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第九章 戦役
三十一話 無双
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万の兵を従えて草原を走る私は、自然と笑みがこぼれるほど上機嫌だった。
これまで通過してきた街では、私の名前を出せば兵が集まった。
彼らは戦に敗れ一度は捕虜となった私にまだ期待を持ってくれている。
これを喜ばずにはいられなかった。
この進軍で一つ不満を言えば、本来の目的であった村に人間がいない事。
どうやら、私達の動きを捉えた何者かが触れ回ったらしい。
これではあの男に僅かながらの復讐もできない。
兵数が膨れ上がり、行軍に時間がかかるようになったのだから、それは仕方がないと分かってる。
でも、ラングネル公国などに組みした裏切り者の輩には、私の手で持って罰を与えたかった。
それでも、村を焼いていれば少しは気分が晴れていた。
住まいを追われた民草がどうなるかの答えは明白だからだ。
ラングネルの地で起きた独立運動は、情報としてある程度知っている。
エゼル軍がまだ到達する前に、地域を支配していた者たちを排除できたのだから、必ずあの男が関わっているはずだ。
どうせ以前のようなドラゴンを使うなどの汚い手段を用いたのでしょうけど。
先日ようやく逃げる民草の姿を捉えた。
民草は私達の姿を見ると必死に走り、私達が野営をしている間も逃げていた。
私はそんな彼らを慈しみ、リンチにはギリギリまで追い込みをかけろと命令をした。
「畏まりました、姫様。明日にはあの者たちは走れなくなるでしょう。それにしましても、今日一日移動していたというのに、民草の足腰は強いですな。老人もまだ追い付いているようです」
リンチの言葉に私は愛想笑いで応えた。
私の体を舐め回すような視線は不快だが、小父様を失ってから初めて私の心を穏やかにした相手だ。少しぐらいは愛想を良くしてもと思えた。
夜営から一夜明け、行軍を再開した私達の前からは、あの民草は消えていた。
でも、すぐに偵察部隊が民草の発見を報告した。
「エゼルに攻め込む前に、裏切り者に罰を与えましょう。リンチ、それで良いですね?」
「もちろんでございます。姫様の望まれるように我々は動きましょう」
万に近い兵が私の考えで動く。これでこそ王族として正しい私なのだと肯定された気がした。
あの男に敗れてから味わっていない感覚。
たった一度の敗北であの男に奪われた感覚。
それを取り戻せた気がして私は甘美な感覚を覚えた。
逃げる民草を追いながら私は笑っていた。
その事を一番の側近に指摘されたが、何が悪いのだろう?
あの民草を苦しめれば、あの男が苦しむ。そんな事も理解できないようであれば、これはもういらない。今夜にでもリンチに与えて、少しは彼の労をねぎらうのも上に立つ人間として必要だろう。
民草を追ってから数時間すると偵察隊から報告があった。
「現在追っている民の前方にも、他の村の民がいるようです」
「まあ、それは喜ばしい事ですね。速度を上げないと逃しそうなのですか?」
「いえ、民はほぼ全員が徒歩です。その心配はないかと思います」
「ならこのまま追いましょう。あと一時間もあれば追いついてしまうのですから、ゆっくりで良いです。急いでも、後方の歩兵部隊が追いつきませんからね」
私の命令に私の兵士たちが従った。
私はまた笑いながら民草を追いかける。
それからしばらくすると、何故か亜人の群れが前方に現れた。
突然現れた数千におよぶ亜人の群れに、私の兵士たちがざわめき立った。
その気持ちは私も分かる。
千を超える亜人の群れなんて、昔話でしか聞いた事がない。
しかし、数は圧倒的にこちらが上。
ならば、ここは是非利用させてもらおう。
あの亜人の群れを討てれば、今回の出兵の正当性を生み出せる。
村を焼いた事も、これから多くの裏切り者を殺すのも、すべて亜人の仕業にすればいい。
それにあの亜人の群れを滅ぼせば、私を捨てようとした父も認めざるを得ないだろう。
そう、エゼルを攻めると言った建前も、全ては亜人を討つ兵を動かすための方便だったとすればいい。
ふふっ、どうやら私の運命も好転しだしたようね。
でも、民草が亜人に殺された事だけは残念。
私は心の中は上機嫌で、しかし表情は厳しく兵士たちに命令を下した。
「貴方達、落ち着きなさい! 今から我軍は亜人討伐を行います! 数は圧倒的にこちらが上だと兵士たちを鼓舞なさい!」
私の命令は即座に伝達され、私たちは戦闘態勢で亜人を迎え撃つことになった。
だが、亜人は逃走を開始してしまった。
亜人は愚かな存在だと思っていたけど、これほどの戦力差があればそれは正しい。
あれ程の規模の群れだから、それを率いる主も馬鹿ではないのだろう。
「リンチ、追いなさいっ!」
「はっ! 貴様ら、姫様は追撃を所望だ! 追えっ!」
逃げる亜人は手ごわかった。
恐ろしく統制の取れた動きを見せ、後退をしているのにそれほど数を減らせていない。
一匹一匹があり得ないほどまともな装備を身につけており、群れで最弱であろうゴブリンでさえも、金属製の武器防具を身に着けている。
その事を気にかけたのは私だけではなく、隣で並走するリンチが言った。
「姫様……これは亜人の王が誕生した可能性があります。決して油断なきよう」
「貴方もそう思ったのね。しかし、それなら私達には好都合。そうですよね?」
「……事は簡単には行かぬでしょうが、これ程の数を討伐出来たならば確かにそうですな。これが終わり次第、事前に情報を得ていた事を事実といたしましょう」
「期待しているわ、リンチ」
追う形の私達は確実に敵の数を減らしていた。
これならば、大した損害もなく後数時間もあれば勝てそうだと、私はほくそ笑んでいた。
だが、それからすぐそんな私の笑顔が消えた。
突然前方で雷のような光と音が連続すると、前方からは兵士達の悲鳴が聞こえ、その直後ドラゴンが現れたのだ。
私の兵士達がドラゴンのブレスで空に舞った。
その数は全体から見れば一割にも満たない程度。
だけど、ドラゴンが現れた結果、私の兵士達の前進が止まってしまった。
「亜人の次はドラゴンだと!? この土地は一体何なのだ!」
リンチが驚き声を上げ、彼の側近達が慌ただしく動き出している。
そんな中、私は可能性が頭をよぎり、自然と息が荒くなっていた。
焦る私は近くにいた兵士に思わず声をかけていた。
「現れたのはド、ドラゴンだけなのですね!?」
「ま、まだ状況の確認は取れていません! 今すぐ伝令を前に出します!」
そう答えたリンチの側近が伝令に指示を出し程なくすると、私の心を揺らす事態が告げられた。
「報告します! 何者かが現れ、一瞬で騎兵数百を失いました! また、亜人が逃亡を止め反転しました!」
「何者とは何なのですか!? 詳細を伝えなさい!」
「しょ、正体は不明です! ですが、その者の頭上にドラゴンが待機しているとの報告を受けています!」
私は伝令の言葉を聞き、体が冷えていく事を感じていた。
ありえない。あの男がこの場所に現れる事はありえない。
あの男は王都近くの街で講和に参加しているはず。
たとえドラゴンに乗ったとしても、あの場所からここまで何日かかると……
それにどうやって私達の動きを把握したというの!?
私があの男が現れた可能性に思考を奪われていると、誰かが叫んだ。
「ド、ドラゴンがまたブレスを!!」
「お、おい、逃げろ!」
その声に夢から覚めたかのように顔を上げると、翼を大きく広げたドラゴンが、こちらに向かってブレスを吐き出した。
幸いなことにブレスは私達の下へは届かなかったが、それでもまた私の兵士達が四散しながら惨たらしく空に舞ったのが見えた。
「姫様っ! 私達は一度下がりますぞ! 貴様ら、姫様をお連れしろ!」
リンチがそう言ったのが聞こえた。だけど、私はどこか他人事のように感じていて、思考が定まらない。そんな私を見たリンチの側近達が動き出し、私は側近達に囲まれながら後方に移動を開始した。
後方に移動してからしばらくすると、リンチが癇癪を起こしたかのように叫んだ。
「何を一人の男に手こずっている! 近付かせるな! 貴様らっ、全力を持って阻止しろ!」
「リ、リンチ様っ! 先程送り込んだ近衛兵が、ぜ、全滅いたしました!」
「はぁ……? な、何の冗談だ! 精鋭中の精鋭である近衛がこんな短時間でやられるか! 将軍相手でもそんな事はありえんのだぞ!」
いつの間にか近衛兵まで投入していたらしい。
そんな事を把握出来ないほど、私の心はざわついていて意識を奪われていた。
「リ、リンチッ、状況は!?」
「姫様……状況はかんばしく――」
ハッと息を飲みながらリンチに話しかけ、彼が返事をしようとし時、突然遠くから声が聞こえてきた。
「セラフィーナッ! そこにいるのは分かってるんだ。早く出てきたらどうなんだ?」
忘れもしないあの男の声に、私は自分でも驚くほど体を震わせ恐怖した。
◆
「い、行かせるかっ! てりゃああああっ!」
ヴィートのうろこを鎧の一部にした男が、剣を片手に突っ込んできた。
俺はそいつの振り下ろしてきた剣を【魔道士の盾】の障壁で弾き返すと、【穀霊の篭手】の爪を伸ばした状態で顔面を殴った。三十センチはある爪が、グチャリと何の抵抗もなく突き刺さる。そいつは一瞬ビクリと体を震わせると、力なく地面に倒れた。
「ダ、ダミアスッ! き、貴様あああっ!」
俺がヴィートのうろこを回収する為、ダミアスとやらの死体から鎧を剥ぎ取っていると、彼の死で激怒した仲間が襲い掛かってきた。
そいつらもヴィートのうろこを鎧の一部としている。俺は遠慮なく【テンペスト】と投擲で彼らを排除していく。
大体三十人ほどを殺す頃には、俺の周囲にヴィートのうろこを持つ奴はいなくなっていた。
辺りが血肉と臓物であふれる中、地面に倒れ込み怯える瞳で俺を見る敵兵に話しかけた。
「なあ、もう古竜のうろこを持つ者はいないか? 教えてくれれば苦しませない事は約束してやるから、言ってみろ」
戦いで心が激しく高揚しているが、思った以上に冷静に声が出せていた。
「こ、殺さないでくれ!」
「黙れ、余計な事は言うな。喋って俺に一瞬で殺されるのと、後ろにいる亜人たちに惨たらしく殺されるのはどちらが良いかと聞いてるんだ」
「お、お前は何なんだ!? まさか、亜人を率いているのか!? ま、まお――」
「はぁ……もういいわ。お前はあいつらの糧となれ」
一向に喋る様子がない敵兵の足にナイフを投擲した。これであいつは逃げる事も出来ず、後ろから近付いてきているゴブリン達の経験値となってくれるだろう。
俺がシーレッド軍に突っ込んでからどれぐらいの時間が経っただろうか、戦いに集中しすぎて、もう時間の感覚がなくなっている。
だが、身体中を赤く染めている返り血の一部が固まってきているのを見れば、それなりの時間戦っていた事は分かった。
つい先程まで襲い掛かってきた敵兵は、今は俺を遠巻きに囲むだけになってしまった。
自分の周りを見れば、数百人の死体があるのだから、それも当たり前か。
ならばこのまま前進をして敵を殺し続け、兵士達を率いているであろうあの女を捕まえるか。
俺がゆっくりと足をすすめると、それに応じて敵兵が後退をした。
俺が進めば進むほど、透明な壁でもそこにあるかのように、敵兵が押し出されるように下がっていく。
襲ってこられるのは面倒くさいが、これはこれでまた面倒くさいな。
若干の苛立ちを感じながらも、この軍を率いている奴らがいそうな方向へと足を進めていると、またそれなりに実力のありそうな奴らが、一般兵をかき分けながら俺の前に並んだ。
統一された鎧とマントに身を包んだそいつらは、油断なく俺を睨みつけると、その中の一人が大声で喋りだした。
「我々が出る羽目になるとは、全くなさけない奴らだ! 貴様らは下がって我々の戦いを見ていろ!」
どうやらあの声は、俺にではなく味方に対して言ったらしい。ここからでも見える偉そうな表情が癇に障る。
俺が思わず声を張り上げた男にナイフと投擲すると、意識を後方の味方に向けていた男がちょうど俺に振り返り、ナイフが見事に眉間に突き刺さり、崩れ落ちるように地面に倒れた。
「た、隊長!?」
あれが隊長か。はぁ、アホらしすぎて緊張感ってやつが消えそうだわ……
激怒した鎧マントの奴らが、盾を前方に掲げ自分の体を隠しながらこちらに向かってきた。
その動きは良い鎧を着ているだけあって悪くない。投擲スキルレベルが4程度だった頃の俺なら、二十人近くに迫られたら対処が出来なかっただろう。
だが今は違う。あんなものは的でしかかない。
俺は右手に握っていた【テンペスト】を一度収納すると、そこには鉄の槍を取り出した。
「注意しろ! 奴はあれを投擲するぞ!」
俺の動きを見ていた敵兵が、鎧マントに注意を促した。
鎧マントたちも盾を持つ手に力を込めたようだ。
「ハハッ! それで防げるとでも思ったのか!?」
自然と湧き出た笑いをこぼしながら、俺は全身を使って槍を投擲する。
二メートル近い鉄の槍が唸りを上げながら飛んでいく。
標的とした先頭にいた鎧マントが足を止め、腰を落として盾を構えた。
その瞬間、鐘を突いたかのような金属と金属がぶつかった衝撃音が木霊する。
後方からゴブリン達とシーレッド兵が戦う音が聞こえる中、俺の周囲は誰もが息を呑み、槍の行方を見守っていた。
「ふんっ、大した事ない。防がれているではないか!?」
槍を受けた奴の後方にいた鎧マントが、嬉しそうに俺を見るとそんな言葉を発した。
確かに槍は防がれた。盾を受けた奴は、後方の兵士を守ったからだ。
俺の投擲で一度足を止めた鎧マント達がまた動き出そうとした。
しかし、一向に動きを見せない俺の槍を受けた先頭の男を不審に思ったのか、一人の男がそいつの前方に出るとそこで立ち止まった。
「なっ、何だと!? こ、これほどの投擲術があるのか……!?」
俺の投擲した槍は鉄製であろう盾を貫通して鎧を突き破り、鎧マントを貫いていた。
だが、流石に勢いが落ちたのか、背中側までは突き破れなかったようだ。
見た目重視の盾だから貫通出来たのだろう。
しかし、この感じならば近い内に普通の盾でも問題なくやれそうだ。
あぁ、ルーンメタルの槍ならば今でもいけるな。
それなりに凄い事をした気がするが、冷静に分析が出来ていると、先程驚いていた男が俺を見つめて言った。
「待て……まさかあれは、エゼルの魔槍……?」
その言葉で鎧マント達の表情に驚きと怯えが走った。
「何故奴がいるのだ!? 話が違うぞ!」
「しょ、将軍たちを一人で殺し回ったっていうあれだろ……? む、無理だろ!?」
俺の正体が分かると先程まで厳しいながらも余裕のある表情を見せていた鎧マント達が、一般兵同様にジリジリと後退をしはじめた。
あの様子では魔槍の名はシーレッドでは相当悪い方向で広がっているみたいだな。
いつの間にか受け入れていた二つ名が一人歩きしているのは微妙な感覚だが、それで敵が狼狽えるならば良しとするか。
俺はそんな奴らを見渡しながら、わざとらしく口角を釣り上げ言った。
「俺の正体が分かったなら、大人しくその生命を差し出せ。今ならば俺が苦痛を与えずに土に返してやる。それが嫌ならば、苦痛を持って亜人達の糧となれ。どちらにせよお前達の運命は死あるのみだ……」
敵の混乱を生み出そうと、魔槍の名に似合うであろう言葉を吐き出した。
それは俺の思ってた以上に効果的で、俺の周囲を囲んでいたシーレッド兵達が何もしていないのにザザッと数歩後退した。
「お前達、俺の槍から逃げられると思ったのか!?」
再度脅しの言葉を発しながら、今度は俺が鎧マント達の下へと突撃をする。
奴らは恐怖の表情を見せながらも、気合を振り絞ると俺へと果敢に向かってきた。
そんな奴らを殺し続ける。殺して殺して殺し続ける。
無心で殺し続けていると、また俺の周りは死体だらけになっていた。
「……これはやり過ぎたか?」
返り血を拭いながら、俺は自分のしてしまった事を反省していた。
あれは亜人達の経験値で、俺が全員を殺す必要はないのだったと。
俺は大分背後に迫ってきた亜人達の気配を感じながら、いつの間にか上空から援護してくれていたポッポちゃんに軽く手を振ると、前進して俺の探知スキル圏内に入ったあの女に向けて言った。
「セラフィーナッ! そこにいるのは分かってるんだ。早く出てきたらどうなんだ?」
これまで通過してきた街では、私の名前を出せば兵が集まった。
彼らは戦に敗れ一度は捕虜となった私にまだ期待を持ってくれている。
これを喜ばずにはいられなかった。
この進軍で一つ不満を言えば、本来の目的であった村に人間がいない事。
どうやら、私達の動きを捉えた何者かが触れ回ったらしい。
これではあの男に僅かながらの復讐もできない。
兵数が膨れ上がり、行軍に時間がかかるようになったのだから、それは仕方がないと分かってる。
でも、ラングネル公国などに組みした裏切り者の輩には、私の手で持って罰を与えたかった。
それでも、村を焼いていれば少しは気分が晴れていた。
住まいを追われた民草がどうなるかの答えは明白だからだ。
ラングネルの地で起きた独立運動は、情報としてある程度知っている。
エゼル軍がまだ到達する前に、地域を支配していた者たちを排除できたのだから、必ずあの男が関わっているはずだ。
どうせ以前のようなドラゴンを使うなどの汚い手段を用いたのでしょうけど。
先日ようやく逃げる民草の姿を捉えた。
民草は私達の姿を見ると必死に走り、私達が野営をしている間も逃げていた。
私はそんな彼らを慈しみ、リンチにはギリギリまで追い込みをかけろと命令をした。
「畏まりました、姫様。明日にはあの者たちは走れなくなるでしょう。それにしましても、今日一日移動していたというのに、民草の足腰は強いですな。老人もまだ追い付いているようです」
リンチの言葉に私は愛想笑いで応えた。
私の体を舐め回すような視線は不快だが、小父様を失ってから初めて私の心を穏やかにした相手だ。少しぐらいは愛想を良くしてもと思えた。
夜営から一夜明け、行軍を再開した私達の前からは、あの民草は消えていた。
でも、すぐに偵察部隊が民草の発見を報告した。
「エゼルに攻め込む前に、裏切り者に罰を与えましょう。リンチ、それで良いですね?」
「もちろんでございます。姫様の望まれるように我々は動きましょう」
万に近い兵が私の考えで動く。これでこそ王族として正しい私なのだと肯定された気がした。
あの男に敗れてから味わっていない感覚。
たった一度の敗北であの男に奪われた感覚。
それを取り戻せた気がして私は甘美な感覚を覚えた。
逃げる民草を追いながら私は笑っていた。
その事を一番の側近に指摘されたが、何が悪いのだろう?
あの民草を苦しめれば、あの男が苦しむ。そんな事も理解できないようであれば、これはもういらない。今夜にでもリンチに与えて、少しは彼の労をねぎらうのも上に立つ人間として必要だろう。
民草を追ってから数時間すると偵察隊から報告があった。
「現在追っている民の前方にも、他の村の民がいるようです」
「まあ、それは喜ばしい事ですね。速度を上げないと逃しそうなのですか?」
「いえ、民はほぼ全員が徒歩です。その心配はないかと思います」
「ならこのまま追いましょう。あと一時間もあれば追いついてしまうのですから、ゆっくりで良いです。急いでも、後方の歩兵部隊が追いつきませんからね」
私の命令に私の兵士たちが従った。
私はまた笑いながら民草を追いかける。
それからしばらくすると、何故か亜人の群れが前方に現れた。
突然現れた数千におよぶ亜人の群れに、私の兵士たちがざわめき立った。
その気持ちは私も分かる。
千を超える亜人の群れなんて、昔話でしか聞いた事がない。
しかし、数は圧倒的にこちらが上。
ならば、ここは是非利用させてもらおう。
あの亜人の群れを討てれば、今回の出兵の正当性を生み出せる。
村を焼いた事も、これから多くの裏切り者を殺すのも、すべて亜人の仕業にすればいい。
それにあの亜人の群れを滅ぼせば、私を捨てようとした父も認めざるを得ないだろう。
そう、エゼルを攻めると言った建前も、全ては亜人を討つ兵を動かすための方便だったとすればいい。
ふふっ、どうやら私の運命も好転しだしたようね。
でも、民草が亜人に殺された事だけは残念。
私は心の中は上機嫌で、しかし表情は厳しく兵士たちに命令を下した。
「貴方達、落ち着きなさい! 今から我軍は亜人討伐を行います! 数は圧倒的にこちらが上だと兵士たちを鼓舞なさい!」
私の命令は即座に伝達され、私たちは戦闘態勢で亜人を迎え撃つことになった。
だが、亜人は逃走を開始してしまった。
亜人は愚かな存在だと思っていたけど、これほどの戦力差があればそれは正しい。
あれ程の規模の群れだから、それを率いる主も馬鹿ではないのだろう。
「リンチ、追いなさいっ!」
「はっ! 貴様ら、姫様は追撃を所望だ! 追えっ!」
逃げる亜人は手ごわかった。
恐ろしく統制の取れた動きを見せ、後退をしているのにそれほど数を減らせていない。
一匹一匹があり得ないほどまともな装備を身につけており、群れで最弱であろうゴブリンでさえも、金属製の武器防具を身に着けている。
その事を気にかけたのは私だけではなく、隣で並走するリンチが言った。
「姫様……これは亜人の王が誕生した可能性があります。決して油断なきよう」
「貴方もそう思ったのね。しかし、それなら私達には好都合。そうですよね?」
「……事は簡単には行かぬでしょうが、これ程の数を討伐出来たならば確かにそうですな。これが終わり次第、事前に情報を得ていた事を事実といたしましょう」
「期待しているわ、リンチ」
追う形の私達は確実に敵の数を減らしていた。
これならば、大した損害もなく後数時間もあれば勝てそうだと、私はほくそ笑んでいた。
だが、それからすぐそんな私の笑顔が消えた。
突然前方で雷のような光と音が連続すると、前方からは兵士達の悲鳴が聞こえ、その直後ドラゴンが現れたのだ。
私の兵士達がドラゴンのブレスで空に舞った。
その数は全体から見れば一割にも満たない程度。
だけど、ドラゴンが現れた結果、私の兵士達の前進が止まってしまった。
「亜人の次はドラゴンだと!? この土地は一体何なのだ!」
リンチが驚き声を上げ、彼の側近達が慌ただしく動き出している。
そんな中、私は可能性が頭をよぎり、自然と息が荒くなっていた。
焦る私は近くにいた兵士に思わず声をかけていた。
「現れたのはド、ドラゴンだけなのですね!?」
「ま、まだ状況の確認は取れていません! 今すぐ伝令を前に出します!」
そう答えたリンチの側近が伝令に指示を出し程なくすると、私の心を揺らす事態が告げられた。
「報告します! 何者かが現れ、一瞬で騎兵数百を失いました! また、亜人が逃亡を止め反転しました!」
「何者とは何なのですか!? 詳細を伝えなさい!」
「しょ、正体は不明です! ですが、その者の頭上にドラゴンが待機しているとの報告を受けています!」
私は伝令の言葉を聞き、体が冷えていく事を感じていた。
ありえない。あの男がこの場所に現れる事はありえない。
あの男は王都近くの街で講和に参加しているはず。
たとえドラゴンに乗ったとしても、あの場所からここまで何日かかると……
それにどうやって私達の動きを把握したというの!?
私があの男が現れた可能性に思考を奪われていると、誰かが叫んだ。
「ド、ドラゴンがまたブレスを!!」
「お、おい、逃げろ!」
その声に夢から覚めたかのように顔を上げると、翼を大きく広げたドラゴンが、こちらに向かってブレスを吐き出した。
幸いなことにブレスは私達の下へは届かなかったが、それでもまた私の兵士達が四散しながら惨たらしく空に舞ったのが見えた。
「姫様っ! 私達は一度下がりますぞ! 貴様ら、姫様をお連れしろ!」
リンチがそう言ったのが聞こえた。だけど、私はどこか他人事のように感じていて、思考が定まらない。そんな私を見たリンチの側近達が動き出し、私は側近達に囲まれながら後方に移動を開始した。
後方に移動してからしばらくすると、リンチが癇癪を起こしたかのように叫んだ。
「何を一人の男に手こずっている! 近付かせるな! 貴様らっ、全力を持って阻止しろ!」
「リ、リンチ様っ! 先程送り込んだ近衛兵が、ぜ、全滅いたしました!」
「はぁ……? な、何の冗談だ! 精鋭中の精鋭である近衛がこんな短時間でやられるか! 将軍相手でもそんな事はありえんのだぞ!」
いつの間にか近衛兵まで投入していたらしい。
そんな事を把握出来ないほど、私の心はざわついていて意識を奪われていた。
「リ、リンチッ、状況は!?」
「姫様……状況はかんばしく――」
ハッと息を飲みながらリンチに話しかけ、彼が返事をしようとし時、突然遠くから声が聞こえてきた。
「セラフィーナッ! そこにいるのは分かってるんだ。早く出てきたらどうなんだ?」
忘れもしないあの男の声に、私は自分でも驚くほど体を震わせ恐怖した。
◆
「い、行かせるかっ! てりゃああああっ!」
ヴィートのうろこを鎧の一部にした男が、剣を片手に突っ込んできた。
俺はそいつの振り下ろしてきた剣を【魔道士の盾】の障壁で弾き返すと、【穀霊の篭手】の爪を伸ばした状態で顔面を殴った。三十センチはある爪が、グチャリと何の抵抗もなく突き刺さる。そいつは一瞬ビクリと体を震わせると、力なく地面に倒れた。
「ダ、ダミアスッ! き、貴様あああっ!」
俺がヴィートのうろこを回収する為、ダミアスとやらの死体から鎧を剥ぎ取っていると、彼の死で激怒した仲間が襲い掛かってきた。
そいつらもヴィートのうろこを鎧の一部としている。俺は遠慮なく【テンペスト】と投擲で彼らを排除していく。
大体三十人ほどを殺す頃には、俺の周囲にヴィートのうろこを持つ奴はいなくなっていた。
辺りが血肉と臓物であふれる中、地面に倒れ込み怯える瞳で俺を見る敵兵に話しかけた。
「なあ、もう古竜のうろこを持つ者はいないか? 教えてくれれば苦しませない事は約束してやるから、言ってみろ」
戦いで心が激しく高揚しているが、思った以上に冷静に声が出せていた。
「こ、殺さないでくれ!」
「黙れ、余計な事は言うな。喋って俺に一瞬で殺されるのと、後ろにいる亜人たちに惨たらしく殺されるのはどちらが良いかと聞いてるんだ」
「お、お前は何なんだ!? まさか、亜人を率いているのか!? ま、まお――」
「はぁ……もういいわ。お前はあいつらの糧となれ」
一向に喋る様子がない敵兵の足にナイフを投擲した。これであいつは逃げる事も出来ず、後ろから近付いてきているゴブリン達の経験値となってくれるだろう。
俺がシーレッド軍に突っ込んでからどれぐらいの時間が経っただろうか、戦いに集中しすぎて、もう時間の感覚がなくなっている。
だが、身体中を赤く染めている返り血の一部が固まってきているのを見れば、それなりの時間戦っていた事は分かった。
つい先程まで襲い掛かってきた敵兵は、今は俺を遠巻きに囲むだけになってしまった。
自分の周りを見れば、数百人の死体があるのだから、それも当たり前か。
ならばこのまま前進をして敵を殺し続け、兵士達を率いているであろうあの女を捕まえるか。
俺がゆっくりと足をすすめると、それに応じて敵兵が後退をした。
俺が進めば進むほど、透明な壁でもそこにあるかのように、敵兵が押し出されるように下がっていく。
襲ってこられるのは面倒くさいが、これはこれでまた面倒くさいな。
若干の苛立ちを感じながらも、この軍を率いている奴らがいそうな方向へと足を進めていると、またそれなりに実力のありそうな奴らが、一般兵をかき分けながら俺の前に並んだ。
統一された鎧とマントに身を包んだそいつらは、油断なく俺を睨みつけると、その中の一人が大声で喋りだした。
「我々が出る羽目になるとは、全くなさけない奴らだ! 貴様らは下がって我々の戦いを見ていろ!」
どうやらあの声は、俺にではなく味方に対して言ったらしい。ここからでも見える偉そうな表情が癇に障る。
俺が思わず声を張り上げた男にナイフと投擲すると、意識を後方の味方に向けていた男がちょうど俺に振り返り、ナイフが見事に眉間に突き刺さり、崩れ落ちるように地面に倒れた。
「た、隊長!?」
あれが隊長か。はぁ、アホらしすぎて緊張感ってやつが消えそうだわ……
激怒した鎧マントの奴らが、盾を前方に掲げ自分の体を隠しながらこちらに向かってきた。
その動きは良い鎧を着ているだけあって悪くない。投擲スキルレベルが4程度だった頃の俺なら、二十人近くに迫られたら対処が出来なかっただろう。
だが今は違う。あんなものは的でしかかない。
俺は右手に握っていた【テンペスト】を一度収納すると、そこには鉄の槍を取り出した。
「注意しろ! 奴はあれを投擲するぞ!」
俺の動きを見ていた敵兵が、鎧マントに注意を促した。
鎧マントたちも盾を持つ手に力を込めたようだ。
「ハハッ! それで防げるとでも思ったのか!?」
自然と湧き出た笑いをこぼしながら、俺は全身を使って槍を投擲する。
二メートル近い鉄の槍が唸りを上げながら飛んでいく。
標的とした先頭にいた鎧マントが足を止め、腰を落として盾を構えた。
その瞬間、鐘を突いたかのような金属と金属がぶつかった衝撃音が木霊する。
後方からゴブリン達とシーレッド兵が戦う音が聞こえる中、俺の周囲は誰もが息を呑み、槍の行方を見守っていた。
「ふんっ、大した事ない。防がれているではないか!?」
槍を受けた奴の後方にいた鎧マントが、嬉しそうに俺を見るとそんな言葉を発した。
確かに槍は防がれた。盾を受けた奴は、後方の兵士を守ったからだ。
俺の投擲で一度足を止めた鎧マント達がまた動き出そうとした。
しかし、一向に動きを見せない俺の槍を受けた先頭の男を不審に思ったのか、一人の男がそいつの前方に出るとそこで立ち止まった。
「なっ、何だと!? こ、これほどの投擲術があるのか……!?」
俺の投擲した槍は鉄製であろう盾を貫通して鎧を突き破り、鎧マントを貫いていた。
だが、流石に勢いが落ちたのか、背中側までは突き破れなかったようだ。
見た目重視の盾だから貫通出来たのだろう。
しかし、この感じならば近い内に普通の盾でも問題なくやれそうだ。
あぁ、ルーンメタルの槍ならば今でもいけるな。
それなりに凄い事をした気がするが、冷静に分析が出来ていると、先程驚いていた男が俺を見つめて言った。
「待て……まさかあれは、エゼルの魔槍……?」
その言葉で鎧マント達の表情に驚きと怯えが走った。
「何故奴がいるのだ!? 話が違うぞ!」
「しょ、将軍たちを一人で殺し回ったっていうあれだろ……? む、無理だろ!?」
俺の正体が分かると先程まで厳しいながらも余裕のある表情を見せていた鎧マント達が、一般兵同様にジリジリと後退をしはじめた。
あの様子では魔槍の名はシーレッドでは相当悪い方向で広がっているみたいだな。
いつの間にか受け入れていた二つ名が一人歩きしているのは微妙な感覚だが、それで敵が狼狽えるならば良しとするか。
俺はそんな奴らを見渡しながら、わざとらしく口角を釣り上げ言った。
「俺の正体が分かったなら、大人しくその生命を差し出せ。今ならば俺が苦痛を与えずに土に返してやる。それが嫌ならば、苦痛を持って亜人達の糧となれ。どちらにせよお前達の運命は死あるのみだ……」
敵の混乱を生み出そうと、魔槍の名に似合うであろう言葉を吐き出した。
それは俺の思ってた以上に効果的で、俺の周囲を囲んでいたシーレッド兵達が何もしていないのにザザッと数歩後退した。
「お前達、俺の槍から逃げられると思ったのか!?」
再度脅しの言葉を発しながら、今度は俺が鎧マント達の下へと突撃をする。
奴らは恐怖の表情を見せながらも、気合を振り絞ると俺へと果敢に向かってきた。
そんな奴らを殺し続ける。殺して殺して殺し続ける。
無心で殺し続けていると、また俺の周りは死体だらけになっていた。
「……これはやり過ぎたか?」
返り血を拭いながら、俺は自分のしてしまった事を反省していた。
あれは亜人達の経験値で、俺が全員を殺す必要はないのだったと。
俺は大分背後に迫ってきた亜人達の気配を感じながら、いつの間にか上空から援護してくれていたポッポちゃんに軽く手を振ると、前進して俺の探知スキル圏内に入ったあの女に向けて言った。
「セラフィーナッ! そこにいるのは分かってるんだ。早く出てきたらどうなんだ?」
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