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一章
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殿下の影と仰る方はそれはもう手際よく帰る手配をした。
おかげでわたくしとマリアは誰の目にも触れぬまま、家へと帰り着くことができた。
帰宅早々、わたくしは自室のベットに入らされ、けれど話をしたかったので背にクッションを何個か入れてもらいもたれて座っている。
流石に気持ちが疲れていて、座るのもおぼつかなかったからだ。
手足は丁寧に手当てしてもらって制服からも着替え、今は寝巻き姿である。
こじんまりとした、わたくし好みの応接セットにはマリアと、お父様とお母様が座っていた。
話す内容が内容なので、アンナには退室してもらっている。
マリアへの感謝としてお気に入りの入浴セット等を客間に用意するよう、わたくしからお願いしたので準備に取り掛かっているはずだ。
影の方はドア付近に静かに佇んでいる。
椅子をすすめたが、仕事中ですので…ですがありがとうございますと、丁寧に断られた。
悍ましい経験をした耳には、温かいお湯に浸して絞ったタオルをマリアからもらい、自分であてていた。
「……あのクソ野郎、私の天使にそんな事までしていたなどと…………っ。いますぐ猛獣の前に放り投げてやる!!」
この声はお父様なのだけれど、ちょっと……だいぶ物騒な事をおっしゃっているわ……仕方ないけれど。
わたくしも気持ちは似通っていたので、特に突っ込もうとも思わなかった。
家に帰りついてから、マリアにも事情を聞きたかった為滞在してもらう手筈と、お父様に報告をレイラードに頼んだ。
事情をきちんとみんなで把握した方が、良いと思ったのだ。
これはもう、自意識過剰ではなくーーわたくし自身が狙われている。
「……わたくしも、同じ気持ちですわお父様……。どうせなら猛禽類にしませんか?」
「ごめんなさいメルティアーラ様!!」
そこでいきなりマリアが謝罪してきた。
「私、私、ルミナリク様の嫌な噂色々聞いていたんですっ……! けどリリッサ様の婚約者だし、信憑性をどう知れば良いのかまではわからなくて……。まさか、女神様がこんな目に遭わされるとは思ってもみなくて、ほんと、こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛~~~~!!」
言うなり大号泣をしながら机に突っ伏してしまった。
「マリアちゃん、貴方が謝る必要はないのよ? 悪~いのはルミナリクのクソガキなんだから、ね? ほらほら泣かないの」
お母様がマリアの隣に座り直し、その背を撫でながらフォローを入れている。
わたくしの場所からでは手が届かないので、ありがたい。
けど女神とか言いすぎよマリア……。
「そうよ、マリア。むしろわたくし助かったのだから、誇りこそすれ卑下する必要はどこにもないわ。改めて……ありがとうね。ーーそれにしても、なぜわたくしがあそこにいるとわかったの?」
ひとしきり泣き終え、けれどまだ鼻がぐずぐずしつつも少し落ち着いてきた彼女がこたえる。
「私、この前お側になるべくいるようお願いされた時、自分でも何かお力になれる事をしよう! って決めてたんです。なのでメルティアーラ様信仰会の会員の方にそれとなく、メルティ様を見守る際おかしな事があれば教えてもらえるようにしていました。今日の事も、熱心な会員番号一番の方が、教えてくれたんです」
まるっとご無事が理想でしたが、ぎりぎりでも間に合って本当によかったです……とはにかみながら、言った途端また少し泣き出した。
お母様がよく頑張ったわねと言いながら、今度はマリアを抱きしめる。
なにか、とんでもない単語があった気がするわ……。
けれど疲れていたので気にしない事にした。
「……メルティアーラ!!!!」
おかげでわたくしとマリアは誰の目にも触れぬまま、家へと帰り着くことができた。
帰宅早々、わたくしは自室のベットに入らされ、けれど話をしたかったので背にクッションを何個か入れてもらいもたれて座っている。
流石に気持ちが疲れていて、座るのもおぼつかなかったからだ。
手足は丁寧に手当てしてもらって制服からも着替え、今は寝巻き姿である。
こじんまりとした、わたくし好みの応接セットにはマリアと、お父様とお母様が座っていた。
話す内容が内容なので、アンナには退室してもらっている。
マリアへの感謝としてお気に入りの入浴セット等を客間に用意するよう、わたくしからお願いしたので準備に取り掛かっているはずだ。
影の方はドア付近に静かに佇んでいる。
椅子をすすめたが、仕事中ですので…ですがありがとうございますと、丁寧に断られた。
悍ましい経験をした耳には、温かいお湯に浸して絞ったタオルをマリアからもらい、自分であてていた。
「……あのクソ野郎、私の天使にそんな事までしていたなどと…………っ。いますぐ猛獣の前に放り投げてやる!!」
この声はお父様なのだけれど、ちょっと……だいぶ物騒な事をおっしゃっているわ……仕方ないけれど。
わたくしも気持ちは似通っていたので、特に突っ込もうとも思わなかった。
家に帰りついてから、マリアにも事情を聞きたかった為滞在してもらう手筈と、お父様に報告をレイラードに頼んだ。
事情をきちんとみんなで把握した方が、良いと思ったのだ。
これはもう、自意識過剰ではなくーーわたくし自身が狙われている。
「……わたくしも、同じ気持ちですわお父様……。どうせなら猛禽類にしませんか?」
「ごめんなさいメルティアーラ様!!」
そこでいきなりマリアが謝罪してきた。
「私、私、ルミナリク様の嫌な噂色々聞いていたんですっ……! けどリリッサ様の婚約者だし、信憑性をどう知れば良いのかまではわからなくて……。まさか、女神様がこんな目に遭わされるとは思ってもみなくて、ほんと、こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛~~~~!!」
言うなり大号泣をしながら机に突っ伏してしまった。
「マリアちゃん、貴方が謝る必要はないのよ? 悪~いのはルミナリクのクソガキなんだから、ね? ほらほら泣かないの」
お母様がマリアの隣に座り直し、その背を撫でながらフォローを入れている。
わたくしの場所からでは手が届かないので、ありがたい。
けど女神とか言いすぎよマリア……。
「そうよ、マリア。むしろわたくし助かったのだから、誇りこそすれ卑下する必要はどこにもないわ。改めて……ありがとうね。ーーそれにしても、なぜわたくしがあそこにいるとわかったの?」
ひとしきり泣き終え、けれどまだ鼻がぐずぐずしつつも少し落ち着いてきた彼女がこたえる。
「私、この前お側になるべくいるようお願いされた時、自分でも何かお力になれる事をしよう! って決めてたんです。なのでメルティアーラ様信仰会の会員の方にそれとなく、メルティ様を見守る際おかしな事があれば教えてもらえるようにしていました。今日の事も、熱心な会員番号一番の方が、教えてくれたんです」
まるっとご無事が理想でしたが、ぎりぎりでも間に合って本当によかったです……とはにかみながら、言った途端また少し泣き出した。
お母様がよく頑張ったわねと言いながら、今度はマリアを抱きしめる。
なにか、とんでもない単語があった気がするわ……。
けれど疲れていたので気にしない事にした。
「……メルティアーラ!!!!」
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