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62.「もうそれベーコンレタス喰らいでは???」

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 ああもう、本当に何やってんの。
 煩悩に飲まれちゃダメだわたし。
 
 地雷はそっ閉じ推奨! わざわざ人に配慮させようとしない! ……前世のわたし高木さくらなら、それくらい当然分かってるはずなのに。

「趣味は人それぞれですわ。分かり合えずとも、尊重はいたしましょう」
「そ、そだね~~~」

「怪異喰」ことイオリがどういう人格ガワを目指しているのかもはやわからないけれど、なんか色々ズレてきてない? 大丈夫これ?
 既に混沌とし始めているけど……この後は、原作のシナリオ通りならアルバートが介入して来るはず。うう、更なるカオスの予感……。ど、どうにか軌道修正しなきゃ……!

「……ねぇねぇ、チェルシー」

 それはそうと、イオリの距離感近くない?
 ヒロインこんな感じだったっけ?
 
「いおは……『いお』はね、チェルシーのこと、なんにも知らないけど」

 一瞬。
 黒い瞳の奥で、「何か」が蠢いた。
 
「仲良くしたいな」

 喋っているのは目の前の「イオリ」たった一人のはず。
 ……それなのに。
 今、少なくとも二人ぶん、声が重なっていたような……

「チェルシーとなら、仲良くなれる。ううん、ずっと仲良くしてた気さえする」
 
 待って。
 こわい。
 そもそも、チェルシーって悪役だよね……?
 チェルシー√があるなんて聞いてないんだけど!?

「まあそんなこともあるよね。ヒヒッ」

 透明状態のニコラスが、背後でボソッと呟く。
 
「ヒヒヒッ、こうなったら仕方ないねぇ。キミが攻略対象になるのはどうかな?」
 
 えっ。

「その方が、他人にたくすより、よっぽど動きやすいだろう?」

 待っ……

「……やっぱ、お嬢はモテるんスね……」

 ちょっ、ゴードンのぼやきにやたら湿度を感じる!! 

 違うんだって! わたしだってゴードンとイチャイチャしたいんだってば!!

「チェルシーちゃん……頑張って……」
「わが復讐の業火は絶えずして、貴殿の妄執もまた然り(訳:一途な想いを貫くさまに、敬意を表しよう)」
 
 レイラとエドマンドは完全に静観モードに入ってるし……!
 ああもう、どうしてこうなるの!? というか、どうしたらいいのこの空気!!

 ……なんて、わたしが狼狽えていると、食堂の扉が勢いよく開け放たれた。
 
「話は聞かせてもらったよ」

 ドアの向こうから金髪の貴公子へんたいが、うやうやしい礼と共に現れる。
 ヤバい。原作とだいぶ流れは違うけど、アルバートが来ちゃった……!
 まだ方針もまともに定まっていないのに、どうかき乱されるかわかったもんじゃない。そもそも「怪異喰」の行動の予測もつかないし、ここからどう動けばハッピーエンドに持っていけるの……!?

「……あっ、攻め……」

 あの、イオリさん??????????
 本当にどうしちゃったんです?????
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