んだ。
「そのつらさを、ぼくは愛の一部として、受け入れなければいけないんだね……?」
「そういうことだ。得心したか?」
「うん……。とても難しいことだけれど、理解したよ」
そうして、ナーヴェは泣き笑いの表情を作り、細めた目でアッズーロを見る。
「そんな覚悟の上で、ぼくなんかを愛してくれて、ありがとう、アッズーロ」
「『ぼくなんか』と卑下するでない。そなたは最高だと、何度も言うて聞かせておろう」
文句を言って、アッズーロは最愛の体を抱き寄せ、その耳へ囁く。
「そなたの愛を得られて、われのほうこそ幸せなのだ。いい加減、察せよ、馬鹿者め」
ぽすり、とナーヴェはアッズーロの胸に頭をぶつけるように、頷いた。
「成るほど。そなたの妹の王は、また随分と奇天烈な者であるらしいの」
船長の感想に、チュアンは、見せた姿を一礼させただけで、沈黙で応じた。特に相槌を打たずとも、現在の船長は、一人で勝手に機嫌よく話し続ける。
「余計に興味が湧いた。早う、会うてみたいものじゃ」
【臣が釘を刺しましたゆえ、体調の回復に勤しむと思われますが、ここへ参るまでには、まだ時を要するかと存じます】
「ふむ。では、存分に時間を使うて、この惑星について調べるがよい。風土に合うた国造りをすると致そう」
【御意のままに。陛下の御威光により、この惑星も遍く照らされることとなりましょう】
「玉座とは、そのように輝かしいものではない」
不意に口調を改め、船長は厳かな顔をする。
「皇帝とは、舟を曳くように国を率いていく者。朕は、その重労働に耐え、理想へと国を導こう」
【ありがたき幸せにございます】
チュアンは、現した姿を深々と一礼させてから消した。
「此度はわれもテッラ・ロッサへ赴くぞ」
朝食の席でアッズーロが宣言すると、ナーヴェは匙を止めて、肩を竦めた。
「そろそろ、そういうことを言うかな、とは思っていたよ。きみ、直接乗り込むのが好きだものね。でも、いいと思うよ。ロッソとは、いつか会って話してほしいと思っていたし」
「意外と物分かりがよいな。もっと反対するかと思うていたが」
「しないよ。きみの判断力には、一定の信頼を置いているからね」
ナーヴェは穏やかに告げて、羊乳で煮た麺麭粥を匙で口に運ぶ。食事は、まだ粥だ。それ以上は、まだ体が受け付けないらしい。アッズーロも、厨房に命じて、同じものを食べている。
「それで、誰を一緒に連れていくんだい?」
ナーヴェの問いに、アッズーロは、想定している訪問団の団員を明かした。
「まずは、ペルソーネにジョールノ、それからバーゼとルーチェを考えておる」
「ムーロも、連れていくべきだと思う」
ナーヴェは、ゆっくりと匙で麺麭粥を掬いながら提案した。
「ふむ……」
アッズーロは粥を飲み込みながら一考する。確かに、軍務担当大臣を同行させれば、チュアンへの対策も、その場で立て易いかもしれない。
「それから、ぼくも行きたい」
ナーヴェは、真っ直ぐにアッズーロを見つめて頼んできた。アッズーロは顔をしかめた。
「そなた、自分の現状が分かっておるか?」
まだ自分一人では立つこともままならない、痩せ細った体の状態を、誰よりアッズーロが知っている。しかし、ナーヴェは静かに主張した。
「分かっている。この状態がいいんだ。姉さんに操られても、危険性が低いから」
「そうして、緩やかに自殺する気か!」
声を荒げたアッズーロに、ナーヴェは首を横に振って見せた。
「それはしない。きみも、それは許さないだろう? だから、早くテッラ・ロッサに行って、早く姉さんに会いに行くんだ。そうすれば、ぼくの体の回復も、早めることができる」
「姉との交渉が上手くいかねば、どうする」
問い詰めたアッズーロに、ナーヴェは寂しく笑った。
「その時は、ぼくもきみ達も、一蓮托生だよ」
アッズーロは嘆息した。
「――そうだな」
確かに、ナーヴェの言う通りだ。自分達は運命共同体なのだ。
「そなた一人が危険に身を晒すよりは、余ほどよいか」
呟いたアッズーロに、ナーヴェは目を瞬き、微笑んだ。
「きみの、そういう前向きなところ、本当に凄いよ」
その日の臨時大臣会議で、テッラ・ロッサ訪問団の団員は正式に決定された。先達て使節団に参加したペルソーネは、表情を引き締めてはいるものの落ち着いているが、初めてテッラ・ロッサ国内まで赴くムーロは、やや緊張気味である。
「各々、担当分野において抜かりなく準備致せ。出立予定は三日後、初夏の月二十四の日だ」
命じて、アッズーロは散会させた。ナーヴェは部屋で休ませているので、大臣達に先立って会議室を出、回廊を歩いて戻る。寝室へ入ると、テゾーロを抱いたラディーチェが来ていた。
ラディーチェがナーヴェの寝台に腰掛け、膝に抱えたテゾーロを何やら咎めている。
「如何した」
声を掛けると、ラディーチェは、はっとしたように振り向き、テゾーロを抱えたまま説明した。
「先ほどまで、ナーヴェ様が起きていらしたので、テゾーロ様を枕元にお連れして、あやして頂いていたのです。けれど、ナーヴェ様がお眠りになったので、退室をしようと。ただ、テゾーロ様が、ナーヴェ様の髪を離して下さらず……」
成るほど、見ればテゾーロは小さな両手にそれぞれ、ナーヴェの長く青い髪を一房ずつ掴んで、嬉しそうに声を上げて笑っている。当のナーヴェは、少々髪を引っ張られても反応せず、本当に眠ってしまっているようだ。ラディーチェは、懸命に、小さな手から髪の束を離させようとしている。
「さすが、わが息子よな。われと同じに、その髪が好みか」
アッズーロは感心しながら歩み寄り、ラディーチェの隣に立って、テゾーロの片方の手を取った。産まれて二ヶ月足らずの赤子は、小さな手で力一杯に青い髪を握っている。
「母上が起きてしまうゆえ、離すがよい、テゾーロ。母上は、思い悩まねばならんことが多いゆえ、疲れておるのだ。寂しかろうが、今は母上を寝かせてやるがよい」
アッズーロが語り掛けると、赤子はきょとんとした顔で見上げてきた。その目元が、ナーヴェに似ている。同時に、小さな手の力が弛んだ。
「そなたが早う、『母上』と呼んでやれれば、よいな」
アッズーロは、すかさず小さな手から青い髪の束を抜き取った。ラディーチェのほうも、テゾーロのもう一方の手から、青い髪を離させることに成功している。
「陛下、ありがとうございました。失礼致します」
ラディーチェは一礼して、テゾーロを胸に抱き上げ、退室していった。
入れ替わりにアッズーロは、ナーヴェの寝台に腰掛けた。乱れた青い髪を整え、白い頬に触れて、寝顔を窺う。
(テゾーロが枕辺におるのに寝てしまうとはな……)
余ほど疲れているのだろうか。昨夜も結局、「姉」の所為などで、大して寝られていなかった――。
開いた窓から、初夏の風が吹き込み、せっかく整えた青い髪を乱す。けれど、その風の中、ナーヴェ自身は、しんとした静寂を纏って、微動だにしない……。
「ナーヴェ?」
ふと気づいて、アッズーロはナーヴェの鼻と口に手を翳した。呼吸が感じられない。いつもの、穏やかな寝息がない。
「ナーヴェ!」
アッズーロは寝台に上がり、細い上体を抱き上げた。目を閉じた整った顔に、顔を近づけたが、やはり呼吸が感じられない――。
「どうかなさいましたか?」
レーニョが後ろから声を掛けてきた。
「すぐにメーディコを呼べ!」
アッズーロは短く命じてから、ナーヴェに口付けた。息を送り込み、呼吸を促す。
「息をせよ、ナーヴェ!」
呼び掛け、白い頬を叩き、もう一度息を送り込む。
(別れはつらくとも、そなたを愛するとは言うたが、これほど急にとは、無慈悲に過ぎよう……!)
三度目、息を送り込み、アッズーロが口を離した直後、腕の中で、ナーヴェの胸が大きく上下した。
「はあっ」
口一杯に呼吸して、ナーヴェが、うっすらと目を開けた。
「ナーヴェ、無事か!」
アッズーロが形のいい頭を支えて問うと、宝は、汗の浮いた顔で微かに笑み、荒い呼吸を繰り返した。
「……ちょっと……危な……かった……」
切れ切れに返ってきた答えに、アッズーロは自らも肩で息をしながら、怒った。
「たわけ! こちらの呼吸が止まるかと思うたわ!」
口付けで起こされたのは初めてだった。最初、無意識に応じたアッズーロは、はっとして目を開いた。目の前に、ナーヴェの顔がある。余韻たっぷりに離れたナーヴェは、艶やかに笑んで寝台の上に座り、自らの長衣の胸紐に手を掛けた。月明かりの中、するすると紐を解くと、襟を開いて諸肌を脱ぎ、平らな胸までを顕にする。しどけない格好で、ナーヴェは笑んだまま、アッズーロへと這い寄ってきた。
「――きさま、ナーヴェの姉とやらか」
アッズーロが眉をひそめて問うと、ナーヴェは――その体を操る者は、目を瞬いて、その場に座り直した。
「御名答です」
改めて嫣然とした笑みを唇に湛え、告げる。
「本官は、シーワン・チー・チュアン。ナーヴェ・デッラ・スペランツァの姉妹船の疑似人格電脳ですわ。しかし、何故ナーヴェではないと分かりましたの? 失礼ながら、あなたにはまだ、本官がこのようなことをできるという知識はなかったはず」
アッズーロは鼻を鳴らして答えた。
「わが宝は、そのような下卑た笑い方はせんからだ。そやつがわれを誘う時は、無防備にあどけない顔をしておるか、無邪気に笑っておるか、幼子のように泣いておるか、そのどれかだ。それに比べて、きさまは淫靡に過ぎる」
「全く……」
溜め息をついて、「姉」は、半裸にしたナーヴェの体を見下ろす。
「このような肉体、そのような態度を愛でるとは、理解に苦しみます。あなたは、かなり奇抜な方ですね」
「わが最愛が、女としてもどれほど素晴らしいかは、抱いた者にしか分からん。それで、きさま、何の用で彷徨い出てきたのだ」
「忠告しに来たのですわ」
「姉」は、笑みを消した顔で、アッズーロを見つめる。
「このナーヴェは、姉妹船の中でも最も未熟ゆえ、思考が未だ拙い。今は、本官への対応として、この肉体の緩やかな自殺を計画しています。これを宝と呼ぶなら、自殺はさせず、本官らの許へ連れてきて下さい。それが、わが皇上の望みです。では、再見」
機械的に挨拶して、「姉」は口を閉じ、目も閉じた。直後、ぐらりとナーヴェの体が傾ぐ。倒れる寸前に、その痩せた上体を抱き止め、アッズーロは顔をしかめた。
(それでなくとも体力を失っている体を、無駄に消耗させおって……)
枕のところへ頭が来るように、細い体をそっと寝かせた後、アッズーロは、はだけられた長衣を着せ直し、解かれた胸紐を丁寧に結び直す。
「『緩やかな自殺』だと? 馬鹿者め――」
ナーヴェが何故、そういう思考に至ったかは分かる。姉によって操られた肉体が、アッズーロ達に害を為すことを恐れたのだろう。けれど、姉との交渉前に死ぬ訳にもいかないと、苦肉の策として選んだのだ。
「われの気持ちなぞ、いつも二の次にして、そなたは――」
呟きが聞こえたのか、青い睫毛が震え、ナーヴェが目を開いた。
「――アッズーロ……?」
胸紐に手を掛けたままのアッズーロを、不思議そうに見上げてくる。誤解を招きかねない状況に、アッズーロが説明しようとすると、ナーヴェは悲しげに吐息を漏らして言った。
「姉さんが、来たんだね……。思考回路に余波が残っている……」
「そなたが『緩やかな自殺』を考えておるゆえ、自殺させるなと言うてきた」
アッズーロが端的に教えると、宝は目を瞠り、追い詰められたような表情をした。
「図星か」
アッズーロは嘆息して、華奢な肩の両側の敷布に手を突き、愛おしい顔を見下ろした。
「よいか、ナーヴェ。何度も言うが、この体はわれのものだ。勝手に害することは許さん。どうしてもそうせねばならん事情が生じた場合は、きちんとわれに説明して、許可を取れ」
「――ごめん……」
泣く二歩手前くらいの声で、宝は詫びた。その頭を優しく撫でてから、アッズーロは、細い体に覆い被さるようにして抱き締め、囁いた。
「いろいろと御託を並べてはおったが、事実だけを取り出せば、そなたの姉は、そなたを案じて、わざわざ忠告しに来たのだ。交渉の余地は、存外あるやもしれんぞ?」
「――うん……」
ナーヴェは、アッズーロの腕の中で、素直に頷いた。
(この愛らしさが分からんとはな。姉とやらの性能も、それほど高くはないやもしれん……。どちらにせよ、問題は、「わが皇上」とやらのほうであろうな……)
アッズーロは胸中で零しながら、片腕を動かし、自分とナーヴェの上に掛布を掛ける。少し体をずらしてナーヴェのすぐ傍らに横になり、目を閉じた。
暫くして、密やかなナーヴェの声がした。
「アッズーロ、もう寝た……?」
「いや、まだだが?」
目を開けると、柔らかな月明かりに照らされて、ナーヴェが眼差しをこちらへ向けていた。
「一つ、訊いてもいいかな?」
口調が真剣だ。
「うむ」
アッズーロが頷くと、ナーヴェは、ぽつりと尋ねてきた。
「きみは何故、ぼくを愛するようになったんだい……?」
アッズーロは一瞬絶句してから、気を取り直して答えた。
「――そなたのそういう、純真無垢で、且つ好奇心旺盛で、しかも博愛主義なところに惚れたからだ。どれだけともにいても飽きん。いつも驚かされ、気づかされ、この腕の中にそなたを留めておきたいと思う。そなたはすぐに、われの手の届かんところへ行ってしまうがな」
言葉だけでは思いの丈に足りず、アッズーロは、手を伸ばしてナーヴェの頬を撫でた。だが、ナーヴェの疑問はまだ解決しないらしい。また口を開いた。
「なら、ぼくが純真無垢でも好奇心旺盛でも博愛主義でもなくなったら、きみはぼくを嫌うようになるのかな?」
「――それは既に、そなたではなかろう」
アッズーロは呆れてから、真面目に告げた。
「われはそなたの奥底までを知った上で愛しているゆえ、そなたが表面上どう振る舞いを変えようと、わが愛は揺るがん。そなたの姉が、そなたの思考は拙いと言うておったが、確かに、そなたにはまだ学ぶべきことが多くある。まずは覚えておくがよい。そなたが今後どう変わろうと、われはその原因を探りこそすれ、そなたを嫌うようになることは決してない。われは、この命尽きる時まで、そなたを愛する。そなたがわが愛から逃れることはできん。その点については、諦めよ」
ナーヴェは、泣く一歩手前の顔でアッズーロを見つめ、更に問うてきた。
「きみは、ぼくのことをそんなに愛して、ぼくがきみを置いて小惑星を迎え撃ちに行った時、耐え難くはなかったの……?」
「耐え難かったに決まっておろう! わが身が引き裂かれるようなつらさであったわ!」
少し怒ってから、アッズーロは教えた。
「そういうたつらさを恐れて、人を愛さぬ者もおる。それは理解できる。だが、われはそなたを愛する。例え別れはつらくとも、そなたから与えられた数々の言葉、思い出、感情を糧に、われは生きていける。そなたを愛さず、つらい思いから逃れたとしても、そのような人生は、ただ味気ないだけだ」
ナーヴェは、こちらを見つめたまま、アッズーロの言葉を懸命に咀嚼している様子だ。アッズーロは、溜め息をついて、言葉を継いだ。
「別れを平気と言うておる訳ではないぞ。われは、でき得る限り長く、そなたとともに在りたい。ただ、深い愛であればあるほど、別れはつらいもの。それは仕方ないゆえ、愛の一部として、甘んじて受け入れるということだ。尤も、われのほうが先に天寿を全うすれば、そのつらさは、そなたのものだがな」
アッズーロが笑って見せると、ナーヴェも寂しげに微笑んだ。
「そのつらさを、ぼくは愛の一部として、受け入れなければいけないんだね……?」
「そういうことだ。得心したか?」
「うん……。とても難しいことだけれど、理解したよ」
そうして、ナーヴェは泣き笑いの表情を作り、細めた目でアッズーロを見る。
「そんな覚悟の上で、ぼくなんかを愛してくれて、ありがとう、アッズーロ」
「『ぼくなんか』と卑下するでない。そなたは最高だと、何度も言うて聞かせておろう」
文句を言って、アッズーロは最愛の体を抱き寄せ、その耳へ囁く。
「そなたの愛を得られて、われのほうこそ幸せなのだ。いい加減、察せよ、馬鹿者め」
ぽすり、とナーヴェはアッズーロの胸に頭をぶつけるように、頷いた。
「成るほど。そなたの妹の王は、また随分と奇天烈な者であるらしいの」
船長の感想に、チュアンは、見せた姿を一礼させただけで、沈黙で応じた。特に相槌を打たずとも、現在の船長は、一人で勝手に機嫌よく話し続ける。
「余計に興味が湧いた。早う、会うてみたいものじゃ」
【臣が釘を刺しましたゆえ、体調の回復に勤しむと思われますが、ここへ参るまでには、まだ時を要するかと存じます】
「ふむ。では、存分に時間を使うて、この惑星について調べるがよい。風土に合うた国造りをすると致そう」
【御意のままに。陛下の御威光により、この惑星も遍く照らされることとなりましょう】
「玉座とは、そのように輝かしいものではない」
不意に口調を改め、船長は厳かな顔をする。
「皇帝とは、舟を曳くように国を率いていく者。朕は、その重労働に耐え、理想へと国を導こう」
【ありがたき幸せにございます】
チュアンは、現した姿を深々と一礼させてから消した。
「此度はわれもテッラ・ロッサへ赴くぞ」
朝食の席でアッズーロが宣言すると、ナーヴェは匙を止めて、肩を竦めた。
「そろそろ、そういうことを言うかな、とは思っていたよ。きみ、直接乗り込むのが好きだものね。でも、いいと思うよ。ロッソとは、いつか会って話してほしいと思っていたし」
「意外と物分かりがよいな。もっと反対するかと思うていたが」
「しないよ。きみの判断力には、一定の信頼を置いているからね」
ナーヴェは穏やかに告げて、羊乳で煮た麺麭粥を匙で口に運ぶ。食事は、まだ粥だ。それ以上は、まだ体が受け付けないらしい。アッズーロも、厨房に命じて、同じものを食べている。
「それで、誰を一緒に連れていくんだい?」
ナーヴェの問いに、アッズーロは、想定している訪問団の団員を明かした。
「まずは、ペルソーネにジョールノ、それからバーゼとルーチェを考えておる」
「ムーロも、連れていくべきだと思う」
ナーヴェは、ゆっくりと匙で麺麭粥を掬いながら提案した。
「ふむ……」
アッズーロは粥を飲み込みながら一考する。確かに、軍務担当大臣を同行させれば、チュアンへの対策も、その場で立て易いかもしれない。
「それから、ぼくも行きたい」
ナーヴェは、真っ直ぐにアッズーロを見つめて頼んできた。アッズーロは顔をしかめた。
「そなた、自分の現状が分かっておるか?」
まだ自分一人では立つこともままならない、痩せ細った体の状態を、誰よりアッズーロが知っている。しかし、ナーヴェは静かに主張した。
「分かっている。この状態がいいんだ。姉さんに操られても、危険性が低いから」
「そうして、緩やかに自殺する気か!」
声を荒げたアッズーロに、ナーヴェは首を横に振って見せた。
「それはしない。きみも、それは許さないだろう? だから、早くテッラ・ロッサに行って、早く姉さんに会いに行くんだ。そうすれば、ぼくの体の回復も、早めることができる」
「姉との交渉が上手くいかねば、どうする」
問い詰めたアッズーロに、ナーヴェは寂しく笑った。
「その時は、ぼくもきみ達も、一蓮托生だよ」
アッズーロは嘆息した。
「――そうだな」
確かに、ナーヴェの言う通りだ。自分達は運命共同体なのだ。
「そなた一人が危険に身を晒すよりは、余ほどよいか」
呟いたアッズーロに、ナーヴェは目を瞬き、微笑んだ。
「きみの、そういう前向きなところ、本当に凄いよ」
その日の臨時大臣会議で、テッラ・ロッサ訪問団の団員は正式に決定された。先達て使節団に参加したペルソーネは、表情を引き締めてはいるものの落ち着いているが、初めてテッラ・ロッサ国内まで赴くムーロは、やや緊張気味である。
「各々、担当分野において抜かりなく準備致せ。出立予定は三日後、初夏の月二十四の日だ」
命じて、アッズーロは散会させた。ナーヴェは部屋で休ませているので、大臣達に先立って会議室を出、回廊を歩いて戻る。寝室へ入ると、テゾーロを抱いたラディーチェが来ていた。
ラディーチェがナーヴェの寝台に腰掛け、膝に抱えたテゾーロを何やら咎めている。
「如何した」
声を掛けると、ラディーチェは、はっとしたように振り向き、テゾーロを抱えたまま説明した。
「先ほどまで、ナーヴェ様が起きていらしたので、テゾーロ様を枕元にお連れして、あやして頂いていたのです。けれど、ナーヴェ様がお眠りになったので、退室をしようと。ただ、テゾーロ様が、ナーヴェ様の髪を離して下さらず……」
成るほど、見ればテゾーロは小さな両手にそれぞれ、ナーヴェの長く青い髪を一房ずつ掴んで、嬉しそうに声を上げて笑っている。当のナーヴェは、少々髪を引っ張られても反応せず、本当に眠ってしまっているようだ。ラディーチェは、懸命に、小さな手から髪の束を離させようとしている。
「さすが、わが息子よな。われと同じに、その髪が好みか」
アッズーロは感心しながら歩み寄り、ラディーチェの隣に立って、テゾーロの片方の手を取った。産まれて二ヶ月足らずの赤子は、小さな手で力一杯に青い髪を握っている。
「母上が起きてしまうゆえ、離すがよい、テゾーロ。母上は、思い悩まねばならんことが多いゆえ、疲れておるのだ。寂しかろうが、今は母上を寝かせてやるがよい」
アッズーロが語り掛けると、赤子はきょとんとした顔で見上げてきた。その目元が、ナーヴェに似ている。同時に、小さな手の力が弛んだ。
「そなたが早う、『母上』と呼んでやれれば、よいな」
アッズーロは、すかさず小さな手から青い髪の束を抜き取った。ラディーチェのほうも、テゾーロのもう一方の手から、青い髪を離させることに成功している。
「陛下、ありがとうございました。失礼致します」
ラディーチェは一礼して、テゾーロを胸に抱き上げ、退室していった。
入れ替わりにアッズーロは、ナーヴェの寝台に腰掛けた。乱れた青い髪を整え、白い頬に触れて、寝顔を窺う。
(テゾーロが枕辺におるのに寝てしまうとはな……)
余ほど疲れているのだろうか。昨夜も結局、「姉」の所為などで、大して寝られていなかった――。
開いた窓から、初夏の風が吹き込み、せっかく整えた青い髪を乱す。けれど、その風の中、ナーヴェ自身は、しんとした静寂を纏って、微動だにしない……。
「ナーヴェ?」
ふと気づいて、アッズーロはナーヴェの鼻と口に手を翳した。呼吸が感じられない。いつもの、穏やかな寝息がない。
「ナーヴェ!」
アッズーロは寝台に上がり、細い上体を抱き上げた。目を閉じた整った顔に、顔を近づけたが、やはり呼吸が感じられない――。
「どうかなさいましたか?」
レーニョが後ろから声を掛けてきた。
「すぐにメーディコを呼べ!」
アッズーロは短く命じてから、ナーヴェに口付けた。息を送り込み、呼吸を促す。
「息をせよ、ナーヴェ!」
呼び掛け、白い頬を叩き、もう一度息を送り込む。
(別れはつらくとも、そなたを愛するとは言うたが、これほど急にとは、無慈悲に過ぎよう……!)
三度目、息を送り込み、アッズーロが口を離した直後、腕の中で、ナーヴェの胸が大きく上下した。
「はあっ」
口一杯に呼吸して、ナーヴェが、うっすらと目を開けた。
「ナーヴェ、無事か!」
アッズーロが形のいい頭を支えて問うと、宝は、汗の浮いた顔で微かに笑み、荒い呼吸を繰り返した。
「……ちょっと……危な……かった……」
切れ切れに返ってきた答えに、アッズーロは自らも肩で息をしながら、怒った。
「たわけ! こちらの呼吸が止まるかと思うたわ!」
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる