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第一章
身代わり濃姫(7)
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夕方までたっぷり一日外で過ごした美夜は、久しぶりに開放感を味わうことができた。
城に戻って風呂に入り、着替えを済ませて寝室に行くと、今日は信長がちゃんとそこにいた。
昨日までは信長がまともに部屋にいたことがなかったので、ちゃんと部屋にいることに少し驚いてしまう。
(いよいよ……なのかな……)
覚悟を決めるように、美夜は軽く息を吐く。
信長は布団の上にあぐらをかき、美夜を待っているようだった。
美夜は思い切って信長の前まで行き、そこに対面するように正座し、背筋を伸ばす。
「信長様、今日はありがとうございました」
まず礼を言うと、信長は笑った。
「良い気分転換になったか?」
「はい。とても」
美夜が頷くと、信長はさらに破顔した。
「それは良かった。俺も城は窮屈で嫌いだ。だから、そなたもきっと嫌いだろうと思うたのだ」
「嫌いではないですけど、窮屈だとは思います。でも、ここにいるのが私の役目ですから」
美夜には好き嫌いの問題で物事を決めることができない。
兄を人質に取られていなければ、こんな場所からすぐにでも逃げ出してしまっていると思う。
でも、そんな願望を抱くことも口に出すこともできない。
「帰蝶、今宵は泣かぬか?」
ふいにそう聞いてきた信長の顔は、もう笑っていなかった。
美夜もすぐに信長の言葉の意図を察した。
「泣きません。大丈夫です」
真っ直ぐにその顔を見つめて答えると、信長は頷いた。
「では、もっと近う寄れ」
信長に手招きされ、美夜は信長の近くへと身を寄せた。
「帰蝶……」
信長が腕を伸ばして、美夜の身体を抱きしめる。
「俺は箍が外れるかもしれぬ……自信がない」
「覚悟はしています」
美夜が迷わずにそう告げると、信長が少し笑う気配がした。
「覚悟か……そなたは肝が据わっておるのだな」
信長は両手で美夜の顔をあげさせ、接吻をする。
唇と唇の重なる感触。
すぐに信長の舌が先日と同じように、美夜の唇を弄り始める。
(大丈夫……この身体は私のものじゃない……)
「ん、ふ……ぅ……んっ、く……ぅ……んっ……」
帰蝶は落ち着いて、そう自分に言い聞かせる。
(こうしたことも含めて……兄様を守るためだから……)
唇を開かれ、舌をねじ込まれても、美夜はもう驚かなかった。一度経験しているから、そういうものだという心構えができている。
「ん、ふ……ぁっ、んっ、く……んふ……ぅ……」
さすがに襦袢の中に手を差し入れられたときは、少し身体が強ばってしまった。
けれども、何事も逆らわず、信長の意のままに……と美夜は自分に言い聞かせる。
昼間は子どものようにも見えたその顔は、今は少し大人びて、男の気配がする。
信長の手は美夜の乳房を優しく包み込み、その感触を確かめるように愛撫する。だんだん身体が熱くなってきて、美夜は感じたことのない感覚を感じ始めていた。
「ん、ぁ……んっ、ふ……ぁっ、は……っ……」
「ここにも……触れるぞ……」
信長はそう告げると、美夜の太もものほうへと手を伸ばしてきた。
一瞬、身体を強ばらせかけたが、何とか耐える。
太ももを撫でられ、その手が徐々に内側に向かっていくのを感じて、美夜はぎゅっと歯を食いしばった。
しかし、信長の指が誰からも触れられたことのないその場所に触れたとき、美夜はびくんと身体を大きく震わせた。
「ぁっ、い、いや……っ……」
そんなところをまさか触られるなどとは思わず、美夜は身体をよじって逃げようとする。
「いや……いや……っ……!」
しかし、美夜の身体を押さえつけるように信長がのしかかっていて、容易に逃げ出すことはできない。
「嫌か? 嫌ならやめる」
じっと顔を見つめて問われ、美夜は言葉に詰まってしまう。
男女の営みというものが、想像していたよりもずっと生々しいものなのだということを、美夜はようやく理解した。
この先、もっと生々しく、恥ずかしいこともされるかもしれないと思うと、せっかくの覚悟も挫けてしまいそうだった。
逃げるなら、チャンスは今しかない……。
信長は、美夜の髪を撫でながら、悲しげに顔をゆがめる。
「俺はもう、そなたを泣かせたくはないのだ……」
最初にキスされたときも泣いてしまい、今朝も土産のうさぎの死骸を見て泣いてしまった。
元の世界での美夜はそう簡単には泣かない少女だったのに、この世界へ来てからは、信長の元へ嫁いできてからは、なぜだか心が弱まっている気がする。
(こんなことじゃいけないのに……強くならなくちゃいけないのに……でも……)
信長の不器用な優しさが伝わってきて、それだけでまた泣きそうになる。
この優しさに、甘えてしまうことができれば良いのに……。
でも、信長の優しさは、今の美夜にとって辛いだけだ。
いっそのこと、美夜に選択権など与えずに、強引に進めてくれれば良いのに。
(ここで嫌と言えば、信長はやめてくれるのかもしれない……でも、私は信長の妻になれず、信長を味方につけることもできなくなる……)
「…………」
「…………」
顔をのぞき込む信長を見返しながらも、美夜は迷っていた。
(兄様にばかり依存していては駄目……私も自分にできることをしないと……!)
「……してください」
「良いのだな?」
「はい……私は信長様の妻ですから。こうしたことも、すべて覚悟の上で嫁に来ました。ですから……」
美夜の返答に、信長は微かに傷ついたような顔をした気がしたが、一瞬だったので気のせいだったのかもしれない。
「……分かった。では、続きをするぞ」
信長はそう告げると、先ほど触れていた場所に再び指を這わせてくる。
信長がある部分を刺激するたび、美夜は自分の身体が熱くなっていくのを感じた。
この部分を触られると、こんなふうになるなんて……。
美夜は自分の身体のことを、信長のほうがよく知っているのかもしれないと思った。
やがて信長の指は、美夜の中心部を割ってひとつの穴を見つけ、そこへ出入りを始めた。
「ぁっ、ん、ぁんっ……は、ぁっ、あぁっ……」
自分の意思とは無関係に、声が漏れてしまう。
恥ずかしいとは思うが、信長が触れるたび、指を動かすたびに身体がもぞもぞとしてしまい、声が出てしまうのだ。
「ん、や……ぁっ、んっ、ん、く……ぁっ……」
ふと気がつくと、両足の合間を信長が弄るたび、濡れたような音が響いていた。
美夜は自分でも理解していた。
その場所がもっとも熱くなっており、そして、その場所から何かが溢れだしているということを。
そんな身体の変化をこれまで感じたことがなかったし、今信長がしていることによって、美夜が感じている感覚も初めて感じるものだった。
身体がまるで燃えているかのように火照り、思考もおぼつかなくなってきた頃、信長が着ているものをすべて脱いだ。
「あ……」
その身体の中心部にある異様な形をしたものが、美夜の目を釘付けにした。
(に、兄様のものをお風呂に一緒に入ったときに見たことがあるけれど……でも、こんなに凶暴なものじゃなかった気がする……)
美夜がじっと目を見開いていると、信長は美夜の両足を開き、その間に入ってきた。
そして、先ほどから丹念に弄り続けていたその場所に、そそりたつ猛々しいものを押し当てたのだ。
(その場所に……それが入るんだ……)
美夜はようやく『裸で抱き合う』という意味を正確に理解した。
信長は美夜の唇に軽く接吻すると、そのままぐっと強く腰を押し込んできた。
「……ッあ!!!」
入ってきた瞬間に鋭い痛みを感じた。
しかし、奥へと身体を貫くように入ってくると、その痛みとは比べものにもならないほどの痛みが美夜を襲った。
「あっ、あぁあっ!! うぐ、うっ、あぁぁぁっ!!」
堪えきれずに、美夜の唇からは悲鳴が漏れていた。
まるで身体の中を、串刺しにされているようだった。
痛みのあまりに流れる涙を、信長の指がそっと拭った。
「すまぬ……やはり泣かせてしもうた。俺も初めてだから、加減が分からなかった……」
こうしたことの手ほどきなどをあらかじめ受けているのかと思ったら、どうやら信長は知識だけを与えられていたようだった。
実技としては、これが初めての経験らしい。
「んぅっ、うっ、く……ぁ、はぁっ、はぁ……っ……」
信長がすぐには動かずにじっとしていてくれたので、痛みは少しずつましになってくる。
しかし、今こうして誰かが自分の身体の中に入っているという感覚は、とても奇妙なものだった。
内側から押し広げられる圧迫感のようなものも強く感じ、どうしても身体の中の信長を意識せずにはいられない。
(これが、ひとつになるということ……)
美夜は自分の身体で今それを実感していた。
好きな相手とであれば、この酷い痛みと羞恥を伴う行為にも、幸せを感じることができるのだろうか……。
(もしもこれが兄様だったら……)
そう考えかけたが、美夜は意外なほどに違和感を感じた。
兄のことを結婚しても良いと思うほどに好きだったはずなのに、美夜は兄とこういうことをするという具体的な想像ができなかった。
まさか男女の交合がこのようなものだったと美夜は今知ったばかりだから、無理もない話なのかもしれないが。
「……っぅ、帰蝶……動いても……構わぬか?」
苦しげな声で、信長が問うてくる。
どうやら信長はずっと動くのを我慢してくれていたようだった。
「は、はい……っく……だ、大丈夫……だと思います……」
大丈夫……と言い切れないのは、まだ痛みは完全になくなっていないからだ。信長が動き出すことで、再び痛みがこみ上げてくる可能性はある。
覚悟を決めて、美夜は歯を食いしばった。
信長がゆっくりと美夜の身体の中を動き始める。
「んぅっ、ん、く……ぁっ、んっ、んんっ……」
信長が両の手をそれぞれに美夜の手に絡ませてくる。
痛みに耐えながらその手をぎゅっと握ると、信長もまた美夜の手を強く握り返してきた。
ただ、痛みは想像していたよりもずっと弱い。
「んぁっ、ん、ぅっ、く……あ、は……んっ……」
幾度も信長が美夜の身体を出入りし続けているうちに、痛みは少しずつ収まり始めている。
しかし、それと引き替えに、奇妙な熱のようなものが大きくなっていくのを美夜は感じていた。
信長が出入りするたび、繋がりあった部分から濡れた音が響き続ける。
「ん、あっ、んっ、く……ぁっ、んっ、ぁんっ……」
信長が入ってくる前に愛撫をされていたときとは少し感じが違うが、似たような感覚が、美夜の身体を熱くし、息を弾ませていく。
「あ、んっ、あっ、ふ、んっ、あっ、ぁ……っ……」
「帰蝶……っ……」
信長の息も荒くなっていた。
動いているから……というだけではないような、興奮の入り交じった呼吸だった。
「ん、ぁんっ、んっ、あ、ぁっ、はぁ、はぁっ……」
信長の動きがさらに速く、荒々しいものになっていく。
美夜はまるでどこかに引っ張り上げられるような感覚を感じながら、ただひたすらに信長の動きを受け止め続けた。
「あっ、ぁっ、はぁっ、あっぁ……っ……」
自分がどのような顔をし、どのような声を上げているのかも、もう理解できない。
ただ、信長の動きに合わせるように、息を弾ませていく。
信長が美夜の唇を塞いでくる。
「ん、ふぅっ、んっ、く……んぅっ、ふ……」
息苦しさを感じつつも、美夜は信長の熱に飲み込まれていく。
「んっ、ぅっ、んんっ、んっふ……! ――――っ!?」
唇をふさがれたまま、美夜は不思議な感覚を味わった。
身体が震え、熱が放出され、頭が真っ白になっていく――。
そして、それとほぼ同時に、信長が低く呻き、美夜の身体の中には熱いものが勢いよく流れ込んできた。
「大丈夫か?」
汗に濡れた髪を撫でながら、信長は聞いてくる。
「え、ええ……まあ……」
さすがに、大丈夫……とは言い切れなかった。
身体はぐったりと疲れ、言いようもない倦怠感が全身を覆っている。
(これが……初夜にするはずだったこと……結婚するということ……そして、女になるということ……)
そして、これからも美夜が信長の妻で有る限り、義務としてする必要のあること。
(想像していたのと……ぜんぜん違った……)
ともかく、自分のこの世界の身体は、信長のものになったのだと美夜は理解した。
城に戻って風呂に入り、着替えを済ませて寝室に行くと、今日は信長がちゃんとそこにいた。
昨日までは信長がまともに部屋にいたことがなかったので、ちゃんと部屋にいることに少し驚いてしまう。
(いよいよ……なのかな……)
覚悟を決めるように、美夜は軽く息を吐く。
信長は布団の上にあぐらをかき、美夜を待っているようだった。
美夜は思い切って信長の前まで行き、そこに対面するように正座し、背筋を伸ばす。
「信長様、今日はありがとうございました」
まず礼を言うと、信長は笑った。
「良い気分転換になったか?」
「はい。とても」
美夜が頷くと、信長はさらに破顔した。
「それは良かった。俺も城は窮屈で嫌いだ。だから、そなたもきっと嫌いだろうと思うたのだ」
「嫌いではないですけど、窮屈だとは思います。でも、ここにいるのが私の役目ですから」
美夜には好き嫌いの問題で物事を決めることができない。
兄を人質に取られていなければ、こんな場所からすぐにでも逃げ出してしまっていると思う。
でも、そんな願望を抱くことも口に出すこともできない。
「帰蝶、今宵は泣かぬか?」
ふいにそう聞いてきた信長の顔は、もう笑っていなかった。
美夜もすぐに信長の言葉の意図を察した。
「泣きません。大丈夫です」
真っ直ぐにその顔を見つめて答えると、信長は頷いた。
「では、もっと近う寄れ」
信長に手招きされ、美夜は信長の近くへと身を寄せた。
「帰蝶……」
信長が腕を伸ばして、美夜の身体を抱きしめる。
「俺は箍が外れるかもしれぬ……自信がない」
「覚悟はしています」
美夜が迷わずにそう告げると、信長が少し笑う気配がした。
「覚悟か……そなたは肝が据わっておるのだな」
信長は両手で美夜の顔をあげさせ、接吻をする。
唇と唇の重なる感触。
すぐに信長の舌が先日と同じように、美夜の唇を弄り始める。
(大丈夫……この身体は私のものじゃない……)
「ん、ふ……ぅ……んっ、く……ぅ……んっ……」
帰蝶は落ち着いて、そう自分に言い聞かせる。
(こうしたことも含めて……兄様を守るためだから……)
唇を開かれ、舌をねじ込まれても、美夜はもう驚かなかった。一度経験しているから、そういうものだという心構えができている。
「ん、ふ……ぁっ、んっ、く……んふ……ぅ……」
さすがに襦袢の中に手を差し入れられたときは、少し身体が強ばってしまった。
けれども、何事も逆らわず、信長の意のままに……と美夜は自分に言い聞かせる。
昼間は子どものようにも見えたその顔は、今は少し大人びて、男の気配がする。
信長の手は美夜の乳房を優しく包み込み、その感触を確かめるように愛撫する。だんだん身体が熱くなってきて、美夜は感じたことのない感覚を感じ始めていた。
「ん、ぁ……んっ、ふ……ぁっ、は……っ……」
「ここにも……触れるぞ……」
信長はそう告げると、美夜の太もものほうへと手を伸ばしてきた。
一瞬、身体を強ばらせかけたが、何とか耐える。
太ももを撫でられ、その手が徐々に内側に向かっていくのを感じて、美夜はぎゅっと歯を食いしばった。
しかし、信長の指が誰からも触れられたことのないその場所に触れたとき、美夜はびくんと身体を大きく震わせた。
「ぁっ、い、いや……っ……」
そんなところをまさか触られるなどとは思わず、美夜は身体をよじって逃げようとする。
「いや……いや……っ……!」
しかし、美夜の身体を押さえつけるように信長がのしかかっていて、容易に逃げ出すことはできない。
「嫌か? 嫌ならやめる」
じっと顔を見つめて問われ、美夜は言葉に詰まってしまう。
男女の営みというものが、想像していたよりもずっと生々しいものなのだということを、美夜はようやく理解した。
この先、もっと生々しく、恥ずかしいこともされるかもしれないと思うと、せっかくの覚悟も挫けてしまいそうだった。
逃げるなら、チャンスは今しかない……。
信長は、美夜の髪を撫でながら、悲しげに顔をゆがめる。
「俺はもう、そなたを泣かせたくはないのだ……」
最初にキスされたときも泣いてしまい、今朝も土産のうさぎの死骸を見て泣いてしまった。
元の世界での美夜はそう簡単には泣かない少女だったのに、この世界へ来てからは、信長の元へ嫁いできてからは、なぜだか心が弱まっている気がする。
(こんなことじゃいけないのに……強くならなくちゃいけないのに……でも……)
信長の不器用な優しさが伝わってきて、それだけでまた泣きそうになる。
この優しさに、甘えてしまうことができれば良いのに……。
でも、信長の優しさは、今の美夜にとって辛いだけだ。
いっそのこと、美夜に選択権など与えずに、強引に進めてくれれば良いのに。
(ここで嫌と言えば、信長はやめてくれるのかもしれない……でも、私は信長の妻になれず、信長を味方につけることもできなくなる……)
「…………」
「…………」
顔をのぞき込む信長を見返しながらも、美夜は迷っていた。
(兄様にばかり依存していては駄目……私も自分にできることをしないと……!)
「……してください」
「良いのだな?」
「はい……私は信長様の妻ですから。こうしたことも、すべて覚悟の上で嫁に来ました。ですから……」
美夜の返答に、信長は微かに傷ついたような顔をした気がしたが、一瞬だったので気のせいだったのかもしれない。
「……分かった。では、続きをするぞ」
信長はそう告げると、先ほど触れていた場所に再び指を這わせてくる。
信長がある部分を刺激するたび、美夜は自分の身体が熱くなっていくのを感じた。
この部分を触られると、こんなふうになるなんて……。
美夜は自分の身体のことを、信長のほうがよく知っているのかもしれないと思った。
やがて信長の指は、美夜の中心部を割ってひとつの穴を見つけ、そこへ出入りを始めた。
「ぁっ、ん、ぁんっ……は、ぁっ、あぁっ……」
自分の意思とは無関係に、声が漏れてしまう。
恥ずかしいとは思うが、信長が触れるたび、指を動かすたびに身体がもぞもぞとしてしまい、声が出てしまうのだ。
「ん、や……ぁっ、んっ、ん、く……ぁっ……」
ふと気がつくと、両足の合間を信長が弄るたび、濡れたような音が響いていた。
美夜は自分でも理解していた。
その場所がもっとも熱くなっており、そして、その場所から何かが溢れだしているということを。
そんな身体の変化をこれまで感じたことがなかったし、今信長がしていることによって、美夜が感じている感覚も初めて感じるものだった。
身体がまるで燃えているかのように火照り、思考もおぼつかなくなってきた頃、信長が着ているものをすべて脱いだ。
「あ……」
その身体の中心部にある異様な形をしたものが、美夜の目を釘付けにした。
(に、兄様のものをお風呂に一緒に入ったときに見たことがあるけれど……でも、こんなに凶暴なものじゃなかった気がする……)
美夜がじっと目を見開いていると、信長は美夜の両足を開き、その間に入ってきた。
そして、先ほどから丹念に弄り続けていたその場所に、そそりたつ猛々しいものを押し当てたのだ。
(その場所に……それが入るんだ……)
美夜はようやく『裸で抱き合う』という意味を正確に理解した。
信長は美夜の唇に軽く接吻すると、そのままぐっと強く腰を押し込んできた。
「……ッあ!!!」
入ってきた瞬間に鋭い痛みを感じた。
しかし、奥へと身体を貫くように入ってくると、その痛みとは比べものにもならないほどの痛みが美夜を襲った。
「あっ、あぁあっ!! うぐ、うっ、あぁぁぁっ!!」
堪えきれずに、美夜の唇からは悲鳴が漏れていた。
まるで身体の中を、串刺しにされているようだった。
痛みのあまりに流れる涙を、信長の指がそっと拭った。
「すまぬ……やはり泣かせてしもうた。俺も初めてだから、加減が分からなかった……」
こうしたことの手ほどきなどをあらかじめ受けているのかと思ったら、どうやら信長は知識だけを与えられていたようだった。
実技としては、これが初めての経験らしい。
「んぅっ、うっ、く……ぁ、はぁっ、はぁ……っ……」
信長がすぐには動かずにじっとしていてくれたので、痛みは少しずつましになってくる。
しかし、今こうして誰かが自分の身体の中に入っているという感覚は、とても奇妙なものだった。
内側から押し広げられる圧迫感のようなものも強く感じ、どうしても身体の中の信長を意識せずにはいられない。
(これが、ひとつになるということ……)
美夜は自分の身体で今それを実感していた。
好きな相手とであれば、この酷い痛みと羞恥を伴う行為にも、幸せを感じることができるのだろうか……。
(もしもこれが兄様だったら……)
そう考えかけたが、美夜は意外なほどに違和感を感じた。
兄のことを結婚しても良いと思うほどに好きだったはずなのに、美夜は兄とこういうことをするという具体的な想像ができなかった。
まさか男女の交合がこのようなものだったと美夜は今知ったばかりだから、無理もない話なのかもしれないが。
「……っぅ、帰蝶……動いても……構わぬか?」
苦しげな声で、信長が問うてくる。
どうやら信長はずっと動くのを我慢してくれていたようだった。
「は、はい……っく……だ、大丈夫……だと思います……」
大丈夫……と言い切れないのは、まだ痛みは完全になくなっていないからだ。信長が動き出すことで、再び痛みがこみ上げてくる可能性はある。
覚悟を決めて、美夜は歯を食いしばった。
信長がゆっくりと美夜の身体の中を動き始める。
「んぅっ、ん、く……ぁっ、んっ、んんっ……」
信長が両の手をそれぞれに美夜の手に絡ませてくる。
痛みに耐えながらその手をぎゅっと握ると、信長もまた美夜の手を強く握り返してきた。
ただ、痛みは想像していたよりもずっと弱い。
「んぁっ、ん、ぅっ、く……あ、は……んっ……」
幾度も信長が美夜の身体を出入りし続けているうちに、痛みは少しずつ収まり始めている。
しかし、それと引き替えに、奇妙な熱のようなものが大きくなっていくのを美夜は感じていた。
信長が出入りするたび、繋がりあった部分から濡れた音が響き続ける。
「ん、あっ、んっ、く……ぁっ、んっ、ぁんっ……」
信長が入ってくる前に愛撫をされていたときとは少し感じが違うが、似たような感覚が、美夜の身体を熱くし、息を弾ませていく。
「あ、んっ、あっ、ふ、んっ、あっ、ぁ……っ……」
「帰蝶……っ……」
信長の息も荒くなっていた。
動いているから……というだけではないような、興奮の入り交じった呼吸だった。
「ん、ぁんっ、んっ、あ、ぁっ、はぁ、はぁっ……」
信長の動きがさらに速く、荒々しいものになっていく。
美夜はまるでどこかに引っ張り上げられるような感覚を感じながら、ただひたすらに信長の動きを受け止め続けた。
「あっ、ぁっ、はぁっ、あっぁ……っ……」
自分がどのような顔をし、どのような声を上げているのかも、もう理解できない。
ただ、信長の動きに合わせるように、息を弾ませていく。
信長が美夜の唇を塞いでくる。
「ん、ふぅっ、んっ、く……んぅっ、ふ……」
息苦しさを感じつつも、美夜は信長の熱に飲み込まれていく。
「んっ、ぅっ、んんっ、んっふ……! ――――っ!?」
唇をふさがれたまま、美夜は不思議な感覚を味わった。
身体が震え、熱が放出され、頭が真っ白になっていく――。
そして、それとほぼ同時に、信長が低く呻き、美夜の身体の中には熱いものが勢いよく流れ込んできた。
「大丈夫か?」
汗に濡れた髪を撫でながら、信長は聞いてくる。
「え、ええ……まあ……」
さすがに、大丈夫……とは言い切れなかった。
身体はぐったりと疲れ、言いようもない倦怠感が全身を覆っている。
(これが……初夜にするはずだったこと……結婚するということ……そして、女になるということ……)
そして、これからも美夜が信長の妻で有る限り、義務としてする必要のあること。
(想像していたのと……ぜんぜん違った……)
ともかく、自分のこの世界の身体は、信長のものになったのだと美夜は理解した。
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