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68.「※わたしたちはアイドルになろうとしています」

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「ニコラス、ついてくるんじゃなくて、レイラちゃんの近くにいてくれない?」

 廊下にて。
 わたしからのツッコミを今か今かと待ち受けているアルバートを全力でスルーしつつ、ニコラスに声をかける。

 レイラちゃんには未来予知の能力があるとはいえ、「怪異喰」と二人きりにするのはまあまあ不安だ。
 とはいえエドマンドがそばにいたところで、先にエドマンドが喰われてどうしようもなくなる。
 なんで分かるかって? 原作でそうだったからだよね。むしろわたしが知る限り、そのパターンしかなかったよね。能力が物理系かつ戦闘スタイルも近接系なの、あまりにも相性が最悪すぎる。

「ヒヒッ、ジブンが近くにいたとして、助けるとは限らないよ?」
「ゴードン、GO」
「ウィッス」

 わたしの合図に応え、ゴードンはレイラちゃん達がいる食堂の方へと真っ直ぐに走っていく。
 さすがはゴードン、わたしが今何をして欲しいのか、すぐにわかってくれる。
 ニコラスは後で覚えとけ。

 何はともあれ、わたしの能力ちからで、ヒビが入った場所……つまり、リナが倒れている場所は簡単に検知できた。
 
「リナ、大丈夫ですの!?」
「う……チェル……チェル……?」

 ブリッジ状態のまま床に崩れ落ちたリナが、か細い声でうめく。
 その上から、細かいホコリがパラパラと降り注いで……

 壁のヒビから白骨化した手が覗いてるのは、見なかったことにしよう。うん。

「どんな勢いでぶつかったの……」
「同胞よ。復讐のび声に応えよ。わが腕は流されし業血ごうけつ行方ゆくえを問わん(訳:怪我はないだろうか)」
 
 呆れるわたしをしり目に、エドマンドがリナを助け起こす。

「うー……ありがとエドっさん……」
 
 リナはよろよろと揺らめきながらも、何とかエドマンドの肩を借りて立ち上がった。

 あれ? そういえばリナが普通に立ってる姿、初めて見たかもしんない。

「うー……なんか落ち着かない……なんかヤダ……」

 ブツブツ呟いたかと思うと、リナはエドマンドの腕を振り解き、カクンと腰を折って背後の床に手をつく。要するに、立った状態からスムーズにブリッジ状態に移行した。
 わあ……身体、柔らかいね……。

「……コレッ!! 頭に血がのぼるこの感覚ッッッ!! やっぱこうでなきゃあ!!」

 途端にいつもの調子に戻るリナ。
 何が何だかよく分からないけど、とりあえず彼女にしか分からないこだわりがあるらしい。そっとしとこ。

「あ、そうですわ。『這い寄る☆ナイトメア』に新しいメンバーが加入しましたわよ」

 あれ? 加入するとは決まってなかったっけ?
 まあいいや。どうにかしてカオスに巻き込まないと、ちゃんとした「怪異」になっちゃうし、加入は必須条件。無理やりにでも加入させる方向でいいよね。

「マジ!? ボケ? ツッコミ? それともハイブリッド!?」

 そういや、リナはお笑いグループだと思ってるんだっけ。
 まあ最初はそういう話だったもんね。ちょうど60話くらい前に方針転換しちゃったけど。

「……何といいますか……多重人格ですわ」
「ヤバ。一人でボケツッコミできるじゃん」
「どっちも……ボケですわね……」

 少なくともツッコミはできなさそう。
 いや、黒沼さんならやってくれはするかもしれない(※できるとは言ってない)。

「よしっ!! やっぱツッコミがいなきゃね! アタシに任せて!」
「残念ですが、あなたも立派にボケですわ」

 リナは目をキラキラさせてるけど、その自信はいったいどこからやってくるんだろう。
 ……ん? ちょっと待って?
 レイラちゃんもツッコミではないよね?

 あれ? もしかして、ツッコミ担当わたしだけ……!?
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