強がりな君と泣き虫な僕。

白猫

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僕と君。

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次の日、学校に行くと予想と反していつも通りだった。

僕に声をかける人もい なければ、僕から声をかけることもない。彼女に声をかける人もいれば、彼女から声をかけている。

正反対の僕等の昨日の出来事は、まるで夢だったかのように僕等の生活に支障をきたさなかった。

その事が逆に気持悪くてつい、彼女は僕の弱み(で、いいよな?弱みってほどではないけど、あまり知られたくなかったことだし…)を握っているという事実を持ち上げて、僕になにかもっと凄いことを要求するんじゃないか…。なんて、疑心暗鬼も程々な考えを本気で考えていた。

そんな考えを思いついた僕はやっぱり小説の読みすぎなのかもしれない。

でも、それほど気持悪くて落ち着かなかったと言うことを理解してほしい。けど、そんな気持ちと裏腹に心の底でホッとしている僕もいた。平穏な日々を崩されなくて済んだという事実に密かに胸を撫で下ろした。













時はどんどんと過ぎていき、ついに今は放課後真っ最中。
僕は昨日の件を繰り返さないように、即座に荷物を持って帰ろうとしたが、その瞬間彼女…花咲さんに呼び出された。
僕は、不安な気持ちを悟られないように呼び出され場所に向かう。
通りなれた道を1人で歩くのは慣れていたはずなのに、得体もしれない感情が湧き出てきて何度も立ち止まる。
こころなしか、歩く速度もいつもより遅い気がする…。
それでも、やっとのこさ待ち合わせ場所についたらまだ花咲さんは、来ていなかった。
そこで初めてふー…と、細く長い息を吐く。
そして、自然と汗ばんだ手のひらをゆるめて開いた。この動作で、いつの間にか強く手のひらを握りしめていたことに気づく。

自分でも、思った以上に緊張しているみたいだ…

なんて、客観的に自分を見ていた自分がいることに気づくと何故か、さっきよりも少しだけ安心できた。

待ち合わせ時間も過ぎ、忘れてるのかな…?と疑問と少しの安心、ドタキャンされた(一方的に言われただけだけど…)という怒りを感じ出した頃だった。

ザッ…ザッ…と、土を蹴る音が聞こえたと思ったら曲がり角から呼吸を少し荒くした花咲さんが出てきた。

そして、僕の前まで来るとハァ~…とながく息を吐いて

「ごめんっ、待たせたっ!」

と言った。そして、そのまま膝に手をついて何度か肩を大きく上下させるように呼吸を整えている。

まだ、呼吸が荒い花咲さんを見ると僕はさっきまでの怒りやら安心やらの感情が消えていくのを感じた。

そして、さっきまでのすべての感情がなくなった後僕の中に新たに湧き出てきた感情は…

"驚き"と、"信じられない"という感情だけだった。

なんで?どうして?

僕の中で疑問が貯まる。

なんで?どうして?

「ホンットに、ごめんっ!結構待たせちゃったな…なかなか、ミーティングが終らなくて…」

申しわけなさそうに、顔の前で手を合わせながら僕に謝ってくる花咲さん…

なんで?どうして?

「それで、本題なんだけど…ちょっと、月永聞いてる?」

まゆをひそめて、僕に問いかけてくる花咲さん…

なんで?どうして?

なんで?どうして?

「…んで?どうして?」

僕でさえなんて言ったか分からないほどの…いや、声が出ていたのかさえ分からないほどの掠れた声が僕の口から出てきた。

自分で言ったくせに、自分で驚いて慌てて片手で口を塞ぐ。

「え、ごめん。なんて言った?聞こえなかったんだけど…」

目の前で花咲さんが、聞いてきた。

「…うぁ、……えぇと、……ご、ごめんっ!僕帰るから!用事があるんだ。またねっ!」

ジリジリと後退しながらも答えようとしていたけど、やっぱり耐えきれなくなって僕は目眩がしそうなほど速く来た道を振り返ると、花咲さんを置いて走って逃げた。

なにか、言い訳みたいのが口に出た気もするけどそんなことも覚えていないほど、がむしゃらに走った。

普段から運動はあまりしないからか、何度も足がもつれて転びそうになるが、それでも足を止めることが出来なかった。

背中から聞こえる花咲さんの声に答えることも、振り向くことも出来なかった。

無我夢中で走っていたら、気づくと家の前。

僕は息を整えるとさっきまでの出来事は夢だったんだ。

と、完璧に有り得ない現実逃避をした。

有り得ないなんて、わかっているのに…

事実だって、わかっているのに…

"夢"だと自分に言い聞かせると、納得した反面、胸がキュッと締め付けられた。

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