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エレーヌ・アルノーの追憶
第四話ㅤ予感はしていた ※R18要素あり
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彼の手がわたしの胸元に伸び、服の上から乳房の形をなぞる。
「……ふーん」
何が「ふーん」なのだろう。こういうところは、やっぱり失礼な男だ。
「ん……っ、好みじゃなかった?」
「そうじゃないけど……下着にこだわるの、僕にはよくわからなくて」
髪の色を似合わないとか言っておきながら、ファッションには疎いらしい。……疎い、というより無頓着なのかも。
よく見れば本人の服装はいたってシンプルなシャツとデニムパンツ。顔が整っているから、むしろそれくらいの方が映えるのかもしれない。
「今まで抱いてきたコはどうだったの?」
「人をヤリチンみたいに言わないでよ。絶対誤解してるでしょ」
少しだけ眉根を寄せて、彼はわたしの唇を奪った。舌を差し込み、口腔内をなぞる。
慣れているか、慣れていないかでいうと、その中間くらい。そこそこ上手いし下手ではないけれど、言ってしまえば普通のキスだった。
彼は壁にわたしの身体を押し付け、片手を腰に回す。唇を離せば、蒼い瞳と目が合った。
「……で、どうだったの?」
肩で息をしながら、再び尋ねてみる。
「……モントリオールで初めて抱いた子? それとも、ストラスブールの子? ……あ、デュッセルドルフでも経験したかな」
「ちゃんと色男してるじゃない」
「誘いを拒まなかっただけだし、全員1回ずつだよ。……デュッセルドルフの子は2回だったかな……」
「そんなのは聞いてない」
どうにも、この口は余計なことをぺらぺらと喋りすぎる。でも、キスで塞いでしまえば何も問題ないわ。
「誰が一番魅力的かって、聞いてるの」
軽い口付けだけに留め、蒼い瞳を見つめると、彼は「え」と一言だけ呟いて黙り込む。
……そう、それでいいの。黙っていれば本当にキレイな顔立ちで、惚れ惚れしてしまう。
「……それは……君、かな」
そうでしょうね。
愛されるだけの努力はしてきたもの。
「本当に? あなたにそう言ってもらえるなんて、嬉しい……」
わたしの腰を撫でる手が強ばる。
間近にいるから、動揺が手に取るように伝わる。……だから、更に続けた。
「避妊なら問題ないわ」
意味を察してか、カミーユの喉が鳴る。
「だから、最後まで……ね?」
念を押すように囁いた。
「参ったな……」
「何が? わたしを喜ばせて、あなたが困ることって、ある?」
ためらいを脱ぎ捨てさせるよう、首に手を回す。
ワンピースから伸びた脚を絡めて、心音が響くほど身体をくっつける。
「どうしてためらうの? ……わたしのことが、嫌?」
「……ッ、嫌じゃ、ない。嫌じゃないけど……」
その言葉の続きを、彼は飲み込んだ。乱れた吐息を隠すことも無くベルトに手をかけ、本能の宿った蒼が輝く。
「気になるわ」
彼の理性に語りかける。
「君は…………」
するりと腿に手が伸びる。震えながらも、彼は湿ったソコに触れた。熱いため息と、ゴクリと唾を飲む音が、やけに大きく聞こえる。
「君は、怖い女だね」
本能に天秤が傾く間際、彼はそれだけ吐き捨て、再びわたしの唇を奪った。ショーツの紐が片方だけ解かれ、暴かれた秘所が外気に晒される。
どういう意味? なんて聞く暇もなく、彼の指が肉壁をかき分け、溢れる蜜を頼りにナカへと入ってきた。
「あ……っ」
そのままぐちゅぐちゅと掻き回される。
弱い箇所を探り当てるように、彼の指がわたしの内側を蠢く。
カミーユは絡めた舌を離さない。わたしに何も語らせず、深く、深く貪り続ける。口の端から唾液が伝うのがわかる。
「ふ……、は、んぅ……っ」
下腹部の熱が昂る。切ない疼きがオトコを求める。
「カミー、ユ……っ」
唇が離れた瞬間、名を呼んだ。
「……っ、挿れて、いいんだよね……?」
わたしに聞いたのか、自問自答か、わからない呟きが漏れる。
「はやく……っ」
今度は本能に呼びかけた。
「……ぁ」
熱を持ったソレが、わたしの入口をなぞる。
切なくて甘い痺れが、意識を溶かす。
「ひ、ん……っ、焦ら、さ……ぁ、ない……でぇ……っ」
彼は亀頭を擦り付けるだけ擦り付けて、一向にナカに入ってこない。
「……ぅ、あ……、……くっ」
「あぁっ、ん……ぅう、い、挿れて……っ、挿れてよ……! 欲しい、の……!」
この期に及んで二の足を踏んでいるのか、焦らすつもりなのか、単に下手だから入らないのか、わからないままもどかしい熱が溜まっていく。
「……ぁ、ん……っ」
「ひ、はいっ……て、きた……っ、あぁあっ」
ようやくにゅるりと入ってきたソレを、わたしの膣が逃がさないよう咥え込む。きゅうきゅうと締め付ければ、カミーユはナカで痙攣するように震える。
みるみるうちに奥に滑り込んで、貫かれたまま突き動かされる。思ったよりも乱暴な動きで揺さぶられ、絶頂が近づいていく。
「やぁ、ぁ、はげ、し……っ」
「ごめ、止まら、な……っ、く、ぅあぁっ」
オトコの喘ぎが耳元をくすぐる。彼はしっかりとわたしの腰をわし掴み、一度いきり立ったソレを抜いた。
そのままわたしの体を反転させ、壁に手をつけさせると、今度は背後からわたしの膣を貫く。
ゾクゾクと快感が背筋を駆け抜け、脚が震える。ペンだこだらけの手が腰をがっしりと掴んで離さない。
「ぃ、あぁあっ、も、イク……イクゥ……っ」
「……っ、あ……! すご、締まる……っ」
容赦のない律動に責め立てられ、快楽の波が脳髄を突き抜けた。
ナカでドクン、ドクンと脈打つ欲望。ずるりと抜かれてから、彼も達したのだと気付いた。
「はぁ……ぁ……」
生ぬるい蜜が腿を伝う。さっきまで貫かれていた秘所がヒクヒクと収縮し、奥に放たれた精を飲み干す。
霞がかかったような思考のまま、壁に体重を預ける。
カミーユはしばらく呆然と突っ立っていたが、やがて、思い出したかのようにわたしに声をかけた。
「……あ、えっと……名前、何だったっけ……」
わたしは覚えていたのに……。
本当に、こういうところは野暮ったい。
「エレーヌ。エレーヌ・アルノー」
「エレーヌ……えーと、エレーヌ・ジュルダン=モランジュと同じエレーヌ?」
「たぶん、そうね」
確か、ピアニストかヴァイオリニストだったかしら。ミュージシャンだったのはわかる。
他にエレーヌの綴りがあるかどうかは知らないけど。
「次からは、忘れないで」
この時、わたしは心から「次」があることを望んだ。
カミーユはやっぱり動揺したようで、しばらく返答に迷っていたけど……やがて、「うん」と頷いた。
ここで終わらせておけば……なんて、それも馬鹿馬鹿しい後悔にすぎない。終わらせることができなかったから、わたし達は、あんな結末しか選べなかったのに。
「……ふーん」
何が「ふーん」なのだろう。こういうところは、やっぱり失礼な男だ。
「ん……っ、好みじゃなかった?」
「そうじゃないけど……下着にこだわるの、僕にはよくわからなくて」
髪の色を似合わないとか言っておきながら、ファッションには疎いらしい。……疎い、というより無頓着なのかも。
よく見れば本人の服装はいたってシンプルなシャツとデニムパンツ。顔が整っているから、むしろそれくらいの方が映えるのかもしれない。
「今まで抱いてきたコはどうだったの?」
「人をヤリチンみたいに言わないでよ。絶対誤解してるでしょ」
少しだけ眉根を寄せて、彼はわたしの唇を奪った。舌を差し込み、口腔内をなぞる。
慣れているか、慣れていないかでいうと、その中間くらい。そこそこ上手いし下手ではないけれど、言ってしまえば普通のキスだった。
彼は壁にわたしの身体を押し付け、片手を腰に回す。唇を離せば、蒼い瞳と目が合った。
「……で、どうだったの?」
肩で息をしながら、再び尋ねてみる。
「……モントリオールで初めて抱いた子? それとも、ストラスブールの子? ……あ、デュッセルドルフでも経験したかな」
「ちゃんと色男してるじゃない」
「誘いを拒まなかっただけだし、全員1回ずつだよ。……デュッセルドルフの子は2回だったかな……」
「そんなのは聞いてない」
どうにも、この口は余計なことをぺらぺらと喋りすぎる。でも、キスで塞いでしまえば何も問題ないわ。
「誰が一番魅力的かって、聞いてるの」
軽い口付けだけに留め、蒼い瞳を見つめると、彼は「え」と一言だけ呟いて黙り込む。
……そう、それでいいの。黙っていれば本当にキレイな顔立ちで、惚れ惚れしてしまう。
「……それは……君、かな」
そうでしょうね。
愛されるだけの努力はしてきたもの。
「本当に? あなたにそう言ってもらえるなんて、嬉しい……」
わたしの腰を撫でる手が強ばる。
間近にいるから、動揺が手に取るように伝わる。……だから、更に続けた。
「避妊なら問題ないわ」
意味を察してか、カミーユの喉が鳴る。
「だから、最後まで……ね?」
念を押すように囁いた。
「参ったな……」
「何が? わたしを喜ばせて、あなたが困ることって、ある?」
ためらいを脱ぎ捨てさせるよう、首に手を回す。
ワンピースから伸びた脚を絡めて、心音が響くほど身体をくっつける。
「どうしてためらうの? ……わたしのことが、嫌?」
「……ッ、嫌じゃ、ない。嫌じゃないけど……」
その言葉の続きを、彼は飲み込んだ。乱れた吐息を隠すことも無くベルトに手をかけ、本能の宿った蒼が輝く。
「気になるわ」
彼の理性に語りかける。
「君は…………」
するりと腿に手が伸びる。震えながらも、彼は湿ったソコに触れた。熱いため息と、ゴクリと唾を飲む音が、やけに大きく聞こえる。
「君は、怖い女だね」
本能に天秤が傾く間際、彼はそれだけ吐き捨て、再びわたしの唇を奪った。ショーツの紐が片方だけ解かれ、暴かれた秘所が外気に晒される。
どういう意味? なんて聞く暇もなく、彼の指が肉壁をかき分け、溢れる蜜を頼りにナカへと入ってきた。
「あ……っ」
そのままぐちゅぐちゅと掻き回される。
弱い箇所を探り当てるように、彼の指がわたしの内側を蠢く。
カミーユは絡めた舌を離さない。わたしに何も語らせず、深く、深く貪り続ける。口の端から唾液が伝うのがわかる。
「ふ……、は、んぅ……っ」
下腹部の熱が昂る。切ない疼きがオトコを求める。
「カミー、ユ……っ」
唇が離れた瞬間、名を呼んだ。
「……っ、挿れて、いいんだよね……?」
わたしに聞いたのか、自問自答か、わからない呟きが漏れる。
「はやく……っ」
今度は本能に呼びかけた。
「……ぁ」
熱を持ったソレが、わたしの入口をなぞる。
切なくて甘い痺れが、意識を溶かす。
「ひ、ん……っ、焦ら、さ……ぁ、ない……でぇ……っ」
彼は亀頭を擦り付けるだけ擦り付けて、一向にナカに入ってこない。
「……ぅ、あ……、……くっ」
「あぁっ、ん……ぅう、い、挿れて……っ、挿れてよ……! 欲しい、の……!」
この期に及んで二の足を踏んでいるのか、焦らすつもりなのか、単に下手だから入らないのか、わからないままもどかしい熱が溜まっていく。
「……ぁ、ん……っ」
「ひ、はいっ……て、きた……っ、あぁあっ」
ようやくにゅるりと入ってきたソレを、わたしの膣が逃がさないよう咥え込む。きゅうきゅうと締め付ければ、カミーユはナカで痙攣するように震える。
みるみるうちに奥に滑り込んで、貫かれたまま突き動かされる。思ったよりも乱暴な動きで揺さぶられ、絶頂が近づいていく。
「やぁ、ぁ、はげ、し……っ」
「ごめ、止まら、な……っ、く、ぅあぁっ」
オトコの喘ぎが耳元をくすぐる。彼はしっかりとわたしの腰をわし掴み、一度いきり立ったソレを抜いた。
そのままわたしの体を反転させ、壁に手をつけさせると、今度は背後からわたしの膣を貫く。
ゾクゾクと快感が背筋を駆け抜け、脚が震える。ペンだこだらけの手が腰をがっしりと掴んで離さない。
「ぃ、あぁあっ、も、イク……イクゥ……っ」
「……っ、あ……! すご、締まる……っ」
容赦のない律動に責め立てられ、快楽の波が脳髄を突き抜けた。
ナカでドクン、ドクンと脈打つ欲望。ずるりと抜かれてから、彼も達したのだと気付いた。
「はぁ……ぁ……」
生ぬるい蜜が腿を伝う。さっきまで貫かれていた秘所がヒクヒクと収縮し、奥に放たれた精を飲み干す。
霞がかかったような思考のまま、壁に体重を預ける。
カミーユはしばらく呆然と突っ立っていたが、やがて、思い出したかのようにわたしに声をかけた。
「……あ、えっと……名前、何だったっけ……」
わたしは覚えていたのに……。
本当に、こういうところは野暮ったい。
「エレーヌ。エレーヌ・アルノー」
「エレーヌ……えーと、エレーヌ・ジュルダン=モランジュと同じエレーヌ?」
「たぶん、そうね」
確か、ピアニストかヴァイオリニストだったかしら。ミュージシャンだったのはわかる。
他にエレーヌの綴りがあるかどうかは知らないけど。
「次からは、忘れないで」
この時、わたしは心から「次」があることを望んだ。
カミーユはやっぱり動揺したようで、しばらく返答に迷っていたけど……やがて、「うん」と頷いた。
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