レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

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64.「友達でも、分かり合えないことはある」

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 ニコラス曰く。
「怪異喰」は、元々はとある「怪異」の残留思念だった。
 当の「怪異」自体はよくある怨霊のたぐいで、既に浄化され、正しいことわりに戻っているらしい。
 
 けれど、無念は残った。
「寂しい」……その想いだけは、怪異そのものが浄化されても、切り離されて取り残された。

 時とともに風化し、消えていくはずだった想い。
 ほんの小さな、満たされなかった悔恨。

 偶然にも、世の理そのものが乱れていたことが、新たな「怪異」の誕生を許した。
 世界の狭間はざまを渡り歩き、数多の怪異どうるいを喰らい、「怪異喰」は強大な力を得た。

「それで、あたしも食べられてもうてなぁーーーー!!」

 今や「怪異喰」の一部である黒沼さんも、わたしと同じく「怪異」に転生していたらしい。
 わたし達のいた「元の世界」が崩壊してしまっている以上、さほど不思議なことではないとはいえ、数奇な運命だなあ……。

「うう……呪縁じゅえん世界、楽しかってんけどなぁ」
「あー……黒沼さん、にいってたんだ……」
 
「呪縁 ~犬首村にきっと『来る』~」……「ホーンテッド・ナイトメア」の次に出たゲームだ。
 内容は……なんていうか……「ホーンテッド・ナイトメア」の和ホラー版っていうか……
 もしかして、これもニコラスが一枚噛んでたりしない……?

「ヒヒッ、一応言っておくと、ジブンじゃないよ」
 
 あっ、言いたいこと読まれてた。

「ホラ……あたし、推し総攻め派やん……?」
「まあ、うん、そうだね……」
「せっかく『呪い唄のおみち』に転生できたんやし、色々試すやろ……? そしたら蛇神へびがみさまにキレられて、追い出されてもうたところを『怪異喰』にパクッと……」
「……黒沼さんの好みだと、蛇神さまって受け?」
「うん。あたし僧正そうじょう総攻め派やし。推しの前やったら神も武者むしゃも受けやろ」

 そりゃキレられるよ。

「ほんで? 咲良さくらさんは今どういう状況?」
「えーと……話すと長くなるんだけど……」

 かくかくしかじか……と、黒沼さんに説明する。
 黒沼さんは「はぇー……」と感嘆の吐息を漏らし、こう呟いた。

「せやんなぁ。やっぱ、公式はゴーチェルやろなぁ」
「待って、納得するのそこ???」

 いやわたしだって分かってたよ! 現実はちゃんと見えてるよ! でも夢を見るのは自由じゃん!?

「ほんで、ゴーチェルは悲恋だからこそ輝くんよなぁ」
「イヤーーーーーッやめて!! 今それ一番聞きたくない!!!」

 いや分かるけど! 言いたいことは分かるけどさぁ!!

「ここは、二人まとめてアルバート様にNTRねとられでどうや」
「そろそろはっ倒すよ?」

 こいつ、推しと同じで欲望に正直過ぎじゃない??
 推しとファンが似るってマジなの???
 いやぁでも、わたしはゴードンとそんなに似てない気がするけどなぁ。

「すんません、お嬢。話が1ミリもわかんないッス」
「わかんなくていい! たとえ0.5ミリだとしてもわかんなくていいから!!」
「お、おう……?」

 NTR……寝取り、寝取られのこと。
 攻めや受けは……ちょっとここでも言いにくいけど……なんにせよ、別に知らなくていい概念でしかないよね……。

「要するに、僕が全員を抱けばいいと思っているわけだね。面白いことを言うお嬢さんだ」

 って思ってたら変態野郎アルバート、思いっきり理解してるよ!!!!!
 ……う、うわぁ、予想外……! ここからわたし達、いったいどうなっちゃうの……!? 
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