【完結済】墜ちた将校、恩讐に啼く

第一章 哀れみも、誉れも、愛も

第1話「因果応報」※

　──薄汚いな

　少年の声が脳裏に蘇る。
　声変わりしたばかりの、掠かすれた声。……いつだって、忘れたことのない声だ。

　──野良犬や野良猫でも、今の君に比べればずいぶんマトモに見える

　苛立いらだちを紛まぎらわせるよう、目の前の黒髪を掴んで枕に押し付けた。
　ツバメの羽根のように青みがかった、長い黒髪。このクソ野郎は髪も、顔も、身体も、いつだって腹が立つほど美しい。

「ン……ッ」

　くぐもった喘ぎを漏らし、組み伏せた身体がわななく。腰を打ち付ければ、喉の奥から声にならない嬌声が飛び出した。

「……獣畜生に犯されて、気持ち良さそうに腰揺らしてぇ……どんな気分ですかねぇ？ 少・尉・殿・」

　藍色の瞳が、キッと俺を睨みつける。
　俺を見下し、蔑み続けた憎たらしい瞳は、今や、快楽に蕩とろけて淫らに潤んでいた。

「……ッ、ゆる、さんぞ、一兵卒ふぜいが……ぁ！ く、ぅ……ううっ、んぁあああッ！」

　ああ、そうさ。俺もお前を許さない。
　例えお前が忘れても、俺は永遠に忘れない。
　例え神とやらがお前を許しても、俺だけは絶対にお前を許さねぇ。

　引き締まった腰をわし掴み、乱暴に魔羅まらを叩き込む。
　魔獣に作・り・替・え・ら・れ・た・孔あなは、それでも悦よろこぶようにたらたらと蜜を溢れさせた。

「ぁ、あ、あぁあっ、く、ン……ッ、はぁ……っ、ぅ、あぁッ」
「おいおい……こんなんでもヨガるってかい。名門貴族にして領主のご子息様が、ざまぁねぇなぁ？」
「だ、だま、れ……ぇっ、黙れ黙れ黙れッ！ ぁあっ、く……っ、ぅうう……っ！」

　長い髪を振り乱し、喘ぎを噛み殺すこともできず、口の端からヨダレを垂らして美貌の貴公子が見悶える。
　無様な姿に、股間が熱を持つ。
　もっと、もっと犯したくなる。乱したくなる。……壊したくなる。

「イイねぇ、その声……っ！ 最高にそそるぜ、お坊ちゃんシニョリーノ？」
「……お、のれ……っ」

　まだまだこんなものじゃない。
　二度と忘れられないほどに、俺を刻みつけてやる。

　ああ……本当に、頭がおかしくなりそうだ。

「オラッ、とっととイッちまえ！」
「んぅっ！？ あ……っ、嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だッ、イキたくな……ぁっ、あぁぁぁぁぁッ」

　好きすぎて好きすぎて好きすぎて好きすぎて好きすぎて、憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて仕方がねぇなんてなぁ！