レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

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67.「肝心な時に出没しない女」

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 この館は業も闇も深い魂たちが集まってはいるけれど、ありったけのポジティブ思考で考えれば「みんながみんな個性的」とも言える。
 せっかくの個性なんだから、恨みや呪いじゃなくて、ハッピーな方向性に持っていければ……と、「ホーンテッド・ナイトメア」のファンであればたいてい一度は考えた(と思う)。

 ほのぼのIFとか学園パロディとかの二次創作、めちゃくちゃ多かったしね。

 ……そう。
 苦しみの末に世界を呪った「怪異」たちだって、元は苦しみ、嘆き、道を踏み外したんだ。

 やるしかない。
 悲劇を、喜劇に変えてやる。

「イオリちゃん、話があるんだけど」
「な……何だし? 何でも言ってみ……ろし??」

 相変わらず迷走したギャル口調で、イオリは目を泳がせながらも反応してくれる。

「わたし達、アイドルユニットを組もうとしてて……」


 
 ***



 なんやかんや説明は終わり、ひとまず現状いまのメンバーを紹介することになった。

 そこで、はたと気付く。
 リナのこと忘れてたわ。

「……レイラちゃん、リナの居場所わかる?」
「……えっ」

 私からの相談に、あからさまに狼狽うろたえるレイラちゃん。
 そんなこと言われても……ってなるよね。ごめんね。
 軽い未来予知ができるからって、人の居場所を言い当てるのはやっぱり厳しいか……

「ああ、そういえば。さっき、壁に頭から激突して失神していたよ」

 心理的にも物理的にも距離を置かれているはずのアルバートが、しれっと口を挟んでくる。
 ちょっと待ってアルバート、そういうのは部屋入った時に教えて???
 いや、距離置いてるのはわたしの方なんだけどもね???

「……さすがにちょっと心配ッスね」

 眉間にシワを寄せるゴードン。
  
「だよね……首とか折れてないかな」
「探しに行く……?」

 わたしの言葉に、レイラちゃんも心配そうに言う。 
 
「宿命に呪われし同胞よ、わが刃は怨讐えんしゅうを果たすためにある(訳:私も同行しよう)」

 レイラちゃんに呼応するように、エドマンドも大きく頷く。
 
「なら僕も」
「てめぇはついてくんな変態」

 ここぞとばかりに同調するアルバートを、ゴードンが鋭い目付きで一蹴し……

 ま、待って!
 ゴードンの距離が心なしか近くなってる気がする!
 これっていわゆる嫉妬ムーブ!? アルバート、今回ばかりはありがとう!!
 本人的にはめちゃくちゃ不本意だろうけど!!
 
「あ……じゃあ、私が……えっと、イオリさん達……? の様子、見ておくね……」

 レイラちゃんに見送られ、エドマンド、ゴードンとともに食堂を後にする。
 アルバートが背後からこっそりついてきている気がするけど、更にその背後からはニコラスの気配も感じる。
 ……何この状況?

「……あ」 

 と、「レディ・ナイトメア」としての能力ちからが、館の異変を伝えてくる。
 もしかして、リナの居場所と関係が……って、ええ……
 
 ……なんか、壁にヒビ入ってるんですけど……?

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