30 / 81
30. 貪られるんです
しおりを挟む
後始末の算段がついたことにほっとし、ぐっすりと眠ることが出来た次の日。
学校ではあえて、人気のないところへ行ってみたりして、釣りを楽しみます。
入れ食い、とまではいきませんが釣果として二名ほど生け捕りにし、私についてくれている影へと引き渡しました。
何かわかれば良いんですが。
本日の昼食はローゼリア様も一緒です。
「そうなんですの? それは是非間近で拝見してみたいですわ」
「珍しいね、令嬢が模擬試合に興味があるのは。よければ今度、案内するよ」
「嬉しい! ありがとうございます殿下。楽しみにしてますわ」
いつの間にか、仲良くなっています?
まぁ私が期待していたことなので、成果が出た、と喜ぶことにします……。
するったらするんです。
そうしてもやもやしているうちに、昼食の時間が終わったようで、上の空で食事をしてしまい自分で自分にびっくりしました。
あんなに美味しいご飯なのに味わって食べられなかったです。
「ルル、どうかしたかい?」
「ルルーシア様、どうかなさいましたか?」
「え、いえ、どうもしていませんよ! ご飯美味しかったです、ご馳走様でした」
そういうと御二方ともまたおしゃべりに興じ始め、その場はお開きとなりました。
同じ学年なので共に連れ立って校舎へと戻って行きます。
なんとなくその場を離れがたくて、その背中が見えなくなるまで見送りました。
その日の放課後。
レイドリークス様が話があると昼食時におっしゃっていたので、私は今図書室にいます。
彼が何かしたのか、そもそも放課後の図書室自体あまり利用者がいないのか、人気がありません。
初めて入る図書室に少しドキドキしながら、書架の間をゆっくりと散策します。
あ、この小説面白そうなタイトルだな。
わぁ、このシリーズ全巻揃ってる!
そんな楽しみ方をしながら背表紙を目で追い続けます。
それをどれほど続けていたでしょうか、カツコツと靴底が床を鳴らす音が響き、戸が開いたと思うと待ち人がキョロキョロしながら入ってきました。
「ルル?」
うっかり一つ本を手にして読みかけていたので、慌てて返事をして本を棚へと戻します。
「はい、ここにいます」
「ああ、よかった居てくれて。帰られてしまうことも考えていたから」
その手があったか。
思いましたが言葉には出しません、引き伸ばしても得られる結果は変わらないのです。
「お話というのは……?」
「話というのは、他でもない俺と君のことだよ。俺としては本当に君と結婚したいと思っているんだ。きちんと君の気持ちが知りたい。それをつけている意味も」
レイドリークス様が私の左耳についたイヤーカフを触りながら話し始めます。
「そのお話でしたら私、無理なんです。イヤーカフは他のご令嬢への虫除け対策で仕方なくつけていますし。皇子殿下とは本当に結婚できません」
「……ルルならそう言うと思った。……十五の誕生日に、俺が公爵家の跡取りとして養子に出ることが決定したと…‥告げられたよ。決定事項だそうだ」
断ったことで、彼は一瞬傷ついた表情をしました。
ああ、養子の話はやっぱり本当だったんです、彼の口からちゃんと聞けてよかった。
そう思うべき、わかっていてもその言葉に悲しんでいる自分がいます。
なんて自分勝手なんでしょうか。
受け入れるつもりも、元からない癖に……。
「元々入婿も難色を示されていて……けどっ……! 本当に、好きだったんだ!!」
はい、わたしも好きです、お慕いしています。
そう言える立場にいたかったです。
けどそれは許されることではないので、なるべく無表情で対応します。
やっと……この茶番のようなものが終わる、そう思った時。
レイドリークス様が私の方に顔を近づけてきて、避けよう、と思ったその時切なく歪んだ瞳に囚われてしまいました。
「愛してる……」
囁かれながら激しく角度を変え、貪るようにキスをされます。
息をするのも忘れてしまい、苦しくなった頃合いで、その唇は離れていき……
「迷惑かけてごめん。さよなら、だ」
そう言い捨てると、レイドリークス様は足早に去っていきました。
私はあまりの衝撃に立っていられず、その場にへたり込んで動けません。
――なので気づけませんでした。
彼の後ろ姿のそのお尻に、悪魔の尻尾が生えていた――ということに。
学校ではあえて、人気のないところへ行ってみたりして、釣りを楽しみます。
入れ食い、とまではいきませんが釣果として二名ほど生け捕りにし、私についてくれている影へと引き渡しました。
何かわかれば良いんですが。
本日の昼食はローゼリア様も一緒です。
「そうなんですの? それは是非間近で拝見してみたいですわ」
「珍しいね、令嬢が模擬試合に興味があるのは。よければ今度、案内するよ」
「嬉しい! ありがとうございます殿下。楽しみにしてますわ」
いつの間にか、仲良くなっています?
まぁ私が期待していたことなので、成果が出た、と喜ぶことにします……。
するったらするんです。
そうしてもやもやしているうちに、昼食の時間が終わったようで、上の空で食事をしてしまい自分で自分にびっくりしました。
あんなに美味しいご飯なのに味わって食べられなかったです。
「ルル、どうかしたかい?」
「ルルーシア様、どうかなさいましたか?」
「え、いえ、どうもしていませんよ! ご飯美味しかったです、ご馳走様でした」
そういうと御二方ともまたおしゃべりに興じ始め、その場はお開きとなりました。
同じ学年なので共に連れ立って校舎へと戻って行きます。
なんとなくその場を離れがたくて、その背中が見えなくなるまで見送りました。
その日の放課後。
レイドリークス様が話があると昼食時におっしゃっていたので、私は今図書室にいます。
彼が何かしたのか、そもそも放課後の図書室自体あまり利用者がいないのか、人気がありません。
初めて入る図書室に少しドキドキしながら、書架の間をゆっくりと散策します。
あ、この小説面白そうなタイトルだな。
わぁ、このシリーズ全巻揃ってる!
そんな楽しみ方をしながら背表紙を目で追い続けます。
それをどれほど続けていたでしょうか、カツコツと靴底が床を鳴らす音が響き、戸が開いたと思うと待ち人がキョロキョロしながら入ってきました。
「ルル?」
うっかり一つ本を手にして読みかけていたので、慌てて返事をして本を棚へと戻します。
「はい、ここにいます」
「ああ、よかった居てくれて。帰られてしまうことも考えていたから」
その手があったか。
思いましたが言葉には出しません、引き伸ばしても得られる結果は変わらないのです。
「お話というのは……?」
「話というのは、他でもない俺と君のことだよ。俺としては本当に君と結婚したいと思っているんだ。きちんと君の気持ちが知りたい。それをつけている意味も」
レイドリークス様が私の左耳についたイヤーカフを触りながら話し始めます。
「そのお話でしたら私、無理なんです。イヤーカフは他のご令嬢への虫除け対策で仕方なくつけていますし。皇子殿下とは本当に結婚できません」
「……ルルならそう言うと思った。……十五の誕生日に、俺が公爵家の跡取りとして養子に出ることが決定したと…‥告げられたよ。決定事項だそうだ」
断ったことで、彼は一瞬傷ついた表情をしました。
ああ、養子の話はやっぱり本当だったんです、彼の口からちゃんと聞けてよかった。
そう思うべき、わかっていてもその言葉に悲しんでいる自分がいます。
なんて自分勝手なんでしょうか。
受け入れるつもりも、元からない癖に……。
「元々入婿も難色を示されていて……けどっ……! 本当に、好きだったんだ!!」
はい、わたしも好きです、お慕いしています。
そう言える立場にいたかったです。
けどそれは許されることではないので、なるべく無表情で対応します。
やっと……この茶番のようなものが終わる、そう思った時。
レイドリークス様が私の方に顔を近づけてきて、避けよう、と思ったその時切なく歪んだ瞳に囚われてしまいました。
「愛してる……」
囁かれながら激しく角度を変え、貪るようにキスをされます。
息をするのも忘れてしまい、苦しくなった頃合いで、その唇は離れていき……
「迷惑かけてごめん。さよなら、だ」
そう言い捨てると、レイドリークス様は足早に去っていきました。
私はあまりの衝撃に立っていられず、その場にへたり込んで動けません。
――なので気づけませんでした。
彼の後ろ姿のそのお尻に、悪魔の尻尾が生えていた――ということに。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る
新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます!
※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!!
契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。
※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。
※R要素の話には「※」マークを付けています。
※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。
※他サイト様でも公開しています
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる