日本が本気を出した時

九戸 祐樹

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外交官 芳野久志編

1,公使館派遣

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 反日を根底とした朝鮮半島統一国家である高麗連邦の建国により、日本では大使館の在り方に異議を唱える者が多かった。結果として、在韓大使館を撤退させ、在高麗使館を置くことになった。そして、初代公使には元東京大学教授の前川氏が任命された。
 私はその主任補佐官として、前川氏とともに日本と高麗連邦と摩擦を少しでも和らげるため、またの際に適切に対応するために高麗連邦へと乗り込むことになった。
 この国の極端な反日政策には目を見張るものがあり、経済制裁の対象国である二か国の統一政府に対して、日本政府が制裁を加えるという方針であることに変わりはなかった。それに対抗するように、高麗内でも日本製品の締め出しや廃絶など国民感情はさらに過激化していった。
 公使館配属にあたり、高麗大統領府へ就任のあいさつに向かった。公使館を出て、数キロ進んだ先にある元韓国大統領府をそのまま引き継いだ高麗連邦大統領府の門前には韓国旗と北朝鮮旗、そして竹島を含む朝鮮統一旗が風になびいていた。
 大統領府に入り、危険物の持ち込みが無いかの検査を終えると、「ここでお待ちください」と言って応接室に通された。
 それから15分ほど経ち、高麗政府外相の李翼氏が入室し、あいさつを交わした後、潘陸首相、閔仁大統領と対面しそれぞれあいさつした。私も高麗政府の外交官と最初の外交ルートや在高麗の邦人などの情報提供に関する打ち合わせを行った。その中で、大学時代の同期で友人だった留学生の金君とも再開することができた。彼は、帰国後日本留学経験を活かして、外交部に入り、主に日本方面を担当していた。今後の外交ルートもほとんどが彼を通じてのことになりそうだ。
 あいさつ周りが終わり、公使と共に公使館に帰る道中、至る所で反日デモ活動が行われているのが確認できた。
 その理由は、やはり経済制裁によるものが大きかった。元々半導体による経済効果が国内の約20%を占める高麗連邦では、その半導体生産のための原料を日本から輸入するしかないが、半導体の原料であるフッ化水素は核兵器にも必要なため韓国への輸出は「制限」に留めていたが、現在、対高麗連邦に対しては輸出禁止になっている上、中国内の半導体メーカーの勢力が強まってきた影響で隣国からの原料供給も期待できなかった。さらに、国内でのフッ化水素生産を試みるも失敗し、人体や環境に莫大な影響を与えた。こうしたことから、連邦内の経済は衰弱しきっていた。
 公使館前では連日、制裁抗議に加え、慰安婦や徴用工問題に対するデモ活動が起こり、公使館内の安全対策に関する議論も日本公使館警備部を中心に行われている。
 あいさつ周りの三日後、早速高麗連邦の外交部から一本の電話が入った。
「高麗政府は貴国公使に午後三時までに出頭するよう要請する。」
 そう言うと、すぐに電話が切れた。仮にも一国を代表する公使に対しての態度ではなかった。
 確認もかねて、数回大統領府に連絡を入れるも応答はなく、金君を通じて外交部に連絡を取ると、竹島に関する遺憾表明を行うとのことだった。
 日本政府に連絡を入れた後、私と公使、それに通訳と護衛数人で大統領府に向かった。
 大統領府到着後、前回同様に持ち物検査を済まし、応接室へと向かった。応接室には先に李外相と金君を含む外交官数名が待機していて、あいさつを交わした後、すぐに本題に入った。
「貴国の航空自衛隊機による独島(竹島の高麗名)付近の上空を飛行したことに遺憾の意を表明します。」
 前川氏はそれに対して、
「貴国の主張は聞き入れますが、竹島は日本固有の領土であり、我が国の自衛隊機が飛行するのに何ら問題ない行為であると私は認識しております。」
と主張した。すると李氏は「こちらからの遺憾表明は以上です。」と言って応接室を後にした。
 その後、公使も一足先に退出し、公使と李外相を除く両国外交官数名で詳細情報の交換に入った。
「我々日本政府は、今回の件について竹島は自国領土であり、航空自衛隊は自国領空を飛行したに過ぎないと認識しています。」
「高麗政府としては、独島に日本領という法的根拠はなく完全な領空侵犯と考えています。」
 そういった、マニュアル通りの茶番ともいえる会談は約二時間で解散となった。
 この時、高麗連邦の真の狙いはまだ、日本政府の一部の人間しか知らなかった。
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