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51. 幼馴染だったんです

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「ふぁ~っ」

 朝です。
 昨日少し夜更よふかししてしまったせいか、ちょっとだけ寝覚めが悪く眠い目を擦って無理やり意識を浮上させました。
 六月になってしばらく経ち雨の多い時期に入るからか、窓に映る外の景色には、どんよりと曇った空があります。
 今日もあの茶番をするのかなと思いながら、ガリューシュと共に馬車に乗り込みました。

 たどり着いた学校では、敷地に入った途端幾人かに視線をもらいます。
 どうやら、昨日蒔いた種は上手いこと芽吹き始めているようです。

 初動に満足していると、遠くから早足でやってくる人がいました。
 レイドリークス様です。

「おーい! ルル、おはよう」

 どんよりとした天気に似合わず爽やかな笑顔。
 今日もお元気そうで何よりです。
 ですが最大限警戒けいかいしておりましたので、私の右手をくれてやる気はない! ってなものでさっと避けたことにより手への熱烈な挨拶はまぬがれました。
 朝から油断も隙もないです。

「おはようございます、殿下」
「ちっ、ルルを堪能できる貴重なひと時だったのに」
「私を紅茶か何かのように言わないでください殿下」
「相変わらず素っ気無いな、少し寂しい」
「お戯れを」
「俺は本気だ」
「本気はもっと嫌です」
「ルルが冷たい、ガリューシュ」
「巻き込まないでよレイド」
「親友も冷たい」
「誰がいつ親友になった?!」

 弟に言われてレイドリークス様は泣き真似をしました。

 ……というか、少し本気で泣いていらっしゃる??

 私は、どうする? といった視線をガリューシュに投げます。
 それを受け弟は、視線を上や横にやった後目を閉じ頭をガシガシとかきながら口を開きました。

「……どっちかっていや、幼馴染じゃね?」
「幼馴染……!」

 弟が言うなりレイドリークス様はよほど嬉しかったのか、ぱぁぁぁぁと表情が輝きました。
 もしかして、

「殿下は、ご友人が少なくていらっしゃいます?」

 うっかり口にすると、彼の表情は途端今日の空模様のようにどんよりとしてしまいます。

「え、マジで?! おむごぶっ」

 ガリューシュが追い討ちをしかけたので、私は姉として慌てて弟の口を掌で押さえました。
 ギリギリ間に合いましたかね?

「自慢に聞こえるだろうけど、入学した途端女子に囲まれてね……男子生徒に近寄ろうにも鉄壁過ぎるのと、一部の男子からは当然だけどいけすかないやつだって毛嫌いされてしまって……」
「そういや、そんな感じだったなお前」

 弟の目がもののあわれといった風になりました。
 私も食事会での彼の嬉しそうな様子を思い出して合点がいきます。
 もてる人にもそれなりの苦労があるのだなと、思いました。
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