レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

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22.「怪異どうしが戦うのって、流行ってるんです?」

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 振り解かれた手をじっと見つめ、肩を落とす。
 行動の意図は分からないけど、推しに拒絶されて逃げられたことに違いはない。普通にめちゃめちゃ落ち込む。生きてたらたぶん寝込んでた。

「やれやれ……彼はまた、逃げてしまったんだね」

 背後から穏やかな声が聞こえる。落ち込んでいたせいで、近付く気配に気が付かなかったらしい。
 ガックリ落としたままの肩に、焼けただれた手が伸びるのが見えた。

「僕が、慰めてあげようか?」

 耳元で囁かれ、背筋にゾクッと悪寒が走る。
 ヤバい。また、アルバートへんたいが来た。

「僕なら、君の欲望を余すことなく受け止めてあげられる」
「欲望って何のことですの」
「隠さなくていいんだよ。君と僕は同類だ。僕が痛みを欲するように、君は痛みを与えたがっている」

 あの、決めつけないでもらっていいですか?
 なんて、言ったところで通じなさそう……あっ、ちょ、対応に困ってる間に抱き締めるのやめて!? アルバートは確かにイケメンだけど、わたしはゴードンに抱き締められたいんであって、イケメンなら誰でもいいってわけじゃないんだよね!!

「……離れてくださいます?」
「どうして?」
「どうして、じゃありませんわ」
「僕は君と離れたくない。……ダメかな」

 アルバート、距離感って言葉知ってる?

「わたくしは、今すぐにでも縁を切りたいと思っておりますの!」

 こんな時、ゴードンが近くにいたら当然黙っていない。……というか、アルバートもゴードンがしばらく帰って来ないことを見越した上でちょっかいをかけているんだろう。厄介だな、こいつ……。

「良いじゃないか。ゴードンは君から逃げるけれど、僕は君を求めている」

 求めている、かぁ……。
 食べたい(物理)とか虐められたい(迫真)で求められても、困るよね……。

 わたしが対応に困っていると、近くで重い金属音が聞こえる。
 ……ん? これ……剣を抜いた音、のような……?

「……何のつもりかな。騎士くん」

 わたしに抱きついたまま、アルバートは静かに語る。

「時は来た……」

 エドマンドの声も聞こえる。
 うーん。とっても嫌な予感!! 具体的に言うと、欠損沙汰が始まりそうな予感!!!

「我が刃は屈辱を忘れず、我が魂もまたしかり……!」
「はは……ずいぶんと殊勝しゅしょうなことを言うんだね。死してなお、護れなかったものにしがみつくなんて……まったく、可愛い騎士さんだ」

 えっ? もしかして、アルバートにはエドマンド語がわかるの?

「イイよ……。相手してあげよう。思う存分、好きなだけ、執拗しつようなくらい、めちゃくちゃに切り刻んでね」

 わたしの頭の上でハァハァすんな。
 あと、いつまで抱き締めているつもりなの??

「見ていてよレディ。そして……証明してあげよう。僕こそが、君に相応しい男であると」
刮目かつもくせよ。我が怒りは死をも凌駕りょうがする……!」

 ようやくアルバートがわたしから離れてくれた。……けど……これ、どう考えても一触即発だよね?
 頼むから、わたしを巻き込まないでー!?

「ヒヒヒッ、そう来なくっちゃ!」

 ニコラスさーん!?
 この状況で戦闘BGM流すのやめよー!?
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