扶蘇

第3章

それぞれの覚悟

蒙恬は部屋に入り、扶蘇の姿を見つめた。彼は穏やかな表情で、扶蘇の心情を読み取るように静かに語りかけた。「扶蘇殿下、お心を察します。しかし、今は決して絶望する時ではありません。」

「思い出してください。先帝はあれほど殿下を大切にしておられたのです。なぜ殿下に死を賜うようなことがありましょうや。普通、罪あって死を命じられるときには、その時既に覚悟が出来ているものです。このような時に突然詔が下るとは、とても信じられません。」

扶蘇は涙を拭いながら、蒙恬の言葉に耳を傾けた。「蒙恬、この国に何が起こっているのか、どうしてこんなことになったのか…私に説明してくれ」

蒙恬は深いため息をつき、言葉を選びながら説明した。「先帝が崩御された時、ただ一人側に居たのはあの奸臣、趙高です。趙高は以前から陰謀や悪行を重ねており、それに反対する殿下を逆恨みしておりました。それで、殿下を陥れようと、李斯と共に詔を偽造したに違いありません。」

扶蘇は驚きを隠せなかった。「偽の詔？しかし、それならば…」

蒙恬は頷いた。「はい、その通りです。私たちはこの陰謀を打ち破り、正当な皇位を取り戻さなければなりません。しかし、そのためには慎重に行動しなければなりません。殿下、私と共に立ち上がってください」

扶蘇は蒙恬の言葉に胸を熱くした。「蒙恬、私は其方の言葉を信じる。正義は必ず勝つ。私は覚悟を決めた。あなたと共に戦う。」

蒙恬も微笑み、言った。「私も覚悟を決めました。何があろうとも貴方を支え、お守り致します。先帝の遺志を継ぎ、秦の国を正しい道へ導きましょう。」

二人は手を取り合い、それぞれの覚悟を語った。扶蘇の戦いが、始まった。