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35 初夜※
しおりを挟む月が真上に昇る頃。
白銀はその月を見上げていた。
桔梗があの男に抱かれる事を想像する度、銀色の髪を掻き乱していた。
気が狂いそうだった。
今すぐにでも桔梗を連れ出してここから逃げ出したい。……だが、そうすると寿命を延ばす方法が聞き出せない。
「──くそっ!!」
どうしていいのか、何が正解なのか判らず頭を抱えた時だった。
「白銀」
扉の外から桔梗の声が聞こえた。
一瞬空耳かと思ったが、慌てて扉まで駆け寄りゆっくりと開ける。
そこには、目を伏せたままの桔梗が立っていた。
「桔梗……なんで?」
問いかけには答えずに、桔梗は両手を白銀の胸にあてると部屋の中へと押しやる。
「お、おい?」
狼狽える白銀をよそに、桔梗は後ろ手に扉を閉めた。
※
桔梗が白銀の部屋を訪ねる、少し前。
「入るぞ」
低い声が部屋の外から聞こえたかと思うと、鷹呀が無遠慮に入ってきた。
驚いた桔梗は、腰かけていた寝台から立ち上がる。
「約束は明日の夜の筈では!?」
警戒する桔梗に、鷹呀はゆっくりと歩み寄ると大きな手で彼女の顎に手を伸ばす。
「お前……生娘だろう?」
「なっ……」
不躾な質問に、桔梗は顔を赤らめ怒りを露にした。
「だったら何だというんだ?」
「あの二人のうちどちらかが想い人だなんじゃないのか?」
「…………」
「……白鬼の方か?」
「そ……それは……」
顔を背け、目を伏せる桔梗に鷹呀は図星かと囁く。
「今夜、奴に抱かれて来い」
「……!?」
「どうせ、俺に抱かれるのは確定してるんだ。初めては好きな男がいいだろう? 俺は別にお前が生娘かどうかには拘らん」
無言で立ち尽くす桔梗に「俺のせめてもの温情だと思え」と言うと、鷹呀は部屋を出ていった。
※
「……桔梗?」
困惑しながら、自分の名を呼ぶ白銀の顔を見ることができず、桔梗は俯いていた。
鷹呀に言われ、ひたすら悩んだ桔梗だったが意を決して白銀のもとを訪ねた。……が、ここからどうすればいいのか分からない。
上目使いでおずおずと白銀を見ると、彼はみるみる顔を真っ赤にした。そして、桔梗から数歩遠ざかる。
「白銀?」
「そんな顔で見るなよ……俺、ずっと桔梗に触るの我慢してきたんだから」
片手で口を覆う白銀の顔は真っ赤だ。
「そんな顔されたら、俺……お前に何するかわからない」
桔梗は後ずさる白銀を追うように近づき、白銀の胸にそっと頬を寄せた。
白銀は驚いて身体を硬直させる。
「きっ……」
「私はそれをしに来たんだ」
「なに、言って……」
桔梗が見上げると、白銀もまた桔梗を見つめていた。
困惑したように、金色の目が揺れている。
「初めては……お前がいい。白銀」
その目が大きく見開かれる。一瞬何を言われているのか理解できなかった彼は、その言葉の意味がわかると、今度は神妙な表情を浮かべた。
潤んだ黒曜石の瞳に見つめられ、それまでどうしていいかわからず宙をかいていた白銀の両手が、恐る恐る桔梗の両頬に触れる。
「ほんとうにいいんだな?」
ゆっくり顔を近づけ言う。
桔梗がこくりと頷くと、少しだけ躊躇したあと静かに唇を重ねた。
「ん……」
そのまま桔梗の耳元へ唇を移動させ、
「途中で止めろって言っても、もう無理だぞ?」
熱い息とともに囁かれ、耳たぶを甘噛みする。
「んんっ」
首筋へと移動させた白銀は、耳の後ろまでゆっくりと舌を這わせる。
生暖かい舌と、熱い吐息が肌を刺激する。
今まで感じたことの無い感覚に、桔梗の身体が震えた。
白銀は暫くそうしていたが、急にきゅっと吸い上げると、桔梗は思わず声をあげる。
「あっ……うんんっ」
びくんと桔梗の身体が跳ねたので、白銀が驚いて桔梗の顔を見る。
「大丈……」
目に涙を浮かべ紅潮した顔で白銀を見る桔梗は、はっはっと短く息をしている。
「──っ!!」
白銀はたまらず再び口づけた。
「あ……はぁっ……んん」
先程の触れるだけとは違う、深い口づけ。
白銀の舌が侵入してくると、桔梗はおずおずとそれに応えた。彼の舌が、自分の舌に絡み付くと頭の芯が痺れたようにぼーっとしてくる。
ようやく唇が離れると、白銀は桔梗をひょいと抱き上げた。
「うわっ」
桔梗は驚いて白銀の首へしがみつく。
彼はそんな桔梗の頬に短く口づけると、寝台へと移動し桔梗の身体を優しく横たわせた。
桔梗の着物の腰紐に手をかけ、するりと解くとその身体に覆い被さる。
そっと着物をはだけさせると、形の良い白い胸が月明かりに晒された。
「はっ……綺麗だ……」
「う……ん……」
白銀の大きな暖かい手が、やんわりと胸を包む。鎖骨に口づけを落としながら、胸の突起を指でなぞると、桔梗の口から甘い吐息が漏れた。
鎖骨から徐々に胸の方へ唇を移動させる。突起に舌を這わすとびくんと身体が跳ねた。
「あっ、あっ……」
やわやわと胸を揉まれ、突起を舌で攻められていると、桔梗の下半身から何かが込み上げてくる。思わず腰を動かすが、それに気づいた白銀が「何か、その動きやらしいな」と言って、余裕の無い笑顔を見せた。
胸を揉んでいた手を、綺麗にくびれた腰へと移動させ肌の感触を確かめるように、ゆったりと指を這わせると、桔梗はくすぐったそうに腰を捩る。
「もう、すげえ可愛い……」
「ばっ……、恥ずかしこと……あっ!!」
白銀の指が、桔梗の秘部へ届くと驚いた桔梗が足を閉じる。
構わず割れ目をなぞるとすっかり湿り気を帯びたそこは、ぬるりとした感触。桔梗も自分で濡れているのが分かるのか、恥ずかしそうに顔を背けた。
「……すごい、ほんとに濡れるんだな……」
「……んぅ、しろが、ね? お前、誰かに教わったのか?」
白銀は、桔梗の額に手を添えその黒い瞳を見つめると。
「秘密だ」
言うと、また桔梗の唇を塞いだ。
舌を入れられるのと同時に、割れ目の上にある秘核を強く弄られ初めての感覚に身を捩った。
「はっ……ん、なに……そこ、変に……やあっ!!」
「は……、指、挿入る……」
「あっ……んぅぅっ……」
異物がゆっくりと窒内に侵入してくる感じが少し怖く、桔梗は眉根を寄せると、白銀が心配そうに顔を覗きこむ。
「大丈夫?」
「んっ……へ、いきだ……ひぁっ」
胸を舐め上げながら、指を出し入れする度にする水音に桔梗は恥ずかしさから顔が熱くなる。
「凄いな、中がぬるぬるだ」
「ばっ、馬鹿!!……うんんっ」
「……桔梗」
「ん?」
白銀は、桔梗の脚と脚の間に身体を割り込ませ乱暴に衣服を脱ぎ捨てた。
月明かりに照らされた陰影が、筋肉の存在を更に強調している。
柔らかな月光で、暗がりに映える銀髪と、自分を見下ろす金色の瞳。まるでこの世の生き物ではないみたいだ。
出会った頃、彼を美しいと思ったことがあったが……。
「……っ!!」
下半身へ視線を移すと、そこには、大きくそそり立つ……。
桔梗は思わずそこへ手を伸ばし、そっと触ってみると。
「あっ……ききょっ……」
「凄いな、熱い……」
これが本当に自分の中に入るのだろうかと、一抹の不安を覚える。
「やめっ、こするな……うんっ……」
白銀が片手で桔梗の片脚を持ち上げ、もう片方で自身のものを桔梗の秘部にあてがう。
「あ……」
「も、我慢できない……挿れるぞ……」
切なそうな表情で言う白銀に、桔梗も恐る恐る小さく頷いた。
初めは、場所を確認するようにぬるぬると頭の部分で秘部をなぞっていたが、やがて割れ目を押し分け窒内に侵入する。
今まで無い圧迫感。同時に襲う痛みに桔梗は顔を歪めた。
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