レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

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52.「よくわかる(?) エドマンド語講座」

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「同胞よ……」

 あっ、エドマンドが立ち上がった!
 だ、大丈夫かな。ややこしいことにならない……?

「届かぬ星を与えんと手を伸ばすも……さいなまれし傷痕にその手をかざすも、等しく積年の妄執がなせるわざ……すなわち……此処に両雄りょうゆうの復讐は宿命となった……」

 ……なんて?
 これ、頑張ったらわたしにも翻訳できるようになるのかな。今は何一つ、全然、皆目かいもく検討もつかないけど……
 
「うーんと……『アルバートは笑顔を与えようとして、ゴードンは涙に寄り添おうとした。どちらも間違っているとは言えない』って……」

 レイラちゃん、翻訳本当にありがとう。
 ……確かに、それはそうなのかも。
 アルバートはアルバートなりに、私を想って「楽に生きればいいのに」と言ってくれているし、ゴードンは「泣いてる本当の気持ちを無視しないで」と言いたかったんだと思う。

「……。私も……想い自体は、二人とも間違ってないと思う」

 レイラは静かに頷き、エドマンドの意見に同調する。
  
「た、ただ……アルバートは自分の好意を押し付け過ぎだし、ゴードンは向き合いきれてなくて逃げすぎだし……私から見ると、どっちもどっちかな……」
 「うぐっ」
「まさか……君にえぐられる日が来るとはね……」

 揃ってダメージを受ける男二人。
 あー、これは痛い。間違いなくクリティカルヒットしてる。

「あ、ご、ごめんね。や、やっぱり数字で伝えたほうが良かったかな……」
「……どんなふうに?」
「え、ええと……このままだとチェルシーちゃんが怒って『ああもうまどろっこしい! わたしはゴードンが好きなの! なんか文句ある!?』って叫び出すから、その時に合わせて……」

 あの、ネタバレやめてもらっていいですか。
 アルバートの歯ぎしりが聞こえ、ゴードンの首がぐらっと揺れる。
 これ、わたしはどうしたらいいの。こういうのって、どっちが正しいとかどっちのが条件が良いとかじゃなくない? 好きなものは好きだからどうしようもなくない?

常闇とこやみにて指し示す光明こうみょうあり……」

 エドマンドはなんて?

「同胞よ刮目かつもくせよ。其の魂は、復讐せよとえている」

 だからなんて???

「ち、ちなみに……兄さんの言う『復讐』はだいたい『やるべきこと』みたいな概念だったりするから……」

 ありがとうレイラちゃん!!
 その情報めっちゃ大事!!!
 
「ヒヒッ、なるほどねぇ。そうなると……『自分の正直な気持ちに耳を傾けろ』ってところかな」
「わあ、すっごい真っ当なこと言ってる」

 どうやらわたしより先に、ニコラスがコツを掴んだらしい。
 やっぱり有能だよねこのおじさん。リナなんか、飽きて部屋の壁で逆立ちしてるよ。

「……レディ、もう良い。君の『今の気持ち』はよく伝わったよ」

 わたしが何か言う前に、アルバートが自ら切り出す。
 身を引いてるように見せかけて、全然諦めてないよねそれ。

「ごめん、ぶっちゃけ生理的に無理だから、いい加減さっさと諦めて」
「ああ……イイね……。もっと罵ってくれても構わないんだよ」

 ああもう! 助けてこいつめんどくさい!
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