アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星

文字の大きさ
上 下
100 / 196
第六章 安寧

十一話 頑張る姫様

しおりを挟む
 紫音が思っているのと同じように、ライオネルもこの1ヶ月本当に幸せだった。

 実は紫音がたまにじっと座り込んだりしているのは見た事があったが、紫音自身が心配かけないように隠しているようだったので、見て見ぬ振りをしていた。

 それがこの間はとうとう隠しきれなかったようで執務室で倒れた。

 毎日こっそり回復魔法をかけているが、最近急激にかかりが悪くなった。

 ーーもういよいよ別れの時間が迫っているかとでも言うように。

 認めたくない。
 せっかく心が繋がったようなのに。
 
 何が龍人の血が流れているだ。
 何も役にたたないじゃないか。
 俺は龍人の血が割と濃いらしく、魔力量が人より多いし、生命力も強い。どの種類の回復魔法も得意だ。
 だが、紫音の症状は全く分からない。異世界特有の病なのか。。。


 龍人はかつて番と呼ばれる伴侶がいてお互いその1人だけを愛し続けたという。そして、愛した者を事故等で失うと気が狂ってしまう者も多数いたという。

 今なら理解出来る気がした。

 紫音が現れるまで、恋などしたことがなかったし、そもそも恋愛に興味が無かった。
 それが紫音が現れてから世界が変わった。紫音と過ごす世界は輝いて見えたのだ。

 そんな紫音が失われようとしているなんて狂ってしまいそうだ。

 ……俺は諦めない。

 まだ紫音と会って1年も経って無いのだ、お互い離れていた期間もある。まだまだ一緒に過ごしたい。

 紫音は平気そうにしてるが、体は平気では無いのだろう、日々寝てる時間が増えている。
 俺は紫音の寝ている時間を利用して、あらゆる病気について調べている。早くしないと逝ってしまいそうだから。

 最近紫音の眼差しが申し訳なさと諦めを抱いているように見える。気を使う紫音だから申し訳なさは分かるが、諦めはなぜなのか?
 まさか紫音はこうなる事が分かっていたのだろうか? 

 そして、今日はヤらないかと誘ってきた。

 平常時であれば乗りたいくらいだが、今は少しでも体力を温存してほしい。少しでも時間を稼ぎたいのだ。


 ーー紫音の熱が出始めて2週間が経過した頃。

 紫音の起きている時間が極端に減ってきた。日中は細切れで4時間位しか起きていられないようだ。
 容態が急変してしまわないか怖くて、良くないとは分かっていても、また執務室に連れてソファで寝させるようになった。

 絶望がひしひしと伝わる中でも仕事はしなくてはいけない。
 今日も無言で執務を行なっていると、ルイスが話しかけてきた。

「ライオネル様酷い顔をしていますよ。寝る時間を削って調べ物をしているとうかがいました。少しお休みになられないと、シオン君が心配しますよ」
 
 暫く無言だったが、寝ている紫音をチラッと見た後、ライオネルはポツリと呟く。
「……ダメだ。このままではもう逝ってしまうんだ」
 今まで堪えていた弱音をルイスに吐く。

 紫音は熱がある事と起きている時間が少ない事を除けば、顔色が悪い訳でも痩せ細ってきている訳でもない為、見た目は健康そのものなのだ。

「やはりシオン君の言う通りライオネル様はご存知だったんですね」
「シオンは自分が弱っている事を知っていたのだな……」
「シオン君は逆にライオネル様が寿命を感じ取っている事に驚いていましたよ」
「…………寿命!? どう言う事だ? まだ18歳だろう? 詳しく話せルイス!」
「あれ? そこ辺りはご存知無かったのですね。これはシオン君から聞いた話なのですが……」

 興奮して聞いてくるライオネルに、ルイスは以前シオンから聞いた”ドール”の体質や特殊能力、寿命について話していた。

「寿命……。(本当に寿命なら何とかなるかもしれない)明日の執務は休む! 2人でなんとかしてくれ。今日も最低限終わったらあがる! いいな」

 ライオネルは有無を言わせず、手元にある書類を終わらせると、紫音を抱き抱え自室に戻って行った。

 アインとルイスは何だか良く分からないが、ライオネルの憂いを少しでも晴らせるようなら良かったと思った。
しおりを挟む
感想 515

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。