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1巻
1-3
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「なに情けない顔をしてるんだい。ほらほら。いつまで掻き混ぜてるつもりだい。それじゃあ粒の食感が台無しになっちまうだろう」
「は、はいっ」
でき上がったジャムは、熱いうちに瓶に詰め、もう一度、瓶ごと湯煎にかけて真空状態にしたら完成だ。
「休んでる暇なんかないよ。明日もたくさん色づくはずだからね。はい、次だよ」
「はい!」
向こうの世界――。魔女の魂は妖精の世界とこっちの世界に半分ずつ。魔女が命の限りを尽くしたとき、妖精王が魂の半分を迎えに来ると言われている。残された半分は石となり、次の代の魔女へと手渡される。
セツの首にも小さな柘榴石がある。石の種類は様々で、生前の魔女の性質によって変化するという。今の結と同じように、セツにも魔法を教えてくれた魔女がいたのだ。
あと一年もしないうちに、結は進路を決めなければならない。
マフィンの焼ける匂いと、ジャムの甘ったるい匂い。
手元に夕暮れの濃い影が落ちてきた。じっと見ていると、呑み込まれそうになる。
遅い夕食は、夏野菜の天ぷらと冷奴。豆腐にはトマトを刻んだ中華風のタレがかけてあり、日頃豆腐なんておかずにならないと思っていた結でもおかわりしたいほどだった。作ったのはセツと慧だ。もちろん、天ぷらがセツで、慧は冷奴。明日からは結も手伝う。
それにしても気まずい。セツの家には気まずさを紛らわせるテレビがない。扇風機が温い風を掻き回す中、三人とも無言のまま黙々と箸を動かしていた。
セツと二人だけなら、家族のことや学校のことを話すのだが、なんとなく話題にするのもはばかられた。たった一人、知らない人間がいるだけでこんなにも空気が変わるなんて……。もぐもぐと口を動かしながら、結は斜向かいにいる慧をちらりと盗み見た。
「ごちそうさまでした」
先に食べ終えた慧が、茶碗を下げに立つ。結は耳を全開にしながら、ギシギシと軋む足音が台所へと行ったのを確認すると、大きな溜息を吐き出した。
「なに緊張してるんだい」
「き、緊張なんてしてないよっ」
セツに図星を指されて、慌てて返す。
セツはふんと鼻を鳴らすと、急須に残っていたほうじ茶を茶碗に注いだ。昔からセツは食べ終わった茶碗にお茶や湯冷ましなどを注いで飲む。こうすると茶碗にこびりついたご飯粒がきれいに取れるのだ。セツは箸でご飯粒をこそぎ落とすと、中のお茶をご飯粒もろとも飲み干した。さてと、とセツが立ち上がる。
「明日の朝は安西さんが来るからね。おまえさんもちゃんと支度をしておくれ」
「はい」
安西さんというのは、この辺りの農家から集めた野菜や果物を売っている直売所の店長だ。セツの野菜に惚れ込んで、是非うちの直売所にと声をかけてくれたのが安西だ。安西の奥さんは現在妊娠中で、セツの野菜がないと夜も日も明けないと豪語している大ファンでもある。畑で採れた野菜は八月一日の名前で出荷され、瞬く間に売れてしまう。同じ野菜でも、セツの畑で採れたものは、味が格段に違うのだ。
一人残された茶の間は急に広く感じた。身じろぐ音がやけに大きく響く。子どもの頃からまるで変わらない部屋。畳の匂いに混じるかすかなお線香の香り。やさしかった祖父の遺影が飾られた仏壇。遺影に写る祖父の笑顔も変わらない。
けれどカレンダーの年号は令和を迎え、確かに時は刻一刻と過ぎていく。変わらないものなどないのだ。自分もこのままではいられない。なのに、ずっと同じ場所に佇んだままだ。
裏の林が風に揺れる葉ずれの音に混じり、夜鷹の声が聞こえた。
月の出ない夜は長く、先の見通しは闇に隠れてまるで見えない。
赤いトマトと緑のトマト
……眠れない。
結は何度目かの寝返りを打つと、胸のつかえを吐き出すように溜息をついた。
住宅街にある結の家とは違って、山の中にあるこの家は、日中の暑さが嘘のように朝晩は涼しい。障子戸を少しだけ開け、肌掛けをかけて横になる。どの部屋もすだれが垂れているだけで窓は全開。もちろん鍵なんかかけていない。泥棒の心配をする必要は皆無で、第一盗られて困るものもなにもない。田舎ならではの暢気さだ。草陰からジージーと虫の声が聞こえる。
祖母と自分の他にもう一人の存在がいる。それがなぜこんなにも気になるのかわからない。わからないけど気になる。堂々巡りだ。
「あーっ! もー、無理!」
結はすでに丸まっている肌掛けを蹴飛ばすと、むくりと起き上がった。こんな状態じゃ眠れるわけがない。
「……喉渇いた」
畳に敷いた布団の上に座り込んだ結は、寝るのを諦めた。障子戸を開けて部屋を出る。向かいのセツの部屋は灯りが落ちて、すっかり寝静まっている様子だ。
結は時々ギシッと軋む縁側を抜けて台所へ向かった。台所には昼間のベリーと砂糖の甘い匂いが残っている。
「アイスは……、やっぱないよねー」
冷蔵庫の中身を物色したところで、あるのはいくつかの野菜と晩御飯で残った惣菜。けれど、結の目的は別のものだ。
「あった。これこれ!」
レモンシロップの瓶を発見した結の頬は、にんまりと緩んだ。黄金色のレモンシロップは、冬の間に収穫されたレモンをたっぷりの蜂蜜で漬けたものだ。レモンも自家製なら、蜂蜜も一〇〇パーセント天然もの。希少な日本ミツバチの蜂蜜は、ミツバチたちから少しずつ分けてもらったものだ。
「あ。炭酸水がある」
珍しいこともあるものだと思いながら、思わぬ発見にホクホクしながらコップにシロップを注いだ。いい匂い。そこへ炭酸水を入れる。プシュッとガスの抜ける音。しゅわしゅわと弾ける泡にうっとりしていると「美味そうなもん飲んでるじゃねえか」と低い声がして、結の心臓は跳ね上がった。
「ひいぃっ!」
「ふーん」
慧はシンクの上のレモンスカッシュを見ながら、ずかずかと近づいてくる。
「な、な、なによっ」
びっくりして全身の毛穴が開いたと思う。バクバクと口から飛び出してきそうな心臓を押さえ、思わず身構えた。
「それ」
慧は長い腕をシンクへと伸ばし、結を囲うように閉じ込めた。
慌てたのは結だ。精一杯身体を小さくし、それでもしっかりレモンスカッシュは離さない。離してたまるもんですか!
「俺のなんだけど」
「へ?」
結はきょろきょろと目を泳がせた。
「お、俺の……?」
「炭酸。あーあ。せっかくソーダ割りにして飲もうと思ってたのに」
ソーダ割り?
「今作ったけど……」
「バーカ、違うっての。ったく、これだからお子さまは」
むっ。むむむっ、と結の眉間に皺が寄る。前言撤回! やっぱり慧とは相性が悪い!
「ちゃんと名前書いておかないのがいけないんでしょ」と反撃はするものの、勝手に飲んだ自分も悪いかなと思った結は、むっとしながら慧のレモンスカッシュを作り始めた。
作ればいいんでしょ、作れば。ちょっとくらいいいじゃん。ケチ。ケーチケーチ! と胸の内で悪態をつきながら「邪魔」と、慧の胸をぐいっと押してようやく抜け出した。結より頭一つ半ほどは大きい長身の慧に近づかれるだけで、圧迫感を覚えてしょうがない。
氷を浮かべると、炭酸の弾ける音がした。シロップ多めの、少し甘いレモンスカッシュ。
「はい、どうぞ」
結は腕を組みながら偉そうに突っ立っている慧の手に、コップを押しつけた。これで貸し借りなしだ。
結はレモンスカッシュを手に、縁側へ移動することにした。途中、玄関で寝起きしているタフィーが結の気配に気づいて頭を上げる。
「いいよ、タフィー。寝てて」
タフィーは耳を動かしたが、言葉を理解したように再び寝る体勢に戻った。
外は十六夜の月明かりに照らされていて、ずいぶんと明るい。結は蚊取り線香を引き寄せると指先を近づけた。ぽう、と小さな火が生まれ、煙がたゆたう。これくらいの魔法なら朝飯前だ。
縁側に腰を下ろし、沓脱石にあったサンダルを引っかける。レモンスカッシュをひと口。
「美味しー」
小さな幸せに浸っていると、ギシリとすぐ隣の床がへこんだ。慧がコップを片手に結の隣に座る。
うわ。なんでこっちに来るのよっ。パーソナルスペースが狭い。結はレモンスカッシュをちびちびと舐めながら、もぞもぞとおしりで距離を取った。
「確かに美味いな」
カラン、と氷の澄んだ音を立てながら、慧は思わずといった体で呟いた。
「でしょ? おばあちゃんのシロップは世界一なんだから」
自分が作ったわけでもないのに、鼻高々に自慢すると、慧が「くっ」と喉の奥で笑った。
「……なに?」
「いや。案外素直だなあと思って。おまえ、ばあちゃん子だろ」
「わ、悪い?」
褒められると、嬉しいのに反対の言葉が出る。これじゃあ全然素直じゃないと思いながら、照れ隠しもあって唇を尖らせた。
「先生から聞いた。魔女の血は祖母から孫へと伝わるんだって?」
「そう……だけど」
「いいよな。血だけでそんな力が手に入るなんて」
血だけで――。
もちろんそれは大前提だが、それだけで魔女になれるわけでは決してない。代々口承だけで受け継がれてきた言の葉。もしどこかひとつでも間違えようものなら、そこで言の葉は消えてなくなる。ひと言ひと言を大切に守ってきたからこそ、魔女の血は次の代へと伝えられてきたのだ。まるでなんの努力もしていないみたいな言われように、結はむっとした。
だからと言って、いちいち弁明するつもりもない。わかってもらおうなんて思ってなかった。これは魔女だけが知り得ることだから。
「あんただって大臣の息子なんでしょ? なのにどうしてこんなとこで下働きの真似ごとなんてしてるのよ」
「大臣の息子か……」
ふっと鼻だけで笑う。形のいい唇の端を引き上げ、自嘲するような笑みを浮かべる。
「周りは皆そう言うよ。本妻の息子が死んでからは」
「え」
「俺は親父が外に作った子どもなんだ。愛人の子? まあ、そういうこと」
慧は一瞬だけ結を見ると肩を竦めた。
「母親と妹と三人で暮らしてた。妹もさ、父親が違うんだ。けど、そんなことどうでもよかった。すっげえ可愛くて、いっつも俺の後くっついてきて」
遠く、懐かしむような視線。
「俺の家族はあいつだけだった」
ぽつりと落ちた言葉は、夜の闇の中へと吸い込まれていく。
「母親は一人で生きていけないタイプの女でさ。いつも男をとっかえひっかえしてた。俺の中学の入学式のときも、男と出ていったきり帰ってこなかった」
中学生になったばかりの慧の姿が目に浮かぶようだった。まだ少年の、柔らかくて傷つきやすい心を持った慧が、ぽつんと佇む姿。
「そのとき、親父の秘書だっていうやつが現れた。親父は、本妻の息子が留学先の事故に巻き込まれて死んだとかで、急に俺を思い出したらしい。実の息子が死んで二日後だ。葬式も済んでないってのに、あいつの頭の中にあるのは跡取りのことだけだったんだ」
ギリッと奥歯を噛みしめる音がした。
「俺は入ったばかりの中学をその日のうちに辞めさせられて、私立の中学に転校させられた。それからだ。周りは俺を大臣の息子って呼ぶようになった」
コップを傾けた慧の喉仏が上下に動く。
「まあでも、俺もほいほい言うことばっか聞いてるつもりなんてなかったからな。妹の資金援助と交換に、大臣の息子でいることを受け入れることにしたんだ。それならフェアだろ?」
血……。親子の血。家族の血。魔女の血。
望むと望まざるとにかかわらず、否応なくついて回る呪い――。
「……それでいいの?」
それでいいのだろうか。両手で包み込んだコップの中には、すっかり小さく溶けた氷の欠片が、ゆらゆらと浮かんでいる。結が考え込んでいると「なーんつって」と笑いを含んだ声がした。意地悪く口端を吊り上げた慧が結を見ている。
「信じた?」
「……は?」
「やっぱ信じたかあ」
くつくつと笑う慧に、結は口を小さく開いたまま絶句した。まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔に、慧はぶっと噴き出す。
「残念だけど、俺は正真正銘親父の息子だから。大臣の息子、大いに結構。将来は安泰だ」
はあ? どういうこと? もしかして今の話は全部嘘?
気持ちが沈んだのは一瞬で、怒りが間欠泉のごとく噴き出してきた。一瞬でもいいやつかも、なんて思った自分を殴り飛ばしたい!
「あのねえ!」
絶句していた結がようやく口を開くと、慧はよっと勢いをつけて立ち上がった。
「おまえ、進路に悩んでるんだって?」
ぐっと言葉に詰まった。
「……ずるいよな、魔女の血とか」
「え?」
「そんな奇跡みたいな力、どれだけ願っても手に入らない」
慧の視線の先には、ふわりふわりと小さな光が浮かんでは消えていた。庭の先に流れる清流に住む蛍だ。
慧はぽかんと口を開けたままの結に気づくと、きまり悪そうに視線を逸らした。コップに残ったレモンスカッシュを飲み干すと、ガリガリと氷を噛み砕く。
「お子さまは早く寝ろよ」
そう言ってくるりと背を向けると、足音を立てながら台所へと消えていった。
奇跡みたいな力――。
慧は奇跡を起こしたいと願っているのだろうか。だけどおばあちゃんは慧の願いを叶えるつもりはなさそうだ。慧は奇跡と言ったけれど、私にとっては奇跡なんかじゃない。現実なんだよ。
「痛……っ」
ちくん、とくるぶしに痛みを感じて見ると藪蚊だった。ぱちんと叩いたところで、もう遅い。明かりに照らされて、噛まれた痕は見る見る赤く腫れ上がってくる。
「もお、なんなの!」
風に揺れた風鈴が、チリンと鳴った。
チャカシャカシャカシャカ。軽快な音楽がスマートフォンから流れ出る。
「んーあー」
ペタペタと手だけが音源を探して泳ぎ、探り当てると目覚ましを切った。上と下がまだ貼りついている瞼を無理やりこじ開けて「四時……」と唸る。カッコウや野鳥のさえずりに耳を澄ませながら三十秒……のつもりが、再び意識が遠退きそうになり、結はガバッと跳ね起きた。
「うわっ、ヤバ!」
周りを囲む山や森にも、乳白色の靄が立ち込めていた。群青色の空にはまだ小さな星が瞬いていたが、やがてはそれも消えるだろう。山の裾野はうっすらと茜色に染まっていた。もうすぐ日の出だ。
夏の朝は早い。昨日まで青かったトマトは真っ赤に熟し、小さかったキュウリはにょきにょきと伸びている。ナスにカボチャ、とうもろこし。朝露にきらめく畑の恵みは、町の直売所のトラックが引き取りにやってくる。セツの作った農作物は、甘みが強く美味しいと評判で、八月一日と生産者名が記された野菜は、飛ぶように売れてしまう。
清々しい空気。澄んだ青空。まだ太陽が顔を出して間もない早朝五時。
「ウォン!」
タフィーがしっぽを振りながら真っ先に駆け寄ってきた。
「おふぁー」
年頃の女子高生とは思えない大欠伸をしながら、タフィーの頭を撫でて挨拶をする。
「後で遊ぼうね」
結の言葉に、タフィーは「ウォンウォン!」と二回吠えてくるりと回った。
そんなタフィーを引き連れて、結は家の裏にある物置小屋へと向かった。あった。三輪車だ。三輪車といっても子どもの乗り物ではない。収穫した野菜を運ぶための、タイヤが三つついている運搬車のことだ。そこに、野菜を入れる籠をいくつか載せて畑に向かう。結の先を歩いていたタフィーは、ふんふんと土の匂いを確かめると駆け出した。
タフィーには毎日の日課がある。彼はこれから、畑と家の周囲をパトロールしなければいけないのだ。軽快に走っていくタフィーを見送りながら、結はもう一度大きな欠伸をした。
結局、二時間しか眠れなかった。レモネードを飲んで気持ちをリセットするつもりが、感情が高ぶり余計に眠れなくなった。
それというのもあいつのせいだ。榊慧。一見、爽やかな好青年風のイケメンだが、なぜか結には好戦的だ。
「三十分遅刻だ、見習い」
ほら。ほらほら。途端にぴりっとこめかみに血管が浮き出た結だったが、なにぶん本当のことなので反論できない。慧の足元の笊には、すでに艶々と光るナスがいっぱいに入っている。
おばあちゃんはと姿を捜すと、セツはガーデンハウスのすぐ脇でハーブを摘んでいた。目を凝らすと、セツの周囲にはたくさんの光の珠がふわふわと集まっているのが見える。妖精たちだ。妖精の力を借りながらハーブを摘む。そうすることでハーブの持つ力を最大限まで引き出し、薬を作ることができるのだ。今日は午後から、結も勉強を兼ねて薬を作る予定だ。
結は三輪車を停めると、ナス畑から離れたトマトの収穫に当たることにした。真っ赤に熟した実と、緑色の葉のコントラストがきれいだ。
ハサミで丁寧にひとつずつ収穫していく。ハサミを入れる度、辺りにトマト特有の香りが漂う。いい匂い。青臭さが苦手な人もいるけれど、結はこの青臭さが好きだ。思わず、すーはー、と深呼吸をしたとき、「ひとーつ、ふたーつ」と子どもの声がした。
「あれ?」
「は、はいっ」
でき上がったジャムは、熱いうちに瓶に詰め、もう一度、瓶ごと湯煎にかけて真空状態にしたら完成だ。
「休んでる暇なんかないよ。明日もたくさん色づくはずだからね。はい、次だよ」
「はい!」
向こうの世界――。魔女の魂は妖精の世界とこっちの世界に半分ずつ。魔女が命の限りを尽くしたとき、妖精王が魂の半分を迎えに来ると言われている。残された半分は石となり、次の代の魔女へと手渡される。
セツの首にも小さな柘榴石がある。石の種類は様々で、生前の魔女の性質によって変化するという。今の結と同じように、セツにも魔法を教えてくれた魔女がいたのだ。
あと一年もしないうちに、結は進路を決めなければならない。
マフィンの焼ける匂いと、ジャムの甘ったるい匂い。
手元に夕暮れの濃い影が落ちてきた。じっと見ていると、呑み込まれそうになる。
遅い夕食は、夏野菜の天ぷらと冷奴。豆腐にはトマトを刻んだ中華風のタレがかけてあり、日頃豆腐なんておかずにならないと思っていた結でもおかわりしたいほどだった。作ったのはセツと慧だ。もちろん、天ぷらがセツで、慧は冷奴。明日からは結も手伝う。
それにしても気まずい。セツの家には気まずさを紛らわせるテレビがない。扇風機が温い風を掻き回す中、三人とも無言のまま黙々と箸を動かしていた。
セツと二人だけなら、家族のことや学校のことを話すのだが、なんとなく話題にするのもはばかられた。たった一人、知らない人間がいるだけでこんなにも空気が変わるなんて……。もぐもぐと口を動かしながら、結は斜向かいにいる慧をちらりと盗み見た。
「ごちそうさまでした」
先に食べ終えた慧が、茶碗を下げに立つ。結は耳を全開にしながら、ギシギシと軋む足音が台所へと行ったのを確認すると、大きな溜息を吐き出した。
「なに緊張してるんだい」
「き、緊張なんてしてないよっ」
セツに図星を指されて、慌てて返す。
セツはふんと鼻を鳴らすと、急須に残っていたほうじ茶を茶碗に注いだ。昔からセツは食べ終わった茶碗にお茶や湯冷ましなどを注いで飲む。こうすると茶碗にこびりついたご飯粒がきれいに取れるのだ。セツは箸でご飯粒をこそぎ落とすと、中のお茶をご飯粒もろとも飲み干した。さてと、とセツが立ち上がる。
「明日の朝は安西さんが来るからね。おまえさんもちゃんと支度をしておくれ」
「はい」
安西さんというのは、この辺りの農家から集めた野菜や果物を売っている直売所の店長だ。セツの野菜に惚れ込んで、是非うちの直売所にと声をかけてくれたのが安西だ。安西の奥さんは現在妊娠中で、セツの野菜がないと夜も日も明けないと豪語している大ファンでもある。畑で採れた野菜は八月一日の名前で出荷され、瞬く間に売れてしまう。同じ野菜でも、セツの畑で採れたものは、味が格段に違うのだ。
一人残された茶の間は急に広く感じた。身じろぐ音がやけに大きく響く。子どもの頃からまるで変わらない部屋。畳の匂いに混じるかすかなお線香の香り。やさしかった祖父の遺影が飾られた仏壇。遺影に写る祖父の笑顔も変わらない。
けれどカレンダーの年号は令和を迎え、確かに時は刻一刻と過ぎていく。変わらないものなどないのだ。自分もこのままではいられない。なのに、ずっと同じ場所に佇んだままだ。
裏の林が風に揺れる葉ずれの音に混じり、夜鷹の声が聞こえた。
月の出ない夜は長く、先の見通しは闇に隠れてまるで見えない。
赤いトマトと緑のトマト
……眠れない。
結は何度目かの寝返りを打つと、胸のつかえを吐き出すように溜息をついた。
住宅街にある結の家とは違って、山の中にあるこの家は、日中の暑さが嘘のように朝晩は涼しい。障子戸を少しだけ開け、肌掛けをかけて横になる。どの部屋もすだれが垂れているだけで窓は全開。もちろん鍵なんかかけていない。泥棒の心配をする必要は皆無で、第一盗られて困るものもなにもない。田舎ならではの暢気さだ。草陰からジージーと虫の声が聞こえる。
祖母と自分の他にもう一人の存在がいる。それがなぜこんなにも気になるのかわからない。わからないけど気になる。堂々巡りだ。
「あーっ! もー、無理!」
結はすでに丸まっている肌掛けを蹴飛ばすと、むくりと起き上がった。こんな状態じゃ眠れるわけがない。
「……喉渇いた」
畳に敷いた布団の上に座り込んだ結は、寝るのを諦めた。障子戸を開けて部屋を出る。向かいのセツの部屋は灯りが落ちて、すっかり寝静まっている様子だ。
結は時々ギシッと軋む縁側を抜けて台所へ向かった。台所には昼間のベリーと砂糖の甘い匂いが残っている。
「アイスは……、やっぱないよねー」
冷蔵庫の中身を物色したところで、あるのはいくつかの野菜と晩御飯で残った惣菜。けれど、結の目的は別のものだ。
「あった。これこれ!」
レモンシロップの瓶を発見した結の頬は、にんまりと緩んだ。黄金色のレモンシロップは、冬の間に収穫されたレモンをたっぷりの蜂蜜で漬けたものだ。レモンも自家製なら、蜂蜜も一〇〇パーセント天然もの。希少な日本ミツバチの蜂蜜は、ミツバチたちから少しずつ分けてもらったものだ。
「あ。炭酸水がある」
珍しいこともあるものだと思いながら、思わぬ発見にホクホクしながらコップにシロップを注いだ。いい匂い。そこへ炭酸水を入れる。プシュッとガスの抜ける音。しゅわしゅわと弾ける泡にうっとりしていると「美味そうなもん飲んでるじゃねえか」と低い声がして、結の心臓は跳ね上がった。
「ひいぃっ!」
「ふーん」
慧はシンクの上のレモンスカッシュを見ながら、ずかずかと近づいてくる。
「な、な、なによっ」
びっくりして全身の毛穴が開いたと思う。バクバクと口から飛び出してきそうな心臓を押さえ、思わず身構えた。
「それ」
慧は長い腕をシンクへと伸ばし、結を囲うように閉じ込めた。
慌てたのは結だ。精一杯身体を小さくし、それでもしっかりレモンスカッシュは離さない。離してたまるもんですか!
「俺のなんだけど」
「へ?」
結はきょろきょろと目を泳がせた。
「お、俺の……?」
「炭酸。あーあ。せっかくソーダ割りにして飲もうと思ってたのに」
ソーダ割り?
「今作ったけど……」
「バーカ、違うっての。ったく、これだからお子さまは」
むっ。むむむっ、と結の眉間に皺が寄る。前言撤回! やっぱり慧とは相性が悪い!
「ちゃんと名前書いておかないのがいけないんでしょ」と反撃はするものの、勝手に飲んだ自分も悪いかなと思った結は、むっとしながら慧のレモンスカッシュを作り始めた。
作ればいいんでしょ、作れば。ちょっとくらいいいじゃん。ケチ。ケーチケーチ! と胸の内で悪態をつきながら「邪魔」と、慧の胸をぐいっと押してようやく抜け出した。結より頭一つ半ほどは大きい長身の慧に近づかれるだけで、圧迫感を覚えてしょうがない。
氷を浮かべると、炭酸の弾ける音がした。シロップ多めの、少し甘いレモンスカッシュ。
「はい、どうぞ」
結は腕を組みながら偉そうに突っ立っている慧の手に、コップを押しつけた。これで貸し借りなしだ。
結はレモンスカッシュを手に、縁側へ移動することにした。途中、玄関で寝起きしているタフィーが結の気配に気づいて頭を上げる。
「いいよ、タフィー。寝てて」
タフィーは耳を動かしたが、言葉を理解したように再び寝る体勢に戻った。
外は十六夜の月明かりに照らされていて、ずいぶんと明るい。結は蚊取り線香を引き寄せると指先を近づけた。ぽう、と小さな火が生まれ、煙がたゆたう。これくらいの魔法なら朝飯前だ。
縁側に腰を下ろし、沓脱石にあったサンダルを引っかける。レモンスカッシュをひと口。
「美味しー」
小さな幸せに浸っていると、ギシリとすぐ隣の床がへこんだ。慧がコップを片手に結の隣に座る。
うわ。なんでこっちに来るのよっ。パーソナルスペースが狭い。結はレモンスカッシュをちびちびと舐めながら、もぞもぞとおしりで距離を取った。
「確かに美味いな」
カラン、と氷の澄んだ音を立てながら、慧は思わずといった体で呟いた。
「でしょ? おばあちゃんのシロップは世界一なんだから」
自分が作ったわけでもないのに、鼻高々に自慢すると、慧が「くっ」と喉の奥で笑った。
「……なに?」
「いや。案外素直だなあと思って。おまえ、ばあちゃん子だろ」
「わ、悪い?」
褒められると、嬉しいのに反対の言葉が出る。これじゃあ全然素直じゃないと思いながら、照れ隠しもあって唇を尖らせた。
「先生から聞いた。魔女の血は祖母から孫へと伝わるんだって?」
「そう……だけど」
「いいよな。血だけでそんな力が手に入るなんて」
血だけで――。
もちろんそれは大前提だが、それだけで魔女になれるわけでは決してない。代々口承だけで受け継がれてきた言の葉。もしどこかひとつでも間違えようものなら、そこで言の葉は消えてなくなる。ひと言ひと言を大切に守ってきたからこそ、魔女の血は次の代へと伝えられてきたのだ。まるでなんの努力もしていないみたいな言われように、結はむっとした。
だからと言って、いちいち弁明するつもりもない。わかってもらおうなんて思ってなかった。これは魔女だけが知り得ることだから。
「あんただって大臣の息子なんでしょ? なのにどうしてこんなとこで下働きの真似ごとなんてしてるのよ」
「大臣の息子か……」
ふっと鼻だけで笑う。形のいい唇の端を引き上げ、自嘲するような笑みを浮かべる。
「周りは皆そう言うよ。本妻の息子が死んでからは」
「え」
「俺は親父が外に作った子どもなんだ。愛人の子? まあ、そういうこと」
慧は一瞬だけ結を見ると肩を竦めた。
「母親と妹と三人で暮らしてた。妹もさ、父親が違うんだ。けど、そんなことどうでもよかった。すっげえ可愛くて、いっつも俺の後くっついてきて」
遠く、懐かしむような視線。
「俺の家族はあいつだけだった」
ぽつりと落ちた言葉は、夜の闇の中へと吸い込まれていく。
「母親は一人で生きていけないタイプの女でさ。いつも男をとっかえひっかえしてた。俺の中学の入学式のときも、男と出ていったきり帰ってこなかった」
中学生になったばかりの慧の姿が目に浮かぶようだった。まだ少年の、柔らかくて傷つきやすい心を持った慧が、ぽつんと佇む姿。
「そのとき、親父の秘書だっていうやつが現れた。親父は、本妻の息子が留学先の事故に巻き込まれて死んだとかで、急に俺を思い出したらしい。実の息子が死んで二日後だ。葬式も済んでないってのに、あいつの頭の中にあるのは跡取りのことだけだったんだ」
ギリッと奥歯を噛みしめる音がした。
「俺は入ったばかりの中学をその日のうちに辞めさせられて、私立の中学に転校させられた。それからだ。周りは俺を大臣の息子って呼ぶようになった」
コップを傾けた慧の喉仏が上下に動く。
「まあでも、俺もほいほい言うことばっか聞いてるつもりなんてなかったからな。妹の資金援助と交換に、大臣の息子でいることを受け入れることにしたんだ。それならフェアだろ?」
血……。親子の血。家族の血。魔女の血。
望むと望まざるとにかかわらず、否応なくついて回る呪い――。
「……それでいいの?」
それでいいのだろうか。両手で包み込んだコップの中には、すっかり小さく溶けた氷の欠片が、ゆらゆらと浮かんでいる。結が考え込んでいると「なーんつって」と笑いを含んだ声がした。意地悪く口端を吊り上げた慧が結を見ている。
「信じた?」
「……は?」
「やっぱ信じたかあ」
くつくつと笑う慧に、結は口を小さく開いたまま絶句した。まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔に、慧はぶっと噴き出す。
「残念だけど、俺は正真正銘親父の息子だから。大臣の息子、大いに結構。将来は安泰だ」
はあ? どういうこと? もしかして今の話は全部嘘?
気持ちが沈んだのは一瞬で、怒りが間欠泉のごとく噴き出してきた。一瞬でもいいやつかも、なんて思った自分を殴り飛ばしたい!
「あのねえ!」
絶句していた結がようやく口を開くと、慧はよっと勢いをつけて立ち上がった。
「おまえ、進路に悩んでるんだって?」
ぐっと言葉に詰まった。
「……ずるいよな、魔女の血とか」
「え?」
「そんな奇跡みたいな力、どれだけ願っても手に入らない」
慧の視線の先には、ふわりふわりと小さな光が浮かんでは消えていた。庭の先に流れる清流に住む蛍だ。
慧はぽかんと口を開けたままの結に気づくと、きまり悪そうに視線を逸らした。コップに残ったレモンスカッシュを飲み干すと、ガリガリと氷を噛み砕く。
「お子さまは早く寝ろよ」
そう言ってくるりと背を向けると、足音を立てながら台所へと消えていった。
奇跡みたいな力――。
慧は奇跡を起こしたいと願っているのだろうか。だけどおばあちゃんは慧の願いを叶えるつもりはなさそうだ。慧は奇跡と言ったけれど、私にとっては奇跡なんかじゃない。現実なんだよ。
「痛……っ」
ちくん、とくるぶしに痛みを感じて見ると藪蚊だった。ぱちんと叩いたところで、もう遅い。明かりに照らされて、噛まれた痕は見る見る赤く腫れ上がってくる。
「もお、なんなの!」
風に揺れた風鈴が、チリンと鳴った。
チャカシャカシャカシャカ。軽快な音楽がスマートフォンから流れ出る。
「んーあー」
ペタペタと手だけが音源を探して泳ぎ、探り当てると目覚ましを切った。上と下がまだ貼りついている瞼を無理やりこじ開けて「四時……」と唸る。カッコウや野鳥のさえずりに耳を澄ませながら三十秒……のつもりが、再び意識が遠退きそうになり、結はガバッと跳ね起きた。
「うわっ、ヤバ!」
周りを囲む山や森にも、乳白色の靄が立ち込めていた。群青色の空にはまだ小さな星が瞬いていたが、やがてはそれも消えるだろう。山の裾野はうっすらと茜色に染まっていた。もうすぐ日の出だ。
夏の朝は早い。昨日まで青かったトマトは真っ赤に熟し、小さかったキュウリはにょきにょきと伸びている。ナスにカボチャ、とうもろこし。朝露にきらめく畑の恵みは、町の直売所のトラックが引き取りにやってくる。セツの作った農作物は、甘みが強く美味しいと評判で、八月一日と生産者名が記された野菜は、飛ぶように売れてしまう。
清々しい空気。澄んだ青空。まだ太陽が顔を出して間もない早朝五時。
「ウォン!」
タフィーがしっぽを振りながら真っ先に駆け寄ってきた。
「おふぁー」
年頃の女子高生とは思えない大欠伸をしながら、タフィーの頭を撫でて挨拶をする。
「後で遊ぼうね」
結の言葉に、タフィーは「ウォンウォン!」と二回吠えてくるりと回った。
そんなタフィーを引き連れて、結は家の裏にある物置小屋へと向かった。あった。三輪車だ。三輪車といっても子どもの乗り物ではない。収穫した野菜を運ぶための、タイヤが三つついている運搬車のことだ。そこに、野菜を入れる籠をいくつか載せて畑に向かう。結の先を歩いていたタフィーは、ふんふんと土の匂いを確かめると駆け出した。
タフィーには毎日の日課がある。彼はこれから、畑と家の周囲をパトロールしなければいけないのだ。軽快に走っていくタフィーを見送りながら、結はもう一度大きな欠伸をした。
結局、二時間しか眠れなかった。レモネードを飲んで気持ちをリセットするつもりが、感情が高ぶり余計に眠れなくなった。
それというのもあいつのせいだ。榊慧。一見、爽やかな好青年風のイケメンだが、なぜか結には好戦的だ。
「三十分遅刻だ、見習い」
ほら。ほらほら。途端にぴりっとこめかみに血管が浮き出た結だったが、なにぶん本当のことなので反論できない。慧の足元の笊には、すでに艶々と光るナスがいっぱいに入っている。
おばあちゃんはと姿を捜すと、セツはガーデンハウスのすぐ脇でハーブを摘んでいた。目を凝らすと、セツの周囲にはたくさんの光の珠がふわふわと集まっているのが見える。妖精たちだ。妖精の力を借りながらハーブを摘む。そうすることでハーブの持つ力を最大限まで引き出し、薬を作ることができるのだ。今日は午後から、結も勉強を兼ねて薬を作る予定だ。
結は三輪車を停めると、ナス畑から離れたトマトの収穫に当たることにした。真っ赤に熟した実と、緑色の葉のコントラストがきれいだ。
ハサミで丁寧にひとつずつ収穫していく。ハサミを入れる度、辺りにトマト特有の香りが漂う。いい匂い。青臭さが苦手な人もいるけれど、結はこの青臭さが好きだ。思わず、すーはー、と深呼吸をしたとき、「ひとーつ、ふたーつ」と子どもの声がした。
「あれ?」
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