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8.「芸人orアイドル?」

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 ごたつきはしたものの、何とか主要な「怪異」を集め、席に着かせることができた。

「お嬢、話ってのはいったい……?」

 隣に座ったゴードンが神妙な顔で聞いてくる。さて、どう説明したもんかな。
 わたしが今までの「チェルシー」じゃないとバレるのを避けつつ、呪いの館の改革を切り出さなきゃいけないわけで……。

「わたくし、実は……」

 まあ、考えがないわけじゃない。「いつものワガママか」って思ってもらえれば、違和感はないはずだし。

「リナと、お笑いコンビを組むことにしましたの」

 ゴードンが「はぁ?」と間抜けな声を出し、ニコラスがぶっと吹き出す。「なるほど、つまりは復讐か」とか言ってる騎士と何言ってるか分からない貴婦人は、今日も通常運転で何よりです。

 でも、こう言えばリナも肩を持ってくれるはず。そう思い、テーブルの上でブリッジをするリナを見……

 お前またブリッジしとるんかい!!!!

「コンビ名、『這うナイトメア』でどう? どう???」

 しかもノリノリやないかい!!!!

「い、良いですわね。二人の特徴がしっかり組み合わさっていますわ」
「『這い寄るナイトメア』もアリだよ!」
「まあ、良いですわね。混沌こんとんとした感じがこの館にぴったりですわ」

 ともかく、これをきっかけにして、徐々に屋敷を明るい雰囲気にしていけば、リフォームも夢じゃない。
 ほら、コント用の会場欲しいーとか、ニコラスさん吉〇新喜劇っぽい曲弾いてーとか、色々理由をつければ何とか……!

「ちょっと良いかな」

 ……なんて考えていたら、対面に座った金髪碧眼へきがんの美青年が手を挙げる。

「……何ですの。アルバート」

 彼の名前はアルバート・ジャック。
 今は金髪碧眼の線が細くて見目うるわしい貴公子に「擬態ぎたい」しているけれど、普段は全身が焼けただれた見るからにホラーな外見をしている。

 実はこいつ以外にも、私達はみな、頑張れば生前のような姿に「擬態」できる。疲れるけどね。
 ……ゲーム上でアルバートはそれを利用し、生きた人間のフリをして主人公に近づいて来る。「僕も、君と同じように迷い込んだんだ」……と。
 当然、罠だ。こいつの二つ名は「血まみれ貴公子」。生前は世界を震撼しんかんさせた殺人鬼で、怪異としては「レディ・ナイトメア」と同等かそれ以上にヤバい。攻略対象ではあるけど、こいつのルートに行ってしまうとヤバさが色んな意味で段違いに跳ね上がると言われている。ファンからは「年齢制限を引き上げた男」とさえ呼ばれる始末だ。

 アルバートはニコリと微笑み、指を胸の前で組む。
 何? もしかして、怪しまれた……?

「更にひねって、『這い寄る☆ナイトメア』はどうかな。ついでに、歌とかダンスをやるのもどうだい? デビュー曲は『こうべを垂れて這いつくばれ豚よ』みたいな感じで……」
「それ、貴方の趣味ではなくて?」

 ふう、良かった。疑われたわけじゃなかった。
 良い笑顔でとんでもない発言飛び出てるけどね!

「ふざけんな! お嬢に何歌わせる気だ!」

 ゴードンがテーブルを叩いて抗議する。
 ほんとだよ。アルバートがドMなのはよく知ってるとはいえ、さすがに笑顔でその発言はない。

 ……毎回思うけど、殺人鬼のくせにドMって何?

「もっとこう……可愛いやつ歌わせた方が良いだろ! ピンクのフリフリ着て指でハート作る感じのさぁ!」

 あれー? ゴードン? アイドルの追っかけ趣味なんかあったっけ??

「理解した。復讐の時は近い」

 エドマンド、あんたは黙ってて。

「『こうべを垂れて這いつくばれ豚よ』と『さくらんぼハート』と『復讐の時は近い』ねぇ……ヒヒッ、露出度は高めで……」

 ニコラスさーん!? 何をメモしてるのー!?

「──────」
「……失礼。『トリオになる気はないか』とのことだ」

 えっ、まさかのレイラも乗り気!?
 ……あれ、この館……意外とチョロいのでは……?
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