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第十九話 溢れ出す欲 ※

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 場所は変わって、銀狐の屋敷。
 銀狐は居間の畳の上に里の地図を広げ、何事か思案していた。

「銀狐さーん! お茶れましたよ!」

 そんな銀狐の元に、盆を持った貫八が朗らかな笑顔で現れる。

「お仕事お疲れ様です! 肩揉みますよ!」

 弾けるような笑顔で声をかけてくる貫八に、銀狐は呆れたように返した。

「えらい気が利きはるなぁ。それで? ほんまはを揉みたいん?」
「乳です!」
「…………」

 一周まわって清々しいほどの回答に、銀狐は絶句するより他なかった。

「……あっ、もちろん尻も良いと思ってますよ!」
ぶぶ漬けいかがどすそろそろ帰らんかい
「ここに来て鉄板ネタですか……」

 肩を落とす貫八を一瞥いちべつし、銀狐ははあ……と大きくため息をつく。
 地図を畳みながら、口の中で呟くように告げた。

「肩揉みがどうとか、おためごかしはええ」
「ん?」
「最初から正直に言いなはれ」

 朱の引かれた目尻が、ほんのりと赤らむ。
 悪癖の出る時間が訪れたのか、銀狐の背丈が次第に縮み、狩衣の胸元がふっくらと膨らみ始める。

「別に、嫌やとは言うてへんやろ」

 先程より幾分高くなった声音は、わずかに上ずっていた。

「……! 銀狐さんっ!!」
「!? い、いきなり抱きつきなや……!」

 満面の笑顔で、背後から抱きつく貫八に、銀狐は顔を赤くしつつ抗議をする。
 浅黒い右手が、先程より小さくなった右手と指先を絡める。
 もう片方の手が、銀狐の胸元に伸びた。



「……どこ、触っとるんや」
「嫌やないって言うたけん」

 未だ人間の形の耳元に口を寄せると、貫八は胸の形をなぞるように指を這わせ、大きな手のひら全体でやわやわと揉む。

「ん……っ」

 銀狐の口から甘い吐息が漏れ、頭上にぴょこりと狐の耳が生える。

「……したいんなら、部屋に……」
「ここじゃいけんか?」
「み、見られたらどないすんねん」

 何を言い出すのかと、焦り出す銀狐。
 貫八はニィと口角を吊り上げ、狐の耳を軽く甘噛みした。

「ひぅ……っ!?」
「見せつけちゃればええ」

 貫八は狩衣の袖から腕を差し入れ、内側から胸元に手を伸ばす。
 主張し始めた突起を探り当て、肌着の上からくにくにといじり始めた。

「あぅっ、うぅ……」

 周りに聞かれないよう声を噛み殺す銀狐。
 その姿を愛おしげに見つめ、貫八は再び耳元で囁いた。

「過去のことはええ。辿り着けなんだわしが悪いけん」
「うぁっ、ふ、ぅう……っ」

 乳房を揉まれ、突起をまさぐられ、銀狐の吐息が徐々に熱を帯び始める。

「ほいでも、今は違うぞな」
「……っ、あ……」

 袴越しに硬くなった「それ」に触れ、銀狐は思わず息を飲んだ。

「銀狐。おんしを抱いてええのはわしだけじゃ」

 赤黒い舌が、白い首筋をねぶる。
 赤い瞳を輝かせ、貫八は銀狐の身体をきつく抱き締めた。
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