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一章

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 サラリと陽の光を反射した金色の御髪、周りを見渡しながら微笑む瞳はまるで深海のよう。
少し釣り上がった目元は、一見強そうだけれど涼しげでもあり優しさが滲んでいる。

 ーーあれがきっと今年ご入学の第三王子殿下ね。

 朝出かける前にかけられた、三つ上のお兄様の言葉を思い出す。

「マリオン殿下が言っていたが、どうも第3王子の思い人が学院に入学するのでお前に話がいくかもしれないと。流石に王家との縁が出来れば噂がもっと大きくなるかもしれないから、気を付けておくれ」

 そう言って、私も一緒に通えればいいのにと、とても心配そうに抱きしめてくれたのはとても嬉しかった。

 けれど早速かちあうだなんて、入学早々なんと運のないことだろう……。
 わたくしはせっかく教えてくれた兄の忠告を守れるよう、わたわたしながらまわりを見渡し、ちょうどよい茂みを見つけるとえいっと飛び込んだのだった。

 茂みでやり過ごした後は、入学式、クラス分け、教室での自己紹介とつつがなく終わった。
 歓迎挨拶は1学年上の公爵家の御令嬢が堂々と寿ぎの言葉を紡いでいて、ああなれたら良いなと思わすものだった。
 新入生代表挨拶はさすがという他ない第三王子、クリスフォード殿下が立派に務めていらっしゃった。

 ……ちらとこちらを見て微笑んでいらしたのはきっと気のせいだって、思い、たいわ……。

 今日はもう帰宅して良いとの事で帰る用意をして立ち上がる。

 と、おどおどふわふわがくがくと、苺色がかった金髪ににきれいな翡翠色の目をした、わたくしより拳一個分ほど背の低い令嬢が近づいてくるのが見えた。
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