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38. やさぐれるんです

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 その後数日は、第三皇子を避ける手間以外は平和な日々を過ごしました。

 あ、勿論もちろん数名きっちりお引き取り願いましたよ!!

 影見習いなめんなよ? なのです。
 ……言葉が悪くてごめんなさい。
 けど少しでいいんです、たまには、やさぐれさせてください!!

 だってですよ?
 そりゃ私だって決意を胸にしたわけで、自分で決めた自己責任ですとも!
 だけど、レイドリークス様のだけならまだしも、なんで今は関係のない私にまで刺客が来るんですか? お金持ちですか? そんなに恨んでるんです?!

 お陰でせっかくのお友達とご飯を一緒にする隙間時間が、ちっとも、ないです!
 泣いていいですか。

 そんなこんなで、今日も今日とて私は家の料理長に作っていただいた携帯食料を、物陰でかじってます。
 美味しいんですけどね。
 携帯できるようにするため、色々と犠牲ぎせいになっている上に種類がなくて気分が上がりません……。
 美味しいんですけどね!

 一人でご飯を食べている私とは対照的に、レイドリークス様は今日も外広場で優雅にいちゃこらローゼリア様と昼食中です。
 あ、ご飯のついた口元を指でぬぐって自分の口に持っていきました。
 ローゼリア様ったら照れ笑顔で応対しています。
 ……護衛騎士も、恐らくお父様が手配してくれた影もついているのに、私何してるんだろうって、こんな時ちょっとだけ思います。
 何よりはたから見るレイドリークス様とローゼリア様はとても楽しそうで。


 時折香るあの子の残り香のような面影が、私の心を、ぎゅぅっと締め付けるんです。


 顔に出しかねないと思った時には、申し訳ないのですがカシュー達のことを思い浮かべてしのいでいます。
 次一緒におしゃべりしたら話したい事、お勧めしたい本の事、お聞きしたいあれこれ。
 考えるうちに、楽しい気持ちを思い出します。
 そうしてなんとか、その日一日をやり過ごすのでした。
 今日は誰も来なかったので、いつもよりは忙しくなくていい日です!



 だなんて思っていたら、帰宅後お父様に呼ばれました。
 声をかけてきたセルマンの雰囲気がとても苦いものだったので、何事かが起きたようです。
 せっかく、珍しくいい日だと思ったのですが……生きている以上ままならないもののようで。
 何の事かが全くわからないので、少しの覚悟だけを持ったまま、執務室へと向かいました。

 ドアの前までくると、手でノックをします。

「ルルーシアです」
「ああ、お帰りルルーシア、入りなさい」

 ドア向こうのお父様が、珍しく動揺を含んだ声で了承の言葉を発しています。
 嫌な予感がしつつも、私はドアを開け中へと入りました。

「お呼びと聞いたのですが……」
「あ、ああ。まずは座りなさい」

 いつもと違ってとても歯切れが悪いです。
 まるで没落するか、爵位剥奪はくだつもかくやといった面持ちでもおかしくありません。
 考えあぐねながら向かいの椅子に座り、聞きにくそうに話を切り出してきました。

「……ルルは、第三皇子と、面識はあるかい?」
「以前学校でテキストを拾っていただきました」
「そうか。その…………恋仲で、あったりは?」
「…………は?」
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