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旦那様の寝起き
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しおりを挟む壁に貼られている、この屋敷で過ごしている組員さんの朝ごはんの有無を見ながら俺は家政夫として準備をしていく。
ほかほか炊き立ての白米に、今朝は大根と油揚げのお味噌汁。それと大根おろしを皿の端に乗せて、だし巻き玉子とほうれん草の和え物を一枚のお皿に乗せて、お盆に一人分ずつ乗せていく。
あとはお好みで海苔の佃煮やらちりめん山椒なんやらふりかけを数種類、お座敷の机に醤油とかと一緒に用意しておけば一通り準備は終わる。
お座敷では咲良が良い子でテレビを見ていたけれど、俺が机を拭き始めると自分がやると言って鼻息を荒くしていた。
「じゃあ、机の端から端まで綺麗に拭いてくれる?」
「はい!」
元気よく返事をした咲良は短い手を一生懸命に伸ばし机の端から端まで、体全体を使って拭いていく。けれど、大の大人が何人も座る机の真ん中は咲良の体じゃどうしても手が届かなくて拭けない。
「ふっ…ぐぐっ…」
「…咲良、兄ちゃんが拭こうか?」
「さくらがやるの!にいちゃはおしごとしてて!」
舌足らずな、少し怒っているようにも聞こえる声に俺は笑うのを堪える。
どうしたもんか、と咲良の様子を見ているとぺたぺたと足音が聞こえた。
「ふぁ…はよーっす…」
「依鶴さん、おはようございます」
「…咲良何してんの?」
「気合い入れて机を拭いてる所です」
困ったように笑う俺と、くしゃくしゃになってしまった布巾を握り締めて机を拭いている咲良を交互に見た依鶴さんは小さく笑い、咲良の隣に腰を下ろした。
「咲良、えらいじゃん。にーちゃんの手伝いしてんのか?」
「うん!にいちゃのおしごとがはやくおわれば、にいちゃもみんなとごはんたべれるでしょ?」
「咲良…!」
咲良の言葉に依鶴さんが口を押さえる。
俺も思ってもみなかった咲良の言葉に嬉しさとどこか恥ずかしさが混じり、変な笑い方をしてしまう。
「咲良、ありがとうな」
「うん!」
「よーし、じゃあイーウェンさんが手伝ってあげる~」
「わっ、い、イーウェンさんいつの間に…」
「え?わりと最初から~」
ケラケラと笑う、こののんびりとした喋り方をする中国系のこの人はイーウェンさん。
イーウェンさんは咲良をひょいっと抱き上げると、咲良一人じゃ手の届かなかった真ん中辺りを拭かせてくれた。
え、ていうかわりと最初からって、イーウェンさん全然気配なかったよな?
ウィーッとなんだか楽しげな咲良とイーウェンさんに、俺は深く考えるのをやめて朝ごはんを用意していく。
「今朝は大根の味噌汁か」
「この前大きい大根が安かったのでたくさん買っちゃいました」
まだ朝なのに、もう晩御飯はどうしようかなーなんて考えながら依鶴さんのご飯を装っていると、続々と人が起きてくる。
壁に貼られていたイーウェンさんお手製ホワイトボードに組員さんの朝ごはん有無からは、用意したお盆を持って次々に済へとマグネットが移動していく。
皆が朝ごはんをテレビを見ながら食べている中、一人足りない。ホワイトボードには旦那様の所から動いていないマグネットが。
「…あれ、旦那様がまだなのかな?」
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