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第二章
初めましての君
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2 初めましての君
「知ってる?前にやったテスト、順位出るんだって!マジ終わったよ。」
もう当たり前に話しかけてくれる伊藤に、
「テストどうだった?伊藤勉強苦手らしいけど…?」
と質問返しをする。満面の笑みで堂々と頷く伊藤に、俺は思わず笑ってしまう。
「あんた絶対モテないでしょ!」
俺は、クラスに響いた高い声の主を一瞥する。喧騒の中、大声で男子と話しているのは水野美愛。いわゆる陽キャ。クラスの中心的な女子だ。
俺はそのような陽キャが苦手だ。特に女子。だが一人くらいは大丈夫な女子だっている。下倉。下倉優里だ。下倉は水野等とすぐに打ち解け、たまに話すことで度々目立っている。だが、俺が以前下倉と話すと、陽キャというより社交的という印象の方が強かったのを覚えている。
そんな喧騒も、授業が始まると静まり返るのだった。
翌日、テストの順位が発表された。クラス三十人での順位なため、自分の偏差値より下の東高では、一位を取れると思っていた。だがそれも、俺の思い上がりだったようだ。意外なことに俺は、クラスでも学年でも二位だったのだ。一位は、下倉優里だった。
後日俺は、ある情報を伊藤から聞きつけた。
「下倉頭良いのに、親友ってだけの理由で佐原についてきたらしいよ。」
まさか。まさか自分と同じような状況の人がいるとは。俺はなぜだか、下倉に対して親近感が湧いた。
放課後、俺は急いでいた。本屋に寄るという大事な用事を忘れていたからだ。もうすぐ週末だ。本が切れる。急がなけれ──
「ゴンッ!」
大きな音が廊下に鳴り響いた。それと同時に、頭に痛みが走った。
「いたた…。ごめんなさ…って、上野君!?」
下倉だった。
「ごめん下倉。急いでて前見てなかったよ。大丈夫?」
よく見ると、下倉の物であろう本が…。いや、参考書か、が廊下に散らばってしまっていた。
『頭が悪くてもお金稼げます!』
変わった参考書を読んでいるとも思ったが、何より、下倉は頭がいいはずだ。
「なんで?下倉本当は頭良いんだろ?なんでこんな参考書なんか…。」
悪癖だと思う。俺は、考えるより先に口が動いてしまっていた。
「あはは…。何処からそんな情報…。いや、私両親に楽とかさせてあげたくて、でも高校がこんなところじゃ、ねぇ?」
偉い、と思った。俺なんて、自分のせいにするだけで、両親のことなんて考えていなかったから。下倉、凄いな。そんなシンプルな感想の裏で、俺の心の中の何かが揺れ動いた。
「えっと、どうし──」
「下倉。お願いがある。」
俺はもう、心に決めてしまっていた。
「俺に、勉強を教えてくれないか。」
**
よし、文芸部にしよう。
「ハル、私文芸部に決めた。」
「なんで?最初は嫌だって言ってたじゃん。いいの?」
「放課後の時間が毎日潰れるわけじゃないし、何より部活中も基本自由じゃん?」
「そうだね。じゃあ私も文芸部にする!はいじゃあ決まりー!」
私たちは、部活申込書に『文芸部』と書き、大きな一歩を踏み出した。
「知ってる?前にやったテスト、順位出るんだって!マジ終わったよ。」
もう当たり前に話しかけてくれる伊藤に、
「テストどうだった?伊藤勉強苦手らしいけど…?」
と質問返しをする。満面の笑みで堂々と頷く伊藤に、俺は思わず笑ってしまう。
「あんた絶対モテないでしょ!」
俺は、クラスに響いた高い声の主を一瞥する。喧騒の中、大声で男子と話しているのは水野美愛。いわゆる陽キャ。クラスの中心的な女子だ。
俺はそのような陽キャが苦手だ。特に女子。だが一人くらいは大丈夫な女子だっている。下倉。下倉優里だ。下倉は水野等とすぐに打ち解け、たまに話すことで度々目立っている。だが、俺が以前下倉と話すと、陽キャというより社交的という印象の方が強かったのを覚えている。
そんな喧騒も、授業が始まると静まり返るのだった。
翌日、テストの順位が発表された。クラス三十人での順位なため、自分の偏差値より下の東高では、一位を取れると思っていた。だがそれも、俺の思い上がりだったようだ。意外なことに俺は、クラスでも学年でも二位だったのだ。一位は、下倉優里だった。
後日俺は、ある情報を伊藤から聞きつけた。
「下倉頭良いのに、親友ってだけの理由で佐原についてきたらしいよ。」
まさか。まさか自分と同じような状況の人がいるとは。俺はなぜだか、下倉に対して親近感が湧いた。
放課後、俺は急いでいた。本屋に寄るという大事な用事を忘れていたからだ。もうすぐ週末だ。本が切れる。急がなけれ──
「ゴンッ!」
大きな音が廊下に鳴り響いた。それと同時に、頭に痛みが走った。
「いたた…。ごめんなさ…って、上野君!?」
下倉だった。
「ごめん下倉。急いでて前見てなかったよ。大丈夫?」
よく見ると、下倉の物であろう本が…。いや、参考書か、が廊下に散らばってしまっていた。
『頭が悪くてもお金稼げます!』
変わった参考書を読んでいるとも思ったが、何より、下倉は頭がいいはずだ。
「なんで?下倉本当は頭良いんだろ?なんでこんな参考書なんか…。」
悪癖だと思う。俺は、考えるより先に口が動いてしまっていた。
「あはは…。何処からそんな情報…。いや、私両親に楽とかさせてあげたくて、でも高校がこんなところじゃ、ねぇ?」
偉い、と思った。俺なんて、自分のせいにするだけで、両親のことなんて考えていなかったから。下倉、凄いな。そんなシンプルな感想の裏で、俺の心の中の何かが揺れ動いた。
「えっと、どうし──」
「下倉。お願いがある。」
俺はもう、心に決めてしまっていた。
「俺に、勉強を教えてくれないか。」
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よし、文芸部にしよう。
「ハル、私文芸部に決めた。」
「なんで?最初は嫌だって言ってたじゃん。いいの?」
「放課後の時間が毎日潰れるわけじゃないし、何より部活中も基本自由じゃん?」
「そうだね。じゃあ私も文芸部にする!はいじゃあ決まりー!」
私たちは、部活申込書に『文芸部』と書き、大きな一歩を踏み出した。
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