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最終章
最終決戦へ
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数週間後、いよいよを以て大ザラリア王国首都テレルリンの攻略が決定された。攻略軍総大将は僕の義父であるモロー侯爵、総兵数は30万人を超す大軍団だった。
皇帝陛下から各軍の司令官に作戦内容が通達された。それによると、今回の攻略軍は三手に分かれてテレルリンを目指し、各都市や城塞を制圧しつつ進撃、最終的にテレルリンの手前のハイデンシュタットで合流し、攻略を実行すると言うことだった。
3つの軍は本隊が12万人で大将はモロー侯爵、第1別働隊が9万人で大将はジラール伯爵、そして第2別働隊が9万人で大将はなんと僕だ。
このような大軍を指揮したことは無かったので非常に不安だったが、副将としてプチ子爵が付くという事だし、今まで経験してきた戦の規模が変わっただけと思えば何ということも無い。
小城であるアルトベルグ城では大軍団が集結出来ないとして、僕たちは7セルタ離れたロースシュタインという町に移動を命じられた。町にある広大な空き地に宿営地を設営し、数週間で他の貴族たちの軍も集まってきた。
既に3月中旬、雪解けの季節だった。
出撃までの期間中、ロースシュタインの町をしばしば歩くと、開き始めた桜の花を見ることが出来た。春の訪れは、僕たちに戦の準備が整いつつあるという実感を与えてくれた。
そうして帝都から出撃の命令が届いた。本隊と第1別働隊も別々の場所で同じように出撃しており、僕たちは春の穏やかな空気の中、意気揚々とロースシュタインを出て進んでいった。
僕たちは途中、敵軍の襲撃を警戒していたが、不審に思うほど敵兵の姿が見えず、旅程は全く平穏だった。
街道は険峻な山岳地帯を避けて大きく曲がっており、途中で進路を東南東へ変える。次第に緑は深まり、気温も上がって汗をかくほどになった。
街道の幅は広く、一面美しい岩緑青の草原に、まばらに木々や家々を見ることができた。夜は街道沿いに野営し、朝になると再び出発するという日々が続いた。
そんなある日、突然目の前に敵軍が出現した。
敵は10万人という大軍で、僕たちは危機的状況に陥った。敵はすぐに攻撃を開始し、猛烈な弓矢の嵐と砲撃が降り注いできた。
僕たちは傭兵部隊を全面に押し出し、弓隊とカタパルト隊に対処させた。その間に騎馬部隊が近くの森林に回り込み、敵の後背を突いた。敵軍が一瞬混乱し、攻撃の勢いが少し鈍った隙に、僕たちは反撃を強めた。
しかし敵もすぐに立て直し、その数に物を言わせて僕たちの前線を突破した。
戦況は次第に厳しくなっていき、僕たちは敵に包囲されつつあった。
「このままでは危険だ。ラファエル、どうすれば良い?」僕は尋ねた。
「シャルル様、このまま戦闘を続けても成果は上がりません。一旦近くのあの山に逃げ込みましょう。」
僕は決断を下さざるを得なかった。近くにある山へ避難し、敵の包囲から逃れるしか無い。
急いで部隊を指揮し、山への移動を開始した。
敵の追撃は激しく、山に登りきれずに矢のシャワーを浴びて死ぬ者も多かった。
かなりの兵士たちが命を落とし、頂上に辿り着いた時には兵の数は激減していた。
「岩を使ってバリケードを作れ!敵の攻撃を防ぐんだ!」
僕は兵士たちに指示を出し、山に転がる岩を使って簡易なバリケードを作らせた。敵軍は山を取り囲み、僕たちを身動きできなくさせた。
「どれだけ持つか…」ラファエルが呟いた。
兵士たちは疲労困憊していたが、必死に持ちこたえようとしていた。だが食料も物資も限られており、山の防衛線が突破されるのも時間の問題だった。
夜、敵兵の叫び声と野犬の雄叫びとが交錯し、強烈な雰囲気を醸し出していた。
「反撃に出なければ、我々は物資も尽きて飢え死にしてしまいます。餓死か、はたまた死を覚悟して戦うか。究極の選択です。」僕たちがテントに集まっていると、ロジェが言った。
「我が軍はこの山に逃げ込む過程で、大半の将兵を失った。完全に僕たちの劣勢であり、正面から戦っては勝ち目は無い。」僕は溜息混じりに言った。
「今バリケードに用いている岩をその辺の草で覆い、火を付けて下に落としては如何でしょう?」クロードが提案した。
「それは一つの手かもしれない。」僕は考えながら答えた。「現状を考えると、打開策がなければ全滅するだけだ。この案を実行してみよう。」
兵士たちに指示を出し、バリケードに使っていた岩を集め、山頂に生える草を刈って巻きつける作業を行った。
「岩を転がして落とす時、敵陣のどこを狙えば良いか調べてくれ。」僕はジョゼフの偵察部隊に指示を出し、火のついた岩を落とすのに最適な場所を探り出していった。
火を点ける準備が整った。夜の暗闇に包まれた山の上で、僕たちは息を呑んで見守った。
火が点けられ、岩に巻き付けられた草が燃え始めた。長い棒で兵士たちが岩を押すと、大きな音とともに火の粉が舞い上がり、次々に岩が山の斜面を転げ落ちていった。
敵軍がこの異常事態に気付くと、すぐに騒動が起きた。山の中腹から火が見えたことで、敵軍が一時的に混乱した。
「今だ!敵が混乱している間に脱出の準備を進めろ!」僕は指示を出した。
そうして包囲の突破が試みられたが、山の周りに構築された敵の守りは予想以上に固く、最終的に脱出に失敗してしまった。
「このままではまずい…。ついに僕も死ぬのか…?」
燃え盛る山の麓を見つめながら、僕は呟いた。
続く
皇帝陛下から各軍の司令官に作戦内容が通達された。それによると、今回の攻略軍は三手に分かれてテレルリンを目指し、各都市や城塞を制圧しつつ進撃、最終的にテレルリンの手前のハイデンシュタットで合流し、攻略を実行すると言うことだった。
3つの軍は本隊が12万人で大将はモロー侯爵、第1別働隊が9万人で大将はジラール伯爵、そして第2別働隊が9万人で大将はなんと僕だ。
このような大軍を指揮したことは無かったので非常に不安だったが、副将としてプチ子爵が付くという事だし、今まで経験してきた戦の規模が変わっただけと思えば何ということも無い。
小城であるアルトベルグ城では大軍団が集結出来ないとして、僕たちは7セルタ離れたロースシュタインという町に移動を命じられた。町にある広大な空き地に宿営地を設営し、数週間で他の貴族たちの軍も集まってきた。
既に3月中旬、雪解けの季節だった。
出撃までの期間中、ロースシュタインの町をしばしば歩くと、開き始めた桜の花を見ることが出来た。春の訪れは、僕たちに戦の準備が整いつつあるという実感を与えてくれた。
そうして帝都から出撃の命令が届いた。本隊と第1別働隊も別々の場所で同じように出撃しており、僕たちは春の穏やかな空気の中、意気揚々とロースシュタインを出て進んでいった。
僕たちは途中、敵軍の襲撃を警戒していたが、不審に思うほど敵兵の姿が見えず、旅程は全く平穏だった。
街道は険峻な山岳地帯を避けて大きく曲がっており、途中で進路を東南東へ変える。次第に緑は深まり、気温も上がって汗をかくほどになった。
街道の幅は広く、一面美しい岩緑青の草原に、まばらに木々や家々を見ることができた。夜は街道沿いに野営し、朝になると再び出発するという日々が続いた。
そんなある日、突然目の前に敵軍が出現した。
敵は10万人という大軍で、僕たちは危機的状況に陥った。敵はすぐに攻撃を開始し、猛烈な弓矢の嵐と砲撃が降り注いできた。
僕たちは傭兵部隊を全面に押し出し、弓隊とカタパルト隊に対処させた。その間に騎馬部隊が近くの森林に回り込み、敵の後背を突いた。敵軍が一瞬混乱し、攻撃の勢いが少し鈍った隙に、僕たちは反撃を強めた。
しかし敵もすぐに立て直し、その数に物を言わせて僕たちの前線を突破した。
戦況は次第に厳しくなっていき、僕たちは敵に包囲されつつあった。
「このままでは危険だ。ラファエル、どうすれば良い?」僕は尋ねた。
「シャルル様、このまま戦闘を続けても成果は上がりません。一旦近くのあの山に逃げ込みましょう。」
僕は決断を下さざるを得なかった。近くにある山へ避難し、敵の包囲から逃れるしか無い。
急いで部隊を指揮し、山への移動を開始した。
敵の追撃は激しく、山に登りきれずに矢のシャワーを浴びて死ぬ者も多かった。
かなりの兵士たちが命を落とし、頂上に辿り着いた時には兵の数は激減していた。
「岩を使ってバリケードを作れ!敵の攻撃を防ぐんだ!」
僕は兵士たちに指示を出し、山に転がる岩を使って簡易なバリケードを作らせた。敵軍は山を取り囲み、僕たちを身動きできなくさせた。
「どれだけ持つか…」ラファエルが呟いた。
兵士たちは疲労困憊していたが、必死に持ちこたえようとしていた。だが食料も物資も限られており、山の防衛線が突破されるのも時間の問題だった。
夜、敵兵の叫び声と野犬の雄叫びとが交錯し、強烈な雰囲気を醸し出していた。
「反撃に出なければ、我々は物資も尽きて飢え死にしてしまいます。餓死か、はたまた死を覚悟して戦うか。究極の選択です。」僕たちがテントに集まっていると、ロジェが言った。
「我が軍はこの山に逃げ込む過程で、大半の将兵を失った。完全に僕たちの劣勢であり、正面から戦っては勝ち目は無い。」僕は溜息混じりに言った。
「今バリケードに用いている岩をその辺の草で覆い、火を付けて下に落としては如何でしょう?」クロードが提案した。
「それは一つの手かもしれない。」僕は考えながら答えた。「現状を考えると、打開策がなければ全滅するだけだ。この案を実行してみよう。」
兵士たちに指示を出し、バリケードに使っていた岩を集め、山頂に生える草を刈って巻きつける作業を行った。
「岩を転がして落とす時、敵陣のどこを狙えば良いか調べてくれ。」僕はジョゼフの偵察部隊に指示を出し、火のついた岩を落とすのに最適な場所を探り出していった。
火を点ける準備が整った。夜の暗闇に包まれた山の上で、僕たちは息を呑んで見守った。
火が点けられ、岩に巻き付けられた草が燃え始めた。長い棒で兵士たちが岩を押すと、大きな音とともに火の粉が舞い上がり、次々に岩が山の斜面を転げ落ちていった。
敵軍がこの異常事態に気付くと、すぐに騒動が起きた。山の中腹から火が見えたことで、敵軍が一時的に混乱した。
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燃え盛る山の麓を見つめながら、僕は呟いた。
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