20 / 76
19.「真面目に困る」
しおりを挟む
「3……2……1……0……」
レイラが数え終わった途端、エドマンドがカッと目を見開いた。両眼から血の涙が流れ出し、ボタボタと床に垂れる。
「我が魂は復讐に生き、復讐に散るべし……!」
「──────」
「……失礼……。『ダメな波が来ちゃったかも』……と、申しておられる……」
あ、翻訳はしてくれるんだ……。やっぱり、根は真面目なんだね……。
「ヒヒッ、真面目なヤツだからねぇ。正気に戻ろうとはしているけれど、正気になればなるほどキツいって感じじゃないかい?」
ニコラスの声がどこからともなく届き、解説してくれる。どうやら、今は透明になって近くにいるみたいだ。
うーん……難儀な性格だなあ……。いや、わたしも自分の過去見つめ直すのキツいなって思うし、自分を俯瞰的に見れば見るほど「うわ……何この黒歴史……」ってなるから、似たようなことなんだと思うけど……。
何だっけ。仲間の裏切りで主君を殺され、苛烈な拷問を受けた末に生きながらにして復讐の鬼と化し、あと一歩で仇が討てるってところで壮絶な戦死を遂げたとか何とか……。
アレかな。ゲーム内で明かされたダイジェストじゃ分かりにくいけど、正気に戻って思い返したら無理になっちゃう「何か」があったりしたのかな。謀略のエグさとか、拷問の内容とか……?
「困りましたわね……」
正直、背景がシリアスだからこそ、余計に対応が難しい。アルバートみたいな変態やニコラスみたいな性悪の方が、ネタにもなりやすいぶん、まだどうにかなりそうな感じもする。
それで言うと、レイラにも同じことが言えるよね。優しくて繊細な貴婦人が、愛する人に裏切られて呪いを振りまく「怪異」と化したわけだから……。
うっかりゴードンへの想いにかまけそうになっていたけれど、わたしにとってもっとも重要なのはこの館の改革。この二人組への対応も、どうにか考えなきゃいけない。
いつまでも復讐の鬼だったり、呪いの貴婦人でいてもらっては困る。
「ケケケケケケケケケケケケケケ」
……と、背後から聞き覚えのある笑い声が響く。
リナだね。またブリッジ走りしてるのかな?
「聞いて!!!!!!!」
スルーしようと思ったけれど、呼びかけてくる声のテンションがやけに高い。何か良いことでもあったんだろうか。
「な、なんですの……?」
振り返ると、ブリッジでなく四つん這いで走ってきたリナとバッチリ目が合った。……というか、合ってしまった。
「気付いちゃった! こっちのが走る速度早い!!!」
瞳をキラキラと輝かせ、リナは心の底から楽しそうに語る。
……ああ、うん。
彼女はなんというか……平和だなー……。
レイラが数え終わった途端、エドマンドがカッと目を見開いた。両眼から血の涙が流れ出し、ボタボタと床に垂れる。
「我が魂は復讐に生き、復讐に散るべし……!」
「──────」
「……失礼……。『ダメな波が来ちゃったかも』……と、申しておられる……」
あ、翻訳はしてくれるんだ……。やっぱり、根は真面目なんだね……。
「ヒヒッ、真面目なヤツだからねぇ。正気に戻ろうとはしているけれど、正気になればなるほどキツいって感じじゃないかい?」
ニコラスの声がどこからともなく届き、解説してくれる。どうやら、今は透明になって近くにいるみたいだ。
うーん……難儀な性格だなあ……。いや、わたしも自分の過去見つめ直すのキツいなって思うし、自分を俯瞰的に見れば見るほど「うわ……何この黒歴史……」ってなるから、似たようなことなんだと思うけど……。
何だっけ。仲間の裏切りで主君を殺され、苛烈な拷問を受けた末に生きながらにして復讐の鬼と化し、あと一歩で仇が討てるってところで壮絶な戦死を遂げたとか何とか……。
アレかな。ゲーム内で明かされたダイジェストじゃ分かりにくいけど、正気に戻って思い返したら無理になっちゃう「何か」があったりしたのかな。謀略のエグさとか、拷問の内容とか……?
「困りましたわね……」
正直、背景がシリアスだからこそ、余計に対応が難しい。アルバートみたいな変態やニコラスみたいな性悪の方が、ネタにもなりやすいぶん、まだどうにかなりそうな感じもする。
それで言うと、レイラにも同じことが言えるよね。優しくて繊細な貴婦人が、愛する人に裏切られて呪いを振りまく「怪異」と化したわけだから……。
うっかりゴードンへの想いにかまけそうになっていたけれど、わたしにとってもっとも重要なのはこの館の改革。この二人組への対応も、どうにか考えなきゃいけない。
いつまでも復讐の鬼だったり、呪いの貴婦人でいてもらっては困る。
「ケケケケケケケケケケケケケケ」
……と、背後から聞き覚えのある笑い声が響く。
リナだね。またブリッジ走りしてるのかな?
「聞いて!!!!!!!」
スルーしようと思ったけれど、呼びかけてくる声のテンションがやけに高い。何か良いことでもあったんだろうか。
「な、なんですの……?」
振り返ると、ブリッジでなく四つん這いで走ってきたリナとバッチリ目が合った。……というか、合ってしまった。
「気付いちゃった! こっちのが走る速度早い!!!」
瞳をキラキラと輝かせ、リナは心の底から楽しそうに語る。
……ああ、うん。
彼女はなんというか……平和だなー……。
1
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい
エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。
だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい
一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください
mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。
「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」
大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です!
男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。
どこに、捻じ込めると言うのですか!
※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夜会の夜の赤い夢
豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの?
涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる