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1章 始まりの村
村に戻ってみる
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耳をすませば、森の木々はざわめき、落ち込んでいる精神には安らぎを与えてくれる。
悟は一頻り泣いた後、自分が殺したゴブリンを見つめた。
「…このゴブリンってお金に換金できるのかな?」
現実的である。
悟は森を彷徨い歩き、始めての戦闘に身も心も疲れていた。お腹も、生きていれば減ってくる。お金の心配をするのは自然なことなのだ。
「レベルアップとかそんな感じもしないなぁ…」
力こぶを作ってみるも、みなぎってくる気配はない。
悟はよいしょと立ち上がり、臀部にかかった土ぼこりをはたく。
「ゴブリンの耳とか切って持っていけばいいのかなぁ…よくわからん。」
悟の手元には鋭利なものは1つもなかった。今になって全てのポケットを探すも、何にも悟は持っていなかった。
「これは、なかなかにハードモードですな。しょうがない、ゴブリンをこのまま村に持っていくか。」
悟は少し戸惑いながらも、死体となったゴブリンをお姫様だっこする形で持ち上げる。
「ちょ! 重い重い! 一旦休憩!」
ゴトッ!
手を離した瞬間ゴブリンは鈍い音を立てて地面に叩き付けられる。
「ご、ごめんなさい!」
悟は誰に謝っているのか思わず声を荒げた。
「って、誰に謝ってんだろ俺…持つのは重いから無理だ。コイツには悪いけど引きずっていこう。」
ゴブリンの足を持って引きずる形で村の方向へと運搬していく。
ゴリゴリ…
ゴリゴリ…
静かな森の中で引きずる音が悟の耳に残る。
チクッ!
「いってぇ!!」
後ろ向きに進んでいた悟は尖った木の枝に腕を引っ掛けてしまう。
「もう、まじで俺なにしてるんだろ…。異世界とか妄想したことあるけど実際に来るとあれだな…」
「帰りてぇ!」
悟は静かな森で独り叫んだ。そして引きずるゴブリンを見てつぶやく。
「あの逃げたゴブリンってコイツの家族だったりするのかな…彼女とか友達かもしれないんだよな。」
悟はゴブリンの足を離し、合掌をした。
この時、また目から少しだけ、涙がこぼれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ、ふぅ。ついたーーーー!!」
悟はやっとの思いで村に戻ってくる。
「重かった…重かったぞコノヤロー!!」
そのまま悟は通行人の目も気にせず、ゴブリンを引きずったまま大通りを進む。
「ん? どこ向かえばいいんだ? とりあえず聞いてみるか。おばちゃーん!」
悟は行く当てもわからずに歩いていたらしい。ちょうど横にいた八百屋のおばちゃんに聞いてみる。
「なんだい。ゴブリンなんて引きずって、良い趣味してるねぇ。」
「あ、やっぱり変なんだコレ。ゴブリン退治したわけなんだけど、どっかで報酬とかもらえたりするの?」
「ああ、討伐報酬ね。役場に行けばもらえるよ。ってかアンタ、討伐した証拠なら耳とか腕とか一部を切り取ってけばいいのに、馬鹿だねぇ。」
「切り取れば良かったんだ…おれの苦労は一体…。ところで役場ってどこにあんの?」
「ほれ、あそこの大きい建物が見えるかい? あそこだよ。」
「おっけい。ありがと! もひとつ質問いいかい? そのリンゴって1ついくらで売ってんの?」
悟はお腹が空いているのを思い出し、八百屋においてあるリンゴのような物を指差して聞いてみる。
「リンボのことかい? これは1つ50メルだよ。」
「リンボて…もうちょいひねった名前にしようよ。50メルか、うむ。わからん! ありがとねおばちゃん! また来るよ!」
「あいよー」
気のいいおばちゃんと別れ、悟は役場へとゴブリンを引きずっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
役場に着いたら中には長めのカウンターがあり、中でかわいらしい女の子が椅子の上で居眠りしていた。
「うわ、めっちゃかわいい…いかんいかん、俺には京子がいるんだった。ねぇ、そこの君! ちょっといいかい?」
「は、はい!! なんでしょう!! うわっ!!」
女の子は椅子からずり落ち、頭から地面に攻撃した。典型的ドジっ子な雰囲気を漂わせている。見た目で言うと15歳程度だろうか、なんだか妹のように感じてしまう。妹いないけど。
「えっと、ゴブリンの討伐したんだけど…お金とかってもらえたりする?」
「はい討伐報酬ですね。ありがとうございます。…え、丸ごと持ってきちゃったんですか?」
「それ本日二回目です…すみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ゴブリンなら一体で500メルですね。はい、どうぞ。」
女の子から銅製の小さいコインを5枚手渡される。
「一枚で100メルか、1メル=1円ってことでいいのかな。ってかゴブリン一体500メルって…安すぎじゃなかろうか…」
「えっと、地域によって金額は多少変わりますが、ほとんど同じくらいだと思いますよ? 冒険者さんではないんですか?」
「…ボクハ キオクヲ ナクシテイルンダ。」
悟は棒読みで記憶を無くしている事にした。
「ええ!? 大変じゃないですか!! えっと、私で良ければ力になりますよ!!」
悟は500メルと、純粋な女の子の助力を手に入れた。
悟は一頻り泣いた後、自分が殺したゴブリンを見つめた。
「…このゴブリンってお金に換金できるのかな?」
現実的である。
悟は森を彷徨い歩き、始めての戦闘に身も心も疲れていた。お腹も、生きていれば減ってくる。お金の心配をするのは自然なことなのだ。
「レベルアップとかそんな感じもしないなぁ…」
力こぶを作ってみるも、みなぎってくる気配はない。
悟はよいしょと立ち上がり、臀部にかかった土ぼこりをはたく。
「ゴブリンの耳とか切って持っていけばいいのかなぁ…よくわからん。」
悟の手元には鋭利なものは1つもなかった。今になって全てのポケットを探すも、何にも悟は持っていなかった。
「これは、なかなかにハードモードですな。しょうがない、ゴブリンをこのまま村に持っていくか。」
悟は少し戸惑いながらも、死体となったゴブリンをお姫様だっこする形で持ち上げる。
「ちょ! 重い重い! 一旦休憩!」
ゴトッ!
手を離した瞬間ゴブリンは鈍い音を立てて地面に叩き付けられる。
「ご、ごめんなさい!」
悟は誰に謝っているのか思わず声を荒げた。
「って、誰に謝ってんだろ俺…持つのは重いから無理だ。コイツには悪いけど引きずっていこう。」
ゴブリンの足を持って引きずる形で村の方向へと運搬していく。
ゴリゴリ…
ゴリゴリ…
静かな森の中で引きずる音が悟の耳に残る。
チクッ!
「いってぇ!!」
後ろ向きに進んでいた悟は尖った木の枝に腕を引っ掛けてしまう。
「もう、まじで俺なにしてるんだろ…。異世界とか妄想したことあるけど実際に来るとあれだな…」
「帰りてぇ!」
悟は静かな森で独り叫んだ。そして引きずるゴブリンを見てつぶやく。
「あの逃げたゴブリンってコイツの家族だったりするのかな…彼女とか友達かもしれないんだよな。」
悟はゴブリンの足を離し、合掌をした。
この時、また目から少しだけ、涙がこぼれた。
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「ふぅ、ふぅ。ついたーーーー!!」
悟はやっとの思いで村に戻ってくる。
「重かった…重かったぞコノヤロー!!」
そのまま悟は通行人の目も気にせず、ゴブリンを引きずったまま大通りを進む。
「ん? どこ向かえばいいんだ? とりあえず聞いてみるか。おばちゃーん!」
悟は行く当てもわからずに歩いていたらしい。ちょうど横にいた八百屋のおばちゃんに聞いてみる。
「なんだい。ゴブリンなんて引きずって、良い趣味してるねぇ。」
「あ、やっぱり変なんだコレ。ゴブリン退治したわけなんだけど、どっかで報酬とかもらえたりするの?」
「ああ、討伐報酬ね。役場に行けばもらえるよ。ってかアンタ、討伐した証拠なら耳とか腕とか一部を切り取ってけばいいのに、馬鹿だねぇ。」
「切り取れば良かったんだ…おれの苦労は一体…。ところで役場ってどこにあんの?」
「ほれ、あそこの大きい建物が見えるかい? あそこだよ。」
「おっけい。ありがと! もひとつ質問いいかい? そのリンゴって1ついくらで売ってんの?」
悟はお腹が空いているのを思い出し、八百屋においてあるリンゴのような物を指差して聞いてみる。
「リンボのことかい? これは1つ50メルだよ。」
「リンボて…もうちょいひねった名前にしようよ。50メルか、うむ。わからん! ありがとねおばちゃん! また来るよ!」
「あいよー」
気のいいおばちゃんと別れ、悟は役場へとゴブリンを引きずっていく。
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役場に着いたら中には長めのカウンターがあり、中でかわいらしい女の子が椅子の上で居眠りしていた。
「うわ、めっちゃかわいい…いかんいかん、俺には京子がいるんだった。ねぇ、そこの君! ちょっといいかい?」
「は、はい!! なんでしょう!! うわっ!!」
女の子は椅子からずり落ち、頭から地面に攻撃した。典型的ドジっ子な雰囲気を漂わせている。見た目で言うと15歳程度だろうか、なんだか妹のように感じてしまう。妹いないけど。
「えっと、ゴブリンの討伐したんだけど…お金とかってもらえたりする?」
「はい討伐報酬ですね。ありがとうございます。…え、丸ごと持ってきちゃったんですか?」
「それ本日二回目です…すみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ゴブリンなら一体で500メルですね。はい、どうぞ。」
女の子から銅製の小さいコインを5枚手渡される。
「一枚で100メルか、1メル=1円ってことでいいのかな。ってかゴブリン一体500メルって…安すぎじゃなかろうか…」
「えっと、地域によって金額は多少変わりますが、ほとんど同じくらいだと思いますよ? 冒険者さんではないんですか?」
「…ボクハ キオクヲ ナクシテイルンダ。」
悟は棒読みで記憶を無くしている事にした。
「ええ!? 大変じゃないですか!! えっと、私で良ければ力になりますよ!!」
悟は500メルと、純粋な女の子の助力を手に入れた。
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