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第九十七話 へいかって、どんな人?
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翌日は、カイルに正装させ、私も公爵家のシンボルカラーである青色がベースのドレスを着て、皇宮に行くことになった。
(やっぱり緊張する…)
初めての皇宮行きが、皇帝陛下への私的な用事での謁見になるとは思わなかった。
今日は皇女様も同席してくれるし、アメリーも付き添ってくれるので、緊張はするけど少し気は楽だった。
カイルは昨日までずっと、礼儀作法の先生に習った皇帝陛下の前に出たときのお辞儀の仕方を何度も練習していた。
こんなふうに畏まる席に行くのはカイルも初めてのことだから、それなりに緊張はしていたようだ。
ただ陛下は皇女様と似ていて気さくな方だと聞いているし、多少お辞儀の仕方が間違っていたとしても、それほど咎められることはないだろうと思う。
何しろ、今日はあくまでも、カイルを養子にするための相談という私的な用事だし。
カイルはラウル様の膝の上に乗って、窓の外を興味深そうに見つめている。
「お父さん、へいかって、どんな人?」
「うーん…怖くはない…かな?」
「こわくはない?やさしいひと?」
「そうだな。優しい人だと思う。いちおう。表面上は」
「ひょうめんじょうって、なに?」
ラウル様が『余計なことまで言ってしまった』という顔をしていて、思わず笑ってしまう。
ここで変な返答をすれば、カイルは陛下の前でそれをそのまま言ってしまう可能性がある。
「表面上っていうのは、見た目がってこと。とてもやさしそうな顔をしているのよ、きっと」
「お母さんも、はじめてあうんだよね?」
「そうよ。カイルと一緒。だから緊張しなくて大丈夫」
「うん!」
私とカイルの話を、アメリーがくすくす笑いながら聞いている。
気がつけば、馬車は皇宮の門をくぐるところだった。
(ここが皇宮…)
シャーレットはずっと首都にいたけれど、皇宮には一度も足を踏み入れたことはなかった。
初めて見る皇宮は、圧倒されるほどに美しい場所だった。
噴水やその周りの木々や花壇は、見事なほどに手入れされていて、少しの隙もない。
前世にあったヴェルサイユ宮殿のような雰囲気というのが近いかもしれない。
皇宮の入り口に続く道には、皇軍の騎士たちが警備のために整然と立っている。
皇軍は有事の時以外は、基本的に皇宮の警備を行っているらしい。
そして、皇宮警察は要人の警護を主に行う。
(ラウル様も、ああやって警備をしていた頃があったのかな…)
私と出会う前のラウル様の姿を想像してみようとしても、難しかった。
「シャーレット!」
皇宮の入り口では、皇女様が出迎えてくれていた。
「アメリーも久しぶり!」
「はい、その節はありがとうございました」
アメリーは皇女様の侍女だったということもあり、出産の前後に神聖力を使ったサポートもしてくれていたのだという。
「カイルも久しぶりね。私のこと、覚えてる?」
「こうじょさま!」
「そう、えらいわねー」
皇女様に頭を撫でられて、カイルは嬉しそうだ。
前回皇女様が皇軍の指揮官として城に来たときにも、カイルとは少し対面している。
すでにカイルがランベルト大公の息子であることがバレた後のことだったから、皇女様は初めて従甥として対面したのだった。
「もうお父さんのことを『公爵様』なんて呼ばなくていいからね」
と皇女様に言われて、カイルは嬉しそうだった。
私自身も、そのことが一番ホッとする。
子どものカイルに演技をさせるというのは、仕方がないこととはいえ胸が痛かった。
「お父様が待ってるわ。こっちよ」
皇女様に案内されて、皇帝陛下の待つ部屋へと向かった。
皇帝陛下は、驚くほど平凡な人だった。
そして、想像していたよりもずっと年齢が上だった。
見た目はたとえるなら、前世で人気のあったフライドチキンのフランチャイズ店を作ったおじさんだ。
あのおじさんが白髪でなければ、こんな雰囲気だろう。
リリア皇女様は、陛下がお年を召してからの子どもだとは伺っていたけれど。
二人が並ぶと親子というよりは、祖父と孫という雰囲気さえある。
型どおりの挨拶をしようとするとすぐに止められ、用意されていたソファに座るように促された。
「久しぶりだな、ラウル。5年ぶりか」
「はい。ご無沙汰しております」
「その子がカイルか?」
「はい」
「カイル、こちらへ来なさい」
陛下に促され、カイルは緊張しながら歩いて行く。
陛下はカイルを抱き上げ、自分の膝の上にのせた。
「確かに、ランベルトによく似ている。ラウルにも似ているが」
「そもそもラウルとランベルトがそっくりだったんだもの。似ていて当然よ」
カイルは陛下と皇女様の会話の意味が分からず、大きな目を見開いて緊張していた。
「ランベルトの息子だということは当面伏せておくのが良いだろう。いろいろ面倒なことを言う輩もいるからな。そのうちさりげなく公表すればよろしい。養子許可の手続きは、今日中に進めておく」
「はい、よろしくお願いします」
あっさりとカイルを養子にする話がまとまって、私はホッとする。
今日の目的は、ほぼ達成できた。
「シャーレットは、あまりグリーン侯爵には似ていないようだな。おかげでかなりの美人だ」
「はい…母に似てると言われていました」
グリーン侯爵の妾だった母に似てることから、シャーレットは正妻からも姉や兄たちからも、かなり冷遇されていた。
(たぶん、お義母様からしたら、仇のような存在だったのよね…でも、一応成人まで育ててくれたから悪い人ではないと思いたいけど…)
ただ…存在すらないように振る舞われた日々は、シャーレットにとっては辛い日々でもあった。
「リリアから聞いているが、ラウルとは上手くやっているそうじゃないか」
「は、はい…とても親切にしていただいています」
「なら良かった。私も強引に結婚を促したかいがあったというものだ」
「はい、ありがとうございます」
その後は、ラウル様が陛下に北部の状況を報告したり、騎士団の様子を聞いたりする程度で、皇軍の人事に関する話は一切出なかった。
皇帝といえば、カリスマ的な存在感がある国をまとめる人というイメージがあったけれど。
私の目の前にいる陛下は平凡な中年男性という印象で。
帝国を牽引していく存在としては、失礼ながらいささか頼りない気がした。
(先代陛下が亡くなられたから帝位を継いだと聞いているけれど…)
先代陛下もこの方が譲位しても問題ないような体勢を整えようとしていたところで、亡くなられた可能性があるのかもしれない…と私は思った。
ラウル様を皇宮警察に潜入させて改革を行ったり、死の直前の3年間に周辺国への遠征を行ったり。
それらが全て譲位のための準備だった可能性が考えられる。
(だとしたら…準備が整わないまま即位した陛下が、この帝国を治めようとすること自体に無理があるのかも…)
心の中を見られたら不敬罪に問われそうだと思い、私は慌てて不穏な思考を振り払った。
結局、この日の謁見は、特に波風が立つこともなく、和やかな雰囲気のまま終了した。
(やっぱり緊張する…)
初めての皇宮行きが、皇帝陛下への私的な用事での謁見になるとは思わなかった。
今日は皇女様も同席してくれるし、アメリーも付き添ってくれるので、緊張はするけど少し気は楽だった。
カイルは昨日までずっと、礼儀作法の先生に習った皇帝陛下の前に出たときのお辞儀の仕方を何度も練習していた。
こんなふうに畏まる席に行くのはカイルも初めてのことだから、それなりに緊張はしていたようだ。
ただ陛下は皇女様と似ていて気さくな方だと聞いているし、多少お辞儀の仕方が間違っていたとしても、それほど咎められることはないだろうと思う。
何しろ、今日はあくまでも、カイルを養子にするための相談という私的な用事だし。
カイルはラウル様の膝の上に乗って、窓の外を興味深そうに見つめている。
「お父さん、へいかって、どんな人?」
「うーん…怖くはない…かな?」
「こわくはない?やさしいひと?」
「そうだな。優しい人だと思う。いちおう。表面上は」
「ひょうめんじょうって、なに?」
ラウル様が『余計なことまで言ってしまった』という顔をしていて、思わず笑ってしまう。
ここで変な返答をすれば、カイルは陛下の前でそれをそのまま言ってしまう可能性がある。
「表面上っていうのは、見た目がってこと。とてもやさしそうな顔をしているのよ、きっと」
「お母さんも、はじめてあうんだよね?」
「そうよ。カイルと一緒。だから緊張しなくて大丈夫」
「うん!」
私とカイルの話を、アメリーがくすくす笑いながら聞いている。
気がつけば、馬車は皇宮の門をくぐるところだった。
(ここが皇宮…)
シャーレットはずっと首都にいたけれど、皇宮には一度も足を踏み入れたことはなかった。
初めて見る皇宮は、圧倒されるほどに美しい場所だった。
噴水やその周りの木々や花壇は、見事なほどに手入れされていて、少しの隙もない。
前世にあったヴェルサイユ宮殿のような雰囲気というのが近いかもしれない。
皇宮の入り口に続く道には、皇軍の騎士たちが警備のために整然と立っている。
皇軍は有事の時以外は、基本的に皇宮の警備を行っているらしい。
そして、皇宮警察は要人の警護を主に行う。
(ラウル様も、ああやって警備をしていた頃があったのかな…)
私と出会う前のラウル様の姿を想像してみようとしても、難しかった。
「シャーレット!」
皇宮の入り口では、皇女様が出迎えてくれていた。
「アメリーも久しぶり!」
「はい、その節はありがとうございました」
アメリーは皇女様の侍女だったということもあり、出産の前後に神聖力を使ったサポートもしてくれていたのだという。
「カイルも久しぶりね。私のこと、覚えてる?」
「こうじょさま!」
「そう、えらいわねー」
皇女様に頭を撫でられて、カイルは嬉しそうだ。
前回皇女様が皇軍の指揮官として城に来たときにも、カイルとは少し対面している。
すでにカイルがランベルト大公の息子であることがバレた後のことだったから、皇女様は初めて従甥として対面したのだった。
「もうお父さんのことを『公爵様』なんて呼ばなくていいからね」
と皇女様に言われて、カイルは嬉しそうだった。
私自身も、そのことが一番ホッとする。
子どものカイルに演技をさせるというのは、仕方がないこととはいえ胸が痛かった。
「お父様が待ってるわ。こっちよ」
皇女様に案内されて、皇帝陛下の待つ部屋へと向かった。
皇帝陛下は、驚くほど平凡な人だった。
そして、想像していたよりもずっと年齢が上だった。
見た目はたとえるなら、前世で人気のあったフライドチキンのフランチャイズ店を作ったおじさんだ。
あのおじさんが白髪でなければ、こんな雰囲気だろう。
リリア皇女様は、陛下がお年を召してからの子どもだとは伺っていたけれど。
二人が並ぶと親子というよりは、祖父と孫という雰囲気さえある。
型どおりの挨拶をしようとするとすぐに止められ、用意されていたソファに座るように促された。
「久しぶりだな、ラウル。5年ぶりか」
「はい。ご無沙汰しております」
「その子がカイルか?」
「はい」
「カイル、こちらへ来なさい」
陛下に促され、カイルは緊張しながら歩いて行く。
陛下はカイルを抱き上げ、自分の膝の上にのせた。
「確かに、ランベルトによく似ている。ラウルにも似ているが」
「そもそもラウルとランベルトがそっくりだったんだもの。似ていて当然よ」
カイルは陛下と皇女様の会話の意味が分からず、大きな目を見開いて緊張していた。
「ランベルトの息子だということは当面伏せておくのが良いだろう。いろいろ面倒なことを言う輩もいるからな。そのうちさりげなく公表すればよろしい。養子許可の手続きは、今日中に進めておく」
「はい、よろしくお願いします」
あっさりとカイルを養子にする話がまとまって、私はホッとする。
今日の目的は、ほぼ達成できた。
「シャーレットは、あまりグリーン侯爵には似ていないようだな。おかげでかなりの美人だ」
「はい…母に似てると言われていました」
グリーン侯爵の妾だった母に似てることから、シャーレットは正妻からも姉や兄たちからも、かなり冷遇されていた。
(たぶん、お義母様からしたら、仇のような存在だったのよね…でも、一応成人まで育ててくれたから悪い人ではないと思いたいけど…)
ただ…存在すらないように振る舞われた日々は、シャーレットにとっては辛い日々でもあった。
「リリアから聞いているが、ラウルとは上手くやっているそうじゃないか」
「は、はい…とても親切にしていただいています」
「なら良かった。私も強引に結婚を促したかいがあったというものだ」
「はい、ありがとうございます」
その後は、ラウル様が陛下に北部の状況を報告したり、騎士団の様子を聞いたりする程度で、皇軍の人事に関する話は一切出なかった。
皇帝といえば、カリスマ的な存在感がある国をまとめる人というイメージがあったけれど。
私の目の前にいる陛下は平凡な中年男性という印象で。
帝国を牽引していく存在としては、失礼ながらいささか頼りない気がした。
(先代陛下が亡くなられたから帝位を継いだと聞いているけれど…)
先代陛下もこの方が譲位しても問題ないような体勢を整えようとしていたところで、亡くなられた可能性があるのかもしれない…と私は思った。
ラウル様を皇宮警察に潜入させて改革を行ったり、死の直前の3年間に周辺国への遠征を行ったり。
それらが全て譲位のための準備だった可能性が考えられる。
(だとしたら…準備が整わないまま即位した陛下が、この帝国を治めようとすること自体に無理があるのかも…)
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