敗者の街 Ⅱ ― Open the present road ―

譚月遊生季

文字の大きさ
上 下
8 / 49
第1章 Really of Other

8. 前進

しおりを挟む
 誰かに会いたいマノン、弟を探してるレオナルド、調べたい場所があるポール、そんでもって出口を見つけたい私……
 どうにも息の合いそうにないメンバーだけど、挫ける訳には行かない。
 レヴィ……だったっけ。彼を見つけられれば、いくらでも状況は打開できる。

「よーし……とりあえず、探索しよ!」

 出口を探すにも、誰かに会うにも、どちらにせよ動くしかない。
 私の号令に、他の四人も頷いた。

「……で、どこから?」

 マノンが言う。
 確かに、周りは闇しかない。

「歩いてみるかい?」

 ポールが言う。
 まあ、そうだね……壁とかがあるなら、それを伝うのもいいし。

「さっき落とし穴みてーなのあったぜ」

 レオナルドが……って、ちょっと待ってぇ!?

「そういうの、早く言ってよ!?」
「え、マジ?」
「落ちたらどうすんのぉ!?」
「悪ぃ悪ぃ、みんな気付いてんのかなーって」

 レオナルドはケロッとした様子で謝ってくる。
 うう、なんだか、前途多難ぜんとたなんな気がしてきた……。



 ***



 実際、落とし穴みたいなのはあった。
 どこまで深いかも分からないし、何に続いてるかわかったものじゃない。

「ぼくが行ってこようか?」
「危ないからやめなよ……」

 ポールの提案は、何が待ち受けてるかわからないので制止しておいた。
 ひとまずはレオナルドに穴を探知させつつ、手探りで同じ方向に進むことに。

「そこ、気をつけろよ嬢ちゃん」
「うわぁっ! 片足はまったぁ!」
「だ、大丈夫かい?」 

 ……色々アクシデントはあったけど、進んでるうちに進展はあった。

「ここにいやがったか兄弟!」

 見覚えのある少年が、闇の中を走ってくる。

「おっ、レニー。久しぶりだな」 
「なぁに呑気なこと言ってやがんだ」

 レオナルドの楽しげな声に、レニーはやれやれといった様子で苦笑する。

「もしかして、弟くん?」

 ポールの言葉にレオナルドは「そーそー」と嬉しそうに頷く。

「……親子の間違いじゃなく?」

 二人を見比べて、マノンは眉をひそめる。

「ま、そこいらには深い理由わけがあってな……」

 レニーはそこまで言って、コホンと咳払いをした。

「自己紹介は後にして、まずは要件だ。またいつ引き離されるか分かったもんじゃねぇしな」

 真剣な面持ちで、レニーは語る。

「お前さん達……みんな、『目的があって』ここに来たんじゃねぇかい?」

 塗り潰された記憶が、微かに悲鳴を上げた。
 忘れたくない、思い出してと訴えかけるように、鈍い頭痛が意識を支配する。

「当たり前だろ。会いたかったぜ兄弟」

 レオナルドの明るい声が聞こえる。

「てめぇは来たことあるし、条件がゆるっゆるになってそうだな」
「アレだろ、また前みてーに変なのぶちのめしてったら帰れんだろ?」
「脳みそゆるっゆるなのも相変わらずみてぇで何よりだぜ」

 楽しそうに語らう二人。
 マノンがぽつりと呟いた。

「そう、私には目的がある」

 ドス黒い思念を滲ませた声が、ぞわりと背筋を撫でる。

「……復讐しなきゃ」

 ブラウンの目が、激しい憎悪を映していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

変容

小紕 遥
ホラー
夢と現実の境界が溶ける夜、突然の来客。主人公は曖昧な世界で何を見るのか。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

扉の向こうは黒い影

小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。 夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

田舎のお婆ちゃんから聞いた言い伝え

菊池まりな
ホラー
田舎のお婆ちゃんから古い言い伝えを聞いたことがあるだろうか?その中から厳選してお届けしたい。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

雷命の造娘

凰太郎
ホラー
闇暦二八年──。 〈娘〉は、独りだった……。 〈娘〉は、虚だった……。 そして、闇暦二九年──。 残酷なる〈命〉が、運命を刻み始める! 人間の業に汚れた罪深き己が宿命を! 人類が支配権を失い、魔界より顕現した〈怪物〉達が覇権を狙った戦乱を繰り広げる闇の新世紀〈闇暦〉──。 豪雷が産み落とした命は、はたして何を心に刻み生きるのか? 闇暦戦史、第二弾開幕!

処理中です...