扶蘇

最終章

扶蘇

内戦を終結させ、天下を再統一した扶蘇は、咸陽の阿房宮で即位式を挙行した。華やかな祝賀と饗宴の様子は、帝国の復活と繁栄を象徴していた。

二世皇帝となった扶蘇は、父・始皇帝の遺志を継ぎつつ、自らの志を具現化した政治を展開していく。

扶蘇は、趙高と李斯を処刑し、父帝の時代や内戦の終結に功のあった蒙恬を丞相に任命した。さらに、王離を大将軍に昇格し、蒙恬の弟・蒙毅を大臣とした。

ある日、宮廷で扶蘇はこう言った。「先帝の定められた郡県制は、確かに素晴らしい。しかし、血縁のある諸侯を取り立てる封建制にも、長所はあるであろう。」

すると、蒙恬は言った。「なりません。先帝のお定めになった郡県制を廃止してしまっては、統一の意義が失われます。」

「廃止する訳ではない。今後も、この帝国の統治機構の主体は郡県制であり続ける。しかし、部分的に封建制を復活したい。」

扶蘇は言った。「私は父と同じく、法を以て国を治める。しかし、これまでの君主のように、礼と徳も持ち合わせていれば、さらに秦は強固となるだろう。」すると、蒙恬も扶蘇の考えに感心し、同意した。

その後も扶蘇は、儒家や道士に対する弾圧を止めたり、税を軽減するなど、善政を敷いた。おかげで秦の民生は向上し、商業も発展し、さらにインドや西域との通商も開始された。こうして咸陽は世界最大の貿易都市へと発展していく。他にも、匈奴に親征して服属させたり、衛氏朝鮮や月氏との友好政策など、外交関係の進歩にも努めた。

扶蘇の下、秦は発展し、より強固な帝国となった。その優れた社会制度は、400年に渡る秦の平安を支えると共に、後の王朝の模範となった。

2200年の昔を生きた扶蘇と、現代を生きる我々の距離は遠い。しかし、彼の歩んだ人生の道のりは、どこかで我々の歩む道と繋がっているだろう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　完