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一章
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春の日差しがキラキラと、中庭の花や木々へ降り注いでる。
そこかしこできゃっきゃとはしゃぐ生徒たちの声が聞こえるなか、メメットとわたくしは人とは大分離れて人目につきにくい、残っていた木陰へと腰をおろした。
「メメットと会えるのはいつぶりかしら? クラスが違ったのを残念に思っていたの」
美味しそうなサンドイッチの包みを開けながら、声をかける。
いつぶりかの彼女は、変わらぬ琥珀色の髪に木陰から覗く光をキラキラと反射させながら、すでにもっぎゅもっぎゅとサンドイッチを咀嚼していた。
相変わらずの、良い食べっぷりだわ。
わたくしは嬉しくなってしまってふふふと笑みをもらしながら、包み紙と格闘した。
あれ、これ、いえこうじゃないかしら、……あっ!
無惨にも包み紙はあれでそれなよくわからない感じになってしまったけれど。
気を取り直して、手に取ったサンドイッチを口に入れながら彼女の声を待った。
「私もいつぶりか正確なところは忘れたけれど、色々噂は聞いていたから久しぶりの感じがしないのよね。ここ数日でその噂もなんだか様変わりし始めてるし……。ね、何があったの?春告げる君サン」
「ぶふぁっ!」
ぁあ、せっかくの紅茶がとんでいったわ……あら虹が。
メメットの言葉に、口の中をすっきりさせようとして含んでいた液体が宙に弧を描いた。
わたくしの紅茶さん……
名残惜しかったけれど大地に還ったそれを横目に、制服にかかってないかざっと確認しながら、メメットの質問に返事を返す。
「……それが、わたくしにもよくわからないの……」
ため息と共に告げた言葉は、やけに深刻に響いてしまった。
そこかしこできゃっきゃとはしゃぐ生徒たちの声が聞こえるなか、メメットとわたくしは人とは大分離れて人目につきにくい、残っていた木陰へと腰をおろした。
「メメットと会えるのはいつぶりかしら? クラスが違ったのを残念に思っていたの」
美味しそうなサンドイッチの包みを開けながら、声をかける。
いつぶりかの彼女は、変わらぬ琥珀色の髪に木陰から覗く光をキラキラと反射させながら、すでにもっぎゅもっぎゅとサンドイッチを咀嚼していた。
相変わらずの、良い食べっぷりだわ。
わたくしは嬉しくなってしまってふふふと笑みをもらしながら、包み紙と格闘した。
あれ、これ、いえこうじゃないかしら、……あっ!
無惨にも包み紙はあれでそれなよくわからない感じになってしまったけれど。
気を取り直して、手に取ったサンドイッチを口に入れながら彼女の声を待った。
「私もいつぶりか正確なところは忘れたけれど、色々噂は聞いていたから久しぶりの感じがしないのよね。ここ数日でその噂もなんだか様変わりし始めてるし……。ね、何があったの?春告げる君サン」
「ぶふぁっ!」
ぁあ、せっかくの紅茶がとんでいったわ……あら虹が。
メメットの言葉に、口の中をすっきりさせようとして含んでいた液体が宙に弧を描いた。
わたくしの紅茶さん……
名残惜しかったけれど大地に還ったそれを横目に、制服にかかってないかざっと確認しながら、メメットの質問に返事を返す。
「……それが、わたくしにもよくわからないの……」
ため息と共に告げた言葉は、やけに深刻に響いてしまった。
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