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外伝 ある破戒僧の愛(再掲)
後編(2) Questa è la vita. ※
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寝台の上で四つん這いになったコンラートくんの上にヴィルくんが覆い被さる。
正常位以外やらない……というわけではないんだね。いや、男同士でセックスしてる時点で今更か。
「う……んっ、くぅう……っ」
コンラートくんはヴィルくんのペニスをすんなりと受け入れ、声を殺しながらも既に乱れつつあった。
ぐちゅ、ぐちゅ、と、繋がった箇所から精が溢れ、青白い腿を伝う。おお、これはなかなか……
「……っ、ぁ……主、よ……っ、おゆるしを……っ」
快楽に飲まれそうな声で、コンラートくんは神に赦しを乞う。
そういうの、僕は逆に興奮するんだけど……ヴィルくんはどうなんだろう。
「……で、マジで他の方法はねぇんだよな?」
僕も下穿きを脱いで準備していると、ヴィルくんが怪訝そうに聞いてくる。コンラートくんには突っ込んだままだけど、まだイかせないよう浅いところを味わっている……そんな腰使いだ。
「ふ……ぅ、んん……ッ」
コンラートくんは健気にも喘ぎを押し殺そうと、唇を噛む。それを察してか、ヴィルくんはコンラートくんの口元に指を差し出し、噛ませる。
どこからどう見ても「そういう仲」なんだけど……本人達が否定してるからなぁ。
「他の方法もあるにはあるよ。要するに繰り返し気絶させて、その度に起こせばいいんだし」
「うし、続けますよ神父様!」
僕の返答に対し、ヴィルくんは乱交を続けることを選んだらしい。
……まあ、だろうね。腹や鳩尾を殴って水をぶっかけるよりは、どう考えてもマシなわけだし。
「じゃあ、失礼するよ」
「……チッ……。神父様ぁ、嫌ならすぐ言ってくれな」
僕がコンラートくんの前に膝立ちすると、ヴィルくんは渋々ながらも手を退ける。牙の痕から、赤い血が一筋流れ落ちたのが見えた。
「ん……ぅ、は……ぁ、ァ、あぁあっ!」
「あー、これ聞こえてねぇかも」
コンラートくんはと言うと、既に快楽に溺れているようだ。赤く染まった瞳が僕のペニスを見つめ、熱く乱れた吐息が睾丸にかかる。
唇に亀頭を押し当てると、コンラートくんはためらう様子もなくしゃぶり始めた。
「……ッ、これは……イイね……」
吸血鬼は唾液に麻酔作用が含まれるんだけど、それがなかなか癖になる。ペニスの場合は粘膜を通してじわじわ効くうえ、大抵の吸血鬼は体液を啜るため(おそらくは本能的に)精を絞り出そうとするから舌遣いが上手い。
だから僕は、吸血鬼の妻とセックスをする時も、必ずフェラチオをしてもらうことにしている。セックスは気持ちいいのが一番だからね。
「んじゃあ、さっさとイかせますよ~」
ヴィルくんはこちらを睨み付けながら、腰の動きを早める。
「あっ、待っ……は、はや……ぁあッ!?」
後ろから突き上げられ、コンラートくんの腕ががくがくと震え、耐えきれずに頭がシーツに沈む。その拍子に、咥えていたペニスも口から離れてしまう。
「ダメだよ。ちゃんと咥えて。視えなくなっちゃうからね」
「ぅ……ン、んむ……っ」
「そうそう、上手だよ」
頭を撫でつつ、絶頂の瞬間を待つ。
やがて、コンラートくんは稲妻に撃たれたかのように青白い背中を震わせた。
「────ッ!」
「……ッ、一回目……っ!」
ヴィルくんが嬉しそうに口角を吊り上げる。
コンラートくんは声にならない声を上げ、僕は彼の口が離れないように頭を押さえる。
その瞬間、先程視えた陰りが目の前に現れる。……が、正体を捉える前に消えていった。
それでも、何となく輪郭は掴めた。これは、おそらく……
「……ああ……なるほど、ね。もう2~3回、お願いできるかい?」
「へいへい……ッ、神父様ぁ! 早く……っ、終わらせます、ん、でっ! 頑張って……っ! ください、ねッ!」
「……っ、ぅ、ンッ!? んぅ────!?」
「へへ……2回目ぇッ!」
ヴィルくんは僕がいることも忘れて懸命に腰を打ち付け、コンラートくんは与えられる快感を受け入れ、僕のを咥えたまま恍惚とした表情を見せる。
ヴィルくんに頼んだ通り、コンラートくんの絶頂が3~4回目に達した頃、どうにか手応えが掴めた。
「は……ッ、ありがとう……もう……っ、充分、かな」
口の中に精を吐き出し、コンラートくんの頭を離す。
ベッドの上にぐたりと身を横たえ、肩で息をし、コンラートくんは僕の精をゆっくりと飲み下した。
「……は、ぁ……は……。……?」
わずかに首を傾げ、コンラートくんは口の周りの白濁も舐め取る。
可愛いな、この子。顔も身体も均整が取れていて綺麗だし、ヴィルくんが夢中になるのもよくわかる。
「……まずい……」
惚けた声が、ぽつりと……ん? まずい? あれ? 今不味いって言われた?
そりゃあ体液の味に好みはあるだろうけど、フランスの妻には美味しいって言われて……いや、もしかして、ドイツ人の舌には会わない味、とか……?
「オレので口直しします? めっちゃくちゃ我慢したんで、いっぱい出ますよ……!」
ヴィルくんがすかさず、そり勃ったままのペニスを後孔から引き抜く。
「あっ」と身を震わせ、コンラートくんは熱に浮かされた視線でヴィルくんの方を見た。
「オレのがデカいし美味いし、しゃぶりがいあるっしょ……! なぁ、そうっすよね!?」
「ん……ッ、む、んぐ……っ、んぅう……」
なんだか、やたらと張り合われているけど、まあ、いいか。
コンラートくんの「食事」が終わるまで、ちょっとだけ待つとしよう。
***
コンラートくんを寝台に寝かせ、僕とヴィルくんは寝台のへりに並んで座る。
「……で、どうだった?」
眠るコンラートくんの頭を撫で、ヴィルくんは僕に問いかけた。
「良かったよ。見込み通り、素晴らしい舌遣いだった」
「違ぇよそっちじゃねぇよ。マジでチンコもぐぞ」
「ごめん勘違いした。魂の陰り、だったね!」
殺気を出されたけど、わざとじゃないから許して欲しい。
というか、これはヴィルくんの聞き方も悪かったと思うんだ!
「……あれは……一言で言えば憎悪、かな。かなり蝕まれているように視えたよ」
「神父様、オットーに刺されてたし……呪いがまだ効いてんのか……?」
「いいや、オットーの呪いはフラテッロ・マルティンが処理したはずだ。……けど、そうだね……強いて言うなら、きっかけの一つではあるかもしれない」
「…………ああ。神父様本人が、人を憎んでるってことか」
僕の指摘に、ヴィルくんは納得したようにコンラートくんの方を見る。
「……だろうなぁ」
愛おしそうに、それでいて悲しそうに、ヴィルくんはコンラートくんの額に口付けた。
「どうにか抑えつけているみたいだし、忘れようと努力しているのも感じたんだけど……それなりに、強烈なものを抱えているみたいだ」
僕が補足すると、ヴィルくんは自嘲気味な笑みを漏らす。
何かを思い返すように目を細め、彼はコンラートくんの髪を撫でた。武骨な手に似合わず、その動きは壊れ物に触れるかのように優しい。
「憎んで当たり前だよ。それだけのことを、この人はされたんだ」
「……そうかい」
僕には、正確なことは何一つ分からないし、何もしてあげられない。
アンジェラなら食べてあげられたのかな。あの、自分すら滅ぼしかねないような、激しい憎悪を……
「……憎悪、かぁ。危険な感情なのはわかるんだけど……どう扱えばいいのかなあ。僕は、そこら辺には疎いから……」
僕がぼやくと、ヴィルくんが静かな声で語る。
「オレは着いてくだけだよ。神父様がどんな道を選ぼうが、味方になるって決めてんだ」
茶色の瞳が確かな決意を宿し、煌めく。
「愛してるんだね。素晴らしいことだ」
僕が言うと、ヴィルくんは照れたように笑った。
子どものように無邪気な表情で、彼は言葉を続ける。
「へへ……。そうだよ、愛してる」
昔よりはかなりマシになったとはいえ、僕は他人の気持ちを推し量るのが得意じゃない。だけど、彼の表情が、愛に生きる男のものだとはわかる。
それなら……そうだね。僕のやることは決まっている。
「ちょっと、伝えたいことがあるんだ」
「……あ?」
コンラートくんの身体に手を伸ばすと、笑顔のままガシッと手首を掴まれる。凄まじい反射神経だ。
仕方ないから、自分の身体を指さして伝えることにした。
「……ええとね……脇腹のこの辺り、かな。気を付けた方がいい。吸血鬼は人間と『急所』が微妙に異なるからね」
何が正しくて、何が善なのか、僕にはよく分からない。
ただ、僕も、彼と同じく愛に生きる男だ。それだけは間違いない。……だから、力になりたい。
もちろんコンラートくんが可愛いというのも、理由の一つではあるのだけど。
「悪魔祓い達は『殺し続ければいつか死ぬ。特に日光の当たる場所なら殺しやすい』程度のことしか知らないんだけど……君は、知っておくべきだと思ってね」
「……ソコ、何かあんのか」
「身体の治癒を司る器官、かな。その臓器が破壊されると、傷の回復ができなくなる。普段なら耐えられるような傷でも、死んでしまう可能性があるんだよ」
「……! マジか……!」
ヴィルくんはさぁっと青ざめ、僕の顔に視線を向ける。
悪魔祓い仲間にも教えていない……というか教えられない情報だけど、ヴィルくんには必要だろう。
僕が複数人の女性に向けている「愛」を、ヴィルくんはコンラートくん一人に向けている。彼が愛しい人を失うことは、つまり、僕の妻が全員死んでしまうことと似ているんじゃないだろうか。もちろん、たった一人でもつらいものはつらいのだけど……それに加えて愛する人を全て失い、一人になるなんて……考えるだけで胸が張り裂けてしまいそうだ。
「彼らは頑丈だから、灰になるまでは『死んだ』とは言えない。……ただ……コンラートくんの場合は、少し危ういかな」
「危ういって……?」
「吸血鬼の特性が強めに出ている、ということは『一度死んだ』可能性があるんだ」
僕の言葉に、ヴィルくんははっと息を飲む。もしかして、心当たりがあるのかな。
……目の前で……だったり、したのかもしれないね。
「その状態だと腕力も回復力も高まるけれど、吸血衝動が酷くなるし、一般的な吸血鬼よりも人間由来の栄養素が多く必要になる。太陽への耐性も弱まるし……何より、寿命がかなり縮んでいるはずだ。……まあ、吸血鬼の寿命は人より長いんだけどね」
ヴィルくんは黙って聞いていたけれど、やがて「そっか」と呟き、コンラートくんの手を握った。
「護らねぇと」
ギリッと歯を食いしばり、握りしめた手にも力が入るのが見てとれた。
「……ああ、でも、あくまで君の方が『死にやすい』ことも忘れない方がいいよ」
「あー……そっか。じゃあ、死んでも護れるようにならなきゃ……」
「それは……どうだろう」
先程視た、コンラートくんの魂の状態を思い返す。
「さっき言ったじゃないか。コンラートくんは激しい憎悪を抱えてる。支えてくれる君を失ったら、どうなってしまうか分からないよ」
とはいえ、こういう話はマルティンの方が得意だろうけどね。……そう言えば彼女、いつまで休憩しているんだろう。様子を見てきた方がいいのかな。
「……オレのことなんか、全然、好きに利用してくれていいのに。なんなら、踏み台にしてくれたって構わねぇし……」
うーん? どうしてそうなるんだろう。
僕から見たって、相思相愛だとわかるくらいなのに。
「ん……」
「あ、起きた。大丈夫っすか神父様?」
「……視えた、のか?」
「オレが聞いといたんで、後で教えるっす。今はマルティンが帰ってきそうなんで……」
二人が会話するのをぼんやり見ていると、ノックの音が部屋に響いた。
僕が「入っていいよ」と返事をすると、ドアがゆっくりと開く音がする。
「も、もう、さすがに終わってるわよね……?」
ドアの方角から、マルティンの声が聞こえる。ヴィルくんの勘が冴えていたのかな。なかなか良いタイミングだ。
声の方へ視線を投げると、様子をちらちらと伺い、ほっとした様子で部屋の中に足を踏み入れるマルティンが見えた。ちょっと赤面している辺り、相変わらず純情で可愛いなと思わなくもない。彼女はこの前まで処女だったわけだし、そうなるのも仕方ないか。
「テオドーロ、早めに出発するわよ。オットーは倒したんだもの。二人と一緒にい過ぎるのは良くないわ」
……立場を気にしているのも、相変わらずみたいだね。
「どうせ肩入れしているんだから、味方になってあげればいいのに」
「……分かってるくせに」
「ああ……まあ、そうだね。『一族』のしがらみは、君にとってよっぽど重いものらしい」
出発自体はいつでも可能だ。そろそろ僕も眠くなっては来たけれど、妻の力を借りればどこでだって休息は取れる。……そろそろ、構ってあげないと拗ねそうだしね。
くるりとコンラートくん達の方を振り返り、手を振る。
「じゃあ、チャオ! ……って言いたいところだけど、もう会わない方がいいのかな?」
「お互い会わねぇようにしようぜ。全然別の場所行くとかさ」
「今はそれがいいね。じゃあフラテッロ、僕とイタリアにデートに行かないかい?」
「フランスなら付き合うわよ。……一応、報告しようがあるもの」
確かに、フランスでは吸血鬼達が集まって同盟を組もうとしているし、「それに加わりそうだった」と報告すれば教会にも納得してもらえそうだ。……少し過激な向きがあるから、二人には伝えたくないけどね。
コンラートくんは僕達の会話を黙って聞いていたけれど、やがて、口を開いた。
「力になってくださったこと、感謝します」
「……やめなさいよ。利害が一致しただけじゃない」
「それでもです。助かりました」
マルティンは眉をひそめながら答えるけれど、コンラートくんは律儀に胸の前で指を組んだ。礼儀正しいなぁ。
心の内は激しい憎悪で煮えたぎっているだろうに、彼はそれを表に出さない。……もしかしたら、能力も、彼が落ち着いて見えることに一役買っているのかな?
他人に自らを「冷静」に見せるための匂い……か。可能性は高いね。
「じゃ、幸運を祈るよ。ヴィルくんと喧嘩したら、いつでも慰めてあげよう」
「おい、サラッと何言ってやがる」
「言っただろう? 僕の愛は、僕にすら止められなあいたたたフラテッロ!! 耳を引っ張って引きずるのはやめてくれ!! ちぎれる!!!」
「遊んでないでさっさと行くわよお馬鹿!!」
マルティンに引きずられながら、部屋を後にする。
もう二度と会わない方が、互いにとっては良い道だろう。ヴィルくん達は悪魔祓いと戦わずに済むし、マルティンは迷いを振り切ることができる。
……だけど、どうしてだろう。予感のようなものがあった。
僕達はまた、どこかで出会う運命にあるんじゃないか……って。
***
「……どうして、フランクは『オットー・シュナイダー』を持ち出したんだろうね」
宿の外に出たあたりで、気になっていたことを口にする。
マルティンも僕の耳から指を離し、小さく頷いた。
「奇遇ね。わたしも疑問に思っていたわ」
コンラートくんを脅威に感じたからだとしても、あまりにリスクが大きすぎる。
他に手頃な武器が見つからなかったのか、それとも……
誰かに、そそのかされたのか。
木枯らしが吹き抜ける街道を、マルティンと無言で歩く。
どうやらフランスに向かうより前に、調べなきゃいけないことがあるようだ。
正常位以外やらない……というわけではないんだね。いや、男同士でセックスしてる時点で今更か。
「う……んっ、くぅう……っ」
コンラートくんはヴィルくんのペニスをすんなりと受け入れ、声を殺しながらも既に乱れつつあった。
ぐちゅ、ぐちゅ、と、繋がった箇所から精が溢れ、青白い腿を伝う。おお、これはなかなか……
「……っ、ぁ……主、よ……っ、おゆるしを……っ」
快楽に飲まれそうな声で、コンラートくんは神に赦しを乞う。
そういうの、僕は逆に興奮するんだけど……ヴィルくんはどうなんだろう。
「……で、マジで他の方法はねぇんだよな?」
僕も下穿きを脱いで準備していると、ヴィルくんが怪訝そうに聞いてくる。コンラートくんには突っ込んだままだけど、まだイかせないよう浅いところを味わっている……そんな腰使いだ。
「ふ……ぅ、んん……ッ」
コンラートくんは健気にも喘ぎを押し殺そうと、唇を噛む。それを察してか、ヴィルくんはコンラートくんの口元に指を差し出し、噛ませる。
どこからどう見ても「そういう仲」なんだけど……本人達が否定してるからなぁ。
「他の方法もあるにはあるよ。要するに繰り返し気絶させて、その度に起こせばいいんだし」
「うし、続けますよ神父様!」
僕の返答に対し、ヴィルくんは乱交を続けることを選んだらしい。
……まあ、だろうね。腹や鳩尾を殴って水をぶっかけるよりは、どう考えてもマシなわけだし。
「じゃあ、失礼するよ」
「……チッ……。神父様ぁ、嫌ならすぐ言ってくれな」
僕がコンラートくんの前に膝立ちすると、ヴィルくんは渋々ながらも手を退ける。牙の痕から、赤い血が一筋流れ落ちたのが見えた。
「ん……ぅ、は……ぁ、ァ、あぁあっ!」
「あー、これ聞こえてねぇかも」
コンラートくんはと言うと、既に快楽に溺れているようだ。赤く染まった瞳が僕のペニスを見つめ、熱く乱れた吐息が睾丸にかかる。
唇に亀頭を押し当てると、コンラートくんはためらう様子もなくしゃぶり始めた。
「……ッ、これは……イイね……」
吸血鬼は唾液に麻酔作用が含まれるんだけど、それがなかなか癖になる。ペニスの場合は粘膜を通してじわじわ効くうえ、大抵の吸血鬼は体液を啜るため(おそらくは本能的に)精を絞り出そうとするから舌遣いが上手い。
だから僕は、吸血鬼の妻とセックスをする時も、必ずフェラチオをしてもらうことにしている。セックスは気持ちいいのが一番だからね。
「んじゃあ、さっさとイかせますよ~」
ヴィルくんはこちらを睨み付けながら、腰の動きを早める。
「あっ、待っ……は、はや……ぁあッ!?」
後ろから突き上げられ、コンラートくんの腕ががくがくと震え、耐えきれずに頭がシーツに沈む。その拍子に、咥えていたペニスも口から離れてしまう。
「ダメだよ。ちゃんと咥えて。視えなくなっちゃうからね」
「ぅ……ン、んむ……っ」
「そうそう、上手だよ」
頭を撫でつつ、絶頂の瞬間を待つ。
やがて、コンラートくんは稲妻に撃たれたかのように青白い背中を震わせた。
「────ッ!」
「……ッ、一回目……っ!」
ヴィルくんが嬉しそうに口角を吊り上げる。
コンラートくんは声にならない声を上げ、僕は彼の口が離れないように頭を押さえる。
その瞬間、先程視えた陰りが目の前に現れる。……が、正体を捉える前に消えていった。
それでも、何となく輪郭は掴めた。これは、おそらく……
「……ああ……なるほど、ね。もう2~3回、お願いできるかい?」
「へいへい……ッ、神父様ぁ! 早く……っ、終わらせます、ん、でっ! 頑張って……っ! ください、ねッ!」
「……っ、ぅ、ンッ!? んぅ────!?」
「へへ……2回目ぇッ!」
ヴィルくんは僕がいることも忘れて懸命に腰を打ち付け、コンラートくんは与えられる快感を受け入れ、僕のを咥えたまま恍惚とした表情を見せる。
ヴィルくんに頼んだ通り、コンラートくんの絶頂が3~4回目に達した頃、どうにか手応えが掴めた。
「は……ッ、ありがとう……もう……っ、充分、かな」
口の中に精を吐き出し、コンラートくんの頭を離す。
ベッドの上にぐたりと身を横たえ、肩で息をし、コンラートくんは僕の精をゆっくりと飲み下した。
「……は、ぁ……は……。……?」
わずかに首を傾げ、コンラートくんは口の周りの白濁も舐め取る。
可愛いな、この子。顔も身体も均整が取れていて綺麗だし、ヴィルくんが夢中になるのもよくわかる。
「……まずい……」
惚けた声が、ぽつりと……ん? まずい? あれ? 今不味いって言われた?
そりゃあ体液の味に好みはあるだろうけど、フランスの妻には美味しいって言われて……いや、もしかして、ドイツ人の舌には会わない味、とか……?
「オレので口直しします? めっちゃくちゃ我慢したんで、いっぱい出ますよ……!」
ヴィルくんがすかさず、そり勃ったままのペニスを後孔から引き抜く。
「あっ」と身を震わせ、コンラートくんは熱に浮かされた視線でヴィルくんの方を見た。
「オレのがデカいし美味いし、しゃぶりがいあるっしょ……! なぁ、そうっすよね!?」
「ん……ッ、む、んぐ……っ、んぅう……」
なんだか、やたらと張り合われているけど、まあ、いいか。
コンラートくんの「食事」が終わるまで、ちょっとだけ待つとしよう。
***
コンラートくんを寝台に寝かせ、僕とヴィルくんは寝台のへりに並んで座る。
「……で、どうだった?」
眠るコンラートくんの頭を撫で、ヴィルくんは僕に問いかけた。
「良かったよ。見込み通り、素晴らしい舌遣いだった」
「違ぇよそっちじゃねぇよ。マジでチンコもぐぞ」
「ごめん勘違いした。魂の陰り、だったね!」
殺気を出されたけど、わざとじゃないから許して欲しい。
というか、これはヴィルくんの聞き方も悪かったと思うんだ!
「……あれは……一言で言えば憎悪、かな。かなり蝕まれているように視えたよ」
「神父様、オットーに刺されてたし……呪いがまだ効いてんのか……?」
「いいや、オットーの呪いはフラテッロ・マルティンが処理したはずだ。……けど、そうだね……強いて言うなら、きっかけの一つではあるかもしれない」
「…………ああ。神父様本人が、人を憎んでるってことか」
僕の指摘に、ヴィルくんは納得したようにコンラートくんの方を見る。
「……だろうなぁ」
愛おしそうに、それでいて悲しそうに、ヴィルくんはコンラートくんの額に口付けた。
「どうにか抑えつけているみたいだし、忘れようと努力しているのも感じたんだけど……それなりに、強烈なものを抱えているみたいだ」
僕が補足すると、ヴィルくんは自嘲気味な笑みを漏らす。
何かを思い返すように目を細め、彼はコンラートくんの髪を撫でた。武骨な手に似合わず、その動きは壊れ物に触れるかのように優しい。
「憎んで当たり前だよ。それだけのことを、この人はされたんだ」
「……そうかい」
僕には、正確なことは何一つ分からないし、何もしてあげられない。
アンジェラなら食べてあげられたのかな。あの、自分すら滅ぼしかねないような、激しい憎悪を……
「……憎悪、かぁ。危険な感情なのはわかるんだけど……どう扱えばいいのかなあ。僕は、そこら辺には疎いから……」
僕がぼやくと、ヴィルくんが静かな声で語る。
「オレは着いてくだけだよ。神父様がどんな道を選ぼうが、味方になるって決めてんだ」
茶色の瞳が確かな決意を宿し、煌めく。
「愛してるんだね。素晴らしいことだ」
僕が言うと、ヴィルくんは照れたように笑った。
子どものように無邪気な表情で、彼は言葉を続ける。
「へへ……。そうだよ、愛してる」
昔よりはかなりマシになったとはいえ、僕は他人の気持ちを推し量るのが得意じゃない。だけど、彼の表情が、愛に生きる男のものだとはわかる。
それなら……そうだね。僕のやることは決まっている。
「ちょっと、伝えたいことがあるんだ」
「……あ?」
コンラートくんの身体に手を伸ばすと、笑顔のままガシッと手首を掴まれる。凄まじい反射神経だ。
仕方ないから、自分の身体を指さして伝えることにした。
「……ええとね……脇腹のこの辺り、かな。気を付けた方がいい。吸血鬼は人間と『急所』が微妙に異なるからね」
何が正しくて、何が善なのか、僕にはよく分からない。
ただ、僕も、彼と同じく愛に生きる男だ。それだけは間違いない。……だから、力になりたい。
もちろんコンラートくんが可愛いというのも、理由の一つではあるのだけど。
「悪魔祓い達は『殺し続ければいつか死ぬ。特に日光の当たる場所なら殺しやすい』程度のことしか知らないんだけど……君は、知っておくべきだと思ってね」
「……ソコ、何かあんのか」
「身体の治癒を司る器官、かな。その臓器が破壊されると、傷の回復ができなくなる。普段なら耐えられるような傷でも、死んでしまう可能性があるんだよ」
「……! マジか……!」
ヴィルくんはさぁっと青ざめ、僕の顔に視線を向ける。
悪魔祓い仲間にも教えていない……というか教えられない情報だけど、ヴィルくんには必要だろう。
僕が複数人の女性に向けている「愛」を、ヴィルくんはコンラートくん一人に向けている。彼が愛しい人を失うことは、つまり、僕の妻が全員死んでしまうことと似ているんじゃないだろうか。もちろん、たった一人でもつらいものはつらいのだけど……それに加えて愛する人を全て失い、一人になるなんて……考えるだけで胸が張り裂けてしまいそうだ。
「彼らは頑丈だから、灰になるまでは『死んだ』とは言えない。……ただ……コンラートくんの場合は、少し危ういかな」
「危ういって……?」
「吸血鬼の特性が強めに出ている、ということは『一度死んだ』可能性があるんだ」
僕の言葉に、ヴィルくんははっと息を飲む。もしかして、心当たりがあるのかな。
……目の前で……だったり、したのかもしれないね。
「その状態だと腕力も回復力も高まるけれど、吸血衝動が酷くなるし、一般的な吸血鬼よりも人間由来の栄養素が多く必要になる。太陽への耐性も弱まるし……何より、寿命がかなり縮んでいるはずだ。……まあ、吸血鬼の寿命は人より長いんだけどね」
ヴィルくんは黙って聞いていたけれど、やがて「そっか」と呟き、コンラートくんの手を握った。
「護らねぇと」
ギリッと歯を食いしばり、握りしめた手にも力が入るのが見てとれた。
「……ああ、でも、あくまで君の方が『死にやすい』ことも忘れない方がいいよ」
「あー……そっか。じゃあ、死んでも護れるようにならなきゃ……」
「それは……どうだろう」
先程視た、コンラートくんの魂の状態を思い返す。
「さっき言ったじゃないか。コンラートくんは激しい憎悪を抱えてる。支えてくれる君を失ったら、どうなってしまうか分からないよ」
とはいえ、こういう話はマルティンの方が得意だろうけどね。……そう言えば彼女、いつまで休憩しているんだろう。様子を見てきた方がいいのかな。
「……オレのことなんか、全然、好きに利用してくれていいのに。なんなら、踏み台にしてくれたって構わねぇし……」
うーん? どうしてそうなるんだろう。
僕から見たって、相思相愛だとわかるくらいなのに。
「ん……」
「あ、起きた。大丈夫っすか神父様?」
「……視えた、のか?」
「オレが聞いといたんで、後で教えるっす。今はマルティンが帰ってきそうなんで……」
二人が会話するのをぼんやり見ていると、ノックの音が部屋に響いた。
僕が「入っていいよ」と返事をすると、ドアがゆっくりと開く音がする。
「も、もう、さすがに終わってるわよね……?」
ドアの方角から、マルティンの声が聞こえる。ヴィルくんの勘が冴えていたのかな。なかなか良いタイミングだ。
声の方へ視線を投げると、様子をちらちらと伺い、ほっとした様子で部屋の中に足を踏み入れるマルティンが見えた。ちょっと赤面している辺り、相変わらず純情で可愛いなと思わなくもない。彼女はこの前まで処女だったわけだし、そうなるのも仕方ないか。
「テオドーロ、早めに出発するわよ。オットーは倒したんだもの。二人と一緒にい過ぎるのは良くないわ」
……立場を気にしているのも、相変わらずみたいだね。
「どうせ肩入れしているんだから、味方になってあげればいいのに」
「……分かってるくせに」
「ああ……まあ、そうだね。『一族』のしがらみは、君にとってよっぽど重いものらしい」
出発自体はいつでも可能だ。そろそろ僕も眠くなっては来たけれど、妻の力を借りればどこでだって休息は取れる。……そろそろ、構ってあげないと拗ねそうだしね。
くるりとコンラートくん達の方を振り返り、手を振る。
「じゃあ、チャオ! ……って言いたいところだけど、もう会わない方がいいのかな?」
「お互い会わねぇようにしようぜ。全然別の場所行くとかさ」
「今はそれがいいね。じゃあフラテッロ、僕とイタリアにデートに行かないかい?」
「フランスなら付き合うわよ。……一応、報告しようがあるもの」
確かに、フランスでは吸血鬼達が集まって同盟を組もうとしているし、「それに加わりそうだった」と報告すれば教会にも納得してもらえそうだ。……少し過激な向きがあるから、二人には伝えたくないけどね。
コンラートくんは僕達の会話を黙って聞いていたけれど、やがて、口を開いた。
「力になってくださったこと、感謝します」
「……やめなさいよ。利害が一致しただけじゃない」
「それでもです。助かりました」
マルティンは眉をひそめながら答えるけれど、コンラートくんは律儀に胸の前で指を組んだ。礼儀正しいなぁ。
心の内は激しい憎悪で煮えたぎっているだろうに、彼はそれを表に出さない。……もしかしたら、能力も、彼が落ち着いて見えることに一役買っているのかな?
他人に自らを「冷静」に見せるための匂い……か。可能性は高いね。
「じゃ、幸運を祈るよ。ヴィルくんと喧嘩したら、いつでも慰めてあげよう」
「おい、サラッと何言ってやがる」
「言っただろう? 僕の愛は、僕にすら止められなあいたたたフラテッロ!! 耳を引っ張って引きずるのはやめてくれ!! ちぎれる!!!」
「遊んでないでさっさと行くわよお馬鹿!!」
マルティンに引きずられながら、部屋を後にする。
もう二度と会わない方が、互いにとっては良い道だろう。ヴィルくん達は悪魔祓いと戦わずに済むし、マルティンは迷いを振り切ることができる。
……だけど、どうしてだろう。予感のようなものがあった。
僕達はまた、どこかで出会う運命にあるんじゃないか……って。
***
「……どうして、フランクは『オットー・シュナイダー』を持ち出したんだろうね」
宿の外に出たあたりで、気になっていたことを口にする。
マルティンも僕の耳から指を離し、小さく頷いた。
「奇遇ね。わたしも疑問に思っていたわ」
コンラートくんを脅威に感じたからだとしても、あまりにリスクが大きすぎる。
他に手頃な武器が見つからなかったのか、それとも……
誰かに、そそのかされたのか。
木枯らしが吹き抜ける街道を、マルティンと無言で歩く。
どうやらフランスに向かうより前に、調べなきゃいけないことがあるようだ。
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BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
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