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第5章
逆風
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「どうした?」僕は心配しながらジョゼフを見た。
「前線からの報告です。大ザラリア王国が新たな反攻を開始したとのことです。」ジョゼフは息を切らしながら言った。「サン=クレール市の占領を続ける我々にとって、非常に厳しい状況になるようです。」
「具体的にはどのような反攻か?」僕はすぐに状況の詳細を尋ねた。
「敵軍は我々の前線付近に新たな部隊を集結させ、ベルタン軍の前線部隊に攻撃を加えています。さらにはここサン=クレール市の奪還を計画しているようです。」ジョゼフは報告を続けた。
「これは重大な問題だ。サン=クレール市の防衛と反攻に対する対策を急がねばならない。」僕は深刻な表情で言った。「すぐに作戦会議を開き、状況に応じた新たな作戦を立てよう。」
城内の部屋で会議が始まると、ラファエルやロジェ、ジョゼフと共に現在の状況を分析し、新たな作戦を検討した。
まずラファエルが地図を広げ、指で前線の位置を示しながら口を開いた。「まず、敵軍の新たな部隊がどれほどの規模かを把握する必要があります。これによって我々の防衛策も大きく変わるでしょう。」
ロジェが考え込みながら言った。「それに、サン=クレール市を敵部隊から防衛するためには、防御システムの修復が急務です。すぐに城壁や塔、城門などの破損を修理し、兵器の設置も進める必要があります。」
「それでは、まずは敵軍の動向を把握するために偵察部隊を派遣し、状況の詳細を確認させよう。」僕は提案した。
「了解しました。いつでも偵察部隊は動ける状況です。」ジョゼフが応じる。
「その情報をもとに、戦力の再配置と防御システムの修理を進め、敵軍を迎え撃つにあたり万全な準備を整えよう。これで決まりだ、サン=クレール市の防衛に全力を尽くそう。これが我々の生き残りをかけた戦いになる。」
翌朝、ジョゼフの偵察部隊からの報告が届いた。
「シャルル様、敵の規模は我々よりも大きいようです。1週間もすればこの市の攻略を試みるでしょう。籠城するしか無いでしょうが、かなり持久戦になりそうです。今のうちに武器や物資、食糧の備蓄も進めましょう。」
「そうか、持久戦となると、今の物資だけでは足りない。これから補給を強化すると同時に、我々の士気を維持し続けることも重要だな。それと旧敵国領の街だ、市民が裏切るかもしれない。今のうちに追放した方が良いかもしれない」僕は言った。
一瞬、ジョゼフは困惑の表情を浮かべた。
「市民の追放は慎重に進めるべきです。もしそれが市民に知れ渡ると、反感を買い、暴動や叛乱が発生する可能性もあります。もし追放を実行するなら、綿密に計画を立て、精鋭部隊を用いて強制的に市から追い出すべきです。敵の侵攻まで時間もありませんから、数日中に実行すべきです。」
「なるほど、それなら慎重に進める必要がある。」僕は頷きながら考えた。「追放計画会議を設立し、信頼出来る者だけで今日明日で計画を立案しよう。実行は傭兵や騎士部隊が向いていると思う」
計画会議が始まると、僕はラファエル、ロジェ、ジョゼフ、クロード、そして信頼できる部隊の指揮官たちを集めた。ラファエルが口火を切った。
「市民の追放は効果的です。市民が敵と内応して叛乱を起こすような事態も避けられますし、物資や食糧も大幅に節約することができます。」
クロードが提案した。「追放にあたっては、まず市民に理由を説明し、なるべく非暴力的に進める方法を模索しましょう。無理に強制することで反発を招く危険があります。」
「その通りだ。市民が理解するよう努め、納得してもらうことが理想だ。だが時間がない、もし納得しないようであれば、傭兵や騎士軍を使って、武力も用いる覚悟を持とう。」僕は言った。
「了解しました。まずは、市内の重要な地点から始め、徐々に広げていくのが良いでしょう。」ロジェが加えた。
「分かった、準備が整い次第、直ちに実行に移す。」
2日後、追放計画が実施される日がやってきた。市内の各地区には、事前に設定した部隊が配置され、市民たちを説得させるために広報ビラを撒いた。
街の中心部から始めるため、まずは大通りや主要広場に集まった市民たちが注目する中で、説明が行われた。
ラファエルが拡声器で呼びかけた。「市民の皆様、ご静聴ください。現在、大ザラリア王国の反攻により、サン=クレール市は重大な危機に直面しています。皆様の安全を確保するため、急遽、市民の皆様に市外への避難をお願いすることとなりました。皆様の協力が必要です。」
説明を受けた市民たちの反応は様々だった。一部は理解を示し、すぐに荷物をまとめて避難の準備を始めたが、中には不安や不満を抱く者もいた。クロードが追加の説明を行い、混乱を最小限に抑えるため、冷静で納得しやすい説明を心掛けた。「避難は皆様の安全を守るための措置です。私たちはできる限りのサポートを行いますので、ご協力をお願いいたします。」
しかし、一部の市民が抵抗や抗議を始めた。すると指揮官たちは素早く行動を始め、傭兵部隊や騎士軍が出動。抵抗する市民を、武力を以て強制的に退去させざるを得なかった。
槍や盾を引っ立てる傭兵たちを前に、恐れ慄いた市民たちは一部抵抗を止めたが、一部の市民は激しく抵抗を続けた。
彼らは騎士軍や傭兵部隊により強制的に制圧され、鎖に繋がれて市の外側へと連行された。城門を出ると彼らは鎖を外され、ここから去るよう命じられた。
日が暮れる頃には全員の追放が終了し、市内にはベルタン軍兵士しか居なくなった。
僕たちはすぐに籠城戦に向けた準備を再開し、城壁や塔の補強、兵器の配置、食糧と物資の備蓄が進められた。
そうして大ザラリア王国の大軍団がいよいよ市に迫って来た。
彼らは城壁を包囲し、数重の堀や土塁を築いて布陣した。
最初の攻撃が始まると、敵軍はカタパルトで激しい砲撃を加え、城壁や塔を狙ってきた。ベルタン軍は弓矢や火薬を用いて防御に徹し、国軍から供与された銃で敵兵を射殺することもできた。大岩を落としてカタパルトを破壊することもあった。
昼を過ぎると、敵軍は城壁に迫る攻撃を開始し、攻城櫓を用いて兵士たちを城壁に登らせてきた。これに対抗するため、僕たちは城壁の上に配置された弓兵や傭兵を駆使し、敵の登城を阻止した。敵の攻撃が熾烈になる中で、僕たちは防御を固めつつ、反撃の準備も進めた。
その夜、敵軍が一息ついたところで、僕たちは反撃の機会を伺った。城内では、兵士たちが疲労困憊しつつも、互いに励まし合いながら士気を保っていた。
僕はラファエルやロジェ、ジョゼフたちを部屋へ呼び、明日の反撃に向けた作戦会議を開いた。
僕は市の地図を机に広げ、敵陣の位置を指差しながら言った。「今夜のうちに反撃の準備を整え、明日の朝に反撃を実行する計画を立てる必要がある。」
ラファエルが地図を見ながら提案した。「敵軍の攻撃が集中している部分を狙い、奇襲をかけるのが良いでしょう。特に攻城櫓が集中している地点に傭兵や騎士軍を始め精鋭を集結させ、一斉に敵部隊への攻勢をかけることが重要です。」
「その通りだ。攻城櫓を破壊することで、敵の攻撃のペースを遅らせることができる。さらに、敵のカタパルトや破城槌に対しても手を打つ必要がある。」ロジェが加えた。
ジョゼフが手元の情報を基に、具体的な部隊配置について話した。「偵察部隊の報告によれば、敵の補給線は市の北側に集中しています。ここを狙うことで、敵の物資供給を妨害することができます。さらに、夜間に隠密行動を取れる精鋭部隊を用意しています。」
「了解した。では、夜明け前に敵の輸送隊に攻撃を加え、朝になったら攻城櫓の集中している西側に兵力を集中させ、反攻を開始する。南門が破城槌による激しい損傷を受けているようだが、この地点に弓隊を集結させて敵の攻城部隊に城壁の上から打撃を与える。」僕は決断を下した。
その夜、各部隊が作戦に向けて準備を進め、市内では静かな夜が続いた。一方市の北側では、ジョゼフの偵察部隊が妨害活動を行い、敵の輸送隊への攻撃に成功した。
明日には反撃が始まる。成功すれば生きるが、失敗すれば皆死ぬ。
籠城戦という状況下で、僕たちはかつて無いほどの緊張感の下、反撃準備を進めていた。
続く
「前線からの報告です。大ザラリア王国が新たな反攻を開始したとのことです。」ジョゼフは息を切らしながら言った。「サン=クレール市の占領を続ける我々にとって、非常に厳しい状況になるようです。」
「具体的にはどのような反攻か?」僕はすぐに状況の詳細を尋ねた。
「敵軍は我々の前線付近に新たな部隊を集結させ、ベルタン軍の前線部隊に攻撃を加えています。さらにはここサン=クレール市の奪還を計画しているようです。」ジョゼフは報告を続けた。
「これは重大な問題だ。サン=クレール市の防衛と反攻に対する対策を急がねばならない。」僕は深刻な表情で言った。「すぐに作戦会議を開き、状況に応じた新たな作戦を立てよう。」
城内の部屋で会議が始まると、ラファエルやロジェ、ジョゼフと共に現在の状況を分析し、新たな作戦を検討した。
まずラファエルが地図を広げ、指で前線の位置を示しながら口を開いた。「まず、敵軍の新たな部隊がどれほどの規模かを把握する必要があります。これによって我々の防衛策も大きく変わるでしょう。」
ロジェが考え込みながら言った。「それに、サン=クレール市を敵部隊から防衛するためには、防御システムの修復が急務です。すぐに城壁や塔、城門などの破損を修理し、兵器の設置も進める必要があります。」
「それでは、まずは敵軍の動向を把握するために偵察部隊を派遣し、状況の詳細を確認させよう。」僕は提案した。
「了解しました。いつでも偵察部隊は動ける状況です。」ジョゼフが応じる。
「その情報をもとに、戦力の再配置と防御システムの修理を進め、敵軍を迎え撃つにあたり万全な準備を整えよう。これで決まりだ、サン=クレール市の防衛に全力を尽くそう。これが我々の生き残りをかけた戦いになる。」
翌朝、ジョゼフの偵察部隊からの報告が届いた。
「シャルル様、敵の規模は我々よりも大きいようです。1週間もすればこの市の攻略を試みるでしょう。籠城するしか無いでしょうが、かなり持久戦になりそうです。今のうちに武器や物資、食糧の備蓄も進めましょう。」
「そうか、持久戦となると、今の物資だけでは足りない。これから補給を強化すると同時に、我々の士気を維持し続けることも重要だな。それと旧敵国領の街だ、市民が裏切るかもしれない。今のうちに追放した方が良いかもしれない」僕は言った。
一瞬、ジョゼフは困惑の表情を浮かべた。
「市民の追放は慎重に進めるべきです。もしそれが市民に知れ渡ると、反感を買い、暴動や叛乱が発生する可能性もあります。もし追放を実行するなら、綿密に計画を立て、精鋭部隊を用いて強制的に市から追い出すべきです。敵の侵攻まで時間もありませんから、数日中に実行すべきです。」
「なるほど、それなら慎重に進める必要がある。」僕は頷きながら考えた。「追放計画会議を設立し、信頼出来る者だけで今日明日で計画を立案しよう。実行は傭兵や騎士部隊が向いていると思う」
計画会議が始まると、僕はラファエル、ロジェ、ジョゼフ、クロード、そして信頼できる部隊の指揮官たちを集めた。ラファエルが口火を切った。
「市民の追放は効果的です。市民が敵と内応して叛乱を起こすような事態も避けられますし、物資や食糧も大幅に節約することができます。」
クロードが提案した。「追放にあたっては、まず市民に理由を説明し、なるべく非暴力的に進める方法を模索しましょう。無理に強制することで反発を招く危険があります。」
「その通りだ。市民が理解するよう努め、納得してもらうことが理想だ。だが時間がない、もし納得しないようであれば、傭兵や騎士軍を使って、武力も用いる覚悟を持とう。」僕は言った。
「了解しました。まずは、市内の重要な地点から始め、徐々に広げていくのが良いでしょう。」ロジェが加えた。
「分かった、準備が整い次第、直ちに実行に移す。」
2日後、追放計画が実施される日がやってきた。市内の各地区には、事前に設定した部隊が配置され、市民たちを説得させるために広報ビラを撒いた。
街の中心部から始めるため、まずは大通りや主要広場に集まった市民たちが注目する中で、説明が行われた。
ラファエルが拡声器で呼びかけた。「市民の皆様、ご静聴ください。現在、大ザラリア王国の反攻により、サン=クレール市は重大な危機に直面しています。皆様の安全を確保するため、急遽、市民の皆様に市外への避難をお願いすることとなりました。皆様の協力が必要です。」
説明を受けた市民たちの反応は様々だった。一部は理解を示し、すぐに荷物をまとめて避難の準備を始めたが、中には不安や不満を抱く者もいた。クロードが追加の説明を行い、混乱を最小限に抑えるため、冷静で納得しやすい説明を心掛けた。「避難は皆様の安全を守るための措置です。私たちはできる限りのサポートを行いますので、ご協力をお願いいたします。」
しかし、一部の市民が抵抗や抗議を始めた。すると指揮官たちは素早く行動を始め、傭兵部隊や騎士軍が出動。抵抗する市民を、武力を以て強制的に退去させざるを得なかった。
槍や盾を引っ立てる傭兵たちを前に、恐れ慄いた市民たちは一部抵抗を止めたが、一部の市民は激しく抵抗を続けた。
彼らは騎士軍や傭兵部隊により強制的に制圧され、鎖に繋がれて市の外側へと連行された。城門を出ると彼らは鎖を外され、ここから去るよう命じられた。
日が暮れる頃には全員の追放が終了し、市内にはベルタン軍兵士しか居なくなった。
僕たちはすぐに籠城戦に向けた準備を再開し、城壁や塔の補強、兵器の配置、食糧と物資の備蓄が進められた。
そうして大ザラリア王国の大軍団がいよいよ市に迫って来た。
彼らは城壁を包囲し、数重の堀や土塁を築いて布陣した。
最初の攻撃が始まると、敵軍はカタパルトで激しい砲撃を加え、城壁や塔を狙ってきた。ベルタン軍は弓矢や火薬を用いて防御に徹し、国軍から供与された銃で敵兵を射殺することもできた。大岩を落としてカタパルトを破壊することもあった。
昼を過ぎると、敵軍は城壁に迫る攻撃を開始し、攻城櫓を用いて兵士たちを城壁に登らせてきた。これに対抗するため、僕たちは城壁の上に配置された弓兵や傭兵を駆使し、敵の登城を阻止した。敵の攻撃が熾烈になる中で、僕たちは防御を固めつつ、反撃の準備も進めた。
その夜、敵軍が一息ついたところで、僕たちは反撃の機会を伺った。城内では、兵士たちが疲労困憊しつつも、互いに励まし合いながら士気を保っていた。
僕はラファエルやロジェ、ジョゼフたちを部屋へ呼び、明日の反撃に向けた作戦会議を開いた。
僕は市の地図を机に広げ、敵陣の位置を指差しながら言った。「今夜のうちに反撃の準備を整え、明日の朝に反撃を実行する計画を立てる必要がある。」
ラファエルが地図を見ながら提案した。「敵軍の攻撃が集中している部分を狙い、奇襲をかけるのが良いでしょう。特に攻城櫓が集中している地点に傭兵や騎士軍を始め精鋭を集結させ、一斉に敵部隊への攻勢をかけることが重要です。」
「その通りだ。攻城櫓を破壊することで、敵の攻撃のペースを遅らせることができる。さらに、敵のカタパルトや破城槌に対しても手を打つ必要がある。」ロジェが加えた。
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明日には反撃が始まる。成功すれば生きるが、失敗すれば皆死ぬ。
籠城戦という状況下で、僕たちはかつて無いほどの緊張感の下、反撃準備を進めていた。
続く
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