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第六章 安寧
幕間 ポッポちゃんのお散歩
しおりを挟むお空のおさんぽ、うふふなのよ。
今日は主人が竜と遊んでるから、あたしはお外で遊ぶのよ。
やっぱりあたしはお空が見える方が好き。
どうくつはせまいから好きじゃ無いのよ。
それにここは木が一杯、美味しいご飯をさがすのよ!
あらあら、あれは何かしら?
人がいぬに追いかけられてるの?
ハッ! そうだったわ、人は助ける!
主人があたしに教えてくれた事!
ギューンて飛んですぐ着くの。
あたしはすごい速いんだから!
いけーっ!
あたしの魔法を見たらいぬなんて、すぐにどこかに行っちゃうんだから!
あれ?
いぬ逃げないの?
なら可哀想だけど、さようならなのよ!
ビリビリを食らうのよ!
ふぅ、やっぱりあたしはすごい!
いぬはもう動かないのよ!
あっ、良い事したから主人はなでなでしてくれるかな?
うふふ、たのしみなのよ!
「何故大鳩が助けてくれるの……? ペットかしら? でも主がいないわね」
主人はとおくにいるの!
ん?
あなたは人なの? それとも木なの?
「私は樹人です。助けてくれてありがとう、可愛い鳥さん。主の命も無しに動けるのね」
主人が人は助けろって言ってたのよ!
樹人は人なの?
「どっちも、かしら? 私も分からないわ」
どっちもなら、人なのよ!
うふふ、帰ったら主人にほうこくしないとね。
「あの、鳥さん。お礼はするからお願いを聞いてもらえないかしら?」
なになに?
なにくれるの?
「美味しい木の実はいかがかしら? 貴方が食べた事のない物を用意出来るわ」
いいのよ!
主人はお外で遊んでいいって言ってたから!
「遊びじゃ無いんだけど、まあいいわ。宜しくね鳥さん」
はいはいなのよ!
あたしのお仕事は、木の人を守る事なの。
守るお仕事はいっぱいしてるから楽々なのよ。
まずはお空に飛んで当たりを見渡すの。
ていさつはきほんだって主人は言ってたから!
木の人が心配そうな顔をしてるわ。
うふふ、大丈夫なのに、おかしいのよ!
あたしは優しいから、すぐに戻って安心させてあげるのよ!
「良かったわ、どこかに行ってしまったかと思ったわ」
ていさつしたのよ!
主人にそうしなさいって、言われるの!
「貴方は本当に賢いのね。普通の鳥ではないわよね……、キラーウルフを倒す大鳩なんて聞いたとこがないし」
あたしは、白き空の女王なのよ!
「あはは、じゃあ女王様に守って貰えるのね」
そうなのよ!
心配ないのよ!
木の人とお話ししながら進んでいくの。
森の奥までドンドンすすむと、てきが七回出てきたの。
ぜんぶあたしが倒したのよ!
でも、あと二回出てきたら、何回出てきたか分からなくなるから、困るのよ……。
「鳥さんは奥まで入っても、帰れるわよね?」
主人のばしょは何時でも分かるの!
飛べばすぐなんだから!
「なら良かった、帰りの心配は無いわね。でも本当に助かったわ、護衛がみんな食べられてしまったのよ」
おともだち~?
「お友達とは違うわね。鳥さんが女王なら私はお姫様なのよ? だから守ってくれる人がいたの」
おひめさましってるの!
金髪おひめさまなの!
「あら、お友達にお姫様がいるのね? 私の知り合いにも居るのよ」
いっしょ!
「うふふ、そうね」
木の人と一緒にもっと奥まで森に入るの。
でも、そっちは大きい木のほうなのよ?
「神命樹を知ってるのね。あぁ、空を飛べば見えるものね」
そうなの、それなの!
主人といっしょにいったことあるのよ!
「私も小さい頃は住んでたわ。今は少し離れた場所だけどね」
木の巣がいっぱいだったのよ!
木の人も木の巣にすむの?
「そうよ、立派なお家なんだから」
あたしも主人といっしょの巣にすみたいの!
それでね、金髪と片割れの卵をあっためるのよ!
「その金髪と片割れって、貴方の主の良い人なの?」
つがいになるの!
主人の卵を産むから、あたしがあたためるのよ!
「人なのよね?」
そうなのよ!
「そっか……」
木の人はなにか考えているみたいなの。
うふふ、ちょっとお姉さんな話だったかしら?
でも、木の人もお姉さんなのに不思議なのよ!
木の人の早さに合わせて飛んでいくの。
そうするとまたてきがくるのよ!
今度のはなんだか強い奴なの。
いぬよりもっと強いから、ゆだんできないのよ!
「強いって、まさかアイツがまだ追いかけて来てるの!?」
ちょっと強いのよ!
でもがんばるのよ!
うしろから木の人を追いかけてくるのがいるの。
なんだか前に感じた事があるけれど、思い出せないの……。
う~ん、わからないのよ!
木の人がいそいで歩いてるの。
でもおそいから逃げきれないのよ。
仕方がないから戦うの。
木の人隠れてなのよ!
「……鳥さん、勝てるの?」
だいじょうぶなのよ!
「あんな魔獣を任せるのは心苦しいけど、私じゃ足手まといね。大人しく隠れるわ」
木の人が隠れると、お空からてきが降りてきたの!
あっ、あわわわわわ。
怖いの!
怖い奴なの!
アイツは前に主人を食べようとしてたキマ……、なのよ!
怖いのおおお!
また噛まれちゃうのよ!
キマがあたしじゃなくて、木の人を探してるの!
たいへんたいへん、すぐに見つかっちゃうのよ!
あたしはごえいだから助けるのよ!
食らいなさい!
あたしが撃った岩の槍は、キマの体に刺さったの!
キマは凄い苦しんでる。
あれ?
キマ怖くないの?
キマがあたしを見てるのよ!
お顔が三つあるから怖いの……。
でもがんばるのよ!
やぎの顔が火の玉を吐いて来るの!
あたしはギュンッて飛んで避けちゃうの。
あれ? 遅いのよ?
キマが大きなお口を開けながら、あたしを食べようとしてきたの!
でもまたすぐに飛んで避けちゃうのよ!
うぅ、まだ怖いけど、戦うの。
木の人を守るって決めたから!
お空に飛んだあたしを、キマも飛んで追いかけてきたの!
でもでもあたしは早いから、キマには絶対追い付かれないのよ!
一杯、一杯岩の槍を撃つの!
でも、当たれば刺さるのに、キマは尻尾を使って振り払うの!
ひゃあああ、尻尾のお顔がこっちを見たの!
怖いのよおお。
怖い奴にはビリビリなの!
光ってビリビリ食らうのよ!
わっ、わっ、キマが落ちてくの!
ドスンて地面に落ちたのよ!
あっ、木の人が近いのよ!
危ない、危ないって思ったら、木の人が手をグルグルすると、地面から一杯草が生えてきて、キマを動けなくしたの!
チャンス、チャンス、チャンスなのよ!
お空の上から動けないキマに、岩の槍を一杯撃つのよ!
ドドドドドドドドって全部当たるの!
キマは一杯あたしの岩の槍を食らったのよ!
うひゃあああ、体がピリピリするのよ!
早く下りないと進化がはじまっちゃうの!
「鳥さん! 怪我したの!?」
木の人が近づいて来るけど、今は無理なの!
うにゅにゅにゅ、体がうにゅにゅにゅなのよ!
「属性鳩になっても進化で成長出来るのね……」
体がうにゅにゅになったら、次はぽかぽかなの。
そうしたら終わり。
これで少しだけまた早く飛べるのよ!
あっ、主人もよろこぶー?
「そうね、絶対に喜ぶと思うわ」
木の人がそう言うから、わーいって思ってたら、こっちに何かが来るって分かったの!
木の人、またなにか来るの!
「本当っ!? じゃあまた隠れた方が良いかしら?」
ちょっと見てくるのよ!
ギューンって飛んで上から見るの。
こっちに来てるのは……、人なのよ!
「やっと助けが来たのかしら!?」
降りてすぐ教えたら、木の人は喜んでるの!
木の人と一緒に人の方へ走るのよ!
トットットッて走ると、見えてきたの。
人が一杯こっちに来るのよ!
「姫様ッ! 御無事でしたか!」
「おぉ、流石は姫様。神命樹のご加護がお有りなのですね」
「いえ、全てはこの鳥さんのお蔭です。この先にキマイラの死体があります。回収しておいてください」
「キ、キマイラですと!? その鳥が!?」
人が一杯あたしを見るの!
あたしの羽根が綺麗だから?
「鳥さんが凄いってみんな言ってるのよ」
うふふ、だってあたしは白き空の女王だからね!
「そうね、貴方は確かに女王に相応しい強さを持っているわね。なら貴方の主も素晴らしい力を持っているのでしょう。鳥さん、貴方に渡す報酬なんだけど、主との子供は欲しくない?」
なに言ってるの?
鳥と人は子供出来ないんだから!
うふふ、木の人はお姉さんなのに知らないんだ。
「確かにそうね。だけど、私があげるこれを使えば、貴方が産む訳では無いけど、それに近い物は手に入るわ。美味しい木の実とどちらが良いかしら?」
……本当なの?
「完全にとは言わないけれど、嘘では無いわ。主と貴方の力で生まれるのは間違いないもの」
欲しいの! 欲しいのよ!
「じゃあ、報酬はそうしましょう。命を助けて頂いて感謝します」
木の実なの?
「そう、木の実。使い方は――」
バイバイなのよ!
お空に飛びあがると、木の人が手を振ってくれるの。
バイバイなのよ!
良い物もらったの!
ギューン、ギューンって早く帰るのよ!
待ってて主人、あたしは直ぐに帰るのよ!
◆
「姫様本当に渡したのですか……?」
馬車の中、眉をひそめ、体面に座る樹人の女性に話しかけるこの男は熊の獣人であり、かなりの年齢を感じさせる。
「そうよ、命を助けてもらった礼としては、安いぐらいだと思うけど?」
獣人に言葉を返す樹人は、体の殆どが木で構成されているが、顔や身体の一部は人族と同じものを持っている。まるで木のドレスを着ているかの様に見え、とても美しい姿をしていた。
「……お館に叱られますぞ」
「その心配は無いわ。あの鳥さんの強さは本物だった。キマイラを手玉にとって倒していたわ。ならその主も相応の力を持つはず。我が一族の繁栄を考えれば、決して間違った選択にはならないと思うわ」
樹人の女性は優しく微笑む。
報酬として渡した物は、純粋にあの鳥の事を思っての事だが、その中には自分の一族の利益も含まれていた。
若干の罪悪感はあるのだが、もし成就すればあの鳥は、それを上回る物を手に入れられると、樹人の女性は信じている。
「ふふ、楽しみだわ。どんな子が産まれるのかしらね」
「鳥の血が混ざるのですか……、前代未聞ですぞ」
獣人の男は、この後自分の主人にどう説明すれば良いかと、頭を悩ませた。主人だけではない、国を仕切る長老たちにも説明がいるはずだ。
獣人の男は、目の前で優しく微笑む姫君を、少し恨めしく思うが、自分の娘の様に育ててきた樹人の女性を見てしまうと、大きなため息をついて諦めるしかなかった。
************************************************
次回14日の12時更新です
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