君はなぜ笑う?

梵天丸

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君はなぜ笑う?(8)

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 試験も今日ですべて無事に終わり、明日からはしばらく試験休みだ。幽霊になった香穂が毎晩僕の勉強に付き合ってくれたおかげもあって、今回の試験の手応えはまあまあだったので、母から咎められる心配もないだろう。
 どうせなら姿も見えないのだし、試験中に答えを教えてくれたら良いのにと冗談を言ってみたのだが、そういうことはしたくないと断られてしまった。まあ、当然のことだろう。それに香穂は幽霊体質のせいで午前中はほとんど活動できないみたいだし。
「耕司君、お疲れ様。試験はどうだった?」
「ああ、おかげさまでなかなか良かったと思う。まあ、結果が出るまではちょっと落ち着かない気分だけど」
「今日はちょっと時間がある?」
「うん、陽だまりカフェに寄って帰ろうかとも思ったけど、香穂が行きたいところがあるなら行くよ」
「じゃあ行こう」
 香穂は僕の手を取るように手を伸ばして、先を歩き始めた。
 きっと傍から見る人がいれば僕は変な人間だと思われているに違いない。誰もいないのにずっと独り言を言っているようなものだから。
「電車に乗っていくの?」
「ううん、ここから歩いて。ちょっと時間はかかるけど、歩ける距離だから。あ、でも、耕司君は生きてるから疲れちゃうかな?」
「いや、大丈夫だよ。今日は二科目だけだったし」
「そっか。じゃあ、行こう」
 香穂と一緒に、僕は並んで歩く。こうしていると、本当にデートをしているみたいだ。相手は幽霊なのに。
「今日はいい天気で良かったぁ。でも、幽霊的には雨の日のほうが動きやすい感じなんだけど」
「へえ、そうなんだ?」
「うん。雨とか湿気とかと相性がいいみたい」
「ふうん。不思議だな」
 幽霊の世界の話を聞いても、あまりぴんとは来ない。だけど興味深い気はした。
「あっ、あの子。迷子だ」
「え? どの子?」
「ほら、あの子。男の子。泣いてるの。お母さんを探してるのかなぁ」
 香穂が指さした方角に、僕は何も見つけることが出来なかった。そこには男の子どころか人の姿は何もない。
「その子も幽霊じゃないのかな? 僕には見えない」
 僕がそう聞いてみると、香穂もそう思ったみたいで頷いた。
「うん、そうかも……でも、ちょっとだけ助けてあげたい。いい?」
「うん、いいよ」
 幽霊の男の子に近づいていく香穂の後を、僕は追いかける。
 その子の前にたどり着くと、香穂は目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「どうして泣いてるの? 何かあったの? そっか、そうなんだね……うん、分かるよ。じゃあ、あたしがこのお兄さんを通じてお母さんに伝えてあげるから。うん、だから心配しないで。一緒に行こう。言いたいことは全部、あたしが伝えてあげるから」
 どうやらしばらく独り言のように話をしている間に、香穂と幽霊の男の子の話はまとまったようだった。
「ごめんね、耕司君。今からこの子の家に一緒に行ってもらってもいい? お母さんに伝えたいことがあるんだって」
「あ、ああ、いいけど」
「良かったぁ。耕司君がいれば、ちゃんと伝わるもんね。この子も喜んでる。笑ってるの。さっきまで泣いてたのに」
 香穂はその男と手を繋ぐようにしているけれど、僕にはやっぱり男の子の姿は見えなかった。
「じゃあ、案内してくれる? うん、こっち? 分かった」
 僕は見えない男の子に手を引かれるようにして歩いて行く香穂の後を追いかける。
 やがてたどり着いたのは、とある住宅街の中の一軒家だった。その庭に、暗い顔をしながら庭の花に水をやる女性の姿が見える。
「耕司君、あの人がこの子のお母さん。えっと、この子の名前はゆうと、くん。でね、お母さんに泣かないでって伝えたいんだって。でも、それだけじゃ信じてもらえそうにないから……ううんっと、ちょっと待ってね」
 香穂はそう言って視線を下に向け、また幽霊の男の子と何かを話している。
「あのね、お母さんの小さな黄色い宝石のついた指輪をゆうとくんの部屋にある机の二番目の引き出しの中の上側にガムテープで貼り付けて隠してあるんだって。ごめんなさいって言ってる。その情報を使って上手く説明してもらえる?」
「うん、分かった……何とかやってみるよ」
 そう返事はしたものの、僕は自信がなかった。
 僕はこんなにはっきりと香穂の姿が見え、声が聞こえるおかげで信じることが出来ているけれど。
 でも、何も見えない、聞こえない人に果たして信じてもらえるだろうかと。
 僕はそっとその家の玄関に近づき、庭の花に水をやっている女性に声をかけた。
「あの、すみません……」
 女性はゆっくりと視線を僕に向け、首をかしげる。
「この家に……その、ゆうとくんという子供がいましたか?」
 僕がそう告げると、女性は驚いたように目を見開いた。
「ゆうとは……先月交通事故で亡くなった私の子供です。あの、どうしてそれを……?」
「えっと、その……唐突なんですが、僕の知人にそういう霊が見えるっていう人がいて、伝えて欲しいことがあるって言われて今日はそれを伝えに来たんですが……とりあえず信じてもらえないと思うので、ゆうとくんの部屋の机の二番目の引き出しの上側を見てください。そこにゆうとくんがガムテープで貼り付けたあなたの指輪があると思うんです。それを見つけてもらってから、ゆうとくんの言葉をお伝えします」
 女性は怪訝そうな顔をして僕を見つめている。やはり信じてもらうのは無理だろうか……そう思っていると。
「耕司君、フレディの首輪が切れたのも僕が悪戯したからだってママに言ってって。あの時ちゃんと謝らなくてごめんって、ゆうとくんが……」
 香穂の言葉に頷いて、僕はさらに続けた。
「あ、ええっと、フレディの首輪に悪戯をして首輪が切れちゃったのもゆうとくんの悪戯だと……その時は認めなくてごめんなさいとも言っているみたいです」
「ゆうとだわ。それ、他の人に話したことないもの。あの、ゆうとの部屋の机の二番目の引き出しですね?」
「はい。ぜひ見てきてください」
「分かりました」
 女性はどうやらフレディの首輪が切れたという話で、僕の話を信じる気になってくれたらしい。
 いったん家に入った女性の姿は、すぐにまた戻ってきた。その手には黄色い宝石……トパーズのような小さな宝石のついた指輪があった。
「あの……本当にゆうとの声が……?」
「あ、はい。あの、ゆうとくん、ママが泣いているのが辛いそうなんです。だから、ママ泣かないでと言っているみたいです。笑っているママの顔が見たいって……」
「ゆうとが……そんなことを……」
 女性は放心状態で手の中の指輪を見つめている。
「ありがとう、耕司君。ゆうとくんも喜んでる」
 僕はその香穂の言葉に頷いて、女性に告げる。
「あの……僕は頼まれただけなので、一応伝言はすべて伝えました。これで……失礼します」
 僕は女性に一礼して、その場を後にした。
 背後から女性が僕を呼び止める声が聞こえたけど、僕は振り返らずにそのまま立ち去った。

「ゆうとくんは、どこにいったの?」
「ママのところへ戻ったんじゃないかな? ありがとうって何度もお礼を言ってたよ。でも、たぶんもうすぐママともお別れだけどね。でも、お別れしたほうがあの子にとってもいいことだから……こっちは基本的に生きている人のための世界だから、死んだ人が長くいるとだんだん苦しくなってきちゃうの」
「お別れって、それってつまり成仏するってこと?」
「うん、そんな感じかなぁ。あたしも幽霊になったばかりでよく分からないけど。お迎えが来るんだよ。あの子の後ろにも、おじいちゃんみたいな人がずっとついてた。あのおじいちゃんが連れて行ってくれるんだと思う」
「へええ、そうなんだ。そのおじいちゃんも死んでる人?」
「そう、死んでて先にもう成仏しちゃってる人かな」
「ふうん……成仏しちゃったら誰かを迎えに来たり出来るんだ?」
「ん~、そうみたい? 本当にあたしもまだよく分からないんだ。でも、お迎えに来るのは死んでからちゃんと成仏して向こうの世界のことも理解している人みたいだよ」
「へええ、何か上手く出来てるな」
 僕はそう答えつつも、何だかちょっと理解するのが難しかった。自由にこちらの世界とあちらの世界を行き来できるんだったら、ずっとこっちにいても構わないんじゃないかなとも思ってしまうし。
 まあ、生きている僕には理解できないほうが良いのかもしれない。
 でも、とりあえず僕には見えなかったゆうとくんの言葉はすべて間違っていなかったし、そのおかげであの女性にも信じてもらえたわけだし。さっきまでそこにゆうとくんという名前で生きていた男の子の幽霊がいたことは間違いないのだろう。
「そういえば……香穂にはお迎えは来ないのか?」
「うん、私はまだ誰も来ないなぁ。来るとしたら死んだおばあちゃんかなって思ってたけど。あたし、おばあちゃんっ子だったしね。でも、まだ誰も来ないんだ。記憶がないのが原因なのかなぁ」
「そうなんだ」
「よく分からないけど。自分のことはよく分からないんだよね。いろいろと分かったこともあるけど、分からないほうが多い。生きてるときと一緒だね」
「確かに……自分のことって、自分が一番よく分かってないのかもしれないな。僕も香穂に指摘されるまで、自分が空っぽだって気付いてなかったし」
「でも、もう気付いたからすごいよね。これからは空っぽにならないように生きていくことだって出来るはずだよ」
「うん、香穂のおかげだよ。ありがとう」
 僕が素直に礼を言うと、香穂は嬉しそうに微笑んだ。そのマシュマロみたいにふわふわした笑顔が、何だか懐かしい。
「あ、寄り道しちゃってごめんね。じゃあ、行こうか」
「そうだった。今日は本当は別のところに行くんだったな」
「うん。こっちだよ」
 香穂が手を差し出してくるので、僕はその手を取るようにする。ほんの少し手のひらに温もりを感じるけど、その手を握ることはやはり出来ない。
「あ、あの公園……だったかなぁ」
 香穂が指さした先に公園らしきものが見えてきた。
「耕司君に見せたいものがあるんだよ!」
 香穂がそんなことを言ってくれるので、僕も少しわくわくしてきた。
「へえ、どんなものだろ」
「見てからのお楽しみ♪」
 学園を出て寄り道をして公園にたどり着くまでに、けっこう時間がかかったと思う。公園の木々はもう黄昏の色に染まり始めていた。
「こっちこっち! 耕司君、ほら見て!」
 香穂は公園の中の池を指さした。
 その池を見た瞬間、僕は言葉を失った。
 池を覆う緑の葉の合間に、色とりどりの睡蓮の花が浮かんでいる。赤や白、桃色……そしてつぼみの部分には黄色も。さらには池の端にはカキツバタの花も群生していた。
 まるで絵画のようなその光景は、誰でも無料で出入りできる公園の風景とはとても思えない。
「綺麗でしょ? 学園に通うようになってから、見つけたの。バイトし始めてからはなかなか来ることが出来なかったんだけど。睡蓮の花が咲いたら、きっと綺麗だろうなって思ってたんだ。ふふ、やっぱりすごく綺麗……」
「本当だな。すごく綺麗だ」
「本当はね、あの日もここへ誘おうと思ったの。きっともう睡蓮の花が咲いていると思ったから」
「あの日……」
 香穂が言ったあの日のことを、僕はすぐに理解した。あの日、香穂が死んだ日だ。僕は付き合ってから初めて香穂の誘いを断った。
 香穂は僕を寂しそうに笑いながら見つめている。
「あたし……万引きのこと、咎めるつもりなかったんだよ」
「香穂……」
 香穂の言葉に、僕は目を見開いた。
 香穂は自嘲気味に笑いなおすと、力なく首を横に振った。
「ううん、咎めるつもりがなかったんじゃなくて、咎める勇気がなかったの。咎めたらきっと……耕司君があたしから離れていってしまうと思ったから。でも、それってぜんぜん耕司君のことを思っていない行動だったよね……」
「…………」
「本当に耕司君のことを思っていたら……あの場で一緒にお店の人に謝りに行こうって言うべきだった。でも、あたしは何も見なかったふりをして耕司君を誘ったの……」
 僕は香穂の言葉に何と答えていいか分からなかった。
 そして香穂のその次の言葉に、僕はさらに言葉を失った。
「あたしがあの時耕司君を咎めていたら……耕司君はあたしを殺さなくて済んだ?」
「香穂……っ……」
「ごめんね。記憶喪失なんて嘘。知ってたんだ。あたしを殺したの、耕司君だって事……」
 香穂は何もかも知っていたのだ……そう思うと同時に、体の中から余計な力が抜けていくのを感じた。
 僕は最初から、香穂に咎めて欲しかったのかもしれない。万引きのことも、そして香穂を殺してしまったことも。
「分かってた……香穂が僕の前に出てきたのは、きっと恨みを晴らすつもりなんだろうって。だから香穂が幽霊になって目の前に現れても僕は驚かなかったし、怖くもなかったんだ。当然の事だって思ってたから……」
「耕司君……」

「現場近くのホームセンターで彼が被害者を刺したものと同じタイプのナイフやウィンドブレーカーを買っていたのが判明しました!」
「やっぱりそうか……駅の防犯カメラの映像と彼が言っていた帰宅時間が違っているからひょっとしてと思ったが……」
「でも、被害者の女の子は大柄な中年男が犯人だって言ったんでしょう?」
「かばったのかもしれない。咄嗟に。自分の恋人を助けるために」
「道理で現場付近で大柄な男のものと思われる痕跡や目撃情報がほとんど出なかったわけですね。僅かにあった証言はすべて事件と関係のないものばかりでしたし……」
「とりあえず彼を確保しよう。尾行はつけているな?」
「はい。二人ついています。先ほど入った連絡だと、現在は都内の公園にいるそうです!」
「よし、すぐに逮捕状請求しろ!」

「やっぱり香穂は僕が万引きするところを見てたんだな。ひょっとして、最初に出会ったあの時も?」
「ごめんね……そうだよ、あの最初に会ったときも見てたの。でも、言わなかった。耕司君があたしと付き合ってくれたのは、ひょっとして万引きを見られたかもしれないって思ったから?」
「それもあるかな。ちょっと付き合ってみて、何か言ってきたらその時は考えようと思った。最初の時は確信がなかったから。でも、二度目はあの日は見られたっていう確信があった……」
「うん、分かってた。何となく分かってたよ。耕司君があたしを好きになってくれたから付き合ったんじゃないってことは……でも、それでも良かったんだ。それでもあたしは幸せだった。それでもあたしは、耕司君からたくさんの大切なものをもらったよ……」
 まったく僕を責めようとしない香穂の言葉に、胸が苦しくなってくる。考えてみたら僕は香穂に酷いことばかりしてきた。
「でも、今さらこんなことを言っても信じてもらえないかもしれないけど……今の僕は本当に香穂のことが好きだよ。今になってようやく香穂が僕にとってどれだけ大切な存在か分かったんだ……」
「耕司君……」
 香穂は寂しそうな目で僕を見つめてくる。
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