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一章

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 わけが、わかりませんわ???!!!

 家族以外にスキンシップの経験がないわたくしの顔は、今きっと羞恥で真っ赤だわ。
 けれど思考が停止してしまっているので、何をどうすればいいのかがまったく!ちっとも!わからない。

 助けてお父様……。

 固まったまま動けないわたくしを見ても先程声をかけた時のにこやかな表情のまま、殿下はこともなげに顎にそえた手で顔を横にそらさせると、目的を遂げた。

「…可愛らしい飾りがついていたよ」

 見ると殿下の手には緑の青々しい、可愛らしいサイズの葉っぱがつままれていた。

「あ、ありがとう、ごじゃり…っ!」

 …………噛んだわ。

 なんだか居た堪れなさすぎてそらされた方向へと顔を向けたまま、御礼も言えずに立ち尽くす。
 クスクスと品の良い笑い声が聞こえて、益々わたくしの頭はこんがらがった。

「礼には及ばないよ、朝から気になっていたものだから。それに噂の君の声が聞き「く、クリスフォード殿下!」

 殿下からのお声がけに今朝お兄様からかけられた言葉がひゅんと甦った。
 わたくし、気をつけなければ……!

「いえ、かけていただいたご親切にはきちんとお礼をと思います。が何分急いで気をつけねばならぬことがありますので、これにて御前失礼をば! また後日!!」

 少し冷静な頭で言葉を紡ぎ出す、それでもまだ混線した思考は多分滅裂だった。
 お兄様の口真似が出るだなんて……っ!
 ついでに足もこんがらがって、つんのめるように後退り、言葉通りに失礼だとは思ったけれど居る方がいけないと判断して走り去る。

 まだ初日なのに、今日はなんて日なの…………!

 顎を抑えれば良いのか触れられた髪の毛を抑えれば良いのか、そもそもはしたなく走るのは令嬢としてどうなのとか。
 遠ざかっていった元いた場所でその後何が起きていたかーーなんて、思う暇もなく、わたくしの頭の中は真っ白寸前のまま家に帰ることになったのだった。
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