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2巻
2-3
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どれだけ寝たか分からないが、気が付いたら馬車は動き出していた。
外を覗くと、すでに朝日が昇って明るくなっている。隣にいるキャスはまだ寝ていた。昨日あんなに寝てたのに……なんでそんなに寝られるんだろうな。
暫くすると、護衛がもうすぐ街に着くと知らせてくれた。馬車は街の門の外に停まるので、今のうちに荷物をまとめて降りる準備をしておけとの事だ。
キャスを揺すって起こすが、なかなか目覚めてくれない。まだ眠いとか言いながら俺に抱きついてくる。護衛の兄ちゃんが露骨に羨ましそうな顔をしていたが……うん、気持ちは分かるぞ。
ほどなくすると、馬車から降りるように言われた。ここからは街の門まで歩いて行く事になる。足元の道はしっかりと踏み固められており、普段から人通りは多そうだ。
ここから見える限りでも、街はかなり大きい事が分かった。街を囲う石造りの壁も見上げるほどの高さで、ブロベック村の物とは規模が違う。街の周りには水堀が巡らされていて、その流れに沿って目をやると、どうやら街の中に川が通っているみたいだ。
こんな朝からでも門の前には行列が出来ている。大きな荷物を背負った行商人や、馬車に積荷を満載した業者が数多く見える。俺らのように身軽な者は少ないぐらいだ。
辺りを眺めていると、並んでいる人達の中におかしな人影が見えた。殆ど人間と同じシルエットなのだが、頭の上にうさぎのような長い耳があり、腰の辺りに丸く可愛らしい尻尾が生えている。俺は驚いてキャスにその方向を指さした。
「キャス姉、あの人尻尾ある。あと耳も……」
「……ゼン君、あれは獣人よ。そんなに珍しくないわ。ほら、あっちにもいるでしょ?」
キャスが指し示した方向を見ると、更に衝撃が走った。そこには大きな荷物を背負った、二足歩行の熊がいたからだ。
彼らは獣人と呼ばれる種族で、この国ではそれほど多くはいないが、それでも国民の一割を占めているらしい。一口に獣人と言っても、俺が最初に見つけた人のように、耳や尻尾だけが動物のもので他は殆ど人と変わらない者や、逆に動物がそのまま二足歩行しているような者など、多岐にわたって存在しているらしい。
「亜人と獣人は何が違うの?」
はっきりいって俺には違いが分からない。
キャスは少し悩みながらも説明をしてくれる。
「いい? 獣人は私達人族と同じ言葉を喋れます。話してみれば分かるけど、心も人と変わりません。人族も獣人も合わせて人間。絶対に亜人と比べちゃ駄目よ?」
キャスは胸を反らして指を立てると、少し大袈裟な仕草で教師のように説明した。
なるほど、それがこの世界の常識か。
それにしても、あの熊ちゃんは猛烈に可愛い。サイズは超でかいが、ヌイグルミみたいだ。顔も穏やかに見えるので、きっと優しい人なんだろう。いつかお友達になって欲しいもんだな。
そうこうしているうちに、正門の真下にやってきた。
街に入るには、簡単な質問に答えて通行税を払えば良いので、身分証明は必要ないと言われた。商いを行う者は荷物の大きさによって追加で物品税が必要らしいが、俺らには関係ない話だ。
先に行ったマグさんは門番と顔見知りのようで、何やら彼らと一言二言話をしている。すると、俺達への審査は免除となり、あっさりと街の中に入る事が出来た。コネの力、強いです。
馬車に乗っていた他の人達とはここでお別れだ。
キャス、マグさんと三人で冒険者ギルドまで行き、まずは登録を済ませる事にする。
冒険者ギルドは大通りに面したまさに一等地という場所にあり、周りにも様々な店舗が軒を連ねていた。まだ早朝だというのに色々な食べ物の匂いが漂ってきて、俺の空腹を誘う。
「ねえ、キャス姉。ここで食べていかない? 朝飯まだだし、良いよね?」
「そうね、この匂いを嗅いだら我慢できないかも」
「ふふ、二人がそう言うなら、そうしましょ。ギルドは逃げないからね!」
空腹なのはキャスもマグさんも同じらしい。俺達は朝食を食べてからギルドに行くことにした。
道の両脇には大小様々な食堂や、屋台のような店がひしめき合っており、朝食を求める人々で混み合っている。料理の種類も多く、肉はもちろん魚の焼ける香ばしい匂いがしてくる。街だけあって物流は豊富なんだろう。
そういえば、村ではあまり魚を見なかった。久しぶりの魚の匂いは、俺の胃袋を捕えて強引に引き寄せた。俺は迷わずその匂いを放つ定食屋に直行して、二人を手招きで呼び寄せた。
「ここが良いの? お肉もあるわよ?」
キャスはまだ目移りしているようだが、俺は魚が食べたいのだから絶対にここしかないのだ!
俺は一人でさっさと席に着く。二人は別に文句もないようで、一度顔を見合わせた後、微笑みながら俺に続いた。
「いらっしゃい。坊やは店の選び方が分かってるねえ。定食で良いのかい?」
席に着くなり、カウンター越しに店主の威勢の良い声が響いた。
「その定食って魚ですよね?」
「そうだよ、今日はギラの焼き物だね」
ギラってなんだ? 魔法か何かか?
まあいい。魚だって言うんだから、とりあえず食べてみよう。キャス達も魚で良いらしいので、定食を三つお願いした。
「たまにはお魚も良いわね」
「そうね、骨がちょっと嫌だけど、村じゃなかなか食べられないからね」
あの村の近くには川はなかったので、彼女達はあまり魚は食べないのだろう。
このギラという魚がどんなものかと聞いてみると、二~三十センチほどの川魚だという。
「どうせなら海の魚も食べたいなあ。この辺りだとどんな魚が食べられるの?」
キャスに聞いてみると、何故か笑われてしまった。
「ちょっと……海って。ゼン君、頭良さそうだけど、たまにバカみたいな事言うわよね」
「キャス姉酷い……うぅ……なんでそんな風に言うの」
キャスの言葉にちょっとムカついたので、嘘泣きをしてみた。すると、本気にしたマグさんがキャスの頭を叩いた。ふははは、言葉に気を付けろよ!
「あっ、見てアイツ泣いてない!」
キャスは俺の嘘泣きに気付いて抗議したが、俺に同情的なマグさんには通用しなかった。
改めて海の魚の話を聞いてみると、ここからだと南方の海までは相当距離があるらしい。よって、魚の運搬なんてとんでもないと言われた。
しかも、海には強力な魔物がいるらしく、少しでも沖合に出ようとするだけで、船が沈められてしまうんだとか。お蔭でまともに漁が出来ず、海の魚はとても希少なのだそうだ。
気になったので、どこかで世界地図を見られないかと聞いてみたが、そんな物はないと言われてしまった。なんてこったい。
世界地図はないが、この国の物ならあるらしい。だが、それは貴族などが所有しているという。
まだまだこの世界について知らないことは多いが、今は運ばれてきた魚料理を堪能する事にした。
ギラと呼ばれた魚は、アユくらいの大きさでそれほど大きくはない。しかし、焼けて皮が割けた部分から美味しそうな匂いの湯気が上がっている。フォークで身をほぐしていくと、更に蒸気が上がり匂いが強まる。
俺は堪らなくなって魚を口に放り込む。ほくほくした歯触りの白身は淡泊だが、皮に軽くまぶした塩の味と合わさると、なんとも言えない旨味を感じる。焦げ目の香ばしさが鼻に抜けて食欲を大いにかき立てた。美味い、美味過ぎる! やはり日本人には魚が合っていると、心から思い知らされる一品だ。
俺は魚の味を噛みしめ、定食についているパンを頬張る。気が付いたら一気に完食していた。
ここに醤油と米があったら、俺はこの街に当分籠る事になりそうだと思わせるほどに、感動的な食事だった。
速攻で平らげてしまい、手持ち無沙汰になったので、店員さんに果物のジュースを三人分頼んで、キャス達が食べ終わるのを待っていた。
「良い食べっぷりだったわね。お土産は干物かしら?」
朝飯も食べ終わり、土産を物色しながら通りを歩く。
「ゼン君、ジュースありがとうね。でも本当にご馳走してもらって良かったの? キャス、貴方当然のように子供に奢らせるんじゃないわよ」
「気にしないでください。魚が食べられて大満足なんですから。キャス姉、お土産忘れないようにしてよ!」
冒険者ギルドまではそれほど離れていないのですぐに着いた。
ギルドは大きな二階建ての古い木造建築で、中に入るとエントランスは吹き抜けのホールになっていた。
正面にカウンターへと続く通路があり、その周りには丸机と椅子が並んでいる。その様子は一見すると飲み屋のようでもある。壁に設置された巨大な掲示板には、小さな木札がいくつもぶら下がっていた。多分あそこに依頼などが書かれているのだろう。
ギルドは職業斡旋所みたいな場所なので、朝から仕事探しの人達が数多く詰めかけて賑わっていた。その中にはちらほらと子供の姿も見える。彼らも熱心に掲示板の仕事を吟味していた。
俺達がカウンターに近付くと、受付の人がこちらに声を掛けてくる。
「おはよう、マグさん。更新に来たの?」
「そうよ、後この子の登録をお願い。一通りの説明はしてあるから、登録処理とカードの説明だけでいいわ」
そう言ってマグさんは、俺らに手を振りながら、ギルドの二階へと上がっていった。彼女はこの業務が終わったらすぐ村に帰るらしいので、帰りは一緒にはならない。色々ありがとう、マグさん。
「じゃあ君、こっちに来てこのクリスタルに触ってね」
受付の女性に呼ばれたのでカウンターに向かう。彼女は台座に載った柱状のクリスタルを取り出して、俺に触れるように促した。
指先でクリスタルに触れた瞬間、電気が走ったような感触が伝わってくる。
「はい、いいよ。ちょっと待ってね」
受付の女性はクリスタルを持って奥まで行き、用意されていたカードを当てる。そして、手元の紙の束に何かを書き込んで戻ってきた。
「はいっ! 完了!」
受付の女性が屈託のない笑顔でカードを差し出した。
カードは赤みがかった金色で、ダンジョンで大量に作った武器と同じ色だ。
カードの表面には、俺の名前と冒険者ギルドという文字、そして剣と盾のエンブレムが描かれている。裏側には何も書かれていないが、横線が二本走っていた。ここに何かを書き込めるのか?
カードの裏表を眺めていると、受付の女性が声を掛けてきた。
「いいかしら? カードの説明をするわね。ギルドで仕事を受注する時と、終了報告時にはこのカードを提出してね。ポイントの加算や受注する時のランクのチェックをするから。カードをなくしたら、すぐに近くのクリスタルがあるギルドで新しく作ってもらってね。ブロンズなら銀貨二枚で再発行出来るから、すぐにやるのよ?」
受付の女性は俺の顔をまっすぐ見ながら、丁寧に説明をしてくれる。笑顔も可愛いし、なかなか出来た姉ちゃんだ。
「このカードの裏面には、自分のスキルを合計三つまで表示させる機能があるから利用してね。依頼主にスキルを持っているか確認された場合とかに見せてあげるのよ。でもね、普段はあんまり人に見せちゃだめよ? あくまで相手の信用を得る時だけ見せるの。冒険者は自分の手の内を簡単に晒さないのが常識だから」
なるほど、カードの後ろにある空白はこの為か。この世界じゃ仕事をする上でスキルの有無は能力の証明にもなるんだな。
カードを手に持って集中すれば、自分が思ったスキルを表示させる事が出来る。俺は試しに調教を念じてみたら、『調教Lv2』とカードの裏側に表示された。
ふとカードから視線を上げると、受付の女性が俺のカードを覗き込んでいた。
「あははは、別に誰にも言わないわ。本当よ?」
彼女はそんな事を言いながら笑っている。人に見せるなと言っておきながら油断も隙もねえな。
カードの説明は終わったので、俺は一言お礼を言ってその場を離れた。
カウンターから少し離れて、今度はギルドカードに槍術を表示させてみようとしたが、何も出てこない。きっとカードに表示されるのはレベル1からで、現在レベル0の槍術は表示出来ないのだろう。なんとなく仕様は分かったので、ギルドカードはマジックバッグに収納しておく。
キャスを探してギルドの中を見回してみると、彼女はいつの間にか掲示板を眺めていた。
「何見てんの?」
「わっ! 驚かせないでよ! て、もう終わったの?」
近寄って後ろから声を掛けたら、何故か怒られた。ボーっとし過ぎだよ!
俺は隣に立って、キャスが見ていた物に視線を移す。そこにはこんな事が書かれていた。
【ランク・プラチナ/キマイラ討伐/報酬 大金貨三枚】
詳細情報に示された場所は、北部の森――ということは、俺達が倒したキマイラの事だろう。
俺とキャスは互いに顔を見合わせて、微妙な表情になってしまった。
あの森にはあまり人に入って欲しくはないので、討伐依頼があるのは少し困る。かといって、この場で依頼達成のキマイラの死体を出す訳にもいかない。う~ん、どうしようもないな。
急ぐ用事もないので、一通り掲示板に張られている依頼を見ていく。
低ランクの物はこんな感じだ。
【ランク・ブロンズ/ゴブリン討伐(常時)/報酬 一匹 銀貨一枚】
【ランク・ブロンズ/水路掃除/報酬 銀貨五枚】
【ランク・シルバー/平原狼討伐(要死体)/報酬 銀貨三枚 *素材の質により上下あり】
キャスの話によると、ゴブリンは殺した後に両耳を持っていけば良いらしい。その他にもオークは鼻、オーガは牙などが討伐証明になる。また、オーガの皮膚は鎧の素材に使えるので、普通はその場で剥いでくるらしい。亜人は魔物扱いとはいえ、人間酷過ぎるだろ……
次々に依頼を見ていくと、ふと壁に張られた一枚の紙が目に入った。恐ろしく大まかに書かれているが、明らかに地図だ。
「キャス姉、あれ地図じゃないの?」
「そうね、でもあの地図合ってないわよ? この街の周辺は正確だろうけど、その他はかなり大雑把だって聞いたし。まあ、この大陸と東にある隣の大陸の位置は大体合ってるらしいわよ。後は他にも島があるって感じ。正確な位置なんて誰も知らないのよ。ちゃんとした地図は偉い人しか持ってないの」
キャスは地図を指さしながら説明を続ける。
この大陸以外はその全てが人類未到達地域らしい。この大陸でさえ、人間が辿り着いてない場所が多くある。特に、北東には強力な魔獣が住んでいて、未発見のダンジョンなどが多数あると予想されているんだとか。
流石、現役冒険者だ。ナイスな情報を楽しそうに話してくれる。まあ、そんな場所に俺が行ける訳ないだろうと思いながら、ギルドから出る事にした。
さて、これからは楽しいショッピングの時間なのだが、その前に現金を作りたい。早速、連れてきたキャス姉さんに役に立ってもらおう。
「先に宿屋を取ろう。その方が後で行動出来ていいでしょ?」
「そうね、贔屓にしてる宿屋があるから、そこにしましょ。こっちよ。はぐれないように手、繋ぐ?」
「嬉しい申し出だけど、そんな子供じゃないって」
魅力的な提案だったが丁重にお断りして、宿屋まで案内してもらった。
ギルドから五分ほど歩くと、目的地である華の乙女亭に辿り着いた。
店先には手入れが行き届いた花壇があり、名前の通り多くの花が咲き誇っている。部屋数は多くなさそうだが、とても感じの良い宿だ。
キャスは慣れた感じで中へ入っていくので、俺も後に続く。
「いらっしゃい! あらキャスじゃない、久しぶりねえ」
受付では五十代ぐらいの女将が人の良さそうな笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶり、ネリーさん。ベッド二つの部屋は空いてる?」
「ああ、空いてるよ。おや? そっちの坊やはあんたの弟かい?」
「まあ、そんなところかな。色々あって今家にいるのよ」
キャスと親しげに会話しながら、ネリーさんが部屋まで案内してくれる。
ツインの部屋は一泊銀貨三枚で、相場で言えば中級に当たるらしい。中級だと金額的に駆け出し冒険者のキャスには、結構贅沢なんじゃないかと思った。だが考えてみれば、安宿だと女の子が泊まるのに安全面で心配だよな。
キャスとネリーさんは廊下で話し込んでいるので、先に部屋に入って中を確認する。
白を基調とした清潔感がある内装で、窓から日も差し込むのでなかなか良い。
ベッドに腰かけてみると、布団は藁ではなく、ちゃんとした綿が入ったものだ。思わず布団にダイブして感触を楽しんでしまった。
そんな事をしていると、世間話を終えたキャスが部屋に入ってきて、俺と同じように布団にダイブした。
「キャス姉、俺現金が欲しいから、どこかでこの宝石売ってきてよ」
俺はそう言ってマジックバッグから宝石をいくつか取り出してキャスに見せる。
これはダンジョンボスを倒した時にドロップした物だ。鑑定結果ではタンザナイト、トルマリン、ガーネットと出ている。他にも高額な物はあるが、今回は除外しておく。
全て十カラット以上の大きさがあるだろう。手のひらに載せるとずっしりと重たい。
キャスは一瞬固まったが、目を輝かせて吸い寄せられるように近付いてきた。
「馬くらいなら、余裕で買えそうね。ゼン君これをどこ……どうせ言わないわね」
ははは、聞いたところで答えないのを覚えてきたな。しかし、馬って相場が分からないな。おいくら万円だ?
「馬っていくらぐらいするの?」
「ん~、馬一頭で、大金貨一枚から二枚ってところかしらね」
「高いのか安いのか分からないなあ。まあいいや。じゃあ、売値の一割をあげるから、宝石を換金してきてもらっていいかな。俺が行ったら面倒な事になりそうだからさ。ギルドの依頼みたいなもんだと思ってさ」
冒険者がダンジョンのドロップで手に入れた宝石を売る事は珍しくないという。
「う、うん。分かった……」
キャスは喉をゴクリと鳴らすと、緊張した様子で俺の手から宝石を受け取った。
キャスはダイヤの絵が描かれた看板の店に入ると、十分ほどで出てきた。キョロキョロと辺りを見回して、少し様子がおかしいが、手にはしっかり布の袋を握っている。しかし、キャスから手渡された布袋は、思ったより中に入っている硬貨が少ない。挙動不審になるぐらいだから、もっとジャラジャラと入ってると思ったんだけどな。
「キャス姉、自分の取り分引いた?」
俺が質問すると、キャスは神妙な顔で口を開いた。
「まだだけど、大金貨なんて生まれて初めて持ったわ……」
なるほど、キャスの挙動不審の原因はこれか。
確かに俺も前世で百万円の札束なんて持った事はない。銀行口座にならその数倍は余裕で入っていたが、いざ現金で持つとなると、なんか怖いんだよね。
袋を開けて中を確かめると、大金貨三枚が入っていた。予想を上回る金額だ。
しかし、手持ちが大金貨だけじゃあ、キャスに取り分を渡せないな。買い物して崩すにしても、これだけの金額で支払える物となるとなかなかない。
その為、俺達はキャスが欲しいと言っていた武器を扱う店に直接向かう事にした。ここで直接買い物してしまった方が手っ取り早いというわけだ。
この規模の街になると、同じ鍛冶屋でも日用品などを扱う金物屋から、武器屋、防具屋といった具合に細分化されている。職人街の通りには、そんな店や工房が多数軒を連ねていた。
キャスが足を止めたのは、真新しいレンガの壁が綺麗な店。店先に植木鉢などが飾ってあり、この通りに多くある無骨な雰囲気の店とは一線を画していた。
他の店はまさにオッサンの巣という感じだし、どう考えても見た目で選んでるよな……まあ女の子だし仕方ないか。
店のドアを開けると、来客を知らせるベルが鳴る。
それまでカウンターに肘を突いて暇そうな顔をしていた店員さんも、居住まいを正して丁寧な挨拶で出迎えてくれる。
キャスはそんな店員の様子など気にもせず、早速店内を物色し始めた。
キャスに倣って、俺も壁に掛けられた武器や盾などを見ていく。店の雰囲気から想像できたが、この店の商品は武器としての性能よりも、見た目の装飾に力を入れているようだ。
たとえば今キャスが手に取ったエストックの品質は、鑑定結果から標準と分かった。だが見た目は、高級感が漂う素晴らしい細身の剣だ。
「ちょっとキャス姉、武器としての性能低いけど、本当にいいの?」
「シッ! 大丈夫、分かってるから。それよりこれとこれ、私に似合うのはどっちかな? あー、ゼン君じゃ分からないか……野生児だもんね、君」
分かっているなら俺は何も言わない。自分が欲しい物を買えばいいのだから。てか、野生児って失礼だな……
約十分かけて二本の剣に絞り込んだキャスは、更に暫く悩んでからようやく決断してくれた。
キャスの選んだ剣は、全体的に白い装飾を施された、儀式などで使いそうな剣だ。
俺も手に取って鑑定してみると、やはり品質は標準だった。
一応鑑定結果を最後に伝えて念押ししてから購入した。金額は金貨二枚に大銀貨五枚。シルバーになり立ての冒険者が持つ武器には、なかなかの値段じゃないだろうか。
店から出たキャスは腰に付けた新しい剣に満足なのか、終始ニヤニヤしている。俺も前世で新しい電化製品を買った時にはそんな顔をしてたんだろうな。だが、女の子が剣を眺めてニヤけるのはどうなのかと思った。いや、女性も戦うこの世界じゃ、別におかしくはないか。
一度宿屋まで戻って、キャスにはここから別行動を取ると伝えた。だが、キャスは新しい剣に夢中で俺の話を全く聞いていない。
仕方がないのでそのまま外に出る事にした。夜には戻るし、大丈夫だろう。
さて、俺は俺の目的を果たそう。早速情報収集でも始めようかな。
◆
「おじさん、良かったらこのお酒飲んでください」
俺は飲み屋に入ると昼から飲んだくれてる男を見つけ、一升ほど入る小ぶりの酒樽を片手に話しかけた。
「はぁ? 坊主、一体何を言ってんだ?」
「お母さんがこのお酒捨てて来いって。お父さんが飲んだくれるから。でも、勿体ないからおじさんにあげるよ。ここ、お酒飲む場所でしょ?」
「がはは、そうかそうか。よーし、俺が飲んでやるぞ! 坊主何か食うか? がははは」
男は鎧を着て剣を腰に下げているが、この街の警備や軍などではないだろう。武器防具は使い込まれて、見た目から熟練冒険者の雰囲気が漂っている。
「おじさんは冒険者だよね?」
「おう、そうだぞ! 坊主は冒険者になりたいのか?」
良かった、ちゃんと目的の人物だった。
「おじさんお酒好きなんでしょ? 僕が注いであげるから沢山飲んでね」
「がははは、良い子だな。ほら空いたぞ、注いでくれ。がはははは」
すっげえ飲むな、このおっさん。元から赤かった顔が更に赤くなってるぞ。
「ねえおじさん、僕スキルの事が知りたいんだけど、教えてくれる?」
「いいぞー、なんでも教えてやるぞ!」
「おじさんは剣を使うんでしょ? 剣術のスキルレベルいくつ?」
「ん……坊主、それはいくらなんでも教えられねえな」
なるほど、ギルドで言われたとおり、やはり簡単には教えてもらえないな。でも、もう少し粘ってみるか。
「そうなんだ、ごめんなさい。僕も剣を使いたいから、おじさんみたいに格好いい人は剣術のレベルがいくつなんだろうと思って気になったんだー」
「がははは、格好いいか! 他の事ならいくらでも教えてやるぞ」
「じゃあ――」
それからさほど時間も経たずに、おっさんはベロベロに酔ってしまった。
「おじさん、もうお酒の樽が空になりそうだよ。すごいね!」
「そう……だろ。ウップ、俺は……かっこ……いいからな」
「あっ、またコップが空だ! はいどうぞ」
「ヒック、そう……だな」
「ねえ、おじさんの剣術のスキルっていくつ?」
「剣……術は……レベル3……」
「じゃあ、今のレベルは?」
「30……ヒック」
うむ、今なら誰でもこのおっさんをお持ち帰りが出来そうなくらい、完璧にベロンベロンだ。あんまり飲ませるとアルコール中毒になりそうで怖い。大体話も聞けたし、もう解放してあげよう。
「あー、もう帰らないと! おじさんありがとうね!」
「おう、気……を付けてか……えるんだ……ぞ」
おっさんが力尽きてテーブルで寝てしまったので、俺はテーブルを後にした。
結構長い時間いた気がするが、店員にとやかく言われる事はなかった。まあ、ちょくちょく食べ物も頼んでいたってのもあるし、色々寛容な店なんだろうな。
さて、次の目標はっと――
「あぁ、そうだ! 魔道は一日にしてならずなんだ!」
「そうなんだー。ささ、飲んでお兄さん」
「おう! 悪いな僕。お父さんが可哀想だが仕方ないな! ははは」
今度は見るからに魔法を使いそうな兄ちゃんに、酒を飲ませて喋らせる作戦を仕掛けてみたのだが、まんまと嵌まってくれる。
一人でいる奴らは皆話し相手が欲しいんだろう。ボッチの悲しい習性なんだろうか?
「んで、魔法の覚え方だけど――」
ランドル君(二十一歳)はゴールドランクの冒険者だ。彼は貴族の五男坊なのだが、家督争いに参加することもなく、子供の頃から開花した魔法技能を使って冒険者として生きている。
最近は同じパーティーの女冒険者に恋心を抱いているようだ。
相手は戦士らしいので、さっきキャスの剣を買った店を紹介してみたところ、彼は「その手があったか……」なんてしきりに感心している。いくら酔っているからといって、十歳児に女の落とし方を聞くのはどうかと思うけど。
まあ、顔も良いし金も持ってそうだから、彼は良い物件だと思う。
いつの間にか酔い潰れていたランドルを店の人に任せて席を立つ。
魔法使いで尚且つ高ランク冒険者の話が聞けたのは物凄く幸運だった。俺が知りたいと思っていた事の大部分は知る事が出来たし。
外を覗くと、すでに朝日が昇って明るくなっている。隣にいるキャスはまだ寝ていた。昨日あんなに寝てたのに……なんでそんなに寝られるんだろうな。
暫くすると、護衛がもうすぐ街に着くと知らせてくれた。馬車は街の門の外に停まるので、今のうちに荷物をまとめて降りる準備をしておけとの事だ。
キャスを揺すって起こすが、なかなか目覚めてくれない。まだ眠いとか言いながら俺に抱きついてくる。護衛の兄ちゃんが露骨に羨ましそうな顔をしていたが……うん、気持ちは分かるぞ。
ほどなくすると、馬車から降りるように言われた。ここからは街の門まで歩いて行く事になる。足元の道はしっかりと踏み固められており、普段から人通りは多そうだ。
ここから見える限りでも、街はかなり大きい事が分かった。街を囲う石造りの壁も見上げるほどの高さで、ブロベック村の物とは規模が違う。街の周りには水堀が巡らされていて、その流れに沿って目をやると、どうやら街の中に川が通っているみたいだ。
こんな朝からでも門の前には行列が出来ている。大きな荷物を背負った行商人や、馬車に積荷を満載した業者が数多く見える。俺らのように身軽な者は少ないぐらいだ。
辺りを眺めていると、並んでいる人達の中におかしな人影が見えた。殆ど人間と同じシルエットなのだが、頭の上にうさぎのような長い耳があり、腰の辺りに丸く可愛らしい尻尾が生えている。俺は驚いてキャスにその方向を指さした。
「キャス姉、あの人尻尾ある。あと耳も……」
「……ゼン君、あれは獣人よ。そんなに珍しくないわ。ほら、あっちにもいるでしょ?」
キャスが指し示した方向を見ると、更に衝撃が走った。そこには大きな荷物を背負った、二足歩行の熊がいたからだ。
彼らは獣人と呼ばれる種族で、この国ではそれほど多くはいないが、それでも国民の一割を占めているらしい。一口に獣人と言っても、俺が最初に見つけた人のように、耳や尻尾だけが動物のもので他は殆ど人と変わらない者や、逆に動物がそのまま二足歩行しているような者など、多岐にわたって存在しているらしい。
「亜人と獣人は何が違うの?」
はっきりいって俺には違いが分からない。
キャスは少し悩みながらも説明をしてくれる。
「いい? 獣人は私達人族と同じ言葉を喋れます。話してみれば分かるけど、心も人と変わりません。人族も獣人も合わせて人間。絶対に亜人と比べちゃ駄目よ?」
キャスは胸を反らして指を立てると、少し大袈裟な仕草で教師のように説明した。
なるほど、それがこの世界の常識か。
それにしても、あの熊ちゃんは猛烈に可愛い。サイズは超でかいが、ヌイグルミみたいだ。顔も穏やかに見えるので、きっと優しい人なんだろう。いつかお友達になって欲しいもんだな。
そうこうしているうちに、正門の真下にやってきた。
街に入るには、簡単な質問に答えて通行税を払えば良いので、身分証明は必要ないと言われた。商いを行う者は荷物の大きさによって追加で物品税が必要らしいが、俺らには関係ない話だ。
先に行ったマグさんは門番と顔見知りのようで、何やら彼らと一言二言話をしている。すると、俺達への審査は免除となり、あっさりと街の中に入る事が出来た。コネの力、強いです。
馬車に乗っていた他の人達とはここでお別れだ。
キャス、マグさんと三人で冒険者ギルドまで行き、まずは登録を済ませる事にする。
冒険者ギルドは大通りに面したまさに一等地という場所にあり、周りにも様々な店舗が軒を連ねていた。まだ早朝だというのに色々な食べ物の匂いが漂ってきて、俺の空腹を誘う。
「ねえ、キャス姉。ここで食べていかない? 朝飯まだだし、良いよね?」
「そうね、この匂いを嗅いだら我慢できないかも」
「ふふ、二人がそう言うなら、そうしましょ。ギルドは逃げないからね!」
空腹なのはキャスもマグさんも同じらしい。俺達は朝食を食べてからギルドに行くことにした。
道の両脇には大小様々な食堂や、屋台のような店がひしめき合っており、朝食を求める人々で混み合っている。料理の種類も多く、肉はもちろん魚の焼ける香ばしい匂いがしてくる。街だけあって物流は豊富なんだろう。
そういえば、村ではあまり魚を見なかった。久しぶりの魚の匂いは、俺の胃袋を捕えて強引に引き寄せた。俺は迷わずその匂いを放つ定食屋に直行して、二人を手招きで呼び寄せた。
「ここが良いの? お肉もあるわよ?」
キャスはまだ目移りしているようだが、俺は魚が食べたいのだから絶対にここしかないのだ!
俺は一人でさっさと席に着く。二人は別に文句もないようで、一度顔を見合わせた後、微笑みながら俺に続いた。
「いらっしゃい。坊やは店の選び方が分かってるねえ。定食で良いのかい?」
席に着くなり、カウンター越しに店主の威勢の良い声が響いた。
「その定食って魚ですよね?」
「そうだよ、今日はギラの焼き物だね」
ギラってなんだ? 魔法か何かか?
まあいい。魚だって言うんだから、とりあえず食べてみよう。キャス達も魚で良いらしいので、定食を三つお願いした。
「たまにはお魚も良いわね」
「そうね、骨がちょっと嫌だけど、村じゃなかなか食べられないからね」
あの村の近くには川はなかったので、彼女達はあまり魚は食べないのだろう。
このギラという魚がどんなものかと聞いてみると、二~三十センチほどの川魚だという。
「どうせなら海の魚も食べたいなあ。この辺りだとどんな魚が食べられるの?」
キャスに聞いてみると、何故か笑われてしまった。
「ちょっと……海って。ゼン君、頭良さそうだけど、たまにバカみたいな事言うわよね」
「キャス姉酷い……うぅ……なんでそんな風に言うの」
キャスの言葉にちょっとムカついたので、嘘泣きをしてみた。すると、本気にしたマグさんがキャスの頭を叩いた。ふははは、言葉に気を付けろよ!
「あっ、見てアイツ泣いてない!」
キャスは俺の嘘泣きに気付いて抗議したが、俺に同情的なマグさんには通用しなかった。
改めて海の魚の話を聞いてみると、ここからだと南方の海までは相当距離があるらしい。よって、魚の運搬なんてとんでもないと言われた。
しかも、海には強力な魔物がいるらしく、少しでも沖合に出ようとするだけで、船が沈められてしまうんだとか。お蔭でまともに漁が出来ず、海の魚はとても希少なのだそうだ。
気になったので、どこかで世界地図を見られないかと聞いてみたが、そんな物はないと言われてしまった。なんてこったい。
世界地図はないが、この国の物ならあるらしい。だが、それは貴族などが所有しているという。
まだまだこの世界について知らないことは多いが、今は運ばれてきた魚料理を堪能する事にした。
ギラと呼ばれた魚は、アユくらいの大きさでそれほど大きくはない。しかし、焼けて皮が割けた部分から美味しそうな匂いの湯気が上がっている。フォークで身をほぐしていくと、更に蒸気が上がり匂いが強まる。
俺は堪らなくなって魚を口に放り込む。ほくほくした歯触りの白身は淡泊だが、皮に軽くまぶした塩の味と合わさると、なんとも言えない旨味を感じる。焦げ目の香ばしさが鼻に抜けて食欲を大いにかき立てた。美味い、美味過ぎる! やはり日本人には魚が合っていると、心から思い知らされる一品だ。
俺は魚の味を噛みしめ、定食についているパンを頬張る。気が付いたら一気に完食していた。
ここに醤油と米があったら、俺はこの街に当分籠る事になりそうだと思わせるほどに、感動的な食事だった。
速攻で平らげてしまい、手持ち無沙汰になったので、店員さんに果物のジュースを三人分頼んで、キャス達が食べ終わるのを待っていた。
「良い食べっぷりだったわね。お土産は干物かしら?」
朝飯も食べ終わり、土産を物色しながら通りを歩く。
「ゼン君、ジュースありがとうね。でも本当にご馳走してもらって良かったの? キャス、貴方当然のように子供に奢らせるんじゃないわよ」
「気にしないでください。魚が食べられて大満足なんですから。キャス姉、お土産忘れないようにしてよ!」
冒険者ギルドまではそれほど離れていないのですぐに着いた。
ギルドは大きな二階建ての古い木造建築で、中に入るとエントランスは吹き抜けのホールになっていた。
正面にカウンターへと続く通路があり、その周りには丸机と椅子が並んでいる。その様子は一見すると飲み屋のようでもある。壁に設置された巨大な掲示板には、小さな木札がいくつもぶら下がっていた。多分あそこに依頼などが書かれているのだろう。
ギルドは職業斡旋所みたいな場所なので、朝から仕事探しの人達が数多く詰めかけて賑わっていた。その中にはちらほらと子供の姿も見える。彼らも熱心に掲示板の仕事を吟味していた。
俺達がカウンターに近付くと、受付の人がこちらに声を掛けてくる。
「おはよう、マグさん。更新に来たの?」
「そうよ、後この子の登録をお願い。一通りの説明はしてあるから、登録処理とカードの説明だけでいいわ」
そう言ってマグさんは、俺らに手を振りながら、ギルドの二階へと上がっていった。彼女はこの業務が終わったらすぐ村に帰るらしいので、帰りは一緒にはならない。色々ありがとう、マグさん。
「じゃあ君、こっちに来てこのクリスタルに触ってね」
受付の女性に呼ばれたのでカウンターに向かう。彼女は台座に載った柱状のクリスタルを取り出して、俺に触れるように促した。
指先でクリスタルに触れた瞬間、電気が走ったような感触が伝わってくる。
「はい、いいよ。ちょっと待ってね」
受付の女性はクリスタルを持って奥まで行き、用意されていたカードを当てる。そして、手元の紙の束に何かを書き込んで戻ってきた。
「はいっ! 完了!」
受付の女性が屈託のない笑顔でカードを差し出した。
カードは赤みがかった金色で、ダンジョンで大量に作った武器と同じ色だ。
カードの表面には、俺の名前と冒険者ギルドという文字、そして剣と盾のエンブレムが描かれている。裏側には何も書かれていないが、横線が二本走っていた。ここに何かを書き込めるのか?
カードの裏表を眺めていると、受付の女性が声を掛けてきた。
「いいかしら? カードの説明をするわね。ギルドで仕事を受注する時と、終了報告時にはこのカードを提出してね。ポイントの加算や受注する時のランクのチェックをするから。カードをなくしたら、すぐに近くのクリスタルがあるギルドで新しく作ってもらってね。ブロンズなら銀貨二枚で再発行出来るから、すぐにやるのよ?」
受付の女性は俺の顔をまっすぐ見ながら、丁寧に説明をしてくれる。笑顔も可愛いし、なかなか出来た姉ちゃんだ。
「このカードの裏面には、自分のスキルを合計三つまで表示させる機能があるから利用してね。依頼主にスキルを持っているか確認された場合とかに見せてあげるのよ。でもね、普段はあんまり人に見せちゃだめよ? あくまで相手の信用を得る時だけ見せるの。冒険者は自分の手の内を簡単に晒さないのが常識だから」
なるほど、カードの後ろにある空白はこの為か。この世界じゃ仕事をする上でスキルの有無は能力の証明にもなるんだな。
カードを手に持って集中すれば、自分が思ったスキルを表示させる事が出来る。俺は試しに調教を念じてみたら、『調教Lv2』とカードの裏側に表示された。
ふとカードから視線を上げると、受付の女性が俺のカードを覗き込んでいた。
「あははは、別に誰にも言わないわ。本当よ?」
彼女はそんな事を言いながら笑っている。人に見せるなと言っておきながら油断も隙もねえな。
カードの説明は終わったので、俺は一言お礼を言ってその場を離れた。
カウンターから少し離れて、今度はギルドカードに槍術を表示させてみようとしたが、何も出てこない。きっとカードに表示されるのはレベル1からで、現在レベル0の槍術は表示出来ないのだろう。なんとなく仕様は分かったので、ギルドカードはマジックバッグに収納しておく。
キャスを探してギルドの中を見回してみると、彼女はいつの間にか掲示板を眺めていた。
「何見てんの?」
「わっ! 驚かせないでよ! て、もう終わったの?」
近寄って後ろから声を掛けたら、何故か怒られた。ボーっとし過ぎだよ!
俺は隣に立って、キャスが見ていた物に視線を移す。そこにはこんな事が書かれていた。
【ランク・プラチナ/キマイラ討伐/報酬 大金貨三枚】
詳細情報に示された場所は、北部の森――ということは、俺達が倒したキマイラの事だろう。
俺とキャスは互いに顔を見合わせて、微妙な表情になってしまった。
あの森にはあまり人に入って欲しくはないので、討伐依頼があるのは少し困る。かといって、この場で依頼達成のキマイラの死体を出す訳にもいかない。う~ん、どうしようもないな。
急ぐ用事もないので、一通り掲示板に張られている依頼を見ていく。
低ランクの物はこんな感じだ。
【ランク・ブロンズ/ゴブリン討伐(常時)/報酬 一匹 銀貨一枚】
【ランク・ブロンズ/水路掃除/報酬 銀貨五枚】
【ランク・シルバー/平原狼討伐(要死体)/報酬 銀貨三枚 *素材の質により上下あり】
キャスの話によると、ゴブリンは殺した後に両耳を持っていけば良いらしい。その他にもオークは鼻、オーガは牙などが討伐証明になる。また、オーガの皮膚は鎧の素材に使えるので、普通はその場で剥いでくるらしい。亜人は魔物扱いとはいえ、人間酷過ぎるだろ……
次々に依頼を見ていくと、ふと壁に張られた一枚の紙が目に入った。恐ろしく大まかに書かれているが、明らかに地図だ。
「キャス姉、あれ地図じゃないの?」
「そうね、でもあの地図合ってないわよ? この街の周辺は正確だろうけど、その他はかなり大雑把だって聞いたし。まあ、この大陸と東にある隣の大陸の位置は大体合ってるらしいわよ。後は他にも島があるって感じ。正確な位置なんて誰も知らないのよ。ちゃんとした地図は偉い人しか持ってないの」
キャスは地図を指さしながら説明を続ける。
この大陸以外はその全てが人類未到達地域らしい。この大陸でさえ、人間が辿り着いてない場所が多くある。特に、北東には強力な魔獣が住んでいて、未発見のダンジョンなどが多数あると予想されているんだとか。
流石、現役冒険者だ。ナイスな情報を楽しそうに話してくれる。まあ、そんな場所に俺が行ける訳ないだろうと思いながら、ギルドから出る事にした。
さて、これからは楽しいショッピングの時間なのだが、その前に現金を作りたい。早速、連れてきたキャス姉さんに役に立ってもらおう。
「先に宿屋を取ろう。その方が後で行動出来ていいでしょ?」
「そうね、贔屓にしてる宿屋があるから、そこにしましょ。こっちよ。はぐれないように手、繋ぐ?」
「嬉しい申し出だけど、そんな子供じゃないって」
魅力的な提案だったが丁重にお断りして、宿屋まで案内してもらった。
ギルドから五分ほど歩くと、目的地である華の乙女亭に辿り着いた。
店先には手入れが行き届いた花壇があり、名前の通り多くの花が咲き誇っている。部屋数は多くなさそうだが、とても感じの良い宿だ。
キャスは慣れた感じで中へ入っていくので、俺も後に続く。
「いらっしゃい! あらキャスじゃない、久しぶりねえ」
受付では五十代ぐらいの女将が人の良さそうな笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶり、ネリーさん。ベッド二つの部屋は空いてる?」
「ああ、空いてるよ。おや? そっちの坊やはあんたの弟かい?」
「まあ、そんなところかな。色々あって今家にいるのよ」
キャスと親しげに会話しながら、ネリーさんが部屋まで案内してくれる。
ツインの部屋は一泊銀貨三枚で、相場で言えば中級に当たるらしい。中級だと金額的に駆け出し冒険者のキャスには、結構贅沢なんじゃないかと思った。だが考えてみれば、安宿だと女の子が泊まるのに安全面で心配だよな。
キャスとネリーさんは廊下で話し込んでいるので、先に部屋に入って中を確認する。
白を基調とした清潔感がある内装で、窓から日も差し込むのでなかなか良い。
ベッドに腰かけてみると、布団は藁ではなく、ちゃんとした綿が入ったものだ。思わず布団にダイブして感触を楽しんでしまった。
そんな事をしていると、世間話を終えたキャスが部屋に入ってきて、俺と同じように布団にダイブした。
「キャス姉、俺現金が欲しいから、どこかでこの宝石売ってきてよ」
俺はそう言ってマジックバッグから宝石をいくつか取り出してキャスに見せる。
これはダンジョンボスを倒した時にドロップした物だ。鑑定結果ではタンザナイト、トルマリン、ガーネットと出ている。他にも高額な物はあるが、今回は除外しておく。
全て十カラット以上の大きさがあるだろう。手のひらに載せるとずっしりと重たい。
キャスは一瞬固まったが、目を輝かせて吸い寄せられるように近付いてきた。
「馬くらいなら、余裕で買えそうね。ゼン君これをどこ……どうせ言わないわね」
ははは、聞いたところで答えないのを覚えてきたな。しかし、馬って相場が分からないな。おいくら万円だ?
「馬っていくらぐらいするの?」
「ん~、馬一頭で、大金貨一枚から二枚ってところかしらね」
「高いのか安いのか分からないなあ。まあいいや。じゃあ、売値の一割をあげるから、宝石を換金してきてもらっていいかな。俺が行ったら面倒な事になりそうだからさ。ギルドの依頼みたいなもんだと思ってさ」
冒険者がダンジョンのドロップで手に入れた宝石を売る事は珍しくないという。
「う、うん。分かった……」
キャスは喉をゴクリと鳴らすと、緊張した様子で俺の手から宝石を受け取った。
キャスはダイヤの絵が描かれた看板の店に入ると、十分ほどで出てきた。キョロキョロと辺りを見回して、少し様子がおかしいが、手にはしっかり布の袋を握っている。しかし、キャスから手渡された布袋は、思ったより中に入っている硬貨が少ない。挙動不審になるぐらいだから、もっとジャラジャラと入ってると思ったんだけどな。
「キャス姉、自分の取り分引いた?」
俺が質問すると、キャスは神妙な顔で口を開いた。
「まだだけど、大金貨なんて生まれて初めて持ったわ……」
なるほど、キャスの挙動不審の原因はこれか。
確かに俺も前世で百万円の札束なんて持った事はない。銀行口座にならその数倍は余裕で入っていたが、いざ現金で持つとなると、なんか怖いんだよね。
袋を開けて中を確かめると、大金貨三枚が入っていた。予想を上回る金額だ。
しかし、手持ちが大金貨だけじゃあ、キャスに取り分を渡せないな。買い物して崩すにしても、これだけの金額で支払える物となるとなかなかない。
その為、俺達はキャスが欲しいと言っていた武器を扱う店に直接向かう事にした。ここで直接買い物してしまった方が手っ取り早いというわけだ。
この規模の街になると、同じ鍛冶屋でも日用品などを扱う金物屋から、武器屋、防具屋といった具合に細分化されている。職人街の通りには、そんな店や工房が多数軒を連ねていた。
キャスが足を止めたのは、真新しいレンガの壁が綺麗な店。店先に植木鉢などが飾ってあり、この通りに多くある無骨な雰囲気の店とは一線を画していた。
他の店はまさにオッサンの巣という感じだし、どう考えても見た目で選んでるよな……まあ女の子だし仕方ないか。
店のドアを開けると、来客を知らせるベルが鳴る。
それまでカウンターに肘を突いて暇そうな顔をしていた店員さんも、居住まいを正して丁寧な挨拶で出迎えてくれる。
キャスはそんな店員の様子など気にもせず、早速店内を物色し始めた。
キャスに倣って、俺も壁に掛けられた武器や盾などを見ていく。店の雰囲気から想像できたが、この店の商品は武器としての性能よりも、見た目の装飾に力を入れているようだ。
たとえば今キャスが手に取ったエストックの品質は、鑑定結果から標準と分かった。だが見た目は、高級感が漂う素晴らしい細身の剣だ。
「ちょっとキャス姉、武器としての性能低いけど、本当にいいの?」
「シッ! 大丈夫、分かってるから。それよりこれとこれ、私に似合うのはどっちかな? あー、ゼン君じゃ分からないか……野生児だもんね、君」
分かっているなら俺は何も言わない。自分が欲しい物を買えばいいのだから。てか、野生児って失礼だな……
約十分かけて二本の剣に絞り込んだキャスは、更に暫く悩んでからようやく決断してくれた。
キャスの選んだ剣は、全体的に白い装飾を施された、儀式などで使いそうな剣だ。
俺も手に取って鑑定してみると、やはり品質は標準だった。
一応鑑定結果を最後に伝えて念押ししてから購入した。金額は金貨二枚に大銀貨五枚。シルバーになり立ての冒険者が持つ武器には、なかなかの値段じゃないだろうか。
店から出たキャスは腰に付けた新しい剣に満足なのか、終始ニヤニヤしている。俺も前世で新しい電化製品を買った時にはそんな顔をしてたんだろうな。だが、女の子が剣を眺めてニヤけるのはどうなのかと思った。いや、女性も戦うこの世界じゃ、別におかしくはないか。
一度宿屋まで戻って、キャスにはここから別行動を取ると伝えた。だが、キャスは新しい剣に夢中で俺の話を全く聞いていない。
仕方がないのでそのまま外に出る事にした。夜には戻るし、大丈夫だろう。
さて、俺は俺の目的を果たそう。早速情報収集でも始めようかな。
◆
「おじさん、良かったらこのお酒飲んでください」
俺は飲み屋に入ると昼から飲んだくれてる男を見つけ、一升ほど入る小ぶりの酒樽を片手に話しかけた。
「はぁ? 坊主、一体何を言ってんだ?」
「お母さんがこのお酒捨てて来いって。お父さんが飲んだくれるから。でも、勿体ないからおじさんにあげるよ。ここ、お酒飲む場所でしょ?」
「がはは、そうかそうか。よーし、俺が飲んでやるぞ! 坊主何か食うか? がははは」
男は鎧を着て剣を腰に下げているが、この街の警備や軍などではないだろう。武器防具は使い込まれて、見た目から熟練冒険者の雰囲気が漂っている。
「おじさんは冒険者だよね?」
「おう、そうだぞ! 坊主は冒険者になりたいのか?」
良かった、ちゃんと目的の人物だった。
「おじさんお酒好きなんでしょ? 僕が注いであげるから沢山飲んでね」
「がははは、良い子だな。ほら空いたぞ、注いでくれ。がはははは」
すっげえ飲むな、このおっさん。元から赤かった顔が更に赤くなってるぞ。
「ねえおじさん、僕スキルの事が知りたいんだけど、教えてくれる?」
「いいぞー、なんでも教えてやるぞ!」
「おじさんは剣を使うんでしょ? 剣術のスキルレベルいくつ?」
「ん……坊主、それはいくらなんでも教えられねえな」
なるほど、ギルドで言われたとおり、やはり簡単には教えてもらえないな。でも、もう少し粘ってみるか。
「そうなんだ、ごめんなさい。僕も剣を使いたいから、おじさんみたいに格好いい人は剣術のレベルがいくつなんだろうと思って気になったんだー」
「がははは、格好いいか! 他の事ならいくらでも教えてやるぞ」
「じゃあ――」
それからさほど時間も経たずに、おっさんはベロベロに酔ってしまった。
「おじさん、もうお酒の樽が空になりそうだよ。すごいね!」
「そう……だろ。ウップ、俺は……かっこ……いいからな」
「あっ、またコップが空だ! はいどうぞ」
「ヒック、そう……だな」
「ねえ、おじさんの剣術のスキルっていくつ?」
「剣……術は……レベル3……」
「じゃあ、今のレベルは?」
「30……ヒック」
うむ、今なら誰でもこのおっさんをお持ち帰りが出来そうなくらい、完璧にベロンベロンだ。あんまり飲ませるとアルコール中毒になりそうで怖い。大体話も聞けたし、もう解放してあげよう。
「あー、もう帰らないと! おじさんありがとうね!」
「おう、気……を付けてか……えるんだ……ぞ」
おっさんが力尽きてテーブルで寝てしまったので、俺はテーブルを後にした。
結構長い時間いた気がするが、店員にとやかく言われる事はなかった。まあ、ちょくちょく食べ物も頼んでいたってのもあるし、色々寛容な店なんだろうな。
さて、次の目標はっと――
「あぁ、そうだ! 魔道は一日にしてならずなんだ!」
「そうなんだー。ささ、飲んでお兄さん」
「おう! 悪いな僕。お父さんが可哀想だが仕方ないな! ははは」
今度は見るからに魔法を使いそうな兄ちゃんに、酒を飲ませて喋らせる作戦を仕掛けてみたのだが、まんまと嵌まってくれる。
一人でいる奴らは皆話し相手が欲しいんだろう。ボッチの悲しい習性なんだろうか?
「んで、魔法の覚え方だけど――」
ランドル君(二十一歳)はゴールドランクの冒険者だ。彼は貴族の五男坊なのだが、家督争いに参加することもなく、子供の頃から開花した魔法技能を使って冒険者として生きている。
最近は同じパーティーの女冒険者に恋心を抱いているようだ。
相手は戦士らしいので、さっきキャスの剣を買った店を紹介してみたところ、彼は「その手があったか……」なんてしきりに感心している。いくら酔っているからといって、十歳児に女の落とし方を聞くのはどうかと思うけど。
まあ、顔も良いし金も持ってそうだから、彼は良い物件だと思う。
いつの間にか酔い潰れていたランドルを店の人に任せて席を立つ。
魔法使いで尚且つ高ランク冒険者の話が聞けたのは物凄く幸運だった。俺が知りたいと思っていた事の大部分は知る事が出来たし。
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