【完結済】大阪首ポロ珍騒動 ~デュラハンでも人生を満喫したいッ!~

譚月遊生季

文字の大きさ
上 下
1 / 4

第一話 首なし殺人事件……!?

しおりを挟む
 神奈川県陽岬ひのみさき市。
 日本有数のパワースポットであるこの地は、呪術師、霊媒師、引いては人ならざる者が数多く集まる土地でもあった。

 その土地の片隅に、いつからか探偵事務所が居を構えるようになった。ある日突然現れたと噂されるその事務所は、「怪奇現象専門の探偵事務所」と呼ばれている。
 その名も「赤松探偵事務所」。
 そんないわく付きの場所に、今日も訳アリの依頼人が訪れていた。

「えーと、名前は上原直己うえはらなおきくんだったかな。……で、何の用?」

 所長の赤松……タバコをくわえたサングラスの男に促され、長身の青年……上原直己は緊張した面持ちで語り始める。

「昨日……俺のマンションの廊下で、首なし死体が見つこうたんです」
「そりゃ怖いね」
「死体はもちろん警察に持って行かれて……今は、検死中らしいんですわ。身元はまだ分からへんって聞いたんですが……」

 頬の傷を撫でながら、赤松は「うーん」と苦笑する。

「猟奇殺人事件の捜査? 悪いけど、そういうのは警察でやってもらってくんない? ウチはね、怪奇現象専門だから」
「ち、ちゃうんです。その首が、今、俺の部屋にあるんです……。それで、その、『どうにかしてや』と喋るもんでして……」
「……ありゃあ。それは怪奇現象だねぇ……」

 二人が話し込んでいると、玄関の方から「ただいまー」と、少女らしき声が飛んでくる。

あかり! 今お客様が来てるの。部屋の方で待っててくれるかしら」
「ん、わかった」

 男性らしき声が、女性のような口調で少女と会話する。上原は何やらホッとした顔つきで、話を続けた。

「とにかく、早く来てください。ほんまに一大事なんです……!」

 関西弁独特のイントネーションで、上原は語る。
 赤松は「ふぅむ」と頬の傷を撫でつつ、「じゃ、また明日ね」と返事をした。



 ***



 翌日、大阪にある上原のマンションの前に、着物姿の長い白髪の女……いや、男が立っていた。
 出迎えた上原はぐるりと辺りを見回し、赤茶けた色の髪も、頬傷のある顔も見当たらないことに首を傾げる。

「……。赤松さんはどないしました?」
「それが聞いてよ……! 『ヤマナっちだけでいけるいける』とか言って、アタシだけ派遣したのよあの男! 嫌になっちゃうわ!」
「そ、そら……難儀ですねぇ……」

 肩をいからせる白髪の男・ヤマナに、上原は困った様子でたじたじと後ずさる。

「まあいいわ。アタシだってプロだもの。いくらでも頼ってちょうだいな!」
「それ何のプロなんです? 夜のお店とかちゃいます?」
「あぁん? テメェ、このおれがそんじょそこらの陰間かげまにでも見えんのかい?」

 何やら上原の発言が地雷を踏んだらしく、ヤマナは額に青筋を浮かべる。上原は身の危険を感じ、即座に頭を下げた。

「えっ、陰……? な、なんか、すみません……」
「はん、分かりゃいいんだよ。……ったく、最近の若造は芸ってもんがわかっちゃいねぇ」

 ヤマナは男口調のまま上原に背を向け、マンションの階段を昇っていく。

「良いかい、おれ女形おやまだ。色を売って欲しいってんなら他所へ行きやがれ」
「……い、色?」
「視線を見りゃわかる。おれの身体に興味があるんだろう?」

 挑発するよう、ヤマナはにやりと笑う。その仕草に、上原の頬がかっと熱くなった。

「おうおう、図星かい?」
「へ、部屋着きました……!」

 上原は赤面したまま、誤魔化すように部屋の鍵を開けた。扉を開き、「ど、どうぞ」とうわずった声でヤマナを案内する。
 促されるまま、ヤマナが足を踏み入れた途端……

「この、浮気者ォー!!!」

 玄関マットに鎮座した生首が、涙目で上原を怒鳴りつけた。

「なんやねんナオキ!! 僕は健気に待っとんたんに、他の男に色目使いよるんか!!!」
「ご、誤解や……! ちょっとええ兄ちゃんや思うただけや!」
「どうせ僕が胴体のうなって、竿も尻も可愛がられへんからって他の男に目移りしてんねやろ!! このヤリチ〇ビッ〇!!」
「だ、誰がやねん……! もうお前以外のチン〇に興味あらへんわ!」

 さっそく始まった痴話喧嘩に、ヤマナは眉間を抑える。今度の仕事は、いつもとは違った方面に面倒そうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

華散るその時まで

碧月 晶
BL
魔法使い×人狼 ~登場人物~ ○ラルフ・オルロ ・受け(主人公) ・人狼の父親と人間の母親とのハーフ ・見た目20代前半(実年齢は50超え) ・髪:黒 ・眼:金 ・肌:褐色 ○ウィリアム・E(エドワード)・クロフォード ・攻め ・『白銀の魔法使い』の称号を持つ ・見た目30代半ば(実際は400歳超えだが、その辺りから数えるのを止めた) ・髪:銀 ・眼:灰 ・肌:白 ※BLove様でも掲載済みの作品です。 ※表紙絵は友人様からです(最終ページに掲載)。 ※感想大歓迎です!!

完結【日月の歌語りⅠ】腥血(せいけつ)と遠吠え

あかつき雨垂
BL
◆◇謎に包まれた吸血鬼×生真面目な人狼◇◆  《あらすじ》ある人狼に追われる年経た吸血鬼ヴェルギル。退廃的な生活を送ってはいたけれど、人外の〈協定〉の守護者である、人狼達の〈クラン〉に追われるほどの罪は犯していないはずだった。 ついに追い詰められたヴェルギルは、自分を殺そうとする人狼クヴァルドの美しさに思わず見とれてしまう。鋭い爪が首に食い込むのを感じながら、ヴェルギルは襲撃者が呟くのを聞いた。 「やっと……やっと追い詰めた」  その声に祈りを連想したのは、頭をひどく打ったからだろうか──。  だが、彼の望みは想い人の復讐だった。 「人違いだ」と説明するも耳を貸さないクヴァルドに捉えられ、人狼の本拠地へと連行されるヴェルギル。そして天敵同士である人狼と吸血鬼は、手を組んで同じ敵を追うことになるが──。 「吸血鬼」小さな声で、クヴァルドが言った。「なんで、俺を?」  同じことを、ヴェルギルもまた自問していた。  何故、この男なのだ?  イムラヴの血を引く人狼は珍しい。だが、それだけが理由ではない。見事な毛皮に惹かれたからか? あるいは、哀れを催すほど真面目で高潔だから? 故郷の歌を見事に歌い上げたあの声のせいか? それとも、満たされない憧憬を抱えた彼に同情した?  わからない。これほど不確かなことがこの世に存在することを、いま初めて知った。  ヴェルギルは口の中で、〈嘘の守護者〉リコヴへの祈りを口にした。それから肩をすくめて、こともなげに言った。 「わたしは悪食でね」 それぞれの思惑を抱えつつ、激しく惹かれてゆくふたり。だが、ヴェルギルにはどうしてもクヴァルドを裏切らねばならない理由があった。やがてふたりの道行きに、国中を戦禍に巻き込みかねない陰謀の暗雲が立ちこめ──!? 異世界の島国・ダイラを舞台にした、ハイファンタジーBL《日月の歌語り》シリーズ1作目。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

愛人は嫌だったので別れることにしました。

伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。 しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

処理中です...