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30.「格付けチェックは突然に」

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 状況を整理しよう。
 
 わたし達の目の前には全裸の変態アルバート
 わたしを助けてくれた騎士エドマンドは、ダメージを受けてぐっすりお休み中。ゴードンが後を託されたとはいえ、わたしは知っている。

 ゴードンじゃ、アルバートには勝てない。

「『怪異』としての格が違うからねぇ……ヒヒッ」

 かたわらでニコラスの声がする。……やっぱり、透明になって観戦していたんだね。

「ゴードンはあくまでキミの『従者』だ。世界を震撼しんかんさせた『殺人鬼』とは格が違う」
「……確かに……エドマンドでさえ、負けてしまう相手だしね」
「ヒヒヒッ、エドマンドも相当強い部類だけど……『相性』の問題だろうねぇ」

 近代において最悪レベルの事件を起こした、抜群ばつぐんの知名度を誇る殺人鬼と、数百年の間、復讐の念のみで「怪異」としてあり続けた騎士。……強さとしては、確かに同格に思える。
 
「アルバートは『理不尽』を体現したような『怪異』だ。悪人だろうと善人だろうと、魔の手にかかる可能性がある。対してエドマンドは、『理不尽に翻弄ほんろうされた』悲劇の騎士としての過去が根幹にある。復讐のために狂ったとはいえ、元はと言えば、エドマンドは怪異と化したんだ」

 ……なるほどね。
 無理が通れば道理が引っ込むと言うし、エドマンドは復讐鬼であっても悪人を倒す英雄ダークヒーローとまではいかない。
 確かに、相性は良くないのかも。

「……それで言うとゴードンも無理かなぁ。『正義の味方のなり損ない』だし」
「ヒヒッ、時代背景や動機はどうあれ、そこらの盗賊とやってることは何も変わらなかったしねぇ」
「そうなんだよねぇ……フワッとした理念で雑に動きすぎて、義賊って呼べるほどの善行も成し遂げてないし……」
「あれっ、俺、なんか地味に酷いこと言われてねぇかな!?」

 ゴードンが涙目で叫ぶ。ほら、既に腰引けてるよ腰! もっと頑張って!
 アルバートはというと、ニヤニヤ笑いながら何やらポーズを模索中。

「どうしようかな……もっとこう……より恥ずかしく、より不埒ふらちで、より嫌悪感のあるポーズを……」

 あっ、完全に遊ばれてるねコレ。

「……まあ、実はというと、可能性はないわけじゃないんだよね。ヒヒッ」

 ……と、ニコラスの声がぽつりと呟く。

「えっ、ホントに!?」
「ヒヒヒッ、簡単な話さ。キミ……『レディ・ナイトメア』も『怪異』としての格が高く、何より館の主人だ。

 ……あ、そっか。
 チェルシーわたしは凶行のほとんどをゴードンの腕っ節に頼ってたわけだから、怪異「レディ・ナイトメア」の格が高ければ高いほど、ゴードンの能力にも補正バフがかかると……

 ……えーと……

「……具体的には、どうすれば?」
「ヒヒッ、そこは自分で考えなきゃあ!」

 ちくしょう! 声が弾んでる!
 楽しそうだねニコラス!!

「お嬢……それで、どうするんスか」
 
 ゴードンが、助けを求めるようにわたしを見る。
 ええー……ホントにどうすれば……!?
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