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一章

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「おや、気分がすぐれないようだ。医療室へすぐ連れて行ってあげよう」

 対外的に聞かせる為そう言いながら、ルミナリクは私の腰を抱え強引に舞踏場から出ようとする。
 足を踏ん張ろうにも、その足に力は入っていかず、よろけながら倒れないようにするのが精一杯で、結果連れていかれるのを助ける形になってしまっていた。

あらがわずに、身をゆだねてごらん? 僕がお姫様抱っこしてあげるから」
「……死ん、でも、ごめん、だわ! 気持ち悪いっ」
「うん、うん、効いてきてるね」

 話しながら、いつの間にか会場を出て、少し照明が落としてある廊下を右に左と知った足取りで彼は歩いていく。

「効く、って、なにを……」
「さて着いたよお姫様」

 言うなりドアの中に押し込められ、彼が素早く入ってきたと思うとカチリ、と言う鍵のかかる音がした。
 押し込められた勢いでわたくしはもう立っていられず、床に座り込んでしまっていた。

 近づかれるのは不味いのだわ。

 それだけはわかっていたから、必死に足を動かし遠ざかろうとする。

「こんな事っ……て、ただで、済むと……思っ……てるの?!!」
「思っているよ? だから最近、君に良く近づいていたんじゃないか。筋書きはこうさ、家の決めた婚約者が居たからお互い一度は身を引こうと決める。だが僕はやはり諦めきれない。君は頑なにその思いに応えない。その姿にいたく感銘を受けた婚約者は解消を申し出、僕と君は晴れて結婚するんだ」

 彼はとても楽しそうに、うっとりと、未来を想像してとろけるように笑っている。
 ぞっとしない計画に、恐怖よりも腹が立った。

「わたっ、くし、の、お父様は、了承しない……わ! もちろ……わたくし、もっ、よ!!」
「…………ふふふふふ、ははははは!!だから君はうぶだって言うのさ。可愛い可愛いメルティ。君は僕がこれからたっぷり愛してあげるんだよ? その体で、僕の側以外どこに行くんだい?」

 言われたと同時に自身の背中に何かが当たる。
 もがいて部屋の壁まで来たと思ったそれは、振り向くと装飾された足のついた、ベッドだった。
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