アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

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第七章 風雲

四話 勇者の狙い

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 大神殿の外でアニアを待っていると、結構スッキリした顔をしたアニアがやってきた。
 その後ろには勇者の姿が見えるが、頭を下げながら平謝りをしている。

「ッ! ゼン様っ!?」
「おっ! おぉ…………久しぶりだな。随分綺麗になったな」

 ローブを被った後ろ姿と声しか聞いていなかったので、頭の中のアニアは以前と変わらない姿だった。
 だが、実際に目の前に現れると、その成長に驚いた。
 可愛らしい容姿のアニアは、成長してもその雰囲気は変わっていないが、背が少し伸び、髪も伸びていて顔つきも大人びてきている。
 そんなアニアに俺は、一瞬思考が止まるほど見惚れてしまった。

「ゼン様っ!」

 驚いた顔のまま、アニアがこちらに駆けてきた。そのままの勢いで突っ込んできたので、手を広げ迎え入れ抱きしめる。
 両手を俺の背中に回したアニアが、力強く抱きしめてくる。俺はそれを心地よく感じながら、少しかがんでアニアの首元に顔を埋めた。

「あれ? 何だか身長差ができてます?」
「みたいだな、俺も結構伸びたからな」
「ふえ~、それにこんなに固かったでしたっけ?」

 成長期なので一年近い時間が開くと、お互い記憶とのずれが出てくるな。
 アニアも俺の成長を感心したように見ているのが面白い。

 ふと視線の先に勇者の顔が入った。
 何故か動揺しているようだ。先程は諦めると言っていたが、もしかして本当はアニアに未練でもあったのだろうか?
 まあ、そうだとしても関係はないので、もう一度アニアを抱きしめる。
 これは……抱き心地がヤバい……胸が……

 ニヤける顔をどうにか抑えながら、鼻の頭が着くほどの距離でアニアと久しぶりの会話を楽しんでいると、今まで黙っていた勇者に声をかけられた。

「ちょっと良いかな? やはり、アニアさんは諦めることができない」
「……そう言われてもな、相手に脈がないのになぜ諦めない。アニアは俺のだ」

 俺はアニアを引き寄せ抱きかかえる。感情が高ぶって、少しだけ強くしてしまい、アニアは驚いた声を上げた。後で謝ろう。

「私も男だからね。勝負をしてくれないか? 勝った方が相手を好きにする戦いだ」
「要するに俺を排除したいってことか?」
「そんな過激なことは考えていないさ。ただ、このまま引き下がれない状態になっただけさ」
「俺に受ける利点がないんだが?」

 元からアニアは俺のだ。賭けの対象にはならない。負ける気はしないが受ける意味はないだろう。

「そうだな、もし君が勝ったら、二度とアニアさんに手を出させないし、今後の活動も父を説得して全面的に支持をさせる」
「……どうなんだアニア?」
「ゼン様が負けるとは思いませんが、その話はもう終わったはずなのです。やる意味はありません」
「そうらしいが?」

 アニアが俺に抱き付きながらそう答えた。エリオットは何かを考えだしたのか目を閉じると、ややあってその目を開き話を再開した。

「なら、私が受け取る予定のスクロールを賭けよう。ダンジョン産で複製はされていないものだ。希少価値はもちろん、名前から推測される効果も期待できる。どうかな?」

 希少価値という言葉に少し興味が惹かれたが、勝ち負け問わずそんなものを得るためにアニアを賭ける気はない。
 俺はそれを断ろうとしたのだが、俺を見上げたアニアに服を引かれた。
 なんだと思い視線を落としてアニアを見ると、笑顔のアニアが口を開いた。

「やりましょう、ゼン様」
「えっ……? やんの?」
「はい、オッズ百パーセントの勝負なのです。やらない方が損なのです!」

 アニアが俺を信じているのは嬉しいが、自分が賭けの対象になることは気にしないのか?

「俺はアニアを賭けの対象にしたくないんだがな」
「負けないのですから良いのです。それよりスクロールの方が大事なのです!」

 俺はアニアの方が大事なんだが……
 でも本人は引く気がなさそうだぞ。

「……本気なんだな?」
「絶対に欲しいのです。だってアレがあればゼン様の役に立てるから」

 なるほど、アニアは何か知っていて、それが欲しいのか。でもなあ……

「勇者様、ゼン様は受けるそうです。条件をお願いします」
「アニア……」

 俺を押しのけてまでなのかよ。仕方がねえ、アニアが欲しいならやるしかないか。

「えっと、ゼン君だっけ? アニアさんのやる気は止まらないみたいだよ?」

 イケメン勇者がニヤリと笑い、俺を見る。
 奴は俺を品定めするように下から上へと視線をはわした。
 今から俺の戦力を図ってるのか?

「分かった。やろうじゃないか」

 俺のその言葉を聞いた勇者は、パァと嬉しそうな笑顔を浮かべると、ウキウキといった表情でこちらに近づいてきた。
 くっ、近いんだよ。アニアに近づくな!


「これで、勝った方が相手を好きにすることと、俺の方はスクロールを得られるんだな。しかし、アニアをどうこうするという契約をしなかったのは、男として良いと思うぞ」

 勝利した方がアニアを好きにするだったら、俺は最後の最後で断っただろうからな。その点はこの男を評価できる。

「はは、そうかい? でも、こちらが出した条件を飲んでくれてありがとう。これで私も力を奮えるよ」

 勇者が出した条件とは、五対五の戦いを行うことだ。殺しはなしなので鉄製の刃を潰した武器を使う。
 立会人に神殿のトップを呼ぶらしい。
 アウェー感が漂うが、神の契約の下の戦いになるので、不正はないだろうとアニアは言っている。
 この一年で内部情報も得ているだろうから、情報の信頼性は高いだろう。

「でもこれじゃあ、アーティファクトが使えませんね。ゼン様なら問題ないでしょうけど」
「大した問題じゃないだろ。武器以外は良いんだから、他のものは使うし。それに、あの条件じゃなきゃ、負けた後にいちゃもん付けられても困る」
「確かに勇者様のアーティファクトは、そういう物ですからね」

 勇者エリオットのアーティファクト【祝福の外套】は、タイプ的にはエアの盾に近い。話に聞く限りでは自身や味方を強化する魔法の威力を上げる物だと言う。
 彼が出した条件は、彼が力を振るうのに必要な条件でもあった。
 そのことは俺は知っていたので許可を出した。
 後で全力ではなかったなどの文句を言われても嫌だからだ。

「じゃあ、ゆっくり戻ろうか」

 俺が歩きだそうとアニアの手を握ると、アニアは自分の身体を俺に押し当てて、残るもう片方の腕も絡ませてくる。
 嬉しそうなその笑顔を見ると、凄まじい幸福感に包まれる。そして、二人きりになり密着していることで湧き上がるアレが、俺の思考を奪っていく。

「アニア……戻る前にどこかに寄ろうか?」
「寄るのですか? あっ……はい……」

 俺の言葉に、一瞬考えたアニアだったが、俺の意図が分かったのか、恥ずかしそうに小さくうなずいた。
 そう言えば部屋を借りていたなと思い出し、その方向へと歩いていく。

 色々あって気が付いたら、窓から見える空は真っ暗になっていた。

「ヤバい……また俺は自制ができなかった……パティたちが心配するぞ……」

 ベッドの上で天井を見上げながら、俺は心から自分に呆れた。
 やってしまった感が凄まじい。だが、一年我慢していたんだ。
 耐えることは不可能だよな?
 それに今更だよな。
 もうアニアは俺のだし、俺はアニアの何だから遠慮はいらないか。

「パティさんなら多分……大丈夫なのです」
「パティなら何とかしてくれそうだけど……ん? パティはこのことを知ってるのか?」
「直接は何も言ってませんが、感づいてはいると思います」

 別に知られたところで問題があることでもないから、気にするまでもないか。

「それより、ゼン様は妙に手慣れてますよね……」
「何だ、浮気でも心配してるのか?」
「私はそれに何かを言うつもりはありませんけど……」
「おいおい、俺の恋人だろ? してたら怒れよ」
「……信じてますから」
「おう、こうして肌を合わせた相手は、まだアニアしかいないぞ。手慣れてるのは……才能だな!」

 前世じゃそれなりの経験をしてるので、喜ばすことぐらいは難しくない。
 しかし、言葉じゃ気にしないと言いながら、少し心配するアニアは可愛いな。

「ずっとこうしていたいですが、そろそろ出る用意しないとなのです」
「長旅をしてきたんだ、一カ月はいるつもりだぞ。だから、二人になる機会は沢山あるさ。よし、風呂はすぐに入れる所だから、入ってから出ようか」

 このレベルの宿になると、男女別々の浴室がある。
 それを少し残念に思いながら身体を清め、部屋で合流して宿を出た。
 いやしかし、アニアは聖地じゃ有名になってきてるのが分かった。
 アニアの顔を見た従業員のお姉さんが、マジで? みたいな顔してたからな。
 最初は女連れ込んだことに驚いているのかと思ったけど、どうやらアニアは顔を知っていたらしい。
 気を利かせてか裏手から出ろとか、顔を隠せとか言われたけど、もちろん堂々と正面から出たさ。
 隠す必要はないし、むしろ俺自体が虫除けになるんだから。
 アニアもそれには同意らしく、家に着くまでずっとくっ付いていた。

 家に戻ると、ユスティーナとポッポちゃんに囲まれたセシリャが、椅子にもたれ掛かり幸せそうな顔をして一緒に寝ていた。
 起きているパティは少し心配をしていたみたいで、一度大神殿に確認をしに行ったらしい。帰らない理由は想像が付いていたみたいで、縫い物をしながら待っていてくれた。
 少しだけ連絡してくれと怒られたので、ここは素直に謝る。
 笑いながら「仕方がないですね」と言うパティが、用意してくれた夕食を取っていると、ユスティーナが起き出してきた。

「パパ~どこ行ってたの?」
「ちょっと用事があったんだ。どうした、おしっこか?」
「ん~ん」
「じゃあ、こっちにおいで」

 まだ眠そうなユスティーナを抱きかかる。昼にも寝ていたので、一度起きたら少しの間は寝られないだろう。

「この子がユスティーナだ。ほら、あれがアニアママだぞ」
「ユスティーナちゃん、初めまして。思ったより大きいのです」

 アニアと初顔合わせのユスティーナは、じーっとアニアの顔を見つめている。笑顔を浮かべるアニアも、少し戸惑った様子だ。
 何も言わないユスティーナは、俺の膝から飛び降りると、体面に座るアニアの方へと歩いていく。そして、軽く飛び上がるとアニアの膝の上へと飛び乗った。

「あれ? まだちょっと赤ちゃん?」

 アニアがそう思うのはおかしくないだろう。成長は早いが見た目より中身が少し幼い。数カ月前はもっと赤ん坊のようだったので、これでも急速に成長しているんだけどね。

「ん~? どうしたのかな? これ食べたいの?」

 アニアが自分の食べている夕食を、スプーンですくいユスティーナの口元へ持っていくと、パクリと咥えて食べている。
 食べ終わったユスティーナは、催促をするようにアニアを見つめると、またスプーンが口元に添えられた。

「ふふ、髪の毛はゼン様と同じで、お耳はポッポちゃんなのです。可愛いなぁ」
「ユスティーナ可愛い?」
「うん、もちろんなのです」
「ユスティーナのこと好きになる?」
「当然なのです!」

 これはあれだな、ジニーに紹介した時に勘違いして怒ったのが影響してるな。事前に会えなかったから仕方がなかったけど、幾ら何でもこんな大きい子が、いきなり娘としてできるはずないと、分かってほしかった。
 まあ、ジニーにそれを言うのも酷か。

「ユスティーナ、今日はアニアと寝るか?」
「うん、一緒に寝る」

 アニアとユスティーナの邂逅は問題なく行われた。心配はしていないつもりだったが、どこか安心した気持ちになったのは、アニアの反応が怖かったのかもしれない。

「じゃあ、そう言うことで頼んだよ。俺は宿屋に戻る」
「宜しければ私のベッドをお使いください」
「女性のベッドを取る気はないよ。料金も払ってるしもったいないからね」

 パティの申し出をやんわり断り、俺は一人で家を出た。


 それから数日が経ち、勝負の日となった。
 アニアの案内で決闘の場所、大神殿近くの訓練所へ向かう。
 俺の隣を緊張した様子もなく歩くアニア。その反対側には何も言わずに続くパティ。

「ほ~ら、食べちゃうぞぉ!」
「きゃああああ!」

 そして、その後ろには、頭の上、耳の間にポッポちゃんを乗せて、ユスティーナに後ろから覆いかぶさり遊んでいるセシリャがいる。
 セシリャの笑顔が眩しい。
 甲斐甲斐しく世話をしてくれるし、楽しそうで何よりだ。

 更にその後ろには今日の勝負を聞き付けて、朝から集まっていた男共の姿がある。どうやら多人数での戦いなので、あわよくば参加して、ここでアニアに顔を売ろうとしたらしい。
 だが、今のアニアは俺の腕をつかんで離れない。多人数の勝負という事以外、何も知らずに来た男連中は、俺へと殺気を込めた視線を送ってくる。
 俺はその視線にこっちを見るなとにらみ返し、少しだけアニアを引き寄せた。

「ご主人様、本当に二人で戦うのですか?」

 パティが後ろから話しかけてきた。その顔は心配よりも、困ったといった様子だ。

「正確には二人と一匹だからね。いや、二人と三匹になるかな? まあ、パティとセシリャに危ないことをさせたくないんだ。本当なら俺一人でやりたいんだけど、アニアが言うことを聞いてくれない」

 俺の返答にパティは少し考えると口を開く。

「アニアはまあ、当事者ですし。それより、三匹ですか……? ポッポちゃんとスノアは分かりますが、また新しいペットを?」
「そんな所だよ。この戦いでお披露目しようかな」

 はぁと気の抜けた返事をしたパティは、一瞬後ろを見たのだが、その視線の先で楽しそうに遊んでいる二人を見て、今度はため息を吐いた。
 大方、セシリャに参戦するように促そうとしたのだろうが、あの姿を見て諦めたな。

「アニア、昨日言ってた防御系の魔法さ、俺が頼んだらすぐ撃てるんだよな?」
「はい、魔法技能レベル2なので、比較的容易なのです」
「じゃあ、俺が合図したら敵全員にかけてあげて」
「ん? 分かりましたけど、何か案が?」
「案と言うか、死なれたら困るからだけどね」
「なるほど! ゼン様は優しいのです!」

 俺が何をするかも分かっていないのに、褒めるのはどうかと思うが、再会してから毎日上機嫌でテンションが高く、何でもヨイショしてくれるので慣れてきてしまった。
 でも考えたら、前からこんな感じだっけか。

 決闘の場となる訓練所には、既に勇者エリオットはおり、周りにいる仲間らしき男たちと、軽く身体を動かしていた。
 俺らに気付いたエリオットが、笑顔を浮かべてこちらに向かってきた。

「やあ、ゼン君。いや、ゼン。今日という日が待ち遠しかったよ」

 軽く汗を浮かべたエリオットが、乱れた髪をかき上げている。顔が良いので絵になるな。
 しかし、急に距離を縮めてきたように感じる。まあ、戦う相手なら遠慮はないか。

「俺はアニアとの時間が減るから、早く終わらせたいよ」
「はは、つれないな。でもそこが良いね。アニアさんも、もちろん戦うんだよね?」
「えぇ、ゼン様の邪魔をしないように、後方にいますが」

 外向けの顔で対応するアニアに、エリオットはにこやかな表情を崩さない。
 勝負を持ちかけるほどだったので、もう少し気落ちすると思ったが、これがイケメンの余裕なのか?

「それではお互い用意ができたらあの場所で。ゼン、楽しみだよ」
「あ、あぁ。よろしくな」

 勝負の前の挨拶なのか、力強く握手をされウインクも受けた。若干の違和感を感じたのだが、もしかして隠している何かの力があるのか?

 離れていくエリオットを確認し、俺らも最後の話し合いをするために、ポッポちゃんを呼び出して寄り添う。

「昨日話し合った通り、アニアとポッポちゃんは後方で待機な。ポッポちゃんはアニアを守ってくれ」
「はい、ポッポちゃんと指示があるまで待機ですね」

 勝負事ではあるが、今回は色々と試したいことがある。少し試して本気を出すが、久しぶりの対人なので良い機会なんだ。

 ポッポちゃんは「やるのよ! やるのよ!」とクルゥと鳴いてやる気満々なのだが、俺の指示には従ってくれるので、アニアに抱かれて大人しくしている。

「所で、あそこにいる人らが大司教と枢機卿か?」
「はい、大司教様はともかく、枢機卿様が来られるとは思いませんでした」

 教皇の位が使われなくなったこの国では、大司教は数人いるのだが、たった一人の枢機卿が実質のトップになる。
 その人物が今回の勝負に興味を持ったのか見学に来ていて、隣に座るエリオットの父親である大司教と会話をしている。
 でも少し様子がおかしいな、大司教の表情が暗い。あれはもしかしたら、お叱り受けてるんじゃないか?

「それじゃあ行くか。さくっと勝ってお昼はアニアの好きなものを食べに行こう」
「そうですね。じゃあ、甘い物なのです」
「それ飯じゃねえよ……だからプニプニするんだぞ?」
「それが良いって言ったのです!」
「確かに!」

 プニプニといっても体型は崩れていない、むしろ付くべき所に付いている、とても良い物だ。でも、少し抑えてくれないと未来は心配だな。

 俺もかなりの場数を踏んでいる。そのため余裕はあり軽口も出る。だが、そろそろ気を引き締めていかないとな。
 俺はパティから受け取った鉄の槍を、スキルの恩恵を使い振り回す。初めて触った武器も、体に馴染み気合も意外と入るものだ。
 それを正面で見ていたエリオットが、ほうっと一言呟いたのが見えた。

 アニアとポッポちゃんを伴い、戦いの場となる広場へ向かう。俺とアニアしか行動しなかったことを不審に思ったのか、エリオットの表情が怪訝な顔に変わった。

「少ないように見えるけど良いのかい?」
「基本的には俺一人で戦う気だからな。もちろん危なくなったら、アニアに助けを求めるから気にしないでくれ」
「……油断を誘うつもりなのか、本気なのか分からないな。でもいいさ、これに勝って君を手に入れる」

 エリオットの視線が熱い。少し怒らせたのだろう。でも何故アニアを見ない。
 えっ……?

 一瞬頭の片隅に何かとても不安になることが浮かんだが、これから戦いのために気持ちを入れ直す。
 気のせいだよな……?

 お互い離れ対峙する。
 こちらは俺を先頭に、後方にアニアが控え、その隣でポッポちゃんがクルックークルックーと、大地を踏みしめ威嚇の舞を見せている。

 対する相手は白を基調とした鎧を着込んだ五人組だ。個別に違いはあれど、基本は同じ作りをしている鎧を着ている。
 その中でも一番上等な物を着込んでいる勇者エリオットは、小ぶりな盾と柄の長いメイスを持っている。
 そして、鎧の上には件のアーティファクトである【祝福の外套】を着ており、白と青の布に金を主体とした豪華な刺繍がその存在感を増している。

「さあ、始めようか」

 エリオットの声と共に、戦いの火蓋が切られた。
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