遥かなる物語

最終章

ボルフォーヌ発展計画

ボルフォーヌは少しずつ発展しており、豊かになって来ているのは間違いない。
とは言え、まだ発展途上の町。この山に囲まれた町を、大陸有数の大都市にするのが僕の目標。戦争から帰還した今、領地の仕事に専念することができる。

「すまないな急に呼び出して」
ある夜、僕はラファエル、ロジェ、ジョゼフ、クロード、ジャンを応接間のテーブルに呼んだ。全員が集まると、僕は計画の概要を説明した。

「まず交通網の整備が必要だ。3000年の歴史のあるこの町が発展してこなかったのは、山岳地帯にあってアクセスが悪いという原因もある。さらに、学校を設置し、技術者や学者を招いて町の知的基盤を強化するつもりだ。貴族から平民まで誰でも歓迎だ」

全員が真剣な表情で聞いている中、僕は続けた。
「そして観光業の促進も計画に含まれている。ボルフォーヌの自然や歴史的な価値を生かし、多くの観光客を引き寄せるための宣伝を行う。また宿や酒場を街道沿いに増設し、観光客が快適に過ごせる環境を整える。」

ラファエルが手を挙げて意見を述べた。「インフラ整備には予算がかかりますが、その資金調達方法について考える必要があります。税を増やすと領民の負担が増えますし、例えば、町外からの投資を募るとか、既存の資源を活用する方法もあります。」

「既存の資源か…」僕は考えた。
「そういえば、そこのエネイジェ山には、よく砂金が見つかるという話があります。もしかしたら、金山として開発することが出来るかもしれません。」ジャンが言った。

「それは良い考えだ」と僕は頷いた。「エネイジェ山の金の可能性を調査することで、資金調達の一助になるかもしれない。」
ロジェが続けた。「金の採掘には、適切な技術と専門家が必要です。ヴァロンも含め領地全体で技術者を募りましょう。」

「では、エネイジェ山の調査を始め、金が産出できる見込みがあれば、本格的な開発事業に移ろう。視察に行くぞ」
「視察はいつですか？」クロードが尋ねた。
「明日だ」
「「「えっ！？」」」

という訳で、突然ではあったが翌日エネイジェ山へと向かった。
準備万端で出発したものの、予想以上に険しい道を進むことになり、皆の疲れが見え始めた。しかし、目的地に近づくにつれ、期待感が高まり始めた。

山頂に到着すると、僕たちはまず地形や周囲の環境を観察した。砂金が見つかると言われる場所に立ち寄り、ジャンが手際よくサンプルを採取した。
すると、確かに砂金が多く見つかった。金の採掘の可能性があることが分かった。

「だけど砂金だけじゃ金山は無理だ。金塊が出てくることを確認する必要がある」
僕たちは山奥へと進み、試しに地面を掘ってみた。すると、何とたった1メートルくらい掘っただけで金がザックザクと出て来た！

その光景に、皆の目は驚きと喜びで輝いた。僕たちは掘り出された金塊を慎重に穴から取り出した。
「これでエネイジェ山の金鉱開発が確実になった」と僕は確信を持って言った。「これから技術者たちと連携し、本格的な採掘計画を進めよう。」

一旦屋敷に戻り、昼食を食べてから今度は街道の視察に向かった。
町の街道沿いには現在、いくつかの宿や酒場が点在しているが、観光業の促進に向けてさらなる整備が必要だろうと感じた。

また、街道沿いの景観や道路の状態も確認した。
「ここも土だな。小石でも何でも良いから舗装しよう」
特に急勾配や荒れた場所は、観光客にとっては大きな障害になる可能性がある。舗装することで快適な移動が確保できると考えた。

ラファエルがメモを取りながら言った。「舗装のためには材料の調達と工事のスケジュールを考える必要がありますね。土壌の状態や地形に応じて、適切な素材を選ぶ必要があります。」
「その通りだ」と僕は頷いた。「町の職人たちに協力を依頼して、工事を行ってもらおう。」

「それじゃぁ今日は解散！」
日が沈む頃、僕たちは仕事を終えてそれぞれの家路に就いた。

僕は屋敷に戻り、夕食後書斎で書類を整理していた。
「シャルル、もう寝ましょうよ」マリーが顔を出した。
「ごめんね、もうすぐ終わるから、少しだけ待ってて」と僕は答え、書類に目を通した。

書類の整理が終わると、僕は書斎を出て、マリーと共に寝室へ向かった。
寝室に入ると、部屋の中は暖かい灯りに包まれていた。僕たちはゆっくりとベッドに横たわり、僕はマリーの手を優しく取った。

「今日も一日お疲れさま」と言いながら、マリーを抱きしめる。
マリーは微笑み、僕の目を見つめていた。

「こちらこそ、ありがとう。今日も素敵な一日だったわ」とマリーが応え、僕の頬に優しくキスをした。僕はそのキスに応え、マリーの髪を撫でながら彼女の顔を見つめた。

「マリー、愛してる」僕は優しく囁いた。
マリーは微笑みながら僕を見つめ、その手を僕の胸に置いた。「私もあなたを愛してるわ。こんなふうに一緒に過ごせて、本当に幸せよ」とマリーは囁いた。

「僕もだよ、マリー」と僕は応え、彼女の髪を優しく撫でた。
「ずっとこうしていよう」

夜の静けさと、二人だけの世界に包まれながら、僕たちは静かな眠りに落ちていった。

続く