レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

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63.「これが愛の力……!?」

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「アルバート……? 何しに来やがった」

 ゴードンに睨みつけられ、アルバートは不敵な笑みを浮かべる。

「極上の食材は、それ一つで際立つものではあるけれど……至上の味を、更に引き立たせるものは確かに存在する」

 わあ、何の話だろう。全然わかんないけど、嫌な予感しかしない。

「ゴードン、君はダメだ。けれど、彼女なら……?」
「……? マジで何言ってんだコイツ」

 怪訝そうなゴードンに対し、「まあ……君にはわからないかな」と肩をすくめるアルバート。

「簡単なことだよ。素敵な食材ひとは何人いてもいい」
「帰ってくださる?」

 アルバートはやっぱりアルバートだった。
 ここまで来るともう流石すぎる。歪みすぎてて、むしろ歪みない。
 
「13……12……あれ、今は数えなくていいんだっけ……」

 レイラちゃんがアイデンティティを見失って混乱し始め、エドマンドも警戒レベルを上げたのか、剣の柄に手を伸ばす。

「う……っ」

 ……と、イオリの呻き声が、意識を強制的にそちらの方へと向けさせた。

「あ……アァ…………!」

 頭を押さえ、何やら苦しんでいる様子のイオリ。
 ど、どうしたの。
 いったい何が……!?

「お、推しィ……!!! 推しが、目の前に……! うう……っ」

 ……はい?

「……ニコラス。もしかして、あの子の前世も、わたしと同じ世界の人だったりする?」
「ヒヒッ。『怪異喰』そのものには、確固たる自我はないはずだけれどねぇ」
「その言い方……含みがあるように聞こえるんだけど」
「ヒヒヒヒッ、そうだねぇ。取り込んだ『怪異』の中に、キミと似たような子がいた可能性は否めないねぇ……」

 あー、なるほどね。色んな「怪異」を取り込んで強くなる存在だもんね。
 これまでに取り込んできた中に、特異個体がいた可能性は否めないよ……ね……

「……黒沼くろぬまさん……?」

 黒沼さん。アルバート総攻め派のアルバート推しで、アルバートに食べられたいと豪語していた人。合作もするくらい仲が良かったけど、ゴードン関係に関してはまったく気が合わなかった、前世さくらの知り合い。
 何となくだけど、昔skipeで通話した時も、イメージソング縛りカラオケで話が盛り上がった時も、こんな話し方をしていたような…… 

「……! まさ、か……!」

 推しを目の当たりにしたおかげか、「イオリ」の顔つきが別人のように変わる。顔の造形は違っても、雰囲気だけはどこか懐かしい。
 黒沼さんとは、オフ会で何度も顔を合わせた仲だ。もしかしたら、わたしのことも気付いてくれるかも……!

「……いや、まさか、な……。咲良さくらさん、チェルシーアンチやしな……」
「別にアンチじゃないからね? ゴーチェルが地雷だっただけだからね?」

 ああうん、この雑さは黒沼さんだ。間違いない。

「う……意識が薄れ……いやでも……! 推し……推しィィィ! うおおおおおおお!!!」
「……お嬢。大丈夫スか、この人」
「邪魔しないであげて。いま、愛によって不可能を乗り越えてるところだから」
「う、ウッス……」

 愛の力は偉大だって、よくわかるね。うんうん。
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