アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

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第六章 安寧

十話 謁見と影の一族

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「御即位、おめでとう御座います。遅参お許しください、エリアス王」
「シェスターク卿、よく来てくれた、痛み入る。さあ、すぐに面を上げてくれ。話したいことがたくさんあるのだ」

 魔王に破壊された王座の間は、元より豪華に修復されている。今その場でシラールドがエアに頭を下げている。
 エアは最初こそ椅子に座ったまま、それを受けていたが、すぐにシラールドの元へと駆け寄ると、肩をつかんで頭を上げさせた。

 シラールドを叩きのめした後、一日だけロアンの街に滞在した後は、すぐさま二頭の竜にまたがって、王都へと戻ってきた。

「グゥインちゃんの言うとおりだったな。ゼン君は本当に強いぞ」
「だから、何度も手紙に書いたではないですか。兄さんは私のことを信じているか、疑問な時がありますね」
「何を言ってるんだ! 私は全面的に信じてるぞ!!」
「ちょっ、兄さん、止めてもらえますか!?」

 エアとシラールドが、軽く会話を交わす中、グウィンさんとライアスさんは、久しぶりの兄弟話に花を咲かせている。二人とも見た目は渋いのだが、会話内容は微妙だな。

 今回は一応俺も、同席することになった。
 シラールドのエアへの謁見は、諸侯への影響が結構あったようで、前王が恐れて監視を付けていた相手を取り込んだのは、まだ態度が固かった諸侯たちにかなり動揺が見られた。
 もう表立って抵抗する相手はいないとはいえ、これでエアを王として認めない訳にはいかなくなったのだ。
 また、シラールドたちの領地に接する諸侯たちは、今まで王の政策だったとはいえ、余り良い関係ではなかった。だが、王に挨拶をしたならば、今後はいろいろな面で交友は進むのだろう。
 エアの父親が王だった時代でも、挨拶はせず独立性が高かったらしいので、もしかしたら大きな変化が見られるのかもしれない。

「ゼン、今回も助かったぞ」
「お前、シラールドを倒したら、こうなるって知ってたのか?」
「何のことだろうな?」
「ったく、白々しいわ……」

 形だけの挨拶は早々に済ませ、俺たちは王座の間から移動して、広めの客間に通された。俺の対面に座るエアは、涼しい顔で俺の問いに答えている。

「これで国内の主だった勢力には話がつきました。今後は国外との交友を広めるべきですが、これはヴァージニア様が精力的に取り組むとのことです。エリアス様には、集中して政務に取り組んでいただければと思います」
「なら、我が領地からも人を出そう。微力ながら手助けをできよう。今後の友好にもなる」

 リシャール様の言葉に、シラールドが応えている。

「で、正式にシェスターク卿は、息子殿に当主の座を譲るのだな?」
「うむ、そのつもりでしたが、子供たちや各種族の代表に、いきなり過ぎると怒られましてな、主には悪いが少しばかし時間をもらうかと思っております」

 俺が会話に参加してないのに、エアとシラールドはなぜか今後の話を展開している。話をするのはいいのだが、俺に一言ないのか?

「本当にシラールドは俺についてくるの?」
「今更だぞ主。ワシはもう民にも通達を出している。今更元には戻れないぞ」

 あの戦いの決着がついた後、シラールドの発言は、その場にいた人たちが証人となり一気に広まりを見せた。街には一日しか滞在していなかったのに、どこでもその話で持ちきりだったほどだ。お陰で落ち着いて買い物も食事もできず、逃げるように出てきたのだ。

「でもなあ、何をするんだよ?」
「うーむ、分かった。主は余り気が進んでないようだから、暇な時は勝手に過ごす。だが、何か楽しそうなことをする時は、お供をさせてもらおうぞ」
「それなら俺のことを、主って呼ぶ必要なくないか?」
「何を言っている。そうでもしないと隠居ができんだろう」
「…………」

 結局自分が隠居したいから、俺に従うって言ったのかよ!
 くそっ、長生きしてるだけあって、タダでは転ばねえな。完全に勝ったつもりが、実は俺がハメられた気がしてきたぞ。

「まあ、ゼン君。シラールド殿は、長生きしているだけあって、恐ろしく有能だ。主と認めた以上は、ゼン君の命には従うのだから、必要なときに使えばいいんだよ」

 ライアスさんがグウィンさんとの会話を止め、こちらに顔を向けて話しかけてきた。

「そうだぞゼン。できることなら俺がシェスターク卿に慕ってもらいたいぐらいだ。しかし、珍しいな、ゼンが年上にそんな言葉遣いをするのは」
「一応、戻そうと思ったんだが、別にいいらしいからな」

 戦っている時は関係ないが、その後は元の話し方に戻したのだが、シラールドは俺を主と呼ぶ関係からおかしいと言い出したので、遠慮なくこうさせてもらっている。
 気を使わなくてもいいのは楽だね。

「慕ってもらうなら、こんなムキムキのおっさんじゃなくて、可愛いヴァンパイアの女の子の方が良かったわ」
「おっ、主は女が欲しいのか。ならば次再会するときには、適当に見繕ってこよう。強者ならば我が一族の娘たちも喜ぶだろう」
「絶対にやめてくれ」

 これが冗談じゃなくて本気だから権力者の発想は怖いわ。正直に言えば、興味はありまくる。だが、俺も流石にその辺の節操はわきまえるぞ。

「で、ゼンはもうすぐ、ラーグノックに戻るのか?」
「アルンとナディーネさんがいるし、後数日滞在したら戻るかな」
「そうか、寂しくなるな……」

 エアの表情が明らかに落ち込んでいる。その気持ちは嬉しいが、俺もいつまでも王都にいるわけにはいかない。

「別に、俺ならすぐに駆け付けられるから、何かあったら呼んでくれ。何なら視察に来ればいいじゃないか」
「視察か、数年は無理だろ……。まあ、一年に一度ぐらいは、ジニーにも会いに来てくれ。あぁ、今回の報酬として、王都に屋敷も手配した。次来たときには使えるようにしておくよ」
「今回の件をそれでチャラにする気か……もらえるならもらうけどさ」
「それと地図の方だがもう少し待ってくれ。明後日にもできるだろう。まさか、こんな短期間で解決してくるとは思わなかったから、間に合わなかったぞ」

 実はシラールドに会いに行く前に、報酬には金だけではなく、地図も依頼した。これは出る前に見せてもらった地図を見て、何となく欲しくなってしまったからだ。
 手書きなので時間が掛かると言われていたが、俺もこれほど早く終わるとは思ってなかったから仕方ないだろう。
 まあそれなら、地図ができたら王都を出ることにするかな。

 話は終わり解散となる。エアはもう少しぐらい良いだろと、リシャール様に渋っていたが、やることは山ほどあると言われてしまい、肩を落としていた。

「あっ、そういえば、ドライデン子爵はどうなってんだ?」

 俺の言葉にエアは一瞬目を見開くと、急に苦い顔をしだす。

「俺も分からん。メリルは一体男なのか、女なのか、俺が教えてほしいぐらいだ。諸侯は男のはずだと言うが、あれはどう見ても女の子だろ……」

 ドライデン家の前当主と正妻の間には、メリル君一人しかない。もし、女の子だったとしたら、後を継がせるために男として育てた可能性もある。

「まあ、俺からしたら面白いだけだから、どっちでもいいんだけどな」
「お前……それ言うか?」

 事情を知っている人は、声は出さないが笑っている。表情を見る限り、問題としてはその程度のものなんだろう。

 最後にエアをちゃかして、王城から出る通路を歩いていると、隣を歩くシラールドが話しかけてきた。

「主よ、少し話がしたい」
「いいけど、ここでするのか?」
「いや、宿に戻ろう」

 シラールドは一応この国の大貴族なので、王都に屋敷が用意されているはずなのだが、長い間交友が途切れていたので、その屋敷は今は別の人が使用している。
 なので、シラールドは俺が泊っている宿にくることになった。貴族には少し地味すぎると思うのだが、俺が思うより気にしていないみたいだ。

 宿に戻るとアルンとナディーネは出かけていた。連日どこかしらに行っているみたいだ。二人が毎日楽しそうにしてるのは、とてもほほ笑ましい。
 完全にそう思えるのも、アニアにちょっと手を出したからか……?

 部屋に入るとポッポちゃんが飛びついてきた。優しく胸でキャッチして、可愛い頭を撫でてやる。ポッポちゃんは、「主人~、あの子もなでなでしてほしいのよ?」と、植木鉢の方を見て鳴く。
 視線を植木鉢に移すと、触手のような細い蔓が、ウネウネと動き俺を誘っているように見えた。

「あれは……樹人なのか……?」

 ドアの外から部屋の中をのぞいたシラールドが、つぶやくようにそう言った。

「おっ、分かるのか!?」

 余り人に見せる物ではなさそうだったので、一部の人にしか見せていなかったが、初めてあれを知っている人物が現れた。

「ふむ、樹人は幼体のころは、地面に根を張り育つと言うからな。その様子だと、親はいないのか」

 シラールドは頭を下げ、ドアにぶつけないようにして、部屋に入ってくる。そして、植木鉢に近付くと、ゆっくりと指を伸ばした。
 ポッポちゃんが、クルゥッ! と大きく鳴いて「主人、あれなに! だいじょうぶなの!?」と心配しているので、安心しろと言いながら、優しく撫でて落ち着かせてやる。

 俺も植木鉢に近付くと、恐る恐るシラールドの指を探っていた蔓が、俺の方へと伸びてくる。だが、まだ短い蔓は俺へとは届かない。
 ポッポちゃんが「なでなでして?」と鳴くので、手を伸ばしてやると、限界まで伸ばしていた触手が俺の手にまとわり付く。

「ふむ、主よ。樹人なのだろうが、珍しい種だと思うぞ」

 シラールドが言うには、普通の樹人は幼体の頃は、ほとんど動けないらしい。その種に因るらしいが、多くの種は時間を掛けて人型になり、歩行が可能に成長する。
 だがこれは、小さいながら動き、完全に意思を持って行動している。少なくとも、自分が見たことのない種だと言っていた。

「どこでこの実を?」
「この子が持ってきたんだ。少し要領を得ないんだが、人から貰ったらしい」
「ふむ……それはもしかしたら、樹国の古い種族かもしれんな。あの連中は珍しい種も持つと言うからな。だが、そう簡単に希少な実を譲り渡すとは思えんがな」

 俺らのそんな会話なんて気にもしていないポッポちゃんは、植木鉢の中に入り蔓に体中をなで回されていた。

「この鳥は主のものか?」
「あぁ、俺の相棒だ。あの竜と互角に戦えるぞ。言っとくがポッポちゃんに無礼は許さんから、注意しろよ」
「ただの大鳩ではないのは分かったが、かなりこれも特殊か。主の周りは面白い物が多そうだな」

 シラールドがうなずきながら笑っている。何かに満足しているみたいだが、本当に俺を主として従う気があるのか、改めて疑問に思えてきた。
 まあ、自由にすると言っているし、俺の邪魔にならないなら、勝手にしてもらおう。強者が身内にいるならば喜ばしいことだしな。

「それで、話って何だ?」
「あぁ、そのことだが、他の部屋でいいか? 呼び寄せる必要があるからな」
「それって、この宿の外にいる奴らのこと?」
「むっ! 探知ができるのか……。本当に主は何でもありだな」

 宿の外には複数の気配を感じていた。それは城を出てから少しすると、複数に増えて俺たちを追いかけてきていた。それほどの力は感じないし、王都内では諸侯の草も多数いるらしいので、その手の類だと思い無視していた。
 宿に侵入してくれば当然対処する気だったが、実害はないし、その中にはエアが送っている、宿の警備もいるので正直見分けがつかない。

「じゃあ、シラールドに割り振る部屋にいこう」

 植木鉢のあれと戯れるポッポちゃんに、少し離れることを告げ、空いている部屋へと移動する。
 しかし、そろそろあの植物……樹人か。あれの名前をどうにかしないと何て呼んだらいいのか困るな。
 ポッポちゃんに名付けさせるのが一番だろうけど、果たして人の名前を全く覚えないポッポちゃんに可能だろうか? 俺が付ける名前は……自分でも分かっているんだ、センスがないと。
 歩きながらそんなことを考えてしまい、シラールドに少し怪訝な顔をされてしまった。

 部屋に入るとシラールドが窓を開けて外を見る。何かを見つけたシラールドは、その方向へと合図を送った。
 程なくすると、こちらに近付いてくる気配を感じる。身軽に移動をしているが、屋根にフワリと飛び乗った様子は、どこか重力を感じさせない動きを見せていて、少し不思議な感覚を覚えた。

 段々と近づいてきたそれは、屋根伝いに移動して、隣の建物から開けられた窓の縁に静かに飛び乗った。そして部屋に入ると、自然な様子でシラールドに頭を下げる。

「お呼びでしょうか」

 黒いローブに身を包み、中身の様子を見せないそれは、し枯れた老人の声を発した。

「もう知っていると思うが、ワシはこの男を主とする。よって、お前たちは、今後この男の指示に従え」
「……かしこまりました。新たなる主様、我々を存分にお使いください」
「ちょっと待て」

 本当にこのおっさんは話を勝手に進めやがる。いきなり何だかわからないものを呼び出して、俺に従えとか言われても対応できるはずがない。

「主、分かっている。ちゃんと説明するから、そう怖い顔をするな」
「なら、最初からそうしてくれ」
「少しやり返しただけではないか……」

 可愛い女の子のいたずらなら喜んで受け取るが、おっさんのそんな行為はイラつきしかねえぞ。

「彼らはシェード。過去にいろいろあってな、ワシを影から支えてくれていた一族だ」

 シラールドがそう言うと、まだひざまずいている男はローブのフードを下ろす。現れた顔は、声の印象と同じ年齢で、生気を感じさせない白さをし、少し大きめな黒目を持つ顔があった。頭部にも眉にも体毛は見えず、異世界になれた俺でも、少し異質に感じる種族だった。

「我々はシェード族でございます。新たなる主、ゼン様のお力になれるよう、一族で助力をさせていただきます」
「……何故俺に従うんです。安々と主を変える存在は、信用ができないですよ」
「仰る通りでございます。しかしながら、シラールド様の言葉は絶対。主が変わった今では、ゼン様の言葉が絶対でございます。それが私、それが我々でございます。もし、今この場で死ねと申されれば、この生命捧げて見せましょう」

 そう言ったシェードの老人は、懐から取り出したナイフを首に当てる。何だこの種族……重すぎるだろ。

「彼らは特殊でな、主を持ち、その相手を支えることで繁栄できると考えているのだ。ワシも彼ら以外にそんな種族は知らんからな」
「だからといって、俺に仕えるのはおかしくないか?」
「はぁ……主は自分の価値が分かっていないな、若くしてワシを倒す力を持ち、この国の王族と軽口を叩きあう程の仲だぞ? それに商売も上手くいっているらしいではないか、ワシの人生はまだ長いとはいえ、未来を考えれば主は有望過ぎる人物だ」

 客観的に自分を評価されると、結構俺も凄いな……。それも全部神様から頂いた力と、前世を経験してる優位性があるからなのは分かっている。なので、この世界で努力している人を見ると、少し負い目はある。
 だからといって、俺は自重する気はないけどね。

「えっと、名前は?」
「我々に個別の名はございません。我々全てがシェードでございます。シェードとお呼びください」
「シェードは俺を主として認めるのですか?」
「もちろんでございます。失礼ながらこの可能性は、シラールド様が敗北した時に予想しておりました。我々もゼン様の情報を集めさせていただきましたので、その上で主として仕えるべき方と判断しております」

 シラールドと戦ってから、数日しか経ってないぞ……?
 あれ? この人たち、もしかして物凄い有能?

「今この宿にいる、俺の関係者の名前は?」
「アルン様にナディーネ様、それにポッポ様でございます」
「俺の所持するアーティファクトは?」
「槍、剣、鐘、杖、盾、籠手と、確信はもてませんが、もう一本杖があるかと思われます」

 全ては把握していないようだが、他のものはアルンとアニアが持っている。なので、それらが漏れるのは仕方がないか。
 それでも優秀みたいだな、調べれば分かる情報だろうが、この短期間にこれは驚かされる。

「この短い間によく調べましたね」
「この王都には多くのシェードが存在しております。それらが持つ情報を合わせた結果でございます」

 なるほど、元から持っていた情報でもあるのか。それでも彼らは優秀だろう。良いな……。

「俺は何をしたら良いのですか?」
「我々に援助をしていただきたく思います。さすれば、更に我々は力を得られましょう」

 投資をした分、働くのか。

「ワシは年間に大金貨二十枚を与えていた。それで今は十分らしい」
「我々も自力で稼いでおりますので、なくとも生きてはいけます。しかし、情報を集めるとなると、どうしても資金が必要なのです。我々は、その中から少しばかりを私的に使わせていただき、一族の数を増やしております」

 彼らの目的が繁栄なら、もらった資金の中からそれに当てるのは当たり前だろう。しかし、大金貨二十枚か。これは安いと考えるべきか?

「情報集め以外に何ができます?」
「工作、破壊活動、謀略、また、低レベルの相手ならば暗殺は可能ですが、基本的に我々は荒事には向いておりません。警護を命じられた場合は、外部の人間を雇い、緊急時には我々とともに行動する事になります」

 本格的にスパイ組織みたいだな。まさに裏の種族って感じでかっこいいぞ。
 どうする……。多分、断ることはできるだろう。だが、彼らの価値を考えれば勿体無い気がする。年間大金貨二十枚で、個人で動かせる組織が手に入ると考えれば、ここは投資すべきか……。
 そうだな、この国の情勢も一度は安定したとはいえ、まだ予断は許さないだろう。
 何より、ちょっと憧れる。スパイ組織に指示を出す。これは魅力的じゃないか……。
 あっ、これはもう駄目だ。気持ちが完全に傾いてるぞ!

「まずは二年試して役に立つのか検証します。もしそれで俺が要らないと判断すれば、シラールドに返します。それで良ければ、受け入れましょう」
「それで結構でございます。今後我々は、ゼン様の指示に従わせていただきます」

 ちょっと早計かもしれないが、お試し期間があるならいいよな。失うとしても今の俺ならそう高い金額でもないだろう。

「うむ、提案して何だが、簡単に受け入れたな。騙されるとは思わなかったのか?」
「それは今更だろ。騙したなら滅ぼすし、損をしたらシラールドの領地から頂けばいい。俺に敵対するならそうするまでだ」
「考えていたより過激な主だな……」

 シラールドは呆れたような顔をしているが、これは当たり前だろう。こんな一族が敵に回ったら、面倒臭すぎる。まあ、多少は大げさに言ってるけどさ。

「さて、認めたなら雇い主らしいことをしよう。まずは一年分の活動資金に大金貨二五枚を出します。増やした分は自分たちで使ってください。それに俺はラーグノックに移動します。資金は必要ですよね?」

 俺がマジックボックスから大金貨を取り出し、袋に入れて渡すとシェードは仰々しく受け取った。

「ありがとうございます。必ずやお役に立ててみせます。ゼン様、僭越ながら我々に丁寧な言葉は不要でございます」
「そう? ならそうするよ」
「それでは主には、彼らの扱い方を伝授しよう」

 その後、一時間ほどシェードの呼び出し方や、彼らの日常など、様々な話を聞いた。聞けば聞くほど特殊な生き方をしていて、イメージ的にはスパイ活動を生業とした、遊牧民を思わせる。主人に合わせて定住先を変えたりするからだ。

 まあ、彼らが果たしてどの程度使えるかは、これから試していけばいいだろう。何よりこれはちょっと楽しいので、少しぐらいの損は大目に見ようかな。
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