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33.「ドMに失恋耐性があるとは限らない」

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 透明になっていたニコラスが姿を現し、カーテンを被せられたままのエドマンドをちょいちょいと突く。
 モゾモゾと動いているのは見えたけど、彼が起き上がることはなかった。小声で何か言っているのだけ、こちらにも聞こえてくる。

「ん? 何て? いやあ全然わかんないね。レイラちゃん連れてきた方が良いかな」

 ニコラスさん、やめてあげて。
 レイラちゃんにも多大なショックを与える気がするから、絶対にやめてあげて。

「ヒヒッ、冗談冗談。ごめんって」

 カーテンの下から筋肉質な腕が伸びて、ニコラスの首を絞め上げようとする。……けど、腕はニコラスを掴むことなく、すり抜けてしまった。
 さすが邪神ニコラス。文字通り掴みどころがない。

「ゴードン、着替えを持ってきて差し上げて」
「……う……ッス」

 キスされた方の頬を押さえつつ、ゴードンはまだ心ここに在らずといった様子で呟いた。
 勘弁して。そんなに照れられるとこっちも照れるから……!

 

 ゴードンがエドマンドの着替えを取りに行ったところで、ニコラスに声をかけてみる。

「アルバートがチェルシーわたしにあんなに入れあげるの、正史とは違うってことでいい?」

 だって、ゲームでアルバートが入れ込むのは悪役のわたしじゃない。主人公ヒロインだ。
 ××したいとか××されたいとか言ってたのも、相手はわたしじゃない。
 そうなると、既に未来に変化が起こっているってことになるけれど……

「いいや? むしろ正史だね」
「えっ? どういうこと」
「ヒヒッ、簡単な話だよ。自分が送ったシナリオの時点で、アルバートはこっぴどくフられてたのさ」

 なるほどー。既に失恋後だったってことかー。

「前はもっと酷かったけどね。聞きたい?」
「えっ、何それ怖い」
「ヒヒヒッ、遠慮しなくていいんだよ。懇切丁寧こんせつていねいに語り聞かせる準備はいつでもできているから」
「わあー! 絶対ろくなシチュエーションじゃない!」

 どうやってあのドMの心を折ったのか気になりはするけど、わたし知ってる。人の不幸大好きおじさんが喜ぶものに、ろくなものはない。
 ゴードンがこじらせを発動して、アルバートを肉片にしたとか? いや、あのドMならむしろよろこぶから違うかな……。
 
「まず最初の段階として、徹底的に無視したうえでゴードンに甘えまくったって言ったら伝わるかい?」

 …………。
 えっ? なんで逆にそこまでやっといて付き合ってないのゴーチェルわたし達
 まあ前世さくらはゴーチェル地雷だったんだけど。っていうかゴードン関連は夢以外地雷だったけど。

「ヒヒッ、今回アルバートのアプローチが酷くなったの自体、キミが構うからだしねぇ」
「放置が効くタイプのドMだったの。あいつ」
「ヒヒヒッ、放置プレイは好きだろうけど、アウトオブ眼中かつ他の男とイチャイチャは……ねぇ?」

 どうしよう。そう聞くとだんだんアルバートが可哀想に思えてきた。

「もしかして……ヒロインの××を××したいとか××されたいとかヤバいことしか言ってなかったのって、反動もあったのかな……」
「まあそれは普通に趣味だろうね」

 うん、やっぱり全然可哀想じゃないな。

「だってあいつ、のは可愛い女の子なら誰だってそうだしね。『怪異』のモツよりは生きてる子のが新鮮で良さげだろうし……」

 ちょっとー! 具体的なこと言うのやめて!?
 わたしが配慮で伏字にしてたのにー!!!
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